あたしは御艶を呼んで手でおいでおいでする。
御艶が皇先輩に気付き、先輩のところへ歩いてくると、教室内が色めきたった。女子の皆さんが「キャー!」と黄色い悲鳴を上げる。な、なにごと!?
御艶はしぶしぶ、といった感じに皇先輩に応じる。ふたりは教室を出て行った。
すると、女子の集団が教室のドアの周りへ結集し、ドアに身を隠しながら廊下の二人を覗きこんだ。
「え、なに、なに」
気になって、あたしも廊下のふたりを覗きこんだ。彼女たちに倣って身を隠しながら。
別に、何のことはない。二人は廊下の窓際で話しをしているだけだ。気になるところといえば、御艶が顔を赤くしながらちょっとエキサイトしてるけど。……あ、皇先輩が御艶の腰に手を回した。
「キャ――ッ!」
女子の皆さんが黄色い悲鳴を上げる。なんだなんだなんなのよさ。
あたしは首を傾げ、?を頭上に浮かべながら席へ戻った。
「あれね、目の保養だってねえ。あたしにゃーちょーっとわかんないけど」
「目の保養?」
「……あ?きょうこ知らないわけ?なんで?あんたサッカー部マネでしょ」
「だからなーにー」
「マジかこの女。あー、あの、だ。我鳳院先輩ってのは……」
朱海はすー、っていうしぐさで、右手の甲を左頬へ持っていく。
「…………」
おほほ、の手。
「おか……」
「おかまとボーイズラヴは違うッ!」
ドアの付近の女子の一人が朱海に指摘する。
「そしてついでに言えば我鳳院先輩はゲイではなくバイ!」
「…………」
あたしと朱海は「や、まあ、どっちでも」という顔で(どんな顔かは想像力が必要です)女子を見た。そうだ、この人、昼休みになるとカバーもかけずに♂×♂な小説を堂々と呼んでる豪傑な人だ。
「キャー!」
女子達の悲鳴が一際大きく聞こえた。
「……きょうこ、あんた、どっかいくんじゃなかったの?」
「あ、や、べつに、でてこうとしただけだし。なんか、もういっかな」
やー、そーかそーかそーなのかー、御艶のヤツってば。いっつもあたしにひっついてくるくせに、皇先輩と。ふははは。あとでからかってやろう。
「つーかさ、きょうこ、あんたホントに知らなかったわけ?あのふたりのこと。部活じゃあんな感じじゃないの?」
「んー、別にいっつもあんな感じだけど。御艶のお尻撫でまわしたり、御艶がシャワー浴びてるとこに入ったり、御艶を叱るとき異様に顔近づけたり……仲いいなーくらいに思ってたけど……」
いかん。
これからあたし、あのふたりのことどんな目で見ればいいんだ!
と、ひとりでプチ思い悩んでいると、あたしの周りに目をきらきらさせた女子達が集合してきた。え、何?
女子A「須唐部さん!その辺の話、もう少し詳しく聞かせて」
女子B「小説化して!願わくばまんが化希望ッ!」
BL小説女「っていうかアタシ!サッカー部のマネージャーになるッ!」
最後の一言にみんな呼応する。いつの間にやら他所のクラスの女子まで混ざって、総勢ざっと十数名。
5人しかいないサッカー部のマネージャーがそんなにいてどうするんだー!