聖杯戦争と時を同じくして、ある一つの怪事件が下北沢の街を騒がせていた。
無差別連続怪死事件。
昨日まで、つい数分前まで、なんの変哲もなく過ごしていた人物が、突如ミイラ化した遺体となって自宅で発見されるという事件だ。
最初の被害者が発見されてから一週間、被害総数は既に810人を超えている。
だというのに、犯人像は未だに特定されず、それどころか、特定しようと潜伏した警察が逆にミイラになって帰ってくる始末。故事成語かな?(すっとぼけ)
ただ、一人の警察官(人気お笑いコンビのボケに似ていた、人受けのいい優男)が決死の思いで残したボイスメモによって。
「犯人は女」
「男を狙っている」
「そいつの顔を見てはいけない」
という、本当か嘘かも分からない情報が、行政・報道に渡されることになった。
この下北沢中の男性を狙った未曾有の危機は、ニュースで日夜特集が組まれ、あの朝/日テレビの人気ドラマが今日の今日のキャンセルになるほどに、世間の注目を集めた。
ホリ・トオルもまた、その怪事件について調査を行うフリールポライターの一人だった。
と言っても、警察のように血道を上げて操作を行っているわけではない。
明日の飯を食いっぱぐれない程度に、警察を怒らせない程度に事件を調べ、読者が望むように面白おかしく記事を書くのを好んでいた。
書いた記事の内容も、一般人の調査の域を出ていない。
だが、出会ってしまうのだ。そういう人物こそが、好奇心から怪異の尾を踏もうとする者こそが。
神より生み落とされた呪われし顔を持つ、連続怪死事件の真犯人と。
その日も、ホリ・トオルにとっては別段変わりのない一日だった。
いつものように働き、公園で付き合っている女性と会い、自転車で街をぶらつき、AVを借りて帰る。
そんな、人生最後の日にはふさわしくない、ありきたりな一日を過ごし。
そろそろ床につき、寝ようとした時、終幕は突然やってきた。
大きな音を立ててドアが開かれる。
寝ようと横になっていたところ、慌てて飛び起きれば、玄関口には中肉中背、色黒の、まるでジャングルから飛び出してきた霊長類のような女(服装でかろうじてそう判断できる)が立っていた。
「ん何だお前!?」
突如部屋に侵入してきた霊長類のような女性。当然、彼の知り合いではなかった。
霊長類系女子はのしのしと部屋を歩き、ホリ・トオルとの距離を縮めてくる。
そして、ホリ・トオルがたぶん変態だと思って警察に不法侵入だと連絡を入れようと電話に手を伸ばすと、女は人間を遥かに超えた速度でホリ・トオルに跳びかかった。やっぱり霊長類じゃないか……(呆れ)
そのオランウータンは、人間離れした握力でホリ・トオルの手首を締め上げる。
「流行らせコラ!!」
ホリ・トオルも渾身の力を込めてその腕を振り払おうとする。
しかし抵抗むなしく、ベッドの上に押し倒されてしまう。
「ドロヘドロ!(名作)」
絞首台へと続く朽ちかけの階段のように、ベッドのスプリングが軋む。
男三人程度ならたとえ抑えこまれようと馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前と啖呵を切れるほどのホリ・トオルの屈強な肉体がびくともしない。
まず感じたのは困惑だった。この得体のしれない人物の押し倒した目的を図りかねての困惑が、頭のなかを埋め尽くした。
次に感じたのは恐怖だった。その顔を見れば、二度とこの世には戻れないだろうと言う直感にも似た恐怖が、心のそこから湧き上がった。
「ア゛ッ!」
オランウータンの後ろ足がホリ・トオルの脚に絡む。
キングクルールのような声を出しながら、抑えこまれる。
両腕を抑えこまれ、両足も抑えこまれ、身動きが完全に取れなくなる。
振り乱れた脱色された髪の毛先がホリ・トオルの胸板をくすぐる。
「やはりヤバい」
勝てると思ったのがそもそも間違いだったのだ。
目の前に居るのは人の理では到底解き明かせぬ怪物なのだから、出会った瞬間に逃げるべきだったのだ。
いや、そもそも、かかわらないべきだったのだ。
面白半分で頭を突っ込んでいいものではなかったのだ。少なくとも、この、怪物に関しては。
後悔とは常に先には立たないものだ。
ホリ・トオルが最後の瞬間に抱いたものは、変えようのない過去への後悔だった。
髪の毛が揺れる。
舌なめずりをする音が聞こえる。
ベルトが外される。
ゆっくりゆっくり伏せられた顔が近づいてくる。
ついに、襲ってきたそいつの顔が上げられ。
その悍ましき顔貌が。
木乃伊の山を作り上げた正体が。
笑顔が。
笑顔が。
笑顔が。
笑顔が笑顔が笑顔が笑顔が笑顔が笑顔が笑顔が笑顔が笑顔が笑顔が笑顔が笑顔が笑顔が笑顔が
笑顔が笑顔が笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔
笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔
笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔
笑顔笑顔笑■■顔笑顔■■笑顔笑顔笑顔■■
笑■■顔笑顔■■■■笑■■顔笑■■顔笑顔
笑顔笑顔■■■■■■笑顔笑顔■■■■■■
笑顔■■■■■■■■笑■■■■■■■■顔
■■■■や■ろ■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■ナイ■ぅ■■■■■■■■
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「 い ち ま ん え ん く れ た ら
し ゃ ぶ っ て あ げ る よ 」
.
5.バーサーカー
バーサーカーと呼ばれるべきその怪人は、あてどもなく歩いていた。
聖杯戦争とは無関係の男性を、文字通り食い散らかしながら、夜を越し、朝を迎え、昼を過ごしていた。
不幸の連鎖の始点は彼女のマスターの死亡だった。
バーサーカーはまず自身を呼び出したマスターを殺害した。
彼女の顔を見て恐慌に陥っているマスターを押し倒し、性行為を行い、その結果魔力を絞り尽くして死亡させたのだ。
しかし、彼女はスキルとして単独行動を持っていたため死ぬことはなかった。
ただ、乾きが襲ってきた。
マスターを失ったことで魔力の供給が絶たれ、身を滅ぼそうとする乾きと向き合うことになった。
GO教によれば、神はガソリンスタンドで働いていた神の子の飢えと乾きを満たすため五万円を授けるための試練を与え給うたという。ピンハネ?なんのことやら……
神の先走り汁である彼女は、飢えと乾きを満たすために自身の想像主たる神、GOの起こした奇跡に歩み寄ろうとしたのだ。
『一万円くれたらしゃぶってあげるよ』
彼女が男を襲う際に口にするその単語は、狂おしいほどの飢えと乾きの中で神の救済を望む、バーサーカーの悲鳴なのかもしれないし、違うかもしれない。
下北沢に生み落とされた救われぬ英霊は、まるで可愛らしいスローロリスくんをおやつ感覚で食べていくオランウータンのように、下北沢を徘徊しだした。
バーサーカー。
ホモビに出るほどのAV女優(狂戦士)。
件の警官の断末魔によれば、その顔は、まるで鏡で写したように見事な左右対称だったという。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
無銘(AV女優)
【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:E 宝具:EX
【属性】
混沌・狂
【クラススキル】
狂化:EX
ホモビに出てホモビ男優とセックスするあたりたぶん狂化特性があると思うんですけど(名推理)
魔力消費は最低限に抑えられる代わりに、スキルによるパラメーター上昇はない。
ただ、性欲が高まる。
【保有スキル】
避貌:A
忌避されるべきその顔貌。
ホモたちから「ファッ!?ウーン……(心臓麻痺)」「マ゜ッ!!(即死)」などと恐れられた顔を持つ。
その逸話に違わず、彼女の顔を直視した者には精神に異常を来す。
何者かが彼女の顔を直視した場合、十秒以上行動不能状態に陥る。
そして彼女の顔がトラウマとなり、戦闘終了後も精神汚染から抜け出せない。
顔を見れば見るだけ精神汚染の度合いが高まっていき、ステータス下降や行動不能、日常動作への支障が生まれ、最終的には発狂や突然死に至る。
対魔力で各種効果は軽減可能だが、彼女の顔は(一説によると)人類の持つ根源的恐怖の具現であるため、効果を完全に打ち消すことはできない。
写真や横顔、精神汚染が進めば後ろ姿でも行動不能に陥る。
なお、スキルの読み方は「さるがお」だが実物はどちらかというとオランウータン顔である。
性病(偽):B
それは本当か!?
性病を持っているという悪評を広められた結果与えられたスキル。
実際には性病を患ってないのだが、彼女と性行為を行ったら最悪死ぬという間違った逸話が正しいものとして聖杯に記録されてしまった。悲しいなぁ……
彼女と粘膜接触をした人物は、その接触時間や接触部位に応じて上記『避貌』の汚染速度が上昇する。
AV女優:EX
性交渉によって相手から魔力を絞り取ることが可能。
ホモビに出てたAV女優なので、相手を選り好みせず、どんな不細工からだろうと極限まで魔力を搾り取れる。
単独行動(偽):A
ホモビに何度も出演するAV女優。そのアウェイ感はまさに単独行動に匹敵するが、実際に単独だったわけではない。
彼女は魔力が尽きない限り現界を続けることが可能である。
【宝具】
『醜く悍ましき淫奔の城(おフェラごてん)』
ランク:EX 種別:対固有結界 レンジ:- 最大捕捉:-
神聖なる学び舎を、白亜の大医宮を、心を許した誰かの我が家を、尽く侵略し性行為に使用した逸話から生まれたスキル。
相手の固有結界・陣地の構造を組換え、自身の固有結界に変えることが可能。
その固有結界内では全ての宝具の使用が打ち消され、逃走用のスキルが使用できなくなる。
彼らの作り出し・展開した彼らだけの城は、バーサーカーが踏み込んだ瞬間彼らを追い詰めるためのおフェラ御殿と化すのだ。
なお、この宝具で乗っ取った固有結界・陣地の維持にかかる魔力はもともと発動していた人物が負担することになり、更に自発的に発動をやめることは不可能になる。
『一万円くれたらしゃぶってあげるよ』
ランク:A 種別:対人 レンジ:1 最大捕捉:1
この宝具が発動された場合、バーサーカーは直近にいた相手にフェラができる。相手に拒否権はない。ああ、逃れられない!
性行為を介し魔力を吸い上げられ、同時に粘膜接触により汚染が進む。
こいつにフェラされるくらいなら死んだほうがマシとおぼえておいたほうがいいだろう。
なお、しゃぶり終わったら本番に行くこともある。やめてくれよ……(恐怖)
『鏡合わせの怪人(デデドン!)』
ランク:A 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
忌むべき顔の右半分と、鏡に写った右半分が作り上げた恐怖の虚像。
これこそが聖杯によってこの地に顕現したバーサーカーの姿であり、バーサーカーに与えられた最後の宝具。
この地に呼び出されたバーサーカーをいくら攻撃しても、彼女の『左半分』が無事である以上彼女が真の意味で死ぬことはない。
彼女をこの世界から完全に消滅させたければ、何らかの方法で『左半分』を破壊する必要がある。
【weapon】
顔
【マスター】
この化物を呼び出した罪深きホモ。
バーサーカーの最初の犠牲者であり、下北沢無差別連続怪死事件の最初の被害者として下北沢警察の霊安室に遺体が眠っている。
【補足】
マスターは脱落扱いとなるが、バーサーカーが消滅しないかぎり聖杯に魔力が戻らない。
そのため、聖杯が欲しければ倒す必要のないこの汚物を討伐する必要がある。お前の運営ガバガバじゃねえかよ……(呆れ)
最終更新:2016年03月12日 23:02