影の国

建物からのびる長い影のなかふときづいた。
教会の尖塔の鐘が揺れている。
どういうことだ。
このすべてのものが黒い影の国の中で動くものはないはずだ。
誰だってこの影の国を渡るとき世界にあるものを動かせない。
時を止めて現世で瞬間移動するためのそれがルールだ。

暗黒の太陽。
黒く光る建物と大地。
ペンキより真っ白な光らない空と対照的な黒く光る大地。
地にあるものは全てが黒く、空にあるものは太陽を覗き全てが白く暗い。

私は尖塔にいるものをみあげる。
ここからではわからない。
私は尖塔に行くべきだろうか?

それとも普段通り目的地にむかうか。

魔法使いの師匠が困っているのだ。
太古の英知を詰め込んだ武装をしたドラゴンが街を襲い、師匠はドラゴン退治の仲間を募っている。
それでも私は好奇心を曲げることはできなかった。
少し覗くだけだ。
私は尖塔へと足を向ける。
最終更新:2015年10月17日 22:25