言葉がパラパラ

「カラスは今日も電線の上で人間たちの様子を観察している、その日は私もカラスみたいに街を行く人ながめてたの」
「私貴方が好き、いつまでも一緒にいたい、夕焼けの土手、学校の帰り道でそんなことを話したこともあったよね」
「ねえ、鳥たちは自分がどこへ向かって飛んでいくのか知ってるのかな」
「思い出を分別したり、電車に乗ってどっかへ行ったり人と話をしたり皆人生を少しずつ削り取って生きている」
「あなたと過ごす時間が故郷、故郷って場所じゃないよね」
「さがしてた車のキー、海風でさびてるけれどエンジンかかるかも」
「私と貴方が生まれた町へ行くの?」
サビついたキーを受け取り、海岸沿いの裏道で野ざらしになっていた車にさしこんだ。
稼働音か響く、一度止まりそうになってなんとか動く。
「地図はあるかい」
「古いのだけど」
「それじゃ故郷へ向かってドライブとするか」
青空にまるく白い雲がぽっかりと浮かぶ様を眺めた
二人は大地に視点を戻すと車はゆっくりとリアス式海岸の道を走り出した。


作者注

「カラスは今日も電線の上で人間たちの様子を観察している、その日は私もカラスみたいに街を行く人ながめてたの」
このワンフレーズだけで短編が書けそうだよなと思ってる。
最終更新:2015年10月26日 10:46