ある男は息子に語った。
「正義を信じてから我々はひどい目に合うようになった」
子供は聞いた。
「何の話」
親は答えた。
「昔の話だ。私が若かったころ、地元のグループに有能な指導者が出た」
「彼は東奔西走して、地元の産業を売り込み地元に雇用を生み出し、いろいろな地域との利権問題を片づけた有能な指導者だった」
「あるとき指導者は学校を建てることにした」
「地元民の意見を聞いて、信頼される学校だった」
「学校を建てるとき、指導者は土地を国から買った」
「この時、指導者の奥さんが校長になったのだが、皆から集めた金が足りなかった」
「奥さんは知恵を絞ったが、地元は富んだとはいえ、学校を建てるのは大事業だ、いい案が出なかった」
「部下が発案した」
「土地には大量のゴミが埋まっており、撤去費用を負担するので国から安く買いますと言った」
「これを嘘だったことが後からわかったことだったが奥さんはその話を信じた」
「そうして土地が購入され学校はでき、地元民は皆学校ができたことを喜んだ」
「国をだまして土地を買ったことは詐欺だったが、誰もこの話に気付かなかった」
「とある旅の悪人がこの話をかぎつけた」
「悪人は村の広場で、指導者は国をだまして土地を買った、これはモラルに反することだと声高に叫んだ」
「最初皆はあの立派な指導者に限って、と半信半疑だったが、悪人は証拠や証人を上げてそれをせめた」
「悪人は身なりやしゃべりが立派だったので村の人々は動揺した」
「指導者派と悪人派に分かれて村人は争ったが最終的に悪人派が勝った」
「指導者は更迭され、悪人派は悪人を指導者にと求めた」
「悪人は指導者になると、外から悪人の仲間を呼び組織を固めた」
「悪人の仲間たちは皆武器を身に着けていて誰も悪人に反論できなくなった」
「それ以来私たち村人は悪人の悪政に苦しむようになった」
「悪人が最初に来たとき行ったのは正義だったし、学校を作ろうとして土地を安く買ったのは地元への善意とはいえ詐欺だった。
悪人が正義を行い、それが詐欺という悪を倒したのだがそれが悪い結果をもたらした。そういう話だ」
「たまに不正するだけの有能な人間を追い出したら、そのあとに悪人が居座る、そういうこともあるのだ」
最終更新:2017年02月21日 19:27