――打ちっぱなしのコンクリートとベットとテーブルとソファーにキッチン
――他に何もないが何もかも手に入る無機質な部屋
――男と女が一匹ずつ放り出された牢獄で彼と彼女は何を思ふのか
――何故フタリは此処に居るのだろうふか?
――何を目的で彼等は此処に居させられるのだろうか?
――傷付く互いを慰め合えと?
――猛る欲望を晒して絡み合えと?
――更なる悲劇でこの部屋を赤く染めろと言ふのか?
――今日もちっぽけな二人の魂はその部屋で飼い殺されていく
シン・アスカとコトノハ・カツラを一つの部屋に閉じ込めてみた(仮)
目が覚めれば其処には一人の少女がいた。名をコトノハ・カツラ。
目が覚めれば其処には一人の少年がいた。名をシン・アスカ。
お互いは何故此処に居るかは解らないままに名を交わしていく。
男は言う。自分はザフトと言う軍組織に所属しておりミネルバという戦艦に乗っていた。
モビルスーツと言う兵器のパイロットで戦いに敗れた後、意識を失いここに居たと。
女は言う。自分はある学園生活を送っていた中、
嫌な日々が続いていると気が付いたら此処に居たと。
接点もゆかりも無い男と女。取り合えず部屋を二人で調べる事にした。
カメラの様なモノは発見出来ない。テレビも時計も窓も無いから時間もわからない。
ただ、キッチンの冷蔵庫には大量の食材が入っており、
数週間は生きながらえることは可能だった。
不思議なメモを発見する。冷蔵庫の扉にあった。
『食べたいモノがあったら書いて下さい』と一枚張ってあり、隣にはホワイトボードがあった。
試しに、御飯と描いてみると冷蔵庫の保温庫の中にごとっと音がなる。
扉を開ければ、ほかほかのあたたかい御飯が一膳存在していた。
シンの方が毒見として試しに食べてみたら普通の白米であった。
コトノハが食べ終わったそれと洗い食器棚に戻せばその食器は消えていた。
クローゼットを見つける。同じ服が何着もあったのと一冊の服や雑貨のカタログがあった。
同じくコレにも欲しかったら丸をつけて下さいというメモがあった。
試しにひとつの服に丸を付けてみるとクローゼットの中に音がして、
開けばその印を着けた服があった。
「何がしたいんだろう?」
「さぁ? 私には」
「少なくとも俺と君は共通点も無いし面識も無い」
「そうですね。ん、SOUと言う映画で行き成り部屋に閉じこまれて選択を迫られると言うのは見た事があります」
「ん? 俺は知らないな。サイコホラーってやつか」
「はい。3作目まで確かやってて過激な描写からR-15指定になったと聞いた事はあります」
二人はしばし考える。拉致監禁したとしたら二人とも動機が思いつかない訳ではない。
コトノハは御嬢様で家には潤沢な資産があり、身代金としてはかなり高くの額が見積もれるだろう。
シンもエースパイロットであり政治的利用にも内部の技術面でも、
色々と情報が聞き出せるのかもしれない。
けど、それを二人とも部屋に閉じ込めるというのが線が結ばない。
人質を一まとめにするというだけのなら話が早いが、そもそもとても同じ世界の人間とは思えない。
つまり、違う世界から一人一人の人間を今此処に連れ去られた事になる。
その様な力がある存在が今更何が欲しいと言うのだろうか? 技術? 金?
そんなモノは周りくどい事をしなくてももっと直接的に自分で手に入れられる筈だ。
となると、結果行きつくのは嗜好としての同居と言う環境の観察。
「俺達二人が此処で何かするのを見たいって事かな」
「結論で言えばそうとしか」
「趣味が悪いつーか。ペットか何かと勘違いされてるつーか。
カメラも無かったけどどうせ何かの方法で覗いてるぜ」
「……そ、それじゃトイレとかお風呂も!?」
「俺は気にしないけど、女の子は確かに辛いな。いや、そもそも人間かも解らないけど……ん?」
天井からメモ一枚がひらひらと落ちてくる。
無機質な筆跡。
恐らく機械でタイピングされた文章が載っており
『そういう変態性的嗜好はありません。御風呂もトイレもご自由に』
と書かれていた。
つまり、この二人の会話や行動、
仮にAと言うコレを仕組んだ存在に把握されているという事になる。
二人は顔を青ざめてしばしの間叫びまくっていた。
早く出せ、何がしたいんだ、この変態野郎、嫌ぁっと言う叫び声。
その声が空しくも部屋の中を乱れ飛んだ後、一気に沈黙が連なっていった。
それからメモによるフォローは一切無かった。
二人は喉がからからになったとその場へとへたり込む。
冷たいコンクリートが暑くなっている体の熱を吸い取り、ソレと共に二人も冷静さを取り戻して行く。
どんっと大きく床をシンが叩けば、コトノハがそれに僅かに怯えている。
その様子を見てはっと手を隠して気恥ずかしい素振りを見せるシン。
「ご、ごめん。怖がらせちゃって」
「いえ、良いんです。こんな状況で冷静になれって方がオカシイですから」
気遣いに僅かに応えるコトノハだったが相手の凶暴さを感じさせる一面に少し警戒をしていた。
彼女も10代の女性である。男と閉じ込められて怖がるのは必然。
まして彼女なら……彼女だからこそだ。
それを知らないシン。怯える目に自分のした事が後悔に繋がる。
目を伏せたままぎゅっと自らの拳を握り締めた。
コンクリートを叩いた事よりも、今は警戒させた後悔の方が胸に痛く染み渡っている。
怯える彼女に世界の大きな波から守れなかったステラ・ルーシェが重なると涙腺が僅かに緩んでく る。
暫しの沈黙。
二人だけしか居ない環境で目を合わせる事も無くお互いの存在を受け入れられない。
心の傷がお互いの溝を掘り進もうとしていたが二人はそれではダメだと思った。
このまま疑心暗鬼で居たら恐らくどちらかを傷付けるか殺してしまう。
一人になんてなってしまったら益々心が壊れて言ってしまう。
昔の心の傷痕に捉えられたまま、また後悔を重ねていくのか? そんな人生のままなのか?
葛藤する思考とスライドショーの様に蘇る痛々しい過去を振り払う様に二人は背け合っていた顔を向け合う。
『「あ、あの」』
その瞬間、二人の男女の視線と心が向かい合い、声が重なった時瞬間に物語の幕が上がった
続く
最終更新:2009年03月01日 23:14