また今日も二人が寝る時間がやってきた。
広いベッドで二人が少しくらい離れてもなんら問題がなかったのでお互い節度を守るために背中を相手に向けて寝ていた。
それが習慣になっていたのだ。
また今日が過ぎ明日がはじまる・・・
言葉「シン君」
シン「なに、言葉」
言葉「あのね、私・・・昼間本を読んだの。ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』」
シン「あの本か。オレも昔読んだことがあるよ。でもなんでわざわざ今その話を?」
言葉「最初のジョナサンが幽閉されてしまう状況。アレに今の自分を重ねちゃって・・・
伯爵以外に人をまったく感じない不自然、妙な不便さを覚える状況と相手のもてなしが生む不協和音・・・
悠久不変の天地が奏でる静寂の音」
シン「そうか。しかしそれとこれとは話が別じゃないか?オレは今この状況に誰かの悪意は感じないし」
言葉「シン君は強いんですね。でも私は違うんです。私もこの状況に悪意は感じません。
でも不安なんです。その理由は自分でもはっきりとはわかりません。シン君、わたし・・・」
ことばを止めると言葉はシンの方に向き直り腕をシンの首にまわし体をあてた。
言葉「わたし、あの本読まなければよかった。今心細くて。だから今日だけは、お願い・・・」
シン「駄目だよ」
シンはその手をふりほどいた。
言葉「えっ・・・」
わずかに滲む涙。
シンは言葉に向き直ると右手を言葉の背中にまわし体の下側になっている左手を
言葉の右手とつないだ。そしてそっと抱き寄せた。
シン「一人で頑張っちゃ。一人で心細いのに一人で解決できるわけないだろ、全く」
言葉「ありがとう、シン君」言葉はそう言うとシンの胸に顔を埋めた。
シン「言葉、泣いてる・・・?」
言葉「シン君が最初いきなり『駄目だよ』なんて言うからです」
嘘だった。
その夜二人ともとてもいい夢を見た・・・
最終更新:2009年02月26日 22:43