シン「ふ~、いい湯だった」
シンは浴衣にその火照った体を任せ廊下を歩いていた。
少々長湯だったかな?
言葉「あれ、シン君も今上がったところなのですか?」
背後から言葉が歩み寄る。
シン「シン君も・・・ってことは言葉も?」
浴衣姿の言葉と並びながらシンはたずねた。
言葉「ええ、いいお湯でした~。湯上りの牛乳をはやく飲みたいです」
シン「やっぱり腰に手をあてて瓶のをごくーっとやるの?」
言葉「まさかそんな」
などと言ってるうちに居間に着き卓上の牛乳をコップに注ぐ。
シン「それにしても入りすぎたかな。最近涼しくなってきたから扇風機しまっちゃったのは失敗だったか」
言葉「シン君、体熱いの?だったらコレ、使ってみて。私の鉄扇」
シン「いいのかい?じゃあ遠慮なく」とやや無遠慮に開き煽ぎ始めるシン。
言葉「あっ、その持ち方は駄目、シン君。末広がりの部分は手のひらにおさめて」
言葉が白魚のような指をそえてシンに持ち方を指導する。
まだほのかに湿るその髪はシャンプーのいい香りがした。
言葉「こうやって指でしっかり押さえ込んでね」
シン「ああ、ありがとう。言葉ってこんなもの使い込んでいるのかい?」
言葉「はい、武術に必要なしなやかな力強い手首になるんです」
そう言いながらもう一本鉄扇を出す言葉。
言葉「シン君、もう少しゆっくり・・・そう。ゆるやかな風を長時間ゆったり浴びるのがいいんです」
そう言いながら反対側のソファーに腰掛け目をつぶったうっとりとした表情で風を楽しむ言葉。
シン(そう言ってくれたのは嬉しいんだけど・・・)
シンは正直困惑していた。コーディネーターである彼の体温の自己管理機能は優れたものだ。
だから強めの風を短時間あびれば十分だったのだ。
シン(しかし、こうして見ると・・・)
言葉の姿はなんとあでやかなことだろう。
艶がかかった長い黒髪は風になびくことなく 垂れ下がり、頬はほんのり上気している。
そして目は閉じられているが安らぎを伝えていた。
形の良い首筋から下を見るとさっきよりも少し広く開いた浴衣が豊満な胸を程よく強調している。
足は綺麗に並べられ膝から下を露出させ外気にさらしていた。
と・・・言葉がわずかに力んだのだろう。
浴衣がまくられふとももと浴衣とは別の色の 布地がわずかに見えたのでシンはあわてて目をそむけた。
シン(しかしこういうのを風情があるというのだろうな。ザフトなんかではこういうのはまず有り得なかったし。
コーディネーターってなんかさみしい人類だな)
シンはしばしの間昔を思い出した。
アカデミーで講習に来た金髪の軍人<注1>が言ってた。
先の大戦後ザフトの対人講習の重要性が見直され現役の再教育は勿論のこと新人のカリキュラムも大幅に変更が加えられたとか。
その人は悲しい目をしながらわざとらしいくらい明るい・・・でも震えた声で言ってた
「オレみたいに敵といい仲になったりしたらお偉いさんも困るってことだな」
でも今だから思う。ただでさえ人間性が欠落しやすい軍隊、風情を楽しむ余地も
ない人たちがおこす悲劇をその人は目の当たりにしてきたんだろう。
だからあんなに辛そうだったのだ<注2>
言葉「ン君、シン君、起きて!!」
シン「!?あっ、いやちょっと寝てた。ありがとう起こしてくれて」
ナチュラルと生活しなければ分からない人間の機微、それをこの先もっと教わっていくのだろう。
シン「ありがとう、言葉・・・」
もっとこの人からいろいろ教わりたい・・・
おわり
注1:ディアッカ 注2:真相はアレ
最終更新:2009年02月26日 23:49