戦いは終わった。俺達、ザフトの敗北と言う形で……
俺はまた亡くしてしまった……
家族や故郷を初めとした…親友や共に戦って来た仲間に守りたかった人やこれまで自分が信じて来た正義(モノ)…それらを全てを俺は亡くした。
「一緒に戦おう……」
「それが俺達の戦いだ。」
俺から全てを奪った男は手を差し伸べながら何も知らないような涼しい顔で俺に言う。
当然、俺はそんな事は死んでもごめんであり、その男の手を突っ撥ね、その男から背を向ける。
「元」上官の頭の毛が薄い男が何か言っていたが俺は気にしなかった。
それから間もなく、俺はオーブからプラント政府へと強制連行されて行き、旧デュランダル派の全責任を負わされることとなり、処刑が決定となっていた。
それに俺はあのフリーダムを唯一落としたパイロットであることからあのピンク頭の信者達の言う「聖剣伝説」に汚点をつけた存在は何であろうと消し去るべきだとなんたら言っていた。
全く、もう故人の犯した罪をそれに関係している人間を殺すことで終わらせるとはこれじゃプラントも末だな。
それに「聖剣伝説」じゃなく、「邪剣伝説」と称したほうが後の世のためだと俺は思うがな……
「最後に言い残すことはありますか?シン・アスカ。」
この女は相変わらず人を見下したような眼で見るな…
あの底なし沼のような眼で見られるだけで腹立たしくなってくる。
「ふん、さっさと始めろ。このピンク頭が……死ぬまであんたのアホずらを俺は見たくもないんだよ。」
そして、俺はその果てには住んでいた世界からも切り捨てられた。
信じていた人の忌むべき遺産…神聖なる歌姫とその騎士達の手を払い、愚かな反逆者と称され、俺は処刑され、死んだ……
……その筈だった。
次に意識を取り戻した場所はあの世ではなく、見知らぬ場所だった。
しかも体中…両腕から腹部や足にかけて痛みが襲われている状態だ。
部屋は清潔感を漂わせている事からここは何処かの病室であることが理解できた。
それよりも自分は何故、生きている?間違いなく自分は確かにあの時、死んだ筈。
あの時、公開処刑場でクライン派に歯向かった者の見せしめと称して、クライン派の兵達により、銃殺刑で俺は殺された。
体を次々に撃ち抜かれた時の感覚はまだ覚えてる……なのに自分は訳が分からない場所で一命を取り留めた。
それから間もなく一人の人物が入って来て、その人物の特徴に不快感を覚えてならない。
「あ……気がついて良かった。」
そう、似ていたからだ……特に髪が……あの金髪は死んだ親友と俺が守れなかった星と言う名を持っていた少女に……
話によると俺はこの都市の郊外に突如できた巨大なクレーターの中央で発見されており、発見された当初は死んでいてもおかしくないほどの重傷の傷を負っていたとの事だ。道理で体中に何かしらの治療を施された跡がある訳だ。
正に九死に一生を得たと言う訳らしいが、俺にとっては余計な事でしかないと思っていない。
普通ならば、生きていて良かったと思うであろうが、俺はそちら側の人間ではない。
寧ろ逆であった、何で死なせてくれなかったのかと思う。逆に生き残っても喜んでくれる人も泣いてくれる人もいない。
俺と言う存在を必要としてくれる人は既に誰一人としていない、誰にも必要とされないのに生きているのは俺にとって、拷問以外の何でもなかった。
しばらくその女の話を聞いていて分かった事は、ここはコズミック・イラではなく、ミッドチルダと言う世界らしい。
そうでもなければ、A級戦犯である俺は殺されている筈……
後、元の世界に戻るのはどうとか言っているが、もうどうでも良くなってきた、俺はあの世界では殺された。
それは誰にも否定できない事実だ。
万が一、戻れた所で政府に捕まれば、プラントに引き渡され、また処刑されるのは分かりきっている。
それからしばらくの間、その女は仕事が終わった時間になると毎日の日課のように俺の病室に訪れて来る。
話の内容は様々だ、家族のこと、仕事のこと……一々上げていたらきりがない。
俺はその女に対して適当な返答と相槌を返す程度でしか喋らなかった。
「あ、そろそろ面会終了の時間みたいだから私、もう行くから。明日も来るから。」
「……えぇ。」
正直、この女はステラと色々似すぎていて、見ていて嫌な感じしかしない。
この女もあいつらと同類だ。俺から全てを奪ったあいつ等と……「可哀想」と哀れんで同情する振りをして、内心はそれを笑っている。
ある日、俺はあの女と顔を合わせるのが嫌になる拒否感とかが頭の中でぐちゃぐちゃに混ざり始めて来て、もう全てが嫌になって仕方なくなって来ていた。
俺はあの女が見舞いの品として持って来た果物を剥く時に使っていたナイフでリストカットする。
理由などない、ただ死にたかった。それだけである。
そして、意識を取り戻すな否や行き成り、あの女から平手打ちを受ける。
女の表情からは明らかに怒っていることが伺えた。
「何で……何でそんなことをしたの!?」
「……あんたには関係ないだろ。俺が死のうがどうしようが……」
「関係なくないよ!!私が君を助けたのは君に生きていて貰いたいから……」
どんなに良い言葉を並べても所詮、ただの綺麗ごとでしかない。
やがて、俺自身も耐えられなくなり、とうとう…それは決壊する。
「あんたに……」
「ぇ……?」
「あんたに何が分かる!!元に居た世界で全てを亡くした挙句、生きていることさえも許されずに処刑されて、死んだかと思えば、この世界で死んでもおかしくない状態で発見されて…何で死なせてくれない!何で放って置いてくれないんだ!俺にはもうこの選択しか残されてないんだ!!」
「!!!」
俺は怒りのままに今まで自分が抱えていたモノを全て吐き出す。
全て吐き出し終わった後に気付いたことだが、これは八つ当たりとしか言えない行動だ。
冷静に考えても俺のやっている事はただ、無闇に駄々を捏ねる子供でしかない。
これでは、餓鬼だと言われても反論できない……
しかし、何時まで経っても反論の言葉を並べて来なかった。
そして、気がつくと俺はその女の腕の中で抱かれていて、彼女の啜り泣く声と女の胸の鼓動が伝わって来る。
この女は泣きながら発せられた小さな言葉に耳を傾けた…
「ごめんね………何も……何一つ分かってなくて……本当にごめんね……」
「な……」
女の双方の紅い瞳からは滴が流れ落ちており、その時、俺はわかった。
ああ、この人は本気で俺なんかのために泣いていると……
あれから分かったことがある。俺は俺が気付かない間に他人が信じられなくなっていたらしい。
つまり、俺は今まで目の前に居る…泣いているこの人の善意を平然と踏み躙っていた。
退院を数日後に控えたある日……
病室を訪れた彼女に俺は告げる。
「あんたは俺を生かした、それは帰る場所も行く宛もない俺にとって耐え難い仕打ちだ。その責任は取って貰いますよ?」
言っている自分も馬鹿だと思ってしまう内容に自身で呆れていた。
向こうも「何言っているんだ、こいつ」みたいなことを考えているんだろうな…
そう、思っていた。
「じゃあ、責任を取ってあげるから左手を出して?」
だが、意外なことに彼女は気になどせず、自分の用件を言い。俺はそれに従うように左手を彼女の前に出す。
彼女は俺の左手を握ると何かを俺の薬指に通した。
その俺の左手の薬指には銀色に輝くリングが填められている。
これってまさか……
「私なりのやり方で……ね?」
そう言うと彼女はニッコリと満面の笑みを浮かべながら言い放つ。
見ると彼女の左手にも同じような物が填められていた。
それから約一週間後、俺はこの人…フェイト・T・ハラオウンさんの嫁となった。
最終更新:2009年09月12日 23:43