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『Wの探索/二人で探偵一人分』2 > 2

『手がかりは?』
「”戸川ヨウスケ”」
 本の世界がざわめいた。周囲に浮遊する無数の本から、いくつかの塊がパチュリーの前
へと踊り出る。
『いきなり減ったわね』
「次は、”ウインドスケール”」
『せっかちね。心に余裕がないのかしら』
「ほっとけ」
 パチュリーがぼやく間に、躍り出た本の塊がその大きさを減らす。塊の中からいくらか
が後退し世界へと戻っていった。
『もう少しね。他には何か無いの?』
「…………”WS-09K-097T”」

 塊が減少――否、それはもう塊ですらない。
 パチュリーの前に残ったのはたった一冊。

「『ビンゴ』」
 二人同時に呟いた瞬間に、世界が一気に復帰した。無数の本は地面へ、向けて殺到して
世界そのものが収縮して図書館紛いの本の海へと舞い戻る。
「商品番号。単細胞の貴方にしてはなかなかいい考えね。これは特定店舗の限定商品。こ
れを取扱い、かつまだ襲われていないのは――”ウインドスケール風谷支店”」
「行くぞパチュリー!!」
 言い終わるのを待ちきれぬ様子でシンが駆け出す。今の今まで呆然としていた魔理沙が
慌てて後を追おうとして――パチュリーが座り直して本を開いている事に気付く。
「あれお前は行かないのか?」
「行くわよ」
 本から顔を上げて、紫の瞳を不機嫌気な半眼にしたパチュリー。ただ口調は表情とは裏
腹に、やや愉しげであった。

「だって私達は二人で一人の探偵だもの……不本意だけどね」

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 エンジン音を響かせながら、黒と緑の二色で彩られたバイクが目的地へと滑りこんだ。
ヘルメットを外したシンは赤い瞳で周囲を見回す。
 二度三度、左右に首を振り――見つけた。件の探し人『戸川 ヨウスケ』。やや顔色が
悪いのと、人相が歪んでいたが、間違いなく写真に写っていた人物だ。
「…………戸川ヨウスケ、だな」
 極力刺激せぬようにと心掛け、シンは静かに話しかけた。いきなり問答無用で叩き伏す
のはあまり趣味では無い。相手にまだ理性が残っている可能性もある。
「お前も、ここの社員か……?」
 低い声。威圧感というよりも何か底冷えをするような声で男は喋る。
「ならば」
 シンに有無を言わさず、男は左腕の袖をまくり上げる。そこに浮き出たのは刺青の様な
印。何かを差し込むためにあるかのような印。

「燃えろ…………!!」【MAGMA】

 インサートされるマグマのガイアメモリ。メモリ名のヴォイスが響き渡ると同時に男の
身体が急速に変質を始めた。身体の中へとメモリが沈み込んでいき、反して中から噴き出
るかのように炎盛る。
 一瞬膨れ上がった後に、戸川ヨウスケは完全に変貌を遂げた。燃え盛る炎のような衣装
と、まるで溶岩と思しき表皮を持つ超人――マグマドーパントへ。
 シンは必要最低限だけ後退して、噴き出た炎をやり過ごす。前髪が若干焦げ付いていた
が、それを一度だけ手で払って男を睨み付ける。

「止めてやる。俺が……いや、俺達がな。行くぞパチュリー」

 右手には一つのガジェット。赤と銀で構成されたそれを腰の位置へ。瞬間的にそれから
帯が伸び、腰へと巻き付く。ガジェットは一瞬でベルトへと変貌していた。

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 腰に出現したベルトを見て、パチュリーは読んでいた本を閉じた。そのままスリッパを
鳴らしながらテクテクと歩いて部屋の中央へ向う。
 そこだけ本が少なく、部屋で最も開けた空間になっている。

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 シンが懐からメモリを一本引き抜いた。見せつけるように翳しながら、スタートアップ
スイッチを叩く。
【JOKER】
 ガイアウィスパーが切り札を示す。

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 パチュリーの手には何処からともなく取り出した緑のメモリ。
【CYCRONE】
 ガイアウィスパーが風を示す。
「……おい、それってガイアメモリか!?」
 結局シンについて行かずとどまってパチュリーを観察していた魔理沙が声を上げるが、
パチュリーは意に介さない。



「「変身」」



 二つの場所で二人が同時に声を上げた。
 まずはパチュリーがダブルドライバーへとサイクロンメモリをインサートする。差し込
まれた瞬間にサイクロンメモリは消失する。半眼だったパチュリーの瞳が完全に閉じられ
――そのままその場に倒れ込んだ。

「お、おーい!? どうしたー!? どうなってんだ――!?」

 魔理沙は困惑しつつ呼びかける。けれども倒れ込んだパチュリーは答えない。答えが無
いから状況の説明は得られない。とにかくパチュリーの元へ行こうと魔理沙は柵を飛び越
えた。黒いスカートがわりと際どく捲れ上がるが、誰も居ないのであまり問題は無い。

 WWW

 シンの腰に鎮座するダブルドライバー、その右側のスロットに緑のメモリが出現する。
即座にシンはそれを押し込んだ。装填音とともにその胎動音が鳴り始める。そして今だ手
に会った黒いメモリを左側へとインサート。
 二つのメモリが差し込まれたスロットに交差した手をかけて、開く様に――それを一気
に展開する!

【CYCRONE / JOKER】

 繋がるヴォイス。ベルト中央で緑と紫の二色が輝いた。その迸た光がシンの身体に巻き
付く様に絡みつき変質させる。変質は数瞬。
 そして暴風が吹いた。周囲の風車が狂ったように回転を始める。その暴風の中で悠然と
立つモノが一人。緑の右半身。黒の左半身。身体の右側ではマフラーが風に吹かれて揺れ
ている。

「『――さあ、お前の罪を数えろ』」

 右腕を一振りした後、左手で力強くマグマドーパントを指さすのは二色の超人。吹き荒
れる暴風はマグマドーパントの炎を剥ぎ取り、更にその身体すらも後方へと押しのける。
「うううらああああ――!!!」
 二色の超人――Wが一気に加速した。肉薄。そして蹴り。叩き込まれると同時に重たい
打撃音。次いで拳。連激して叩き込まれる。マグマドーパントに体勢を立て直す暇は与え
ない。数十回連続して拳を叩きこむ。
「――っだりゃあああ!!」
 蹴撃。右、左、再度右。そして力を一層こめて、深く重く、突き出すように一蹴り。戦
い方は華麗でも流麗でも無い。もっと粗雑で荒々しい。
 一際強い蹴りを叩きこまれ、マグマドーパントの身体が浮い――否飛んだ。吹き飛ぶ様
に宙を舞い、地面を数度転がった。
 相手が通常ならばこれで十二分に必殺。けれども相手もまた超人である。痛みに呻きな
がらもマグマドパントは立ち上がり、獣のような咆哮を上げた。その身体から炎が猛烈に
噴き上がった。鬣の様になびく火炎は弾の形状に。そのまま幾発もの弾丸としてWへと殺
到する。横っ跳びに回避。ただ数発やり過ごした程度で意味は無い。雨の様に降り注ぐ火
炎。やがて避けきれぬと判断したのか、シンんは腕で顔を庇うように火炎を防ぐ。
「あっつ、あちああっつ! くっそ、どうすんだコレ!?」
『…………』
【LUNA】
 Wの”右半身”がシンの意志とは別の所で動く。ダブルドライバーのスロットを起こし、
手早くサイクロンメモリのを引き抜いた。代わりに取り出した黄のメモリをスタートアッ
プ。そのままメモリをインサートしてスロットを倒す。

【LUNA / JOKER】

 緑だった右半身が一瞬で黄色へと変貌する。示すのは幻想。体色が変わると、Wの右腕
がまるで鞭のように”しなった”。殺到する炎弾をまとめて”叩き落とす”。
『やっぱりこれ気持ち悪いわね』
「じゃあ変えるなよ……」
 ぼやきつつも攻めへ転じた。自在に伸びる手足に距離はもはや関係が無い。振り抜いた
脚は鞭のように伸びしなり、マグマドーパントの身体へ打撃として叩き込まれる。一度の
スイングで数度の打撃。身体を回転させて更にもう数撃。また回転して更に数撃。右腕が
伸びる――マグマドーパントの頭を鷲掴みにして引き寄せ――放り投げた。
「っと!!」
 上へと右脚を伸ばし、撃ちこむような蹴りを叩きこんだ。重低音と共に打ち込まれた一
撃で、マグマドーパントが打ち上げられるように上昇。そして叩きつけられるように落下。
『お膳立てはしてあげたわ。で、どうするの?』
「決まってる――メモリブレイクだ! 行くぜ!!」
『あ、そ』

【CYCRONE / JOKER】

「いちいち盛り下げるヤツだな……とにかく行くぞ!」
 選択メモリ(フォーム)はサイクロンジョーカー。ダブルドライバーがフォーム名を
コールすると右半身が黄色から緑に戻る。
 フォームチェンジは即座に完了、左のスロットからジョーカーメモリを引き抜いた。イ
ンサート先は右腰のマキシマムスロット。そこへジョーカーメモリを叩き込む。

【JOKER――MAXIMUM DRIVE】

 再度周囲に暴風が吹き荒れる。マグマドーパントが風に叩かれ一時的に身体の自由を失
った。更に巻き起こった風は周囲の物体を押しのけるだけには留まらない。その中心に立
つダブルの身体を宙へと浮遊させるかのように飛翔させる。

「ジョーカーエクストリーム!!」
『……ジョーカーエクストリーム』

 掛声が盛大にズレた。が、技自体は成立した。宙高く浮き上がったWの身体がマグマ
ドーパントめがけて一直線に加速。更にもう一段加速した瞬間、その身体が中央で分割さ
れた。緑と黒の二色の砲弾が、マグマドーパントの身体に左右同時に突き刺さる。直撃の
瞬間、大きなインパクト音が周囲に響き渡った。
 爆炎と共に吹き飛ぶマグマドーパント――その表面が割れるように砕け散った。超人と
しての表皮が剥がれ堕ち、人間としての姿を取り戻した戸川ヨウスケがその場に崩れ落ち
る。傍らには砕け散ったマグマのメモリが落ちていた。
「パチュリー……」
『何よ。倒したからいいじゃない』
 シンの不満げな声にも相棒の魔女はどこ吹く風である。事実そうであるから仕方がない。
メモリブレイク――人間からガイアメモリを引き剥がす事には成功した。後はしかるべき
機関に戸川ヨウスケを引き渡せばいい。
 万事解決とは言い難いが、それで解決ではある。これ以上の被害や犠牲は出ない。
「こういうのは勢いが大事だろうが……さて、後は警察だな。ったく依頼人になんて説明
するんだ、これ」
『そこら辺は任せたわ。頼りにしてるわよ相棒』
「面倒事の時だけ相棒呼ばわりしてんじゃねえよ」
 一人で会話は二人分。Wは会話しながら倒れ伏した戸川へ歩を進める。こういうケース
は既に何件も経験している。後は知り合いの刑事――グラハム・エーカーにでも手筈を整
えてもらえばいい。ただあの刑事は都合はしてくれるがそれ以外が色々と厄介なのが困り
ものである。
「……!? 何だぁ!?」
 Wが戸川ヨウスケに辿り着く前に、周囲の地面が盛大に振動を始めた。シンが思わずよ
ろめきながら驚愕の声を上げる。振動は収まらない、どころか一層激しさを増す。
「何だありゃあ!?」
 突如轟音と共に地面が弾け飛び、そこから巨大な頭が顔を出した。それは一言で例える
ならば恐竜の頭だ。そんな酷くおかしなモノは地面を砕きながら進行する。

 ――戸川ヨウスケ目指して

「……! オイ、止めろ!!」
 相手の意図に気付いてシンは叫ぶ。慌てて駆け寄るも一手遅い。巨大な口が開かれ、恐
竜の頭が戸川ヨウスケにかぶりつく。そこでダブルが辿り着く――恐竜の頭が反転した。
頭の反対、つまりは尻尾。スイングされたそれが駆けよって来たWに叩き込まれる。
 不意打ち、そして見た目通りの重い一撃をもろに受け、そのまま盛大にすっとばされて
転がった。ごろごろと地面を転がった後、柵に衝突。後頭部でガーンと良い音が鳴った。
『……大きいわね。リボルギャリーが要るんじゃない?』
「わかってるっての、クソッ!!」
 取り出したガジェットを手早く操作する。携帯電話の形をしたそれのキーを叩く。

 WWW

「おーい。大丈夫かー、オーイ」

 一方本の海。いきなり倒れてピクリとも動かなくなったパチュリーの身体を前にして、
魔理沙は困惑の声を上げる。
「参ったぜ……何がどうなってるのかさっぱりわからん。これはあの探偵まがいをもう一
度締め上げる必要があるな……ん?」
 パチュリーの横で胡坐をかきつつ魔理沙がそう呟いていると、空間内に不可思議な音が
鳴り響き始める。

 ――こあー! こあー! こあー!

 例えるならサイレンか。部屋にそんなびみょーに間の抜ける音が響き渡ると同時に、ど
こからともなく無数の小さな物体が走り出てくる。小さな――人形位の大きさしかない少
女の形をした何か。無数にわいて出たそれは凄まじいスピードで周囲に散乱する本を片付
けていく。
 正確には左右に押しのけているだけだが。
「何だ――!? 今度は何だ――!?」
 中央の魔理沙は、妖精っぽいのがたくさん部屋中を駆け回るというそんな無駄にメルヘ
ンな光景にただ困惑するのみである。
 未だ本の片付けは途中だが、そこで新たに振動音が加わった。開けたスペース――ちょ
うどパチュリーと魔理沙がいる所の左右が迫って来るように起き上がる。
「うわ……何かヤバそうだぜ、これは逃げるに限……っと、コイツ……結構重……!」
 魔理沙はパチュリーを引っ掴み、慌ててその場から立ち去ろうとする。だが予想外にパ
チュリーが重かった事で一瞬まごついた。即パチュリーを諦めて自分だけ脱出しようと走
り出す魔理沙だがもう遅い。左右から迫っている壁は既に上下左右のほとんどを埋め尽く
していた。それでもまだ残る僅かな隙間に魔理沙が突っ込む勢いで飛びこんだ。。

 前輪が、後部のリボルバーキャリーが、展開、変形、装着。部屋の一部だったものは、
僅かな間に大型の四輪車両に姿を変えていた。

 中に居るモノの事など構わずに、大型車両がエンジンの爆音とともに急発進した。壁に
しか見えなかった前方は次々とシャッターの様に展開して道を空ける。
「うおー!? 動いた―!? 何だ――!? っていうかこれはやばいぜ――!!」
 結局脱出に失敗して未だ中に取り残されている魔理沙が叫ぶ。ただ中に居るだけならい
いが、今まさに閉じようとしているところに下手に突っ込んだせいであろう。衣服の一部
が挟まってしまい、いわゆる宙吊りの体勢であった。

「うわぁぁぁん! おろして――――――!!」

 重力にしたがって垂れさがって来るスカートを必死に抑えつつ、爆走するリボルギャ
リーの中で魔理沙は叫ぶ。
 ――仮面ライダーW!

「……この街は俺が守る。誰も泣かせないために」

「あやや。今日びそのようなはぁどぼいるど精神ではやっていけませんよ、探偵殿」

「そんなんじゃ貴方、喰われるわよ」

「お父様、リボンズ・アルマークさんですわ」

「もういい、俺一人でやる……!」

「たんてええぇぇ――! お前さっさと助けろ――――!!」

「半分借りるぜ、お前の力……!」

『Wの探索/街を守るもの』

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最終更新:2009年09月15日 08:13
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