月周辺で無数の光が飛び交う。
「もうやめろ! お前は未来まで殺す気か!?」
「知った風なことを!」
月面で激しくぶつかり合う二機のMS『ガンダム』。
運命を背負った真紅の翼を広げた機体―デスティニー―と、正義を宿す赤いボディの機体―インフィニットジャスティス―。
「思い出せ! お前が本当に欲しかったのは何なのか!」
「アンタに何がわかる! いつも上から見下ろしてるアンタに!!」
ジャスティスがデスティニーの持つ巨大な剣を折る。デスティニーにもう武器は無い。
「過去に縛られて戦っても何も還っては来ないんだぞ!」
「それでも俺は戦うと決めた! 世界を変えるために!」
デスティニーが突っ込む。
「もうやめてシン! アスランも!」
二機がぶつかる刹那、もう一機ガンダムが間に割り込んできた。
「「!!」」
急制動をかけるデスティニー。しかしスピードが落ちきらない。ジャスティスは前に出てその攻撃をシールドで受け止める。
「この…馬鹿野郎!!」
そのままデスティニーを弾き二本のビームサーベルで切りかかる。デスティニーは即座に反応、相手の腕を掴み掌に内蔵されたビーム砲で破砕する。しかしジャスティスは脚部のビームブレイドを展開した蹴りでデスティニーの右足を切断、シールドに装備されたビームサーベルで首から左肩にかけてぶった切る。
「うわぁぁぁ!!」
月面に叩きつけられるデスティニー。そのコックピットで無数の破片により血まみれになったパイロットが叫ぶ。
「俺は認めない! アンタも…オーブも…オーブを必要とする世界も!!」
それを見やってジャスティスは飛び去っていく。割り込んできたガンダムもしばし逡巡した後、ジャスティスを追っていった。
宇宙要塞メサイアが崩壊していく。ZAFTの最後の砦が陥落したのだ。それを朦朧とする意識の中で見るパイロット。
「…俺は…結局、何も守れなかったのか……」
割れたバイザーからは顔の右側からの出血がこぼれている。右腕は千切れてはいないものの全く感触がない。呼吸もしにくい。胸には大きな金属片が刺さっている。さらにコックピットブロックに亀裂が入っているらしく、空気の抜けていく音がする。
「俺も…ようやく……死ねる…か…」
(そうか…。俺は、死にたかったのか…)
自分で言って気付く。自分が望んでいたことを。
家族を失ったあの日、自分だけが生き残った。
戦場で多くの命を奪い生き延びてきた。
守ると誓った少女が死んだのは自分と出会ったから。自分が生きていたから。二年前に死んでいれば少女は死ななかったかもしれない。オーブが、アスランが助けてくれたかもしれない。彼らは『守る』ために戦い、現にこの戦いでも不殺を貫いた。
自分は家族と一緒に死んでいるべきだった。否、そもそも生まれていなければ家族も、妹も死なずにすんだかもしれない。
自分は誰かの命を吸って生きてきたのではないだろうか。
だとしたら自分は、シン・アスカという人間は―
「生きてちゃ…いけなかったんだな……」
C.E.73、ユニウスセブン落下に始まる戦争はオーブ首長国連合の勝利により終結。
後日、各国の軍を再編成し地球圏統一連合軍を発足。
オーブ主導のもと世界は平和に向かっていく。
そして、理想も信念も生きる理由さえ失ったシン・アスカは―
機動戦士ガンダムSEEDDESTINY-SIN In the Love-
PHASE-0「弱者の見る夢」
「朝ですよ。起きてください」
ゆさゆさ。
「もう朝です。遅刻しちゃいますよ」
ゆさゆさ、ゆさゆさ。
「う~ん…明けない夜はないさ…」
布団の中に頭を隠す。そして二度寝。
「朝ごはん食べる時間がなくなっちゃいますよ」
ゆさゆさ、ゆさゆさ、ゆさゆさ。
「…私が起こす。前ゲームしてたときにいいのがあった…」
「で、でもアレは…」
「…シャーリィハァハァ」(寝言)
「ヤッテクダサイ」
ピョン、クルッ、ドスゥッ
「ゲフヒャッハー!?」
寝ていた少年はくの字に折れ曲がりよくわからない悲鳴を上げる。
「おごご…。な、何が…ってプリムラさん、あなたナゼに『ク○ックシュート』みたいなポージングを…?」
少年は自分の上にジャンピングかかと落しを決めた後的な体勢のグレーの髪をツインテールにした少女―プリムラ―に問いかける。プリムラは無表情な顔で、
「K.O.?」
「されてたまるかっ! ゲームとかアニメの必殺技真似するのやめなさいっていつも言ってるでしょ!? 『ミル○でポン!』の役はもういいの!」
「シ○プリの枕カバー使うのイタイっていつも言ってるでしょ。 出演してないんだから」
「何も知らないくせに…! これには…、これには…!」
枕を抱きしめる少年。そこに彼の体を揺すっていた明るい橙色の髪の少女が近寄ってくる。
「これがリムちゃんなりのスキンシップなんですよ。あ、口から血が…」
少年の口もとについた血(先程吐血したもの)をハンカチで拭う。それを見たプリムラが言う。
「あとで舐めるの?」
「シッ」
指を立て『静かに』と制する少女。幸い少年は気付いていない。
「なんか朝は昔よりハードだな…。ま、とりあえず…おはよう、楓、プリムラ」
二人の少女は同時に、
「おはよう、シン」「おはようございますシン君」
初音島の芙蓉家に居候していた。
最終更新:2009年10月22日 15:56