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ムキドー多重クロス-02

力が無いのが悔しかった…
守れない自分が許せなかった…
だから、力を求めた。そして力を手に入れた。
それでもあいつらには…『自由』と『正義』にはとどかなかった…
俺はまた何もできなかった…自分の言葉を証明することさえ…
なのに俺は…まだ、生きている……

機動戦士ガンダムSEEDDESTINY-SIN In the Love-
  PHASE-1「偽りの家族」

「あ~いって。小さいのになんて威力とパワーだよ、あいつは…」
腹をさすりながらシンは階段を下りる。そしてトイレのドアを開ける。
「!?」
「…?」
中にお団子頭の少女が一人。トイレットペーパーに手を伸ばしていた。少女の顔がみるみる赤くなる。
「…兄さん…一秒あげるから弁解をどうぞ」
「すm」
廊下の天井に突き刺さるシン。家を揺らす轟音にプリムラは居間で一言。
「またらき☆すけか…」

「99パーセントは俺が悪いけどさ、鍵を閉めてない由夢にも非はあると思うんだ…」
「私に非があるとしたら兄さんを警察に突き出していないことね」
楓の作った朝食を食べながらの会話。本日の話題は『らき☆すけは犯罪か否か』。
「ちょっ、ひどくね!? 音姉、この子昔の同僚より容赦ないんだけど!?」
「う~ん、でもエッチなのはいけないことだよ」
「メッ」とシンをかわいらしく叱るのは朝倉由夢の姉である朝倉音姫だ。頭に桜色で桜柄のリボンをしている。ちなみにシンより一歳年上なので『音姉』と呼ばれている。
「六対一。では兄さんは犯罪者ということで…」
「まだ二人じゃん!?」
「プリムラはどう思う?」
「どっちでもいい…」
ドカ盛りのご飯を頬張りながら答える。
「じゃ賛成で「ええ!?」 楓さんは…、兄さんには強く出れないから賛成ね「何で!?」 アイシアさんは?」
由夢はアッシュグレーの髪に緑色のリボンをした小柄な少女に聞く。
「シンは犯罪者なんかじゃありません! ただちょっとスケベで変態入ったシスコンなだけです!」
待ってましたとばかりに豪語するアイシア。しかし反対意見にはなっていない。
「アイシアさん、日本ではそういう人を犯罪者(予備軍)と言うんですよ」
「そ、そうなんですか…? じゃあシンは…」
「待ってぇぇぇっ! ()の中が大事! ()の中ををちゃんと発音して!」
由夢は知らんぷい。純情なアイシアはすっかり由夢に騙されて(?)シンを泣きそうな顔で見ている。
「じゃあぼくもシン君は宇宙漂流の刑で」
自分のお皿からシンのお皿にほうれん草をガンガン移しながら金髪のアイシア同様ロリ体型の少女が朗らかに言う。
「もう刑罰の話かよ!? そしてほうれん草を丸ごと俺の皿に移すな!」
「シン君に分けてあげてるんだよ。お姉さんの優しさ☆」
「ハッ、『お姉さん』だと? 冗談は3サイズだけに…裂ける! 柱からぎりぎりの長さの輪ゴムのごとく伸び縮みするバインドに体を真っ二つに両断される!!」
二つの黄色い輪のようなものによって目一杯両腕を引っ張られるシン。しかし柱は軋む音さえ出さない。耐震強度はバッチリだ。
「結局六対一になったわね」
「それよりもタスケテー! このままじゃ家の中が殺人現場にぃ~!」
「それは困るね~」
そう言って金髪の少女は黄色い輪―バインドと呼ばれる魔法―を解除する。
「…朝一でHPが赤表示だ……」
誰にも聞いてもらえない呟きを残し左手で箸を取るシン。ほうれん草も残さず食べる。
「あっ、今日ぼくミッドチルダに用事があるから晩御飯いらないよ、っていうか帰ってこれないかも」
「…今度発表される新型の件か? どうして芳乃が…?」
シンが金髪のさくらに不満気に問う。
「いやぁ~、ぼくって魔法だけじゃなくMS工学にも詳しいから。それといいかげん苗字じゃなくて名前で呼んで欲しいな。ぼくたち家族みたいなもんだし」
「さくらには自分の家が別にあるじゃないですか」
アイシアが言う。そのとおりで、さくらは『芳乃さくら』名義の家を初音島内に持っている。
「え~、だって音夢ちゃんとお兄ちゃんがラブラブすぎていずらいんだもん」
以前は同居していたらしいが、その同居人同士が恋人になり独り身のさくらは芙蓉家にやってきたのだ。
「それに由夢ちゃんと音姫ちゃんの様子も見とかないといけないしね」
「や、わたしたちは平気ですから」
「あんなことの後だし、もしかしたらフラッシュバックに苦しめられるんじゃないかと」
「…」
音姫と由夢はさくらの家の隣に住んでいたのだが、ある日MSの戦闘の流れ弾により住居が木っ端微塵に。すでに芙蓉家に居座っていたさくらを頼ってここに来たのだ。
「あれはすごかったですね。ピンポイントにもほどがありますよ」
「あはは…。私たちの家以外無傷だったもんね…」
アイシアの感心したかのようなセリフに音姫は苦笑い。隣の芳乃家にはキズひとつなかった。
「アイシアこそ魔法の勉強したいならミッドチルダにでも行ったほうがいいんじゃない? うちの学校は魔法の授業なんてないんだし」
「わたしが使いたいのは冥王なバスターでも便乗なザンバーでもありません。みんなを幸せにする魔法です」
「…」
アイシアは魔法を習いにさくらを訪ねて遠路はるばる初音島まできたのだが、肝心のさくらは「魔法少女は弟子をとらない」と言って一蹴。それでもめげずにこうしてさくらの側でチャンス(?)を伺っているのだ。
「でも実際私たちがいつまでもここにいたら、楓さんの迷惑だよね…。食費だってかかるわけだし…」
音姫のセリフにみなやや暗くなる。さくらはこう見えても社会人(年齢不詳)で仕事上稼ぎがいいため家計の助けにもなっているが、残りのシン、アイシア、プリムラ、朝倉姉妹は完全な食客である。
「そ、そんなこと気にしないでください。学園長先生のおかげで前より余裕があるくらいですよ。皆さん色々手伝ってくれますし」
楓が慌てる。実際は余裕があるというほどでもないのだが…。
「そ、それよりあまりゆっくりしていると遅刻しちゃいますよ? 進級早々遅刻なんてしたら先生に笑われてしまいます」
まだ四月も始まったばかり。遅刻すれば春休みボケと言われるだろう。
「そうそう。子供は気にせず学校に行ってきなさい」
さくらがふんぞり返って言う。
*1
今皆の心がひとつに!

「いってらっしゃ~い」「いってらっしゃい…」
さくらとプリムラが全く異なる調子の同じセリフを言う。
「じゃあリムちゃん、戸締りお願いしますね」
「わかった…」
プリムラは学校へ行っていないのでさくらが出かけた後は一人で留守番だ。
「今日もいい天気だね~」
「この間まで戦争やってたなんて信じられません」
「うちはその名残に巻き込まれたけどね…」
上から音姫、アイシア、由夢。由夢も言葉とは裏腹に穏やかな表情だ。
アイシアの言った通り世界は数ヶ月前まで戦争をしていた。人類史上最大の。現在は地球圏統一政府が機能しており、また各国の軍隊も地球圏統一連合軍、通称統合軍のもと、戦後間もないというのに目立った紛争やテロは起きていない。これらはオーブ、特に平和の歌姫ラクス・クライン、闘神にして勇者キラ・ヤマト、二度の英雄アスラン・ザラ、そしてオーブ首長カガリ・ユラ・アスハが中心となっている。今や彼らは『ギルバート・デュランダルから未来を取り戻した救世主』として世界中から信頼と崇拝を集めている。
「…」
「? シン君。さっきから黙ってますけど、どうかしたんですか?」
「…別に」
楓の心配した声に右目に手をやり素っ気無く返すシン。そこには大きな火傷の痕があり、普段その目は閉じられている。
「! もしかしてキズが痛むんですか!?」
「ぁ…、いや、それは大丈夫。全然、まったく」
楓はそれを聞いて一安心。
「それより早く行こう。ここに来てから走るとロクな目に合わない」
「らき☆すけが炸裂しますからね」
「まださっきの根に持ってるのか…」

(前より死ぬ人は減った。争いも無くなった。けど、世界は平和なのか…? 政府は平和を守るために軍備を増強してる。統合軍には対テロリスト用の部隊が編成された。これじゃあアーモリーワンが襲撃される前と同じじゃないのか…)
シンは考える。果たして今は本当に平和なのか、もしそうなら平和とはなんなのか。
すると二人の少女が現れ挨拶をされる。
「おはよ~シン君、みんな」「おはようございますシン様、皆様」
「ああ、おはようリシアンサス、ネリネ」
茶髪の元気なのがリシアンサス、通称シアで青紫の髪でおしとやかなのがネリネと言う。二人ともご近所さんでシン、楓、アイシアのクラスメイトである。
「…」
「どうされたのですか、シン様? そんなに見つめられると照れますわ…///」
「に、兄さん…あまり女性をジロジロ見るものじゃありませんよ…」
「コレ(ネリネのある部分)とコレ(アイシアのある部分)は本当に同じモノなのか…」
「「!?」」「///」

「あのさ、コーディネーターって実は不死身じゃないんだ。ターミネーターが最後は壊れるのと同じで」
「シン・アスカとか氏ねばいいのに」
「   」
「あ、シン君がジャスタ○ェイみたいになった」
セクハラ発言により二人がかりで美しくも残酷なコンボを叩き込まれたシン。おまけに由夢に言葉の暴力を受ける。リシアンサスもおかしそうにケラケラ笑っている(自業自得なのでかばってはくれない)。今やシンは底力Lv9が発動するぐらいボロボロだ。さらに、
スパーーーンッ
「おっはよーシンちゃん! 今日もハーレム登校だね」
緑色のショ-トヘアーの娘に背中を思いっきり張り飛ばされる。
「おはようございます麻沙先輩」
名を時雨麻沙といいシンたちの一学年先輩で音夢の同級生である。
「おはようみんな。…あれ、シンちゃんからリアクションが返ってこないんだけど?」
振り返る麻沙。そこには踏みとどまれず電信柱に激突しているシンが。
「弟くん朝から色々大変だったの…」
「そっか…。ハーレムも楽じゃないんだね…」
『弟くん』なる奇抜な呼称は音姫がシンを呼ぶときのものだ。
「もうやめて…。俺の…ライフは……もうゼロ、なの…」
学園までの道のりまだ遠い。

『風見学園第二統合校』
シンたちが通う学校で初音島の中央に位置する。先の大戦により多くの学校の経営が立ちいかなくなったため付近の学校を統合、このような名前になった。それだけでなく…
「いつ見ても違和感がぬぐえませんね」
「前は桜の木がドーンってある以外何も無かったからね」
もともと風見学園に通っていた朝倉姉妹は毎朝同じことを言っている。
「『覇道財閥』だっけ? 世の中には太っ腹な人がいるもんだね~」
「ユニウスセブン落下の衝撃で壊れた校舎を直してくれたんですよね。慈善事業に力をいれてるんでしょうか?」
「これはそんなレベルじゃありませんよ…。豪華になりすぎです」
やはり風見学園に通っていたアイシアが楓に言う。修復されたというよりも跡地を利用して別の学校を建てたと言う方がしっくりくるぐらい風見学園は豪華になっていた。
「『覇道財閥』といえば魔法研究に出資している以外は目立ったことはしていませんよ」
「そうそう。だからお父さんも不思議がってたっす」
お嬢様なネリネと以外にもお嬢様なリシアンサスが上流階級情報を話す。覇道財閥は昔からあるらしいが特に目立った活動はしていないらしい。
「金持ちのすることはいつだってわからないな…」
国家規模の金持ちに嫌な思い出のあるシンはそう言い門をくぐる。と、
「ちょぉーっと待ったーーーっ!」
オレンジの髪にカチューシャをした少女に大声で呼び止められる。
「なんだよ、天枷?」
「なんだとはなんですかアスカ先輩。この風紀委員である天枷美春の前で校則違反とはいい度胸です! ボタンは上まで留めてください!」
美春はシンの学生服を指さして言う。シンは第一ボタンを留めていない。
「はっ、しまった! 朝からゴタゴタしてて注意するの忘れてた」
「ゴタゴタしてるのはいつものことですけどね…」
音姫はシンの素行になにかと口を出す。割と真面目なシンだが生徒会長の音姫から見るとまだまだ至らないのだ。
「これぐらいでそんな大声出すなよ…」
ボタンを留めてさっさと歩きだすシン。音姫が近寄ってきて、
「ちゃんとホックまでとめなきゃ」
「ぅえ、ちょ…///」
学生服の襟元のホックを留める。顔が超近い。
「なっ、お、音姫さん…」
基本呼び捨てなアイシアも音姫は「さん」づけで呼ぶ(麻沙は「先輩」)。アイシアは超近い二人を見て悔しいと羨ましいが半々といったところだ。由夢、リシアンサス、ネリネも同様である。
「お~、朝から大胆。ね、楓?」
「……」ギリッ
「楓?」
「…えっ? な、何ですか、麻沙先輩?」
「う、ううん。なんでもない…」
(なんか今の楓、会長を睨んでたような…。そんなはず…ないよ、ね? 深く考えるのはよそう…)
まだまだ青い麻沙だった。

「おっす」
「めっす」
「なに頭の悪い挨拶してるのよ、兄さん、アスカさん…」
下駄箱にて朝倉純一・音夢兄弟と出会う。こんな挨拶が出来るのも平和である証拠かもしれない。ちなみにこの朝倉兄妹は件のさくらの同居人で恋人同士、また音姫・由夢の親戚だったりする。
「なにを言うんだ音夢。男同士の挨拶といったらコレなんだぞ。なぁシン」
「知らん。俺は『おっす』と言っただけだ」
「お前、相変わらず男には冷たいな…」
「女の子にはセクハラばっかりだけどね」
父親のせいかこういうことには厳しいリシアンサス。
「ネリネとアイシアが同い年なんだぞ。なら比べるしかないじゃないか!」
由夢は学年が違うのでここにはいない。アイシア一人なら何とかなるとふんだシンは力説する。
「なっ、ここには音夢がいるんだぞ!?」
「アスカさん…どっちがいいですか?」つ英和&医学
「それでも…語りたい世界があるんだっ!!」
「逃げた!? チィッ!」
走り出すシン。しかし風紀委員の音夢は走るわけにはいかず二冊を投擲。それらはシンに命中、ふらついたシンの前に赤い髪の少女が…
「ぶ、ぶつかっちゃいました!」
「お~い、大丈夫か?」
倒れた二人のもとへ急ぐ。そこではお約束の展開が。
「…ごめん白河。こんなとき、どうすればいいかわからないんだ…」
「覚悟を決めればいいと思うよ?」
押し倒された状態の赤い髪を持つ白河ことり。豊かな胸にはシンの両手がしっかりと。

「「「シン・アスカ! 今日こそ貴様に引導を渡す!」」」
「くぁwせdrftgyふじこlp」
教室に入るなり大勢の男子に囲まれるシン。学校中の男子が集まっているんじゃないかと思うぐらい多い。
「KKKの名の下に!」「シン様に何を…」「ここで魔法使ったら教室がなくなっちゃうよ」
教壇に押しつけられるシン。ネリネをなだめるリシアンサス。
「SSSが真っ赤に燃える!」「お、今日も盛り上がってますな~♪」
無数の伸ばされる手。楽しそうなオッドアイの少女。
「RRRを掴めと轟き叫ぶ!」「ちょっと無理があるんじゃ…」
その手がシンを捉える。ことりのツッコミは誰にも聞こえない。
「「「爆笑! ラフラフフィンガー!!」」」
「や、やめろーーーー!」
超くすぐられるシン。笑い声をあげれないほどくすぐられる。
「お~い、席につけ。HR始めるぞ」
担任の紅花撫子が入ってくる。一瞬で鎮まる教室。シンだけが教壇の横でピクピクしている。
「では今日の予定だが…」

シン・アスカは大体このような毎朝を送っている。

―おやおや、にぎやかだねぇ。もしかしたらこれがキミの望んだ未来なのかもしれないね。でも、この世界はいつまでも続かない。それはキミも薄々気づいているだろう? この世界がどういう未来を迎えるかはキミにかかっている。そう、これは他の誰でもない、シン・アスカの物語なんだからね―

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最終更新:2009年10月22日 15:58
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