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ピリリリリリリリリ…ピリリリリリリリリ…
静かだった部屋に、突如として擬音で表現すれば上記の如き電子音が二回響く。だが、瞬間的、しかし確実に部屋を支配していたはずのそれらの支配は、小さな音と共にピタリ、と断ち切られた。
「う~…ん…………ふぁい、もしもしぃ…」
そして、代わりに聞こえる眠たげな声。見るまでもなく半分眠っていることが解るうえに、辛うじて起きている半分も通話中にも関わらず安楽の魔の手を伸ばす布団へと屈しようとしている。
『…相変わらずだな、お前は。まだ、朝が弱いのは直っていないのか。』
……まるで、爆弾が七百メートル先で爆発した時のように、眠気が吹っ飛んだ。信じられないものでも見るかのように(見るではなく聞いているのだが)、二、三回瞬きを繰り返す。その間、五秒足らず。
だが、その間にばさっ、という音を立てて掛け布団が捲り上がる…捲くり上がり終えた時には既に、ベッドに腰掛けるように座っている少年の姿があって。
「―――アイ――い、いや、セ…シルくんっ!!」
『……もう少し、音量を落とせ。こっちは真夜中なんだ。』
「あ、ご、ごめん…」
食い入るように受話器へと叫ぶ。だが、直ぐに窘められてしまった。…電話なので、目の前に誰かが居る訳ではない。しかし、昔の癖で誰かがいるみたいに身体も同時に謝ってしまう。名前を呼びかけて、慌てて偽名に直した事も、癖が抜けていない証左だ。この癖を直さなきゃなあ…と心中で強く思う(最も、そうそう簡単には治らないからこそ『癖』と言うのだろうが)。
「え、えっと…ところで、一体何の用かな。」
言外に、「君が連絡してくるなんて、しかも直接掛けてくるなんて珍しいね」と示しながら、訊ねる。それほどまでに、彼が俺に連絡を取ってくるのは珍しかった。しかも、最後に別れてからまだ一月くらいしか経っていない…こんなに短い間隔は、向こうにいた時でもそうはなかったのだから、何かあったと思っても仕方が無かろう。
『…いや、大した事じゃない。お前が、向こうで上手くやれているかが少しだけ気になってな。』
「む~…その言い草だと、俺が人見知りしてるみたいじゃないか。」
『実際、そうだったと記憶しているが。…一年前の出来事を忘れたのか?』
「う、ぐぅ。」
それを言われると、ぐぅの音も出ない…もとい、ぐぅの音しか出ない。だけど。
(でも、こんなやり取りも一ヶ月ぶりだと思うと何だか懐かしいな…)
くすり。思わず、微かな笑い声が漏れる。思えば、外国での生活も結構楽しかった。そりゃ、文化の差は結構大変だったし、『バイト』も大変だったけど。それでも……楽しかった事は、確かだ。だからこそ、その輪から外れると少し寂しい。
海の遥か向こうにいる、彼も似たような心境なのだろうか。そうだったらいいけど、未だ俺には声だけで彼を聞き定める事が出来ない。それが出来るのは…恐らく、今のところは話に聞く彼の幼馴染だけだろうから。
(セシル君もそうだったら嬉しいけど…はあ。)
残念ながら、それはないだろう。まだ、一年と半年くらいの付き合いなのだ。それに、自分は所詮『部外者』だ。逆立ちしても、真の意味での『関係者』にはなれないのだから。
『……どうした。』
「…ううん、別に。それより、用件はそれだけ?」
「…残念ながら、もう一つある。……『バイト』の話だ。」
ドォォ…ォン。なんてタイムリーな。受話器の向こうから、雷鳴が轟く音が聞こえた…この話が出る時は、雷が鳴っている事が多いな。向こうにしろ、こっちにしろ。
―――――――――――――――
さて、初夏とはいえ日が落ちた夜は暑くもなく寒くも無くという割と快適な気温が続く金曜日。それが一つの大きな要因(もう一つは翌日の休日不思議探索ツアーだが)での早めの睡眠を図らずも俺が貪っている中、それを見事に邪魔する携帯電話の着信アラームが、室内を飛翔する勢いで乱反射のように鳴り響く。
ったく、こんな時間から誰だ一体?立ち上がって、机の上に置いてある携帯電話が裏返しのままつながれた犬の如くけたたましい震動音を発しているのを、手に持つ事で黙らせる。
…と、くるりと裏返して発信者名を見たところで…暫し息を呑んだ。発信者名―――涼宮、シン。現在、ただでさえ様々な勢力の思惑の渦中にある俺たちSOS団メンバーの中でも、最も新しく、そして他のメンバーの事情を僅かながら知っている俺にとっては、故に最も謎に包まれた存在だった。
え、謎に包まれた存在も何も…謎なんかあったっけ、だって?いやいや、確かに前回は無かった。しかし、ある時を境に、俺は彼にとっての謎を目の当たりにせざるを得なくなっていた。
そう、それは一週間前…シンが始めてSOS団主催の、休日不思議探索ツアーに参加した時に遡る…。
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「遅い、罰金!」
いつもどーり死刑確定時刻の9時より少し早めに北口駅前に着いた俺を出迎えたのは、これまたいつもど~りの団長様の無慈悲な宣告だった。へいへい。財布の中に在中している数枚の野口英世に密かに別れを告げ、集まっている皆に挨拶をする。
「おはようございます。」
「…………おはよう。」
「おはようございまぁす。」
古泉・長門・朝比奈さんの順に挨拶が続き、最後に。
「おはようございまーっす。」
にこにこと、姉譲りの100ワットの輝きを放つ笑顔で挨拶をしてくるシン。…何か、えらく機嫌がよさそうだな。その上機嫌さを、隣でアヒル顔を作っているお前の姉にも分けてやってくれ。っていうか、何であいつはそんなに不機嫌なんだ。
「何でも、留学時代の友人から電話が掛かってきたそうで。誰か、と聞いたけど、はぐらかされたようです。」
なるほど、だからあんなに不機嫌なのか。しかし外国からわざわざ国外電話か…良い、友達みたいじゃないか。
「ええ。やはり、二年も外国にいるとそういったコミュニティが形成されるのでしょうね。ただ…」
古泉、お前の説明はいらん。何時もどおりそう突っぱねる。と、団長様がいやに尊大そうにづかづかと何時もの喫茶店に入っていくのが見えて…
「どうやら、その時間も無さそうですね…どうも、最近はあなたとの密談が反故になる事が多い。」
……気持ち悪い言い方するな。すれ違いざまに囁いた古泉に顔をしかめて、最早半自動的に出てくる小さな息を吐いて、喫茶店の入り口へと向かった。……不機嫌なあいつとペアを組むのだけはごめんだ…と切に思いながら。
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さて、何時もどおりの事を話していてもつまらんと思うから、さっさと話を進めることとしよう。喫茶店の中に入っても未だ絶賛不機嫌中だった団長様は、それでも飲み物を口にすると少しはクールダウンしたのか、眉間に解るか解らないか程度のひくつきを浮かべた程度で、ペアメンバーの選出に移った。
「SOS団のメンバーもちょうど偶数になったし、これからは二人づつ三組で行動するわよ。『下手な鉄砲数撃ちゃ中る』…メンバーが増えて初めての今日こそは、この世の不思議を何としても見つけるの!あ、それと今回はシンを慣れさせるために延長、六時まで二時間ずつ、計四回組合せを変えるから!!」
…それは別にいいんだが。ハルヒ、どうやって三組に分けるんだ。何時もどおりの赤白色別の選出じゃあ、二組が関の山だぞ。
「そうね…じゃあ、こういう手はどう?」
そういってハルヒが提案したのは、『爪楊枝の赤を勝ち、無色を負けとして、勝者が敗者の中から一人を指名できる』というルールだった。ただし、その直前の人との合組は絶対禁止、選ぶ順番は最初の勝者三人でじゃんけんをするという条件付ではあったが。
「なるほど、それならば公平無比に選出できますね。さすg(ry)」
この評は何時もどおりのハルヒ専属イエスマン古泉の談だ。…まあ、それはともかくとして。そのルールで行った第一回の組合せは…
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やっぱりここしかないな、うん。…芸が無いと言いたくば言え。最早火の車状態の財布に負担も掛けないし、これからじりじりと日当たりを強めてくる暑さも問題無いくらいには涼しいし…ああ、素晴らしきかな、県立中央図書館!やっぱりいいよなあ、公共施設は。
…この活動を(団長の指示で強制的に)開始する前にはほとんど想いもしなかったそんな感慨をしみじみと味わいつつ、俺は後ろにいる小柄な人物へと目を向ける。
相変わらず感情を表に出さない無表情な視線を俺に向けながらも、その頸は何故俺がいきなり止まったのか、解らないといった感じで傾げられている。しかし、その手はまだかまだかと親鳥に餌を催促する雛鳥のようにぴくぴくと僅かに動いていた。…毎回思うけど、本当に本が好きなんだな。
さて、無言の催促が少し忙しなくなってきたから、そろそろ入るか。…顔を後ろに向けたままで一歩進むと、ガーッ、と自動ドアの開く音が聞こえる。
「………危ない。」
へ…?うぉっと!いきなり呟かれた長門の声。と、開いた自動ドアからちょうど出てきた人物にぶつかった。…どさっ、と相手のカバンが地に転がり、更に相手自身もぺたん、と尻餅を付く。
お、おい。大丈夫か?相手が小柄だったためか、不意を突かれながらもよろめくだけですんだ俺は、慌てて尻餅を付いた少女に手を差し伸べる。
「いたたたたたぁ…あ、いえ。大丈夫ですよぉ。怪我もしていませんし。」
そう返しながらも、とりあえず差し伸べられた手を取って立ち上がる栗色の髪を持つ制服姿の少女。…珍しい。こっちの連れ以外にも、休日に制服姿で出歩く娘がいたんだな…
ぱっぱっぱ。そんな素朴な疑問を俺が思っている間に、少女は服に付いた埃を簡単に払い、カバンの中身が散らばっていないかを確認した後で、にこり、と俺の目を見据えて笑うと。
「ありがとうございましたあ。」
鞄を手に取ると、にこやかに礼を言って、足早に立ち去っていった。…俺に谷口のような女性をランク付けするという阿呆な趣味はない。だが、結構いい娘だな――初対面ながらそう思ってしまうのは、致し方無き事だろう、うん。
そんな思いが強かったのか、何とも無しに軽く駆け出したその後姿を目で追う…と。
「………」
立ち止まったまま、ぢっ、と俺をその無機質な眼で…その鏡の如き瞳に感情は読み取れないが、何故か俺には非難しているように思えた…見ている長門がいて。あー…入るか。目を逸らしたくなる衝動を抑えて、すっかり閉じてしまった自動ドアへと歩を進める。
……今度は、何も無かった。だけど、集合時間の十五分前くらいに、本にかじり付いたままの長門を図書館から連れ出すのに、いつも以上に苦労したのはまた別の話だった。
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「朝比奈先輩ー、こっちですこっちー。」
「ひゃああああ。ま、待ってくださーい。」
晴れやかな陽の光が差し込む樹々の間で、元気いっぱいな声が聞こえ、少し遅れて慌てた声が追いかけるように続く。もし、その声に反応した人がいたのなら、お姉さんと見られる栗毛の娘の手を引っ張る、黒髪紅眼の少年を目撃したに違いない。…100%、恋人という誤解は張られないだろう。
もっとも、それは公園内のあちらこちらで湧き起こっているから、誰も気にも留めない、日常の風景でしかないが。…齢が少しだけ、大きいだけで。
「ほらほらほらー、いいでしょ?この公園!ちょっとした小高い丘になってて街の光景を見渡せるし…それに、動物たちも人懐っこいし。」
「わあ…本当ですね。犬さんこちら、手の鳴る方へ~…ひゃあああっ!?」
朝比奈先輩がそういいながら手を鳴らして呼びかけると、近くにいた小さい犬が駆け出して飛びついてきた。それに驚いて、ぺたんとしりもちを付く朝比奈先輩。
飼い主らしい女性の方(眼鏡を掛けた、何ともキャリアウーマンっぽい女の人だった…こういうのを「眼鏡美人」っていうんだっけ?)が、こちらに向かってくるのも見える。…最も、ぺろぺろと頬を可愛らしい舌で舐め回されてくすぐったさそうにじゃれている朝比奈先輩は、気付いていないだろうけど。
「すまないわね、うちのモミジが迷惑をかけてしまって。」
「いえ、先輩も満更じゃなさそうですし、いいですよ。でもここに限らず、いくら安全だといってもまだ小さい小犬をこんな見晴らしのいいところで、放しておくのは少し危ないと思います。小動物を狙う外敵は、何もお金欲しさの人間だけとは限りませんから。」
実際に数年前、猛禽類の襲撃のせいで(連れて行かれることは無かったものの)懐かれていた小犬が死んでしまい、大泣きした子をシンは知っている。自分よりも二つも年上なのに、大粒の涙をぼろぼろと零して泣きじゃくる彼女を宥めるには、かなり苦戦したものだ…最も、それがパワーアップしたハル姉の猛突を避わす事が出来る策の一部となっているのだから、何とも言えないが…閑話休題。
「朝比奈先輩―。飼い主の人、来ましたよー?」
「はひゃ!?あ、ごめんなさい。私、ついつい夢中になっちゃって…」
少々謝りながら、可愛さが長じて思わず抱き抱えていたらしい小犬を地に放つ。…が、小犬は、中々朝比奈さんのそばを離れようとはしなくて、クンクンと切なげな甘え声(哀しみの声とも聞こえるが)を鳴らし続ける。
「あ、あれ?ほら、行かないとだめだよ。ワンちゃん~」
もう一度、困り声で促す。と、『仕方ないな…』とでも言いたそうな呆れた鳴き声で一声鳴き、飼い主の元へと勢いよく駆け出した。
「ふふ…元気一杯ね、モミジ。そんなにあのお姉さんが気に入ったのかしら。」
「朝比奈先輩は、優しいですからね。動物は素直です…って、わっ。」
ワォン。駆けた勢いのまま、軽く一鳴きすると同時に飛び付いてきたモミジくんを、出来るだけ優しく抱き止める。先程の朝比奈先輩にしたように、尻尾を激しく振りながら顔をぺろぺろと舐め回そうとしてくる彼を、何とか落ち着かせようとして地に降ろしたけど…余り、落ち着いてはいないようだ。……ふう。やんちゃだなあ。
そんな少年の様子を見て、クスリ、と飼い主の女の人が笑った。
「その理屈で言うと、君も優しい事になるわね?」
「か、からかわないでくださいよ~…ほ、ほらモミジくん。またね。」
何とか宥めて、リードを飼い主の女の人へと返す。…まあ、モミジくんは相変わらずしぶしぶとだけど。と、その女の人はリードを受け取って、
「ええ、またね。」
と言って去って行ってしまった…う~ん、「また」って事は、これからもこの公園で会うって事かな?いや、でも何か含みのある言い方だったような気も…
「シンく~ん、助けて~っ。」
かわいらしい悲鳴が、思考を思い切り中断させた。見ると、朝比奈先輩が今度は複数匹の猫にまとわりつかれている。…あれを見るとヒッチコックの往年の名作、『鳥』を思い起こされるなあ…何事も限度が必要って事だね、こりゃ。
「はいはい、みんなみんな。遊ぶのなら今度にして、今は帰ろうね?」
努めて優しく言いながら、しかし僅かに『代わる』と、鋭い猫たちが機敏にそれを感じ取って一目散に逃げていく。そして、それに他の猫も続いて…一分後には、毛玉(※( ゚д゚ )に非ず)に埋め尽くされて(?)いた朝比奈さんは、すっかり解放されていた。
「朝比奈先輩、大丈夫ですか?」
「つ、疲れましたあ~…ありがと、シンくん~~…。」
…暫く、休憩させよう。目を回している朝比奈さんに手を貸そうとして…ふと、いつも懐に忍ばせている懐中時計をぱちりと音を立てて開けた。十時十五分…大体、四半刻(十五分)くらいは休めるかな。
「本当に、いいところですね。この公園は。私、動物とかに好かれていないと思ったから、あれでも結構嬉しかったんです。」
「でしょでしょ?地元でもこんなに和めるってあんまり知られていない場所だけど、SOS団の皆に教えてあげようと思って、最初に行くならここ、って決めてたんだー。」
そうだったんですかー。ベンチに腰掛けて休んだまま、すっかり感心した口調で、朝比奈先輩が返す。…キョンさんじゃないけど、やっぱりかわいらしい人だなあ。ハル姉とは正反対、あの子ともまた、違った魅力だな、これは。
「それに、ここってあながち不思議探索に関係が無いってわけでも無いんだよねー。」
「……ほえ?こんな長閑な公園で、ですか?」
不思議そうに、本当に不思議そうに朝比奈先輩が首を小さく傾げる。うーん、詳しく言うべきか言わないべきか。…朝比奈先輩の今の幸せそうな、穏やかな表情を壊したくないんだけど…でも、言わなかったら言わなかったで、また「機会」を作らなきゃいけないしなあ。
…仕方ない。彼女だけ『仲間外れ』にするのも、ね。でも…
「実はねー、ここって四年前に……」
…世の中には、知らない方がいい事っていうのも往々としてあるんだよね……そう、申し訳なく思いながらも、俺はその話をする。そう、それは…日常にしてはあまりにも不可思議で、しかし「非」日常としてはあまりにもありふれた話。
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っと、セーフ…かな。余ほど読みたい本が有ったのか、いつも以上に本にかじりついたように動こうとしない長門を何とか宥めすかし、手を引いたままようようとして待ち合わせ場所に到着した俺。…お陰で十分くらい前に着く予定が、ぎりぎりになってしまった。当然、その時間帯には全員いるみたいで。
……また、ハルヒの「遅い、罰金!」とかの類の、怒砲が響き渡るか?そう、半ば覚悟はしていたが、意外にも怒っていたのはハルヒではなかったのである。そう、怒っていたのは…
「シンくんのバカ、シンくんのバカ、シンくんのバカ~っ!!」
「わ、悪かったですって。落ち着いてくださいよ、朝比奈先輩。」
「もうあの公園、一人で行けなくなっちゃったじゃないですか~っ!」
「だから落ち着いて…ってハル姉も、煽らないでよ!?」
「だめよみくるちゃん。もうちょっと捻りを加えて打つべし打つべし!」
……意外だった。穴も穴、大穴を超えた十万馬券だ。ぽかぽかと擬音がつきそうな軽いパンチ(俗に言う駄々っ子パンチという奴だ)をシンに向けて繰り出している朝比奈さんを見た、俺の疑問はただ一つ。……何で、こんな状況になっているんだ?それとハルヒ、掠ってもいないのに無意味に煽るな。
「さあ?僕もさっき来たところでさっぱり…」
ああ、そうか。一緒に来たはずのハルヒは、ああやって順応しているけどな。古泉の話を軽く流して、煽るだけじゃ物足りなくなったのか、自身も参加して後ろから羽交い絞めにしているハルヒと逃げようとじたばたしているシン、そして密かに近づき始めている長門を見て…思った。
やれやれ、一体どんな事を言ったのやら。
最終更新:2009年11月05日 21:35