通りすがりの名無し氏の小ネタ-01

1

全次元世界のどこかにシン=アスカ達がいる。
今日も今日とて、どの世界もおおむね平和であった。

この時までは……。

『全次元世界のシン=アスカさん。あなたはたくさんの女性にパルマをしたので…』

『――責任を取ってもらいます――』

サイレンの音と機械音声が全次元世界に鳴り響く。
『リアル嫁ごっこ始まりました。全次元世界のシン=アスカさんは元気いっぱい逃げてください』
その内容はシン=アスカへの(ある意味での)死刑宣告であった。

シン(東方シン)「気をつけろ、近くにまだあの人たちがいる。捕まったらお仕舞いだぞ!」
シン(ゼロ魔シン)「俺たちだけが掴まんのかよ!?」
シン(六課シン)「三日間逃げ続けろってyagamiの宣言だよ」

逃げ続けるシン=アスカ達。

なのは「シンー、ちゃんと責任とってなの!」
フェイト「そうだねそうだね、ちゃんととってほしいね」
シャルロット「シン…私の未来のパートナーに」
霊夢「シンとの子供をつくらないと」

追い続ける女性陣達。

シン(種デス)「yagamiって…誰だよ?」
yagami「うちやでー、シン!さぁ、私たちの愛の巣へRET,s Goや!!」
シン(六課シン)「アァーーッ!!?」

次々と襲い来る女性陣。
一人、また一人と散っていくシン=アスカ。
それを阻止する男性陣。

レイ「いけ、シン!逃げ切るんだ!」
シン(こなシン)「レイーー!?」

残された希望は…嫁ぐしかないのか、それとも…。

シン(連ザ)「アンタが…この事件の黒幕」
???「そう、私の名は……」

逃げ切ったその先にある未来は…。

『リアル嫁ごっこ』

公開未定

同時上映『シン=アスカ達の居酒屋で繰り広げられる愚痴やらノンケ話etc』

2

イルククゥ「きゅい~。あっ、シンなのね」

シン「おお。どうしたイルククゥ?」

イルククゥ「たまにはこの姿でお散歩してたのねん!」

シン「そうか。まぁ、気をつけろよ」

イルククゥ「きゅい。…あ!」

シン「ん?」

イルククゥ「シン。少し目閉じててほしいのねん」

シン「? いいけど、何でだ?」

イルククゥ「何でもいいから早くなのねん!」

シン「あ、ああ(…何するんだ? まぁ、イルククゥのことだから危険な事じゃないだろ)」

イルククゥ「じゃあ、ん!」

ズキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!

キ○ロ「や、やった!?」
リ○ン「流石イルククゥ! 私たちに出来ないことを平然とやってのける! そこに痺れる!憧れる!」
※彼女達は特別ゲスト参加です。世界の壁なんてソース煎餅並みの脆さだって師匠も言ってたし。

シン「んぅ!? ん……ちゅ……んむ……ふっ……!」

イルククゥ「ちゅむ……はふっ……んっ……」

シン「ぷはっ! な、ななななな!」

イルククゥ「きゅい。いつもご飯を作ってくれるお礼なのねん!」

シン「お、お前。一体何時こんなの覚えた!?」

イルククゥ「緑色の髪の女の人に「これ(キス)をすればシンは喜ぶ!」って、言われたのねん!」

シン「あ、あの人はー!」

イルククゥ「…シンは、嬉しくない?」

シン「え?」

イルククゥ「イルククゥにされて、シンは嬉しくないのねん?」

シン「………(イルククゥの頭をナデナデ)」

イルククゥ「?」

シン「嬉しいさ。イルククゥにそれだけ好かれてるって分かって嬉しいさ」

イルククゥ「…! ありがとうなのねん!」

物陰から
シエスタ「う、羨ましいですイルククゥさん」
キュルケ「少し嫉妬しちゃうわ」
サイト「なぁ、なんで俺達もいるんだ?」
ルイズ「し、仕方ないじゃない。見て損でもないでしょ!」
シャルロット「……(私も、あれぐらい積極的に!)」

3

真(チェンジ)インパルス―C.E.最後の日―

次々と襲いかかる無数のフリーダムとジャスティス、デスティニー。
守備隊のMSが次々と破壊されていく中で、キラ・ヤマトは一人で戦っていた。
ストライクフリーダムは無いが、自分にはまだ戦える力がある。
その一心で彼は、カガリからストライクルージュを託されたのだ。

「つまらん。SEEDとスーパーコーディネーターの本質を知りもせずにその力を戦いにのみしか使わぬ愚かな男だな、キラ・ヤマト!」
「それでも僕は! 力だけが僕の全てじゃない! スーパーコーディネーターである前に僕は貴方の言う、愚かで一人の人間だ!」
「もういい。貴様はあの世で懺悔するがいい! はは、だーっはっはっはっは!!!」
「うるせぇ!!!!!」
「ぬぅ!?」

突如の光と音、そして影。

「そいつはてめぇがやることだ、ジョージ・グレン!!!」
「来たか、SEEDに魅入られた者よ!!!」

舞い降りたのは、青と白を基調とした巨人。
翼というにはあまりにも不釣り合い、否…マントと呼んだほうがいい。
顔面のシルエットはキラの知るMSとは明らかにかけ離れたモノ。
そして、それに乗る人物は、

「シン? 君なのか?」

だが、カメラから見た顔は、キラの記憶にあるシンとは違いすぎていた。
年は自分のほうが上なはずなのに、彼は自分よりも年上の感じがしている。それに、彼の獰猛な目からは、狂犬のような印象を与えてくる。
そんなキラの疑問を尻目に、シンは口を開く。

「久しぶりだな、ジジィ! どうやってこの世界に来たかはしらねぇが、今度こそ引導を渡してやるぜぇ!!!!!」

途端、シンが叫んだ瞬間、機体の両腕にマシンガンが現れる。
出力や威力が違いすぎるのか、VPS装甲をものともせずに、弾丸はC.E.最強のMS達を撃ち抜いていき、スクラップの山が出来上がっていく。

「うおおおおおおおお!!! おおおおおおぉぉぉおおお!!!」
「やめんかぁ!!!」

ジョージが叫ぶと、シンと機体はそちらの方を向く。

「それ以上は貴様のためにならん。だがな、ここはよく来たと褒めておこうか。この愚か者めが!!!」
「黙れ!!! てめぇがSEEDを利用して何をしようとしたか、俺は忘れちゃいねぇぞ!!! それにな、どのみちてめぇは死ななきゃならねぇんだ。だったら、今度こそこの俺の手で!」
「……あの娘にもそういったのか」
「ッ!? 黙れぇーーーーーーー!!!!!」

叫び。
それと同時にシンと機体はフリーダムを始めとするMS軍団の中へと突撃していった。


大まかな設定
世界初のコーディネーター、ジョージ・グレンが突如生き返った!
彼はクライン派が持っていたストライクフリーダムとインフィニットジャスティス、そしてデスティニーのデータを奪い、その量産に成功!
世界が混沌に陥る中。一人の男、シン・アスカはSEED因子を持つ者しか乗りこなせない機体、ゲッターインパルス(仮名)を謎の男から譲り受ける。
ジョージ・グレンの目的は、そして謎の男の正体は?

4

見上げる視線の先に映るのは、蒼海のような空と、その広大な青を泳ぐ純白の雲。
この町の名前の由来でもあるらしい、まっさらな色の『白』、自由気ままに移っていく雲を見つめる。
今日、この日から彼もあの雲のような、自由な旅が始まるのだ。見たことも聞いたこともない、不可思議であり夢と希望にあふれるこの世界で。

「さぁ、いくぞ!」
「ガウ!」

彼は、シン・アスカは、自分の世界とは異なる世界で、旅を始める。
人と、不思議な生き物『ポケモン』が共存する世界で。
事の始まりは、数日前だった。

第一話『シン・アスカ―ポケモンの世界へ―』

「………ッ」

気絶していたシンは、意識が戻った直後に襲ってきた痛みによって、頭が覚醒に導かれた。
うっすらと目を開けると、そこに広がっているのはただただ無限にも思える黒と、無数の命を奪う閃光ではなく、穏やかな緑があるだけである。

「……は?」

あまりにも理解が追い付かないため、出てきた言葉はかすれたような声。自分は明らかに宇宙にいた。
にもかかわらず、目の前に映るのは、木、木、木、木の大群。ここが森の中だと知るには一目瞭然だった。
おもむろにパイロットスーツのヘルメットを外す。外にはしっかりと空気が存在し、森の中であるからなのか、どこか清々しい気持ちを与えてくれる。
が、当人には更なるパニックの要素にしかなっていない。


(お、落ち着け俺! こういう時は素数を数えろ! 2,3,5,7,11……って、数えている場合かぁー!)

冷静になろうとしているが、頭の中はますますヒートアップしている。
熱くなりすぎて、頭をガシガシ掻いてたり、自分で考えていることにツッコミを入れているのが何よりの証拠である。

「だから落ち着け俺! 俺は、月にあったレクイエムを防衛するために、アスランと戦っていたはずだ」

少しずつ冷静さを取り戻したシンは、ここに来るまでの経緯を思い出し始める。
元いたはずの世界では、戦争のない世界を実現するために、最後の戦闘を行っていた。
そして、自分の防衛地点に来たのは、かつての上官であり、自分の手で仕留めたはずの男であった。
そして、シンにとって最後の戦いが始まった。
光が交差し、時折両者が放つ光が弾けて爆発する。
両者の気迫、技術、力は互角…否、同じといっても過言ではなかった。
だが、信念は違っていた。
共に目指していたのは『平和な世界』。
しかし、アスランは『自由な平和』を、シンは『戦争のない平和』を望んだ。
そして、信念が、心が揺らいでしまった者に勝利は無かった。
結果、シンは負けてしまった。

「そして、気絶から目を覚ませば…」

この森の中、というわけである。
夢だと思いたくもなるが、頬をつねっても痛みがしっかりと存在する。
あたりを見回すが、大破したであろうデスティニーもやはり無い。
これならば、『ドッキリでした。』と暴露してもらった方が、遥かにマシであった。


「とりあえず、歩いてみるか」

ここがどこかわからない以上、留まっていては何も分からない。
さらに、近くに川や食料が無いかどうかを探さなければ、飢え死の可能性さえある。
どこかに無いかと探そうとした矢先、

  ガサッ! ガサ!

「ッ!?」

草の茂みから聞こえてきた音。
何かの生き物がそこにいることを示すように動いている。
何がいるのか、警戒しながらも動けるように目を凝らす。

  ガサ!

「ガァーウ!!!」

『何か』が茂みから勢いよく飛び出し、シンに向かっていく。
『何か』は、シンに向かって手に生えている、『爪』を振り下ろす。
だが、シンは寸でのところでかわすが、向かってきた生き物を見て驚く。

「な、なんだコイツ!?」

表面の皮膚…否、皮は赤よりも濃い真紅であるが、腹部は白。
顔はいかつく、目は視線で慄かせられるほどギラついており、頭には角のようなものが二つ。
脚や腕は細いながらも、手の先にある鋭く研ぎ澄まされている爪が、逆にこの生き物の強さと洗練さを物語っている。
そして、シンを一番驚かせたのは、しっぽの先端。
そこには、ゆらゆらと、まるでそこに点いているのは当然であるかのように『炎』が灯っていた。
この世界にいる人は、この生き物の名前をこう呼んでいる。

『かえんポケモン<リザード>』と。


第一話 終わり

5

今までの戦闘は、全てMS(モビルスーツ)を武器にしてきた。
それこそ、MSを操る技術はまさにZAFTのトップエースという名に恥じないものだったと自負できる。
だが、MSでの戦闘に自信はあるが、白兵戦や肉弾戦といった生身での戦いは今一つなじみがなかった。
訓練生時代でも、ナイフを使った模擬戦や的に向かって銃の引き金を引くだけの射撃しか経験はない。
故に、シンにとって目の前の相手が、自身の肉体のみで戦う最初の敵である。
しかし、こっちは武器もなく丸腰であるのに、相手には、

「ウゥ、ガァー!!!」

強靭そうな顎に鋭い爪、さらには尻尾に炎も灯っている。
……完全にこちらは狩られる側であった。

第二話『一騎打ち!? シン対リザード』

「って、冗談じゃないぞ!」

いったんこの場を早急に離れるために、シンは駆けだす。
状況も分からず、頭の中もこんがらがっているが、一つだけわかったことがある。
それは、

(ここは、俺がいた世界じゃない!?)

月にいたはずの自分が、気が付いたら森の中にいる。
姿を現したのは摩訶不思議な生き物。
夢やおとぎ話であってほしかったが、走っている中で感じ始めた疲労が、無我夢中で走っているための息苦しさが、夢ではないと知らせる。
だが、立ち止まるわけにはいかない。
止まってしまえば、あの生き物の餌食になるのは確かである。


(何とかして、あいつからできるだけ離れないと!)

今はできる限り、遠くへ逃げること。
その思いで、シンは森を走って行った。




「…ガゥ」

走っていく男を見ながら、リザードはどうするか考えていた。
男を見かけたのは、ほんの偶然だった。
自分の住処である場所から少し離れたこの森は、豊富な食べ物ときれいな川があることから、この地域のポケモン達から人気のある森である。
リザードも、この森はお気に入りであったため、今日も食べ物を求めてきた。
そんな中で、リザードは黒い髪でへんてこな赤い衣服を身にまとっている人間を見かけたのだ。

人間を。

リザードは人間に対していい感情を持っていない。
何しろ、自分は人間に『捨てられた』のだ。
お前なんか弱いから、と。
『炎』が吐けないお前なんかいらない、と。
パートナーであるはずだった人間は、あっさりと自分を捨てた。
そして、待っていたのは自然の摂理。
『弱肉強食』の世界。
親も、兄弟も、パートナーさえいない中で、自分はただ強くなるしかなかった。
たとえ炎が吐けなくても、強くなる。
その誓いを胸に、リザードは戦ってきたのだ。



ガサッ!  ガサ!

思考していたせいか、無意識に自分が動いてしまったために自分が隠れていた茂みが揺れてしまった。
その音に反応したのだろう、人間がこちらに視線を向けている。
後ろを向いていて分からなかったが、人間の目は自分の体と同じような赤い目でこちらを見ている。
気づかれてしまったが、関係ない。

「ガァーウ!!!」

磨きこんだ自身の素早さで相手に急接近し、切り裂く。
が、寸でのところで、人間はかわした。
攻撃をかわされたリザードは、一瞬だったが驚愕した。
自分の素早さを見切れるものは、この森にはほとんどいなかった。
しかも、ただの人間が、無傷で。
自分の攻撃に反応した。
その事実は、リザードにどう影響したのか。
困惑? 逆上?
いずれも違う。

「ウゥ、ガァー!」

それは、自分の攻撃をかわした人間への興味と歓喜。
自分と戦うのに相応しいかもしれない相手。
それを見つけたのだ。
そして、冒頭へと至る。
考えたところで、リザードの答えは決まっていた。

――あの人間と戦う。

ただそれひとつである。
あの人間には、自分を捨てた人間にはない何かがあるかもしれないと、心の奥底の声が無意識に催促する。
それに従うように、あの人間を追いかけていった。





「っと。 ここは、川か」

走り続けていたシンは、近くを流れていた川にたどり着いた。
まだあの生き物は追い付いてきていないため、少し休憩を取ることにした。
走り続けたせいか、のどが渇いてきたため、澄んだ川の水でカラカラなそこを潤していく。

「ふぅ。 それにしても……」

――本当に違う世界なんだな。

あたりを見回してみると、そこにはいたるところに見知らぬ生物たちがいた。
頭に草を生やして、二足で歩いている生き物。
木の上でのんびりとしている黄色や緑のイモムシ達。
体がつるのように細く、頭がつぼみのような植物。
川には、オタマジャクシみたいで腹にうずまきがある青い生き物。
金魚のようであるが、額に角を持っている赤と白の二色の魚。
自分の元いた世界では決して見られない生物たちが当たり前に生息していた。

「さて、とりあえずは、あいつをどうするかだな」

水を飲んだことで、少し気分が落ち着いたシンは、赤い生き物とどう戦うかを模索する。
この時点で、シンは逃げ出すという選択肢を考えなかった。
四方八方が不明な場所で、闇雲に逃げても更なる危険と出会う可能性が高まるだけと判断したからである。
そこで、相手をいかに戦闘不能に、又は戦意喪失させるかを考え始めた。
まず、相手の姿と今までの行動を脳内で再確認する。

(相手の武器は見た限り、牙と爪、それに尻尾の火。
そして特徴は素早い身のこなしからくる爪の一撃。
奇襲からの接近戦が得意か)

トップクラスのパイロットとしての洞察力で、相手の戦闘スタイルを予想し、ある程度の作戦を組み立てていく。
そして、対策を立てていたところで、



「ガアァァァウ!!!」
「ッ!? 来たか!」

あの生き物に発見されてしまった。
雄叫びをあげながら、こちらに向かってくる。
跳躍し、爪を振るう。
爪による『きりさく』攻撃を、シンはバックステップで回避する。
が、今度は生き物も驚愕はしない。
それどころか、まるで当然だと言わんばかりに、目を吊り上げる。
振り下ろした爪とは逆の爪を、今度は横薙ぎで振るう。
その攻撃さえも、紙一重でかわしていく。

(素早いが、かわしきれないほどじゃない! まだ、相手が大振りになった瞬間になれば…)

シンが狙うのは、相手の一瞬の隙を突くカウンターのみ。
丸腰の今では、それしか相手を倒す手は無い。
それまでは相手の攻撃をかわし続けるしかない。
そして、相手が顔に向けて突きを繰り出した瞬間、

「っ、そこだ!」

頭を動かすだけで回避し、突き出された腕をつかむ。

「ガウ!?」
「ウオオオォォォ!!!」

掴んでくるとは思わなかったのか、動揺する生き物。
突進してきた力を利用して、シンは一本背負いの要領で投げ飛ばした。
だが、相手も空中で体制を立て直し、再びこちらを見据える。
今度はこっちの番だ、と言うかのように息を吸い込む動作を見せる。


(火か!?)

横に回避するが、吐き出されたのは黒い煙、『えんまく』である。
煙幕が、生き物とシンの周りを包み込むように広がっていく。

(まずい! これじゃあ、相手の位置が分からない!)

相手を目視できない状況となり、シンは焦る。
この煙幕の中、相手は自分がどこにいるのか分かっているはずである。
シンにとって不利な状況となり、一気に劣勢に立たされてしまった。
どこから来るか。右か、左か。後ろか、上か。

(……後ろ!?)

直感で屈む。
すると、今までシンの頭があった場所を、爪が横切る。
再びこの煙幕の中に、生き物は隠れていく。

(このままじゃ、俺は…死ぬ)

ここが何処なのか、あれが何なのか、どうしてこんなところにいるのか。
あの生き物を倒さなければ、何も分からずに死んでいく。
ただ朽ち果てるのみ。

「こんなことで……こんなことで俺はぁぁぁ!!!」

死を乗り越えようとする強い意志が、シンを覚醒へと導く。
SEEDの発現によって、研ぎ澄まされる感覚。
それを全て、聴覚へと回すために目を閉じる。

(音だ。 相手が近づいてくる音を聞き取るんだ)

異常なまでの集中力で、相手の足音、地面の音さえも聞き分ける。
そして、

(……来る!)

今度は右斜めの背後。
右へと前転しながら回避する。



「ガウッ!?」

相手の驚愕した鳴き声が聞こえる。
焦ったのか、相手がそのまま直進してくる。
煙幕に映る影が大きくなり、相手が見えた。
瞬間、シンはもう一度身体を屈ませる

「ガァーウ!!!」

相手が正面から爪を振り下ろす。
だが、

「ッ、ウオオオオオ!!!」

爪は、屈んだシンの背中にあったバックパックに防がれた。
そして、シンは一気に立ち上がり、

ドゴッ!!!!!

「ガッ…!?」
「……ッ!」

生き物の腹に向かって、頭突きを繰り出した。
今のシンが、相手に与えられる、唯一で最大の一撃。
生き物が、シンの頭から落ちていき、地面に倒れこむ。
衝撃によって吐き出された空気を取り込もうと、呼吸が激しい。
緊張の糸が切れてしまったのか、シンもその場に倒れこむ。
今までの戦いによる疲労に加え、この生き物との死闘。
さすがに戦えるような気力は既に無い。

「ガァ、ガァ」
「はぁ、はぁ」

どちらも、疲労による呼吸が続く。
が、それを破ったのは、生き物の方だった。





「まじかよ。 こっちはもう、疲労困憊なのに」

人間がこっちを見て呟く。
しかし、こっちはもう戦う気はない。
ついに見つけた。
自分よりも強い相手。
この人間といれば、自分はもっと強くなれる。
あのパートナーとはどこか違う人間。
だから、

「ガウ」
「へっ?」

手を出すと、人間は素っ頓狂な顔でこっちを見る。
これからはこの人間が…否、アンタが俺のパートナーだ。
俺を打ち負かした、な。
まぁ、なんだ。 これからよろしくな、マスター。
しかし、トレーナーが必ず持っているはずのボールを、マスターは知ってすらいないと分かったのは、少し経ってからだった。


第二話 終わり

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最終更新:2014年02月02日 13:34
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