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仮面ライダーW 第4話『怪盗S > 土くれのフーケ』

仮面ライダーW 第4話『怪盗S/土くれのフーケ』

サイトとギーシュの決闘から一日が経ち、ほとんどケガの治ったサイトとシンは、厨房に来ていた。
何故かといえば、単に暇だったのである。
ルイズやシャルロットは学園の生徒であるため、当然のごとく授業がある。
しかし、使い魔である彼らは当然その授業には出れないため、どうしても暇になるのである。
そこで彼らはその暇を潰す場所を探して、着いたのが此処、厨房である。
「おお!おめぇら新入りか!?」
声を掛けられ、その声がする方を見ると、太った中年の男がいた。
「マルトーさん、違いますよ。こんにちはシンさん、サイトさん」
その横からシエスタが出てくる。
「こんにちは、シエスタ」
「身体は大丈夫なのか?」
「はい、こうして無事でいられるのもシンさんのおかげです」
挨拶を終えると、マルトーは愉快そうに笑う。
「おお何だ!お前たちか『我らの剣』と『仮面の戦士』は!」
その言葉に、
「『我らの剣』?」
「『仮面の戦士』?」
サイトとシンは首を傾げる。
「おうよ、剣で貴族に勝った男、そして怪人と戦い、圧倒した戦士。俺達平民からすれば、お前らは英雄だ!!」
さっきよりも興奮しているのか、マルトーの声は大きくなる。
「いや、英雄って…俺はそんな柄じゃ…」
「誰かが傷つくのが嫌だっただけです。そんな賞賛されるような事じゃ…」
サイトもシンも、少し恥ずかしそうに自分がした事を謙遜する。
しかし、その様子を見たマルトーは、厨房にいる全員に聞こえるように大きな声で言う。
「聞いたかお前ら、これが真の英雄だ!己の成した偉業を誇ったりはしない!見習えよ!お前ら!英雄は誇らない!」
その声に厨房にいた全員がどっと歓声を上げる。
「な、何かすげぇ大事になってるんだけど」
サイトが呟く。
「おぉ、そうだった『我らが剣』に『仮面の戦士』よ。名前を聞いてなかったな」
マルトーが思い出したように言った。
「平賀才人」
「シン=アスカ」
「変わった名前だな。『仮面の戦士』、アンタ貴族か?」
マルトーはシンに聞く。
「いえ、『探偵屋』ってのをやってます。それに、シンでいいです。その呼び方は少しこそばゆくて…」
「お、俺も才人でいいです」
「おぉ、分かった!これからもよろしく頼むぜ!シンにサイト!!」
その後、厨房で自分たちに出来る事はないかを聞くと、ジャガイモの皮むきを頼まれた。
シンはアカデミーでのナイフ戦がトップクラスなだけあり、包丁の扱いは上手い。さらに自身も料理をこなす身であるため、料理のスキルは非常に高い。
サイトはあまり料理を作らないが、左手に包丁を持ち、ルーンが光ると手際よく皮を剥いていく。
その様子をマルトーがさらに愉快そうに笑ったりして話してきたり、他のコックやメイドが仕事のやり方を教えてくれたりもしていた。
ジャガイモが残り少なくなると、マルトーが思い出したように叫んだ。
「しまった、そろっと尽きる野菜が何個かあるんだった。シン、悪いんだが町まで行って野菜を買ってきてくれないか?」
「いいですよ。サイト、後どれぐらいだ?」
「もう数個しか残ってないから後は俺だけでも大丈夫だ」
そう言うと、マルトーからメモを貰うが、
「俺買う場所分かりませんよ?」
「ん?おぉ、それなら…シエスタ!シンに付いて行ってくれないか!?」
「えっ?…は、はい!分かりました!」
「んッ?」
何時にもまして元気に返事をするシエスタ。
マルトーは考えていると、シンが目に留まると気づいたように笑いを洩らす。
「ハーッハッハッ、おう、気をつけろよ!」
「悪いな、シエスタ」
「い、いえ、気にしないで下さい。それじゃあ、馬を借りないと…」
厨房から出て行き、馬を借りてこようとするシエスタ。
「嫌、その必要は無いよ」
「え、何でですか?」
シンは口笛を鳴らす。
すると、シルフィードがシンとシエスタの近くに降りてくる。


「りゅ、竜ですか!?」
「あぁ。シルフィード、町に行きたいんだ。乗せてくれないか?」
「きゅいきゅい」
背をかがめ、首で乗れと促す。
先ずシンが乗ると、シエスタがその後ろに乗り、シンの肩を掴む。
「どうしたんだ?」
「は、初めて竜に乗るので何だか、その、少し怖くて…」
「初めてはそんなものさ。それに…」
シルフィードが翼を広げる。
「空からの景色を見れば、そんな気も無くなるかもな」
翼を動かし、空に上る。
見上げる空に手が届くような場所。
見下ろす地上が遠い場所。
そんな所から見る景色にシエスタは感動を覚える。
「す、すごいです」
「あぁ、それにいい風だ」
「…あの、シンさんは昔何をしてたんですか?」
シエスタの問いにシンは疑問を抱く。
「何でそんなことを聞くんだ?」
「い、いえ。ただお話を聞きたいなって思っただけなんです」
シンは数秒悩んだ後、話を始めた
「…俺は昔、軍隊にいたんだ」
「兵隊さんだったんですか?」
「此処じゃない異国の軍人だったんだけどな。信じても信じなくてもいいけど、魔法じゃなくて『科学』ってのが進んだ世界だ。人は科学によって国を発展させ、月に辿り着き、この空の上に国を造った」
「そ、空よりも高い所に国を造ったんですか?」
シエスタはシンの話を疑いはしなかった。
嘘か本当かは分からない事だが、おとぎ話のようなその話をもっと聞きたかった。
「そう。そして、空の下の国と空の上の国が戦争を始めた。一度は停戦して協定を結んだけど、また戦争が始まったんだ」
「…シンさんは、戦争を経験したんですか?」
「あぁ。何で戦争が起こるんだって、時々考えるんだ。平和な事が一番良い筈だから」
「私もそう思います」
二人の会話をシルフィードと風だけが聞いていた。


「後はハシバミ草があればいいのか?」
「はい。でも、すみません。野菜を持っていただいて」
ここはトリステイン城下町。
町の人々の活気が溢れており、シンとシエスタの居る場所も例外ではない。
「男ならコレぐらいの事はしないとな。おっ、コレが新鮮そうだな」
売られている中で一番葉が肉厚のハシバミ草を取る。
「お、アンタ目の付け所が違うね~。新鮮なハシバミ草がわかるたぁな~」
「これでも料理には自信があるからな。そうしたら食材の良し悪しが分かってきたんだ。ここはどれも新鮮な食材ばっかりだ」
「かぁー、そりゃありがてぇ言葉よぉ。作ってる奴も感謝してるぜ」
会計をすませた後、店主がシンに言う。
「また来てくれよ。今度はサービスしてやっからな」
「あぁ、話し相手にもなってやるよ」
「そりゃ嬉しいねぇ。待ってるぞ」
店を出て行き、シルフィードがいる場所へ戻ろうとする。
「さて、そろっと帰るか」
「はい、っきゃ!?す、すみません!」
突如、男がシエスタにぶつかる。
慌てて謝罪をするシエスタだが、男は意を返さずにその場を去ろうとする。
しかし、その男の腕をシンが捕らえる。
「アンタ、シエスタから財布を掏ったな?」
「!?」
「え?あ、ありません」
男は抵抗するが、少しずつシンが手に力を加えると、痛みに顔を歪める。
「わ、分かった!掏った財布は返す!だから手を離してくれ!」
手を離し、財布をシエスタに返す男。
「何でこんな事をした?話ぐらいは聞いてもいいが」
「こ、壊されたんだ。家を。あの、土くれのフーケに!」
「フーケ?」


男の名はシーモ=ドゥ=ロレングス。
トリステインではある意味で名の知れた貴族であるらしい。
簡単に言えばマニアである。
彼は鉱石を集める事が趣味の鉱石マニアだそうだ。
余談だが、此処、トリステイン魔法学園に使い魔として呼ばれる前の依頼は彼からのモノだった。
珍しい鉱石に目がないらしく、少し裏社会にも首を突っ込む無茶をするほどらしい。
そんな彼に襲ったある事件。
「ひっでぇーな、これは」
一度、学園に戻り、野菜をマルトーに渡したシンは、シーモ邸だった場所に来ていた。
そこは既に瓦礫の山となっていた。
今から二日前、いつものように眠りに付こうとしたシーモは、ある音に気づいた。
まるで地響きのような音。
おかしいと思い、音がする場所へと向かうと、そこには怪人がいた。
身の丈は2メイル程、土を纏ったかのような身体。
一振りで壁を優に壊せるほどの右手。
恐れたシーモは家を飛び出すと、その直後に、家が崩落。
瓦礫の下にはカードがあった。

  お宝は確かに頂いた 土くれのフーケ

その出来事があってか、無一文となった彼は、こうしてスリを行ったらしい。
「被害にあった人はいるのか?」
「それは大丈夫だ。私は一人で家の管理をしている。メイドに鉱石を壊されたら大変だからね」
それを聞き、シンは安堵のため息を吐く。
「君に、もう一度依頼したい。土くれのフーケを捕まえてほしい」
「…生憎、こっちも商売なんだ。金がなければ依頼は成立しない」
「なら、前に君に依頼した鉱石を君にあげよう。そいつが何処かで役に立つはずだ」
シンは考えた後、口を開けた。
「分かった。この依頼受けよう。但し、フーケを捕まえた後、復讐はしないことが条件だ」
「あぁ、それでいい。よろしく頼む」
使い魔として召喚されたシンの始めての依頼であった。


シーモから依頼を受けた後、シンは情報を集める事にした。
道行く人から情報を集めた結果、
フーケの性別は不明。
貴族からしか金品、珍品を盗まない。
ぐらいの情報しか集まらなかった。
あまりにも大雑把過ぎる、噂程度の情報でもシンは集めた。
どんな小さな証拠でも、時には相手を倒す武器にもなる事をシンは経験で理解していた。
「しかし、大した情報が集まらないな」
愚痴をこぼすが、それでどうにかなるはずもない。
そこらをフラフラしていると、シエスタと来た店へと再びやってきた。
「おっ、またアンタか。早速話し合いにでも来たのか?」
「まぁ、そんな所です。…土くれのフーケについて知ってる事はありますか?」
「土くれっつったら、この前そいつの被害にあった貴族のメイドから話を聞いたぞ」
店主の情報にシンは耳を傾ける。
「どんな話を?」
「何でも、フーケが盗みをするには理由があるらしくてな。そいつが何かは分からないが、とにかく理由があるらしいぜ」
さらに店主は話を進める。
「それに、フーケはもともと名の知れた貴族だったようだ。だが、お偉いさんといざこざがあって、爵位を剥奪されたらしい。まぁ、あくまで噂だけどな」
「いえ、貴重な情報をありがとうございます。あなたの名前は?」
「ん?おぉっといけねぇ。俺はヴァイスだ。アンタは?」
「シン=アスカです。またあなたを頼りに来るかもしれません」
「そりゃ嬉しいね。期待しているよ」
ヴァイスから情報を得た後、シンはシルフィードに乗り、学園へと戻った。


月が天に昇っている頃にシンは学園に戻ってきた。
「無理させて悪いな、シルフィード」
「きゅい~、これくらい平気なのね。また、よんでほしいのね」
シルフィードと別れ、シャルロットの部屋へと戻ろうとした時、人影を発見した。
気配を消して近づく。
「――此処が……でも……ッ誰ですか!?」
だが、向こうの人物もシンに気づいた。
「あぁー、誤解しないでください。一応此処の生徒の使い魔です」
「…あら、そうですか。でも、何故こんな所に?」
とりあえずはシンが使い魔である事を信じてくれたようである。
「まぁ、仕事ですかね。使い魔になる前にやっていた」
「あら、そうですか。私は今、見回りをしていまして」
「お互いに大変ですね」
「えぇ、そうですね。あ、申し遅れました。私、ロングビルと言います」
「シン=アスカです。それでは、また会うかは分かりませんけど」
そう言うとシンは寮の方へと足を運び、ロングビルは見回りへと戻っていった。
シャルロットの部屋へと着き、ドアを開ける。
ベッドの上には既にシャルロットが静かに眠っていた。
寝返りを打った後のシーツを掛け直し、軽く頭を撫ぜる。
眠っているのに小さく微笑むシャルロットの顔を見て、シンもつられる様に微笑む。
その後、起こすのは失礼だと思い、シンは近くの壁に腰掛ける。
そうして、まどろみの中へとシンは堕ちていった。


依頼を受けた二日後、休日であるためシンとシャルロットは自室にいた。
この二日間、シンは情報が集まらないという事態に陥っていた。
フーケが狙う物は高価な物や珍しい物、金品といったモノばかりである。
さらに、平民からは一切盗まず、貴族…それも外道のような奴からしか盗まないという形跡があった。
しかし、シーモは裏社会に首を突っ込む以外は悪事を働いた事はない。
そして、ここ最近にフーケが現れたという情報は入っていない。
頭を抱えたくなるような現状にシンは悩んでいた。
「(どうすりゃいいんだよ、まったく…)」
ため息を吐くシン。
それを見たシャルロットは、本を閉じると窓を開けて口笛を吹く。
「シャル?」
「あなたの日用品を買いに行かないといけない」
窓の外にシルフィードが現れ、シャルロットが背中に乗る。
「(気ぃ使ってくれてるのかな。ありがとな、シャル)」
窓から出て、シルフィードに乗る。
その直後、
「あら、私を置いて行くなんて酷いじゃない」
声が聞こえると、シンの背中に柔らかな物体が当たる。
「なっ!?何でいるんだよ、キュルケ!?」
いつ来たのか、キュルケはシンの後ろへと座っていた。
「もちろん、ダーリンに付いていくためよ」
「変な風に人を呼ぶな!それに近いんだよ、もう少し離れてくれ!」
赤みがかった顔で叫ぶシン。
今の状況は、シャルロットとキュルケの間にシンが挟まれているという感じである。
何故か、キュルケはシンに必要異常に接近しており、豊かな胸がシンの背中に当たっている。


「意外とウブなのね、もっと大胆になってもいいのに」
「少しは羞恥ってモノを……あの、シャル」
「何?」
「何で俺にもたれ掛かってるんだ?」
抗議の声を上げようとしたシンだが、妙に膨れた顔をして自分にもたれ掛かるシャルロットを見て疑問をぶつける。
「気にする事じゃない」
「いや、あの…」
「気にしない」
「……は、はい」
喋る毎にプレッシャーのようなモノを強く感じるため、中断するシン。
そんな空気の中をシルフィードは気にも止めず、町へと飛んでいった。



町に来て、日用品を買い終えたシン達は武器屋へと来ていた。
別段、何かがあったわけもない。
キュルケが異様にシンの腕に自分の腕を絡ませたり、それを見たシャルロットが負けずと、少し顔に赤みが差しながらも
腕を回したりなどのハプニングがあっただけで、それ以外は普通であった。
「おっ、シン」
名前を呼ばれ、声の方へ向くとサイトとルイズがいた。
「なんだ、お前らもなんか買いに来たのか」
「このいn…サイトに護身用の剣を買いに来たのよ」
「……なぁ、ところでシン。…あの二人はどうしたんだ?」
サイトが見ているのは、嬉しそうに微笑んでいるキュルケと、少し冷たい眼差しを向けているシャルロットがいた。
「とりあえず、何も聞かないでくれ」
「あ、あぁ。……羨ましいような、ああはなりたくないような」
「ほら、早く行くわよ」
武器屋の中へとルイズが入って行き、サイトが後を追う。
「武器屋か。…少し見ていくか」
シンと二人も武器屋に入る。


中は剣やメイス、投げナイフ等の武具が一通り揃っていた。
「旦那。貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目をちけられるようなことなんか、これっぽっちもありませんや」
店の主人だと思われる人物がルイズと話していた。
「客よ」
「貴族が剣を!おったまげた!」
「どうして?」
「いえ、若奥様。坊主は聖具をふる、兵隊は剣をふる、貴族は杖をふる、そして陛下はバルコニーからお手をおふりになる。と相場はきまっておりますんで」
「使うのは私じゃなくて使い魔よ」
「へい。最近は使い魔も剣を振るうそうで」
商売っ気たっぷりに主人は愛想を言った。
主人は視線をサイトの方へ向ける。
「剣を扱うのは、この方で?」
「えぇ。私は剣の事なんか分からないから、適当に選んで頂戴」
主人は奥の倉庫へと入っていく。
「こりゃ鴨がねぎを背負ってきたわい。せいぜい、高く売りつけるとするか」
店主は1メイル程の長細い剣を持って現れた。
「そういや、近頃の貴族の方々は下僕に剣を持たせるのがはやってまして。その際に持たせるのがこのレイピアでさぁ」
「はやってる?」
ルイズが尋ねると、主人はもっともらしく頷く。
「へえ。何でもこの頃、盗賊がこの城下町を荒らしておりまして……」
「盗賊が?」
武器を眺めていたシンが主人の話に耳を傾ける。
「そうでさ。何でも『土くれ』のフーケとかいう、メイジの盗賊が貴族のお宝を散々盗みまくっているって話でさ。それを恐れてる貴族の方々が下僕に剣を持たせる始末で」
興味がないのか、ルイズは剣をじろじろと眺める。
細くて直ぐに折れそう。
ルイズが感じた第一印象はそれだった。
この前のサイトはこれよりも大きい剣を軽々と振るっていた。
「もっと大きくて太いのがいいわ」
「お言葉ですが、剣と人には相性ってもんがございます。男と女のように。見たところ、若奥様の使い魔とやらには、この程度が無難なようで」
何故かは分からないが、ルイズはその言葉にムッときた。
「サイトは青銅のゴーレムを軽々と切り裂く腕前を持ってるわ。もっと丈夫そうなのは無いの?」
主人は頭を下げると、また奥へと消えていく。


今度は立派な剣を持って現れた。
「これはいかがですか?」
長さは1.5メイルもあろうかという大剣。
両手で扱えるように柄は長く、立派に拵えられている。
ところどころに宝石が散りばめられ、鏡のように刃が光っている。
頑丈で、良く切れそうな印象を与える剣だ。
「店一番の業物でさ。貴族のお供をさせるなら、このぐらいは腰から下げて欲しいものですな。と言っても、こいつを腰から下げるのはよほどの大男でないと無理でさあ。やっこさんなら、背中にしょわんといかんですな」
ルイズは大剣を見ると、さっきとは違い満足そうである。
サイトも顔を近づけて、剣を見つめる。
「すげえ。この剣すげえ」
サイトもその剣を気に入ったようだ。
「すばらしい剣ね」
シンの隣にいるキュルケもそう言う。
だが、シンとシャルロットもその剣を見るが、
「……あまり良い剣とはいえないな」
「ゴテゴテし過ぎ」
三人とは違い、批評を示す。
「あら、どうして?こんなに素晴らしい剣なのに」
シンとシャルロットの批評に、キュルケは何故かと問いかける。
店主も誇るように話し出す。
「コイツを鍛えたのは、かの高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿で。魔法がかかってるから鉄だって一刀両断でさ。ごらんなさい、ここにその名が刻まれているでしょう?」
柄に刻まれている文字を指差す。
しかし、シンは自身が感じた事を口にする。
「どんな奴が作ったか知らないが、戦闘で使う剣としてはあまり良いものじゃないな」
「どういうことだ?」
気になったのか、サイトはシンに聞く。
「貴族が作ったからってわけじゃないが、みてくれを気にしすぎてて本来の剣が生かされてない。いくら魔法がかかっているからって、実際の攻撃を受けるのは武器だ。ましてや大剣、攻防一対の戦闘スタイルだから余計にそれが際立つ」
「う~ん、言われると確かにそうだな」
「それに、この大剣じゃゴーレムの一撃で粉々になるかもしれないな。観賞用かコレクションぐらい、まぁ武器には向いてないかもな」
サイトがシンの話を聞いて考えていると、
「おでれーた、おでれーた。兄ちゃん、おめぇ見る目があるな」
突如、空虚から低い男の声が聞こえる。
主人は頭を抱え、シンやサイトたちは声がした場所を見るが、剣が乱雑に積み上がっているだけだ。


「ここだ、ここ」
声の主はその中にいるらしい。
シンが剣の中から一本を取り出す。
「お前が喋ってたのか?」
「それって、インテリジェンスソード?」
そう言ったのはルイズ。
「やい、デル公!商売の邪魔すんじゃねえ!」
主人は剣に向かって怒鳴る。
「けけけ…商売の邪魔っつっても、この兄ちゃんはあっさりとそのなまくらを見抜いたじゃねーか。それよりも兄ちゃん、その歳で多くの修羅場乗り越えてきたみてぇだな。大したもんだ」
年季が入っているのか、剣には所々に錆が浮いている。
しかし、シンは、
「サイト、あれなんかよりもこっちの方が頑丈そうだぞ。錆びてはいるが、剣としてはいい作りだ」
「けけけ、分かってんな兄ちゃん」
サイトは剣を受け取る。
「喋る剣か…それもいいなぁ」
「年季物だし、経験不足もカバーできるはずだ」
「……おでれーた。おめぇ『使い手』か!?」
剣はサイトに向かって叫ぶ。
「『使い手』…何の事だ?」
「自分の力も知らないってか。まぁいい、おめぇ俺を買え」
買えという言葉に苦笑するサイト。
「拒否しても受けなさそうだな。…いいぜ、俺は平賀才人だ」
「俺っちはデルフリンガー様よ。『使い手』ならデルフでいいぜ」
「ああ、よろしくなデルフ。…ルイズ、これにする」
「えぇ~、そんなのにするの?もっと綺麗なのにしなさいよ」
「いいじゃないか、喋る剣なんて面白くて。それに、シンが言うとおり俺は戦いに関してはからっきしだ。サポートもしてくれるだろうし、死ぬ確立が低くなるならそれに越したことはないと思うぞ」
ルイズは渋りながらも、下手ななまくらを買うよりマシだと思い、デルフを買うことにした。


「う~ん、分かったわよ。あれ、おいくら?」
「あれなら100で結構でさ」
「…随分安いじゃない」
「こっちにすれば、厄介払いみたいなもんでさ」
支払いが済む。
剣を取り、鞘に納めるとサイトに手渡す。
「どうしても煩かったら、鞘に入れれば静まりまさぁ」
サイトはデルフリンガーを受け取る。
「思ったより安く済んだわね」
「じゃ、改めてよろしく頼むぜ。デルフ」
「おうよ。よろしくな、相棒」
背中にデルフを背負う。
今度はシンが主人と話す。
「なぁ、投げナイフが欲しいんだ。良い物はないか?」
「投げナイフですか?少々お待ちを…」
奥に入って、すぐに帰ってくる。
「コレはいかがですか?評判の高い鍛冶師のモノです」
「…よし、買おう。12本くれないか?」
「12本なら、20ですね」
「はいよ」
支払い、投げナイフを購入。
「ねぇ、ダーリンはもっと大きい剣を買わないの?」
キュルケがシンに尋ねる。
「大きすぎると動きが制限されるからな。基本は動きを邪魔しないナイフやダガーだな」
「考えているのね」
「戦場じゃ、動作が遅いのは死に繋がりやすいからな」
投げナイフを貰うと、シンたちは武器屋を後にした。


シルフィードに乗って、学園へと戻ってきたシンたち。
ルイズとサイトは馬だったらしく、シンたちの後に帰ってきた。
太陽が沈み、月が姿を現した時、シンとサイトは広場へと来ていた。
「二つの月か。…やっぱり俺の世界とは違うんだな」
サイトの言葉にシンが返す。
「俺の世界も月は一つだ。それぐらい見てたんだろ?」
「こっちの月には基地なんか建てられてないぜ。ましてやプラントなんて夢物語みたいな話さ」
「…そっちでの俺は、映像の中に出てくるんだろ?」
「あぁ、ホントにビックリだよ。アニメに出てきたキャラがいるんだから」
「お前から見て、俺はどんな奴だった?」
その問いに、サイトは考える。
「う~ん、何だろう?悪く言えば、まだまだ子供だなって。国家元首の人に噛み付いたりして、本当にガキだなって感じがした」
「厳しいな。まぁ、確かにあの時の俺はまだまだ青臭いガキだったよ。一国家のお偉いさんに暴言を吐くわ、上司の命令に違反するわで、自分の考えだけを押し付けるただの八つ当たりに過ぎなかった」
空を見上げる。
赤と青の月が重なりつつある。
「アレから二年経つと、自分やあの人たちを客観視できるまで落ち着いたよ。あの人たちも自分達が掲げる平和を取ろうとしたんだって。デスティニー・プランも一つの正義で、あの人たちが掲げた自由な世界も一つの正義だって」
シンはサイトに視線を戻す。
「割り切ったとは言えない。でも、どちらかが正しいなんて俺には分からないから、あの人たちが掲げる平和を信じてもいいかもしれない。俺のような奴やレイやステラのような戦争の被害者を出さない平和な世界を」
「二年って…今何歳?」
「19だな」
「……今まですごい私語だったんだな」
「いや、今までどおりでいいぞ。敬語は少しこそばゆいんだ」
「…分かった」
サイトは右手を差し出す。
シンも右手を差し出す。
「よろしくな、シン」
「こちらこそよろしくな、サイト」
握手を交わす。
「あ、見つけたわよ。こんな所で何してるのよ」
声がする方向を見ると、ルイズがいた。
「少しシンと話してただけだよ。ルイズは何で来たんだ」
ルイズは話辛そうにしていたが、口を開ける。
「練習よ、練習。魔法が使えるように頑張ってるのよ」
近くの石に向けて呪文を唱える。
杖を振るが、石とは離れた場所が爆発する。
「あぁん、もう。なんで違う所で違う呪文になるのよ~!」
「ルイズ、虚無について調べて何か分かったか?」
シンが問う。
「ここ数日で図書館にある虚無が書かれてそうな本は読んだけど、全然よ。どの本もほとんど『神祖ブリミルが使う呪文』っていう一点張りよ」
「まぁ、根気強く調べるしかないさ。……いざって時はあの人に頼むか」
呟いた小声は、
  ――ドゴォォォォン
爆音に似た音に掻き消された。
「な、何だ!?」
「本塔の方から聞こえたわ!?」
ルイズとサイトが慌てていると、シンは本塔の方へと走っていき、二人も追いかけるように走る。
「ゴーレム!?」
「で、でかっ!?」
そこにいたのは、20メイルはあろうかというゴーレム。
その拳を本塔に殴りつけていた。
「あの場所って、確か宝物庫のはずよ!?」
殴っていた場所は宝物庫。
ゴーレムを使う盗賊のメイジ。
「『土くれ』のフーケ、見つけたぜ!」
そう言うと、シンは懐からカメラを取り出す。
「な、なんでそんなもんがあるんだ!?」
サイトの疑問を無視して、シンは一つのメモリを取り出す。
【BAT】
スタートアップスイッチを押し、カメラにインサート。
すると、カメラが変形し、その姿を蝙蝠に変える。
蝙蝠、バットショットは飛び上がり、ゴーレムに向かう。
「さぁ、行くぜ!」
シンは腰にある一本の短刀を手にする。
一つは刃渡り15cmのナイフ。
構える姿を見て、サイトもデルフを構える。
同時に駆ける。
「地下水、久しぶりに頼むぜ」
「おう、なんかすげーのと戦ってんな旦那。まかせなよ!」
喋るナイフ、地下水と呼ばれるナイフは呪文を唱え始める。
「エア・スラスト」
呪文を唱えると、風が刃の様になって、ゴーレムの腕を飛ばす。
その直後、サイトの一閃によってゴーレムの片足が細切れになる。
バランスが崩れ、ゆっくりとゴーレムは倒れ…なかった。
直後、ゴーレムの足と腕が再生する。
「げっ、再生すんのかよ!?」
「この手のゴーレムは術者の魔力が底を尽きるまで、何度でも再生する。気を引き締めろよ!」
サイトの愚痴に、シンは助言で返す。
ゴーレムは壁から二人へと狙いを変える。
拳を振り上げ、放つ。
「あぶねっ!?」
「くっ!?」
何とかかわすが、さっきいた場所は陥没していた。
「ははっ、ギーシュのゴーレムが可愛く思えるぜ」
「あの後、ギーシュとはどうなった?」
「喋ってみたらいい奴って分かったよ。あいつはこの世界での友達だ!」
二手に分かれ、攻撃を続ける。
が、突如光が見えた瞬間、
――宝物庫の壁が瓦礫へと変わっていた。
「な、何だ!?」
見回すと、杖を掲げていたルイズがいた。
「(や、やっちゃった!?)」
ゴーレムに当てようと呪文を唱え、杖を振るったが、壁に爆発が当たった様である。
その光景を茂みから伺っていたローブを纏う『土くれ』のフーケは手を考える。
「ゴーレムの拳でも破壊できなかった壁を破壊するなんて、どんな爆発の威力だい。でも、これはチャンスだね。何とかしてあいつ等を引き離さないと…」
目に付いたのは、あたふたとしている桃髪の少女。
口に笑みを浮かべる。
「精々頑張りなさいな」
ゴーレムの矛先がルイズへと向かう。
「えっ?」
きょとんとするルイズ。
ゴーレムが走る。
「なっ、やめろー!?」
サイトとシンが慌てて駆ける。
サイトが足を切り、動きを封じる。
すぐに再生するが、シンと地下水の魔法によって再び足が切断される。
その中で、シンは考えていた。
おかしい。
ゴーレムが攻撃をしてこなくなった。
攻撃する俺達よりもルイズを狙いに変えた。
どんどん宝物庫から遠ざかって……
「……しまったっ!?」
見ると、人影が一つ。
目の前のゴーレムが崩れる。
「(目くらまし!?)」
土砂の中、うっすらとさっきよりも小さいゴーレムに人が乗っているのが見えた。
「地下水、エア・スフィアだ」
「あいよっ、まかせな」
風がシン達を囲むように吹く。
砂煙で見えなかった周囲が見えてくる。
「逃げられたか」
バットショットが戻ってくる。
既にフーケの姿は無かった。
宝物庫内の壁には、文字が刻まれていた。
   破壊の杖、確かに頂戴した 土くれのフーケ

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最終更新:2010年02月21日 06:59
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