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東方小ネタ集-03

1


「こんにちわ…あ、上白沢さんもこんにちわ」
「やぁシン、いらっしゃい今日は何をお求めかな?」
「アスカか、こんな所で会うとは珍しいな」
「こんな所とはご挨拶だね、君も」
「ははは、すまない霖之助」

香霖堂にて、珍しい顔合わせ・・・シン、慧音、霖之助
買い物はすぐに済んだから、雑談に花が咲く

「そういえば、ココでは牛乳って無いんですか?」
「ぎゅうにゅう・・・? あぁ、牛の乳の事か
 残念だが、うちでは扱っていないね」
「と言うより、この国では牛の乳を飲む文化は殆ど無いようだ、文献にも残ってはいない」

それは残念だな、といった表情

「外の世界では、酪農も盛んらしいね」
「はい、オレのいた所でも、小さいですけど牧場もありました
 乳搾りとかもやった事あります」
「だが流れ着いた資料によれば大分自動化が進んでいるそうだね
 効率を上げるために牛を常時妊娠させたりしているそうだ」
「そうなんですか…でも何で妊娠させてるんですか?」

「妊娠中や出産直後は乳の量や出が良いらしい
 一年の殆どを妊娠させておいて乳を搾り、残りの期間に体を休ませ
 そして年が明けたらまた妊娠させて…と言った方法を取っているらしい」
「なるほど…牛も大変なんですね…
 牛乳一つとっても知らない事ばかりだったんだな」

「知らない事は知らない、それは仕方の無いことだ
 …それにしても牛乳か、僕も少し興味がわいて来たな
 慧音、牛乳を取り扱うような人妖を知ら…慧音?」
「あれ、慧音さん顔が赤い…」

こ・・・こ、この破廉恥共があああぁぁぁ ! ! !

2010年春、香霖堂壊滅!

2

小さく小さく、けれど存在を主張するその足音は
瀟洒な従者の歩みの音

窓から差し込む光は茜の色
それは、だが朝日ではなく夕日

もっとも、この館に住まう者、この館の主にとっては朝焼け
あと数刻もしない内に闇の帳が落ちて、悪魔達の時間となるのだろう

「…いくら吸血鬼だからって、もう少し早起きしないと健康に悪いわね」

そんな光景とは裏腹、考える事はいささか暢気なものだが
暢気に進めば、さて目指す主の部屋にとたどり着く
どうせ寝ているのだが、一応のノックは怠らない

仮に、万が一に、奇跡的な確率で、もしかして、起きていたら大変だから

「失礼します、お嬢様」

当然だが、万が一以下の奇跡はなどは起こらなかったが

「お嬢様、お目覚めの時間です」

返事が無い、元から寝起きの良いほうではないから当然だが
だから二言目は無く、荒療治、いつものように布団を剥ぎ取る

「お嬢様、おはようございま…す…ふは?」

素っ頓狂な従者の挨拶は、そこに寝ている永遠に幼き月に向けられたものだけれど
果たしてそこにいたのは、幼き吸血鬼レミリア・スカーレット・・・の面影を残す妙齢の

多分に自分と同い年ぐらいの少女がすやすやと、安らかな寝息を立てていた

 ・・・同時刻・・・

ぼやけた視界にまず入り込んだのは
薄汚れた天井と、ほんの少しだけ赤い、外の光
一瞬の思考が、全てを繋げる

「あぁ、仕事に行かないと」

天井は自分に与えられたこの館の物置、赤い光は夕焼けか朝焼け・・・多分前者だ
体にはやたらと違和感がある、昨日は何があったかな・・・思い出せない、まぁいいか

ぐずぐずしてたら咲夜さんに怒られる、早くしないと
気だるさを感じる割には、何故か軽い体を動かしてベッドから降りようとして
床に顔面から落ちた
寝ぼけすぎた、床との距離を間違えるだなんて

痛む顔をさする手から、また違和感を感じる
違和感の正体は、自分がシャツの袖で顔をさすっていたから
それは簡単に分かるけど、サイズが丁度のはずの服の袖で何故?

そういえば違和感は腕だけじゃない
そういえば何故かスースーする足元
そういえば何故か巨大化しているタンスやベッドにドア
そういえば鏡があったな、この部屋には・・・

そう思って鏡を覆い隠す布を剥ぎ取る

鏡に写ってるのはもちろん自分、当然だけど
違う所と言えば、随分縮んだ自分の体、小学生の頃の自分はこんな感じだったかな

頬をつねれば、伝わる痛み
夢じゃない事はは確かだった
「ははは・・・あはは・・・」
どうする事も出来ないから、ただ苦笑いしか出ない
一分もしない内に苦笑いも出せなくなったけど

  •  ・ ・

悲鳴が二つ、悪魔の紅い館から重なりあうように響いた

3


まだ冷たい風が吹く二月の中旬。博麗神社の巫女、博麗霊夢は箒を片手にいつもどおり参拝客が通らない参拝道を掃除していた。
霊夢はざっざっ、と砂ぼこりを払いながら音を立てる箒を一旦止めると、ふと思い浮かんだことをそのまま口にする。

「なんだか甘いものが食べたい気分ね」

「そう思って持ってきたぜ」

突然の後ろからの返事に、しかし霊夢は特に驚く素振りを見せず振り返る。

「持ってきたってなにをよ?」

振り向いた視線の先にあったのは、黒いとんがり帽子に箒を片手に持った典型的な魔女の姿をした少女――案の定、霧雨魔理沙だった。
魔理沙はふふん、と不敵に笑うとおもむろに自分が被るとんがり帽子の中へと手を突っ込むと、意気揚々と中から四角い箱を取り出して見せた。

「これだぜ」

霊夢は意味も分からず差し出された箱を怪訝な表情で見てみる。
黒い包装紙と白いリボンで綺麗にラッピングされた、長方形の形をした箱だ。

「だからなによ、これ?」
「チョコレートだぜ!」

「チョコレートって……あ、そっか。バレンタインよね、今日は」

霊夢が納得したのを見た魔理沙は満面の笑みで言う。

「お返し利子付きで頼む」

「あんたうちを破産させる気? まあ、ありがたくもらっとくわ」

「ああ、早く食べようぜ」

「って、あんたも食べるんかい……」

そうして仲睦まじく話しながら二人は神社の中へと入っていく。
そんな二人を遠くから見つめる視線に、気づくものはいなかった――。




「……で、結局渡せなかったんだ」

シンは手に持った赤い包装紙でラッピングされた箱を両手でもてあそびながら言う。ここはマーガトロイド邸。人形を操る魔法使いが住む家だ。
その主人――アリス・マーガトロイドは今、シンの目の前で机に突っ伏している。

「……はぁ……イテっ」

相変わらず無反応なアリスに嘆息すると、頭に乗せていた――というか乗っかってきた西洋人形がその小さな手でシンの頭を叩く。
この人形はアリスが操る人形の一体で、名前は上海。そのとても人形とは思えない動きはまるで意思を持っているようだが、実際はアリスが魔法で操っているらしい。
シンは訪れた時から無言で机に突っ伏すアリスの代わりに、上海から事の経緯を聞いていた。

「でもなんで渡すだけ渡さなかったんだよ? せっかく頑張って作ったのに」

アリスがチョコレートを作るのを、シンは近くで見ていた。というかなぜか材料を買い出しに行かさせられたシンだったが、友達に先にチョコを渡されただけでアリスが落ち込んでいるのか理由が分からなかった。
「…………」

「なあ……いい加減黙ってないでさぁ――」

――ぐうぅぅぅ…

その時、突然シンの腹部から子犬のうなり声のような音が――ぶっちゃけ空腹音が部屋に響いた。

「…………」

今度はシンが黙り込む番だった。
するとようやくアリスも顔だけ上げた。今日始めて見たアリスの整った顔はしかし、今は不健康に青ざめ、泣き腫らしたらしい目元は真っ赤に充血しており、正直、酷い。
だがアリスはそれは特に気にしていないのか――どうでもよくなっているのかもしれないが――普通に言ってくる。

「……またお腹空かせてるの?」

「……うん。最近金欠で」

すると再び顔を伏せて、アリスは投げやりに声を投げてくる。

「なんならそのチョコ、食べてもいいわよ」

「いや、そういう訳には……」

「どうせバレンタインなんてとっくに過ぎちゃったんだし。それに一度地面に落とした物を魔理沙に渡す訳にはいかないでしょ」

「俺には良いのかよ……」

呟くが、アリスからは返事はない。しばし迷ったが、最近はカロリーが摂れていないのも事実。色々気にはなったものの、結局お言葉に甘えさせさせてもらうことにした。
リボンを解き、箱を開くとそこにはハートの形をしたチョコレートが一つ納まっていた。ただし――

「………うわ、上手い具合に割れてるし」

ハート型のチョコレートは真ん中から綺麗に真っ二つに割れていた。恐らく落とした際の衝撃で割れてしまったのだろうが、ここまで見事に割れているのを見るとなんだか居た堪らない気持ちになる。
シンはちらりと横目でアリスの様子を見つつ、半分になってしまったハートを齧ってみる。シンには少し甘すぎるが、貴重なカロリー源として有り難く咀嚼する。

「うん、おいしいよ」

「あっそ……」

「ほら、アンタも食べてみろよ」

アリスにもチョコの片割れを差し出すが、顔を伏せたままピクリとも動かない。

「ほら、アーン」

「…………」

「アーンしろって。ほら」

しばらく無視していたアリスだが、とうとう根負けしたらしい。溜め息を吐いてこちらへ顔を向けるとその小さな口を開き、そのまま口に入れてやる。
黙々と口を動かして飲み込むと、アリスの目に再び涙が滲む。

「う、ううぅ……魔理沙ぁ……」

結局、机に突っ伏して嗚咽に肩を揺らすアリスの頭をポンポンと叩いてやりながら、とりあえずシンはチョコを二口目に齧り付くのだった――。





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最終更新:2010年03月06日 17:45
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