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仮面ライダーW 第7話『不吉のC/後悔の無い選択』

「使い魔君、少し君と戦いたいのだが、いいかね?」
朝、『女神の宿』の酒場で、ワルドがサイトにそう言った。
「何でですか?」
当然の疑問を口にする。
「(任務の最中で、何を言っているんだこの人は?)」
シンも同じ思いであった。
明日までは船が出せない事もあって、暇であることは間違いない。
だが、その中で私情を挟むのは如何なものなのか。
「君がルイズを守る力を持っているのか見極めたいのでね」
にこやかに言うワルド。
その表情に、カチンと来たサイトはその申し出を受ける。
「ワルド様、危険です!サイトも、やめなさいよ!」
ルイズが忠告するが、二人は聞かない。
「何処でやるんですか?」
「この町には修練所がある。そこでやろう。よければ、君も来るかい?」
シンへと話を振る。
「二対一はルール違反だと思いますが?」
「何、それぐらいを相手に出来なくては、隊長とは呼ばれないよ」
まるで、二人など軽く倒せるような言い分にサイトは顔をしかめる。
「(心理戦…既に戦いを始めているのか。ならば、あえて乗ってやろう)」
「分かりました。御一緒しましょう」
「では、行こうか」
ワルドに続いて、サイトとシンが出て行く。
「言っておくがお前ら、見学には来るなよ?」
そう忠告した後、シンは宿を後にした。
「今のどういう事かしら?」
キュルケが言う。
「さぁ?彼の考えている事はあまり分からないね」
ギーシュが食事後の紅茶を飲む。
「…………」
無言でドーパントが落とした羽根を見つめるシャルロット。
「…それって、王女様を狙った犯人のものよね?」
「そう、ドーパントの手がかりの一つ」
「見た感じはナイフね。…シャル、聞いてもいい?」
何時になく真剣な顔でキュルケは聞く。
「貴女は何時ダーリンと知り合ったの?」
「……何故そんな事を聞くの?」
「平民と貴族が話す機会なんて先ず無いわ。それにダーリンと貴女は『召喚』以前から知り合っているはずよ。その上、相棒といわれるまでの信頼関係、極めつけは『仮面の戦士』」
一息ついて、再び話す。
「話す気はない?貴女とダーリンの『出会い』を」
ルイズとギーシュも黙っている。
「…今は無理。彼無しで、私達の『出会い』は話せない。それに…」
シャルロットが続ける。
「私も、彼に出会う前の『彼』をあまりよく知らない」
「『彼』の過去は、私にも分からない。無理に聞いても彼が話すかどうかも分からない。それが辛い過去なら、私は聞かない事にしている」
それを聞いてキュルケが思い出すのは、あの悲しげな目。
「確かに、無闇に聞けばダーリンを傷つけるかもしれないわね」
「…彼は強い。でも、誰にでも弱さがある。当然私にも、そして彼にも」
「それを支えていきたい、って?」
シャルロットが頷く。
「本当に信頼しているのね、お互いに。でも、諦めるつもりはないわよ」
その言葉を聞いて、シャルロットは安心しながらも、キュルケを恋敵と再認識した。


その夜
サイトはベランダにて、激しく落ち込んでいた。
理由は、ワルドに手も足も出せずに敗北したから。
鼻っ柱を折ってやろうと意気込んだが、シンのかく乱作戦に乗らずに突っ込み、完敗。
シンですら、数瞬の差で負けた。
去り際に、「君ではルイズを守れない」と言われ、さらに落ち込んだ。
そして今夜は二つの月が重なり、一つに見えるため、地球の月を思い出し、ホームシックにまでなっている。
「帰りてーなー」
ぼそりと呟く。
誰も聞く人はいないが、その後ろからシンがやってきた。
「何やってんだ、サイト」
「……」
「負けたことがそんなにショックか?」
図星なのか、ピクッと反応する。
「仕方ないさ。お前はろくな訓練も受けてない戦闘の素人だ。奴さんは隊長を任されている軍人。どっちが強いかなんて分かりきってる」
「でも、あそこまで言われて……俺、どうすりゃいいんだ?」
シンは何を言えばいいのか考え、浮かんできた言葉を口にする。
「いいか、サイト。お前には俺みたいになって欲しくないんだ。感情にまかせて、暴力を振るう存在だけにはなって欲しくないんだ。一度負けたからってなんだ。そんなんで立ち止まるほど、お前は弱くないだろ。お前がやれるだけの力でお前にできる選択をしろ。いいな」
そう言うと、シンは出て行く。
「それとサイト。熱くなりすぎれば、視野が狭まる。頭の中は冷静に、でも心の中で熱を持てよ」
忠告をして、今度こそ出て行く。
途中でルイズとすれ違う。
「(しかし、あのワルドって貴族。どうにもいけ好かないな)」
朝の挑発的な言動や、観察するような目。
戦いの最中にも、力量を測るかのような目でこちらを見ていた。
「(それに……大げさすぎるサイトを追い詰めようとする言葉)」
出せば出す程、あのワルドという男から疑問が上がる。
「(この任務の裏で、何を企んでいるんだ?)」
その時、一階から悲鳴が上がる。

一階には傭兵の集団がゾロゾロと現れていた。
シャルロットやキュルケ達が魔法で応戦するが、相手は多勢に無勢、このロ・ラシェールの傭兵達が押し寄せているのか、手に負えない。
「くそ、状況は良くないな」
全員ケガをしていない事を確認すると、シンは安心する。
サイトとルイズも一階に下りてくる。
「もしかして、昨日の連中!?」
「そうらしいな。まったくアレで懲りてくれればいいものを」
キュルケが杖をいじって呟く。
「おそらくアイツ等は私達の精神力が切れた頃を見計らって一斉に突撃してくるつもりよ。どうするの?」
「僕のワルキューレで防いでやる」
ギーシュはそう言うが、顔は青ざめている。
「アンタの力じゃ一個小隊が関の山ね。相手は数十人の傭兵達よ」
「やってみなければ分からないじゃないか」
「無理だ。数で押し切られるのが目に見えている」
ワルドが低い声で言う。
「いいか、諸君。このような任務は半数が辿り着ければ、成功となる」
無言で全員が聞く。
シャルロットが杖で自分とシンを指す。
「私達が囮になる。残りは桟橋へ」
「王女から依頼されてるが、ここで死なれたら困るからな」
「待てよ、お前等だけ残してなんて行けるかよ!」
サイトが反発する。
「サイト、敵が戦力分断が狙いなら、なるべく少数が残った方がいい。いざとなったら逃げる。戦術はそんなもんだ」
「でもよッ!」
「安心しろ。死ぬつもりは無い。だから、護れよ」
そういうと地下水を取り出す。
「仕事しろよ、地下水」
『あいよ、任せなって旦那!』
それを聞き、地下水を投げつける。
が、何時もの様に当たらず、カラカラと転がる。
「へっ、中々良さそうな短剣だな」
傭兵の一人が屈んで地下水を拾うと、一瞬、体がビクンと震える。
「おい、大丈夫か?」
傭兵のもう一人が声をかけると、ゆっくりと立ち上がり、いきなり風の魔法で傭兵の集団を薙ぎ払った。
地下水は、魔法を誰でも使えるようになると同時に、相手の体を乗っ取る事ができる。
精神力の強い者が持たなければ、たちまち乗っ取られ、同士討ちを始めて混乱を促す。
見えないかの如く、誰にも知られず。それが地下水と呼ばれる所以である。
当然、いきなりのことで、傭兵達はパニック状態。
地下水に乗っ取られた傭兵に攻撃を加える者もいるが、男が地下水を投合。
別の男の手に渡り、再び乗っ取る。
傭兵の誰もが、誰が敵か味方なのかを区別できなくなっていった。
「俺を攻撃するな!まさか、貴様も!?」
「違う、俺じゃない!アンタだって味方なのか!?」
「目を覚ませ!俺は違う!」
毒のように混乱が広まった。
「今だ、走れ!」
シンが叫ぶ。
「諸君、行くぞ!迷っている暇は無い!」
ワルドが駆ける。
「シン、死んだら許さねぇからな!」
「あ、ありがとね…」
「君達の勇気に感謝するよ」
「ちゃんと帰ってきなさいよ」
それぞれが言葉を残し、裏口へと向かう。
「さて、そろそろやるか」
シンの言葉にシャルロットが頷く。
メモリを取り出し、スイッチを押す。
【SPIDER】
左腕に着けているスパイダーショックへとインサート。
ライブモードとなって、糸を思わせるワイヤーを吐き出す。
それでまとめて傭兵達を縛る。
既に地下水のおかげで傭兵は半分以下。
シンがもう一本の短剣を取り出す。
「さぁ、残りを片付けるとするか」
外へと飛び出し、向かってくる傭兵の剣を受け止める。
数人がシンの方へと向かうが、一人を蹴り飛ばし、跳躍。
固まった場所にシャルロットが竜巻で傭兵達を吹き飛ばす。
地下水を持った男から、シンは地下水を回収。
「『マッド・ハンド』」
向かってくる傭兵達の足元から土の手が伸びる。
掴まれ、こける傭兵達。
その隙にスパイダーショックがワイヤーで縛る。
「この虫ッ!」
傭兵が剣を振るが、スパイダーショックは逆に剣を弾き、ワイヤーを絡ませる。
「クソ、舐めやッ!?」
スパイダーショックが大きく体を反らすと、男が宙に浮き、ゴツンッ!と頭が地面にぶつかり気絶。
「二人だけなのに、なんだこの強さは!?」
「つーかよく見たら、この男、あの『ガリアの赤鬼』じゃねーか!?」
「貴族ぶん殴る奴が何でこんな所にいやがる!?」
「そんな奴相手に勝てるわけねーよ!ずらかるぞ!」
残りの傭兵が怖気づき、我先にと逃げる。
「とりあえずは死人も出なかったか。呼ばれ名も役に立つな」
一通り片付き、安堵の表情。
「用意が周到すぎる」
「だな。何故俺達を狙ったのか…聞く必要があるな」
うめき声を上げる傭兵を見つける。
スパイダーショックがワイヤーを絡め、身動きを封じる。
「一つ聞きたい。誰に雇われた?」
単刀直入に切り出す。
「ハッ、誰が教えるかよ!」
傭兵は白を切る。
「『マッド・フォール』」
途端に、傭兵の体が沈む。
「ヒッ!?な、何を!?」
「それ以上白を切るんなら、体を沈めていく。言えば解除しよう」
少しずつ男の体が沈んでいく。
「あぁ、言いたくないんなら別に喋らなくていい。土の中に沈みたいんならな」
既に体は半分埋まっている。
「わ、分かった!話す!だから、これを止めてくれー!!」
「誰に頼まれた?」
「一人の男にだ!金をやるからここに来る貴族達を殺せって!」
「姿は見たか?」
「仮面を被っていて見えなかった。長身の貴族だった!」
「名前は聞いたか?」
「い、いや聞いていない!うまい話だったから乗っただけだ!」
「他に言ってたことは?」
「た、確か『レコン・キスタ』と小声で言っていた!」
情報を聞き出して、男を持ち上げ、魔法を解除。
マッド・フォールは水と土の複合魔法。
足止めに使いがちだが、実際はそのまま土の中へと埋める事もできる非常に危険な魔法である。
埋まるといっても、土と同化するわけではないので、掘り出せば助かる。
今回は非常に遅く、かつ範囲を抑えたため、尋問用という用途である。
「とりあえず、サイト達と合流するか」
シンがそう言い、後ろを向く。
その後ろから羽根が飛来する。
「何!?」
「シンッ!?」
スパイダーショックが飛び、羽根を弾いていく。
『クッ、惜しかったか』
夜に紛れるような漆黒の色。
両腕の鳥を象徴する一対の翼。
頭にある鋭き嘴。
烏の記憶を持つクロウドーパントが月を背後に羽ばたいていた。
「お前が王女を襲った犯人か」
「…狙いは何?」
『私は、今の腑抜けたこの国が嫌いだ!』
クロウドーパントが降りると、怒鳴りながら話す。
『戦争をせずに、小国家のまま平和を維持する事しか出来ないこの国が嫌いだ!だからあの男からメモリを買い、王女を抹殺し、戦争を起こそうと考えた。だが、その計画も、貴様のせいで潰された!』
クロウドーパントがシンを指す。
『だから、あの男の誘いに乗った!アルビオンへと向かう連中を邪魔すれば、アルビオンとトリステインで戦争が起こると!私が戦場へ赴けると言った!』
「てめぇ、何者だ!?」
ドーパントが変身を解除。
そこには、
「ミスタ・ギトー…!?」
トリステイン学院の教師、『疾風』のギトーがいた。
「私の力を存分に発揮できる場所とついに巡り合える!その為の魔法!そのためのこのガイアメモリ!」
「想像以上にメモリが侵食していやがる!?」
ギトーがシンとシャルロットに向かい合う。
「だが、計画を止められたら意味が無い。だから、」
【CROW】
胸元にメモリを注入。
『君達にはここで果ててもらおう』
「お前の言い分には感服するぜ!反吐が出るほどにな!」
怒りが混じった口調でシンはダブルドライバーをセットする。
【JOKER】
「いくぜ、タバサ!」
「絶対に止める…」
【CYCLONE】
「「変身」」
【CYCLONE/JOKER】
Wへと変身。
『私の邪魔はさせない!』
翼を開き、羽根を射出。
Wが一つ一つを手や足で弾く。
「くっ、数が多すぎる!こうなりゃ!」
【LUNA】
右のスロットへとインサート。
【LUNA/JOKER】
ルナジョーカーへと変身。
腕を伸ばし、羽根を次々に叩き落とす。
『ならば、これはどうです!』
クロウドーパントが飛来。
高速で近づき、剣の如き翼で攻撃。
「うわッ!…グハァ!?…クッ、あの野郎!」
翼と嘴による追撃。
数回も喰らい、Wはフラフラと立ち上がる。
『これで、終わりですかな!』
余裕を見せながら、クロウドーパントが最後の一撃を当てようとする。
「舐めんなよ!」
【METAL】
メタルメモリを起動し、左のスロットへインサート。
【LUNA/METAL】
ルナメタルとなって、メタルシャフトのマウントを解除。
それと同時にシャフトを振ると、一方のバーがクロウドーパントへと伸びると、雁字搦めに縛られる。
『な、何だこれは!?』
「へっ、オリャーー!!」
一本背負いの要領で、クロウドーパントを地面へと叩きつける。
不意打ちだったのか、相当のダメージを受けるクロウドーパント。
「さぁ、制裁だ」
伸縮自在のシャフトを振るい、打撃を与えていくW。
クロウドーパントが再び空へと上がる。
『シン、空の上なら問題なく撃てる』
「あぁ、二度も同じ手が効くか」
青色のメモリを取り出す。
【TRIGGER】
メタルメモリを引き抜き、新たにトリガーメモリをインサート。
【LUNA/TRIGGER】
左半身が青を基調とする色へと変化。
左胸に光弾銃『トリガーマグナム』をマウント。
『幻想』の中の『銃撃手』、黄色と青き戦士『ルナトリガー』へと変身する。
『たかが銃ごときで!』
クロウドーパントが嘲笑う。
この世界の銃はあまり普及しておらず、あるのはマスケット銃など命中率には乏しい武器であった。
しかし、それはこの世界での話。
「どうかな?」
その言葉に、Wは意味ありげに呟く。
胸のトリガーマグナムのマウントを解除。
『そんなもので私を倒せるとッ!?』
近づこうとした瞬間に、既に弾丸が目の前にあった。
『グハァ!?ば、馬鹿な…なんだそれは!?』
「アンタの言った通り、ただの銃だが?」
そんな銃があるはずが、と言おうとしたが、また弾丸が放たれる。
かわしたと思った瞬間、横から衝撃がくる。
『い、今…何が!?』
――見間違わなければ、銃弾が、曲がった!?
ありえない状況にクロウドーパントは混乱した。
トリガーマグナムはこの世界の銃の威力、速度、連射性、全てのポテンシャルにおいて数倍勝っている。
加えて、ルナの力によって、トリガーマグナムから放たれた弾丸はWの意思で自在に曲げることができる。
Wがトリガーメモリを引き抜くと、トリガーマグナムへとインサート。
【TRIGGER――MAXIMUMDRIVE】
バレルとフレームを連結し、ノーマルモードから必殺のマキシマムモードへと変える。
『ヒッ、ここは撤退を…』
羽ばたき、逃げ去ろうとするが
「逃げられねぇぜ」
Wの目はクロウドーパントを捉えている。
トリガーマグナムを構える。
「『トリガーフルバースト!!』」
引き金を引く。
いくつものエネルギー光弾がクロウドーパントへと寸分違わず放たれる。
『グワァァァァーーー!!?』
全ての光弾を喰らい、地に落ちるクロウドーパント。
メモリが排出されて飛び出し、破壊。
「私の…望み……が…」
「お前の望みは、絶対に叶わない」
その言葉で、ギトーは気絶する。
ドライバーを戻し、メモリを引き抜く。
シンへと戻り、シャルロットが目を開く。
「サイト達が心配だ」
「…シルフィードで合流する…?」
「おっ?」
歩き始めたとき、地面からナニかが現れた。

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最終更新:2010年05月01日 01:14
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