ルイズ達は船でアルビオンを目指していた。
そして、その時に空賊と思われる黒い船に遭遇。
脅しの大砲を一発放ち、停船を命令。
力の差によって、停船を余儀なくした。
空賊によってルイズ達は捕らえられてしまい、積荷も奪われる。
食器を片付けに来た一人が「お前達は貴族派か?」と質問してきた。
貴族派と言えば、無事に港へ送っていくといったが、ルイズが正直に王党派の使いと喋ってしまった。
サイト、キュルケ、ギーシュが騒いだが、空賊は「御頭に報告してくる」と言って出て行った。
暫く待たされ、御頭と呼ばれる男の前に連れて行かれた。
そこにいたのは、なんとアルビオンの王子、ウェールズ・テューダーであった。
この船は王党派の船であり、ルイズの正直が実を結んだ結果だった。
ルイズはアンリエッタから預かった手紙を渡し、目的を伝える。
ウェールズ王子が受け取り、手紙はニューカッスル城にあるため、船は城へと足をはこぶことになった。
そして、手紙を受け取ったルイズ達は今、最後のパーティに出席している。
最後の抵抗として、最期まで戦うというのだ。
アルビオンの王、ジェームズ一世の言葉も、貴族達には届かない。
届くのは、進めという命令のみ。
王は小さく「ばかものどもめ…」、と呟き、杖を掲げる。
「よかろう!しからばこの王に続くがよい!諸君!今宵は良き日である!重なりし月は始祖からの祝福である!無礼講じゃ!食え、飲め、踊れ、楽しもうじゃないか!」
その言葉で辺りは盛大な騒ぎで包まれる。
「ここに……」
「うん?」
サイトの呟きをギーシュが聞き返す。
「シンがいたら、アイツはきっとこの人達を力尽くでも止めるんだろうな…」
サイトの言葉にキュルケが返す。
「確かに、勝ち目の無い戦いに赴くなんて、無謀だと思うけど」
「彼らは勇敢に死ぬのだ。とても名誉だとは思うが?」
サイトが首を振る。
「アイツは、命がどれだけ尊いのか分かってる。泥被っても、何言われても、命を一番に考えてる。戦場で生きて帰るのは恥でもなんでもないってアイツは分かってるんだと思う」
――どんな命も、生きたいんなら生きたいんだろうな。
嘗てシンの『友』だった男の台詞をサイトが呟く。
「少しいいかな?」
ワルドが尋ねてくる。
「なんでしょうか?」
「明日、僕とルイズはここで結婚式を挙げる」
その言葉にギーシュとキュルケは固まる。
サイトは、驚くこともせずに言葉を耳に入れる。
「こんな時に、こんな場所でですか?」
キュルケが尋ねる。
「勇敢なるウェールズ皇太子に、是非ともお願いしたくてね。皇太子も快く引き受けてくれた。決戦の前に、僕らは式を挙げる。君達も出席してくれたらと思うが、いいかね?」
ワルドが問う。
「えぇ、いいですわ。宿敵の結婚式ですもの」
「そうですね…学友のよしみで僕も出席しましょう」
キュルケが笑いながら、ギーシュが少し考えた後に答えた。
「君はどうするね、使い魔君?」
いまだ答えを出さないサイトにワルドが尋ねる。
「……俺は、帰ろうと思います」
「そうか、分かった。席は用意しよう」
そう言うと、ワルドは去っていく。
「……悪い、少し風に当たってくる」
そう言うと、サイトは外へと出て行く。
「うーん、サイトらしくないな。いつもはのほほん、としているのだが…?」
ギーシュが言うと、キュルケが返す。
「あれでも、ルイズに気があるんじゃないかしら?」
「だとしたらショックは大きいかもね。婚約者がいると知って」
「貴族に恋する平民。本に例えるとそんなタイトルね」
「本みたいに報われる話では、ないからね」
そう言うと、ギーシュはワインを飲む。
サイトは夜風に当たりながら、月を眺める。
「(ここに来てから、月ばっかり見てるな)」
他人事のように考える。
『悩んでるねぇ、相棒』
何時の間にか、デルフが鞘から少し出ていた。
『俺は相棒じゃないし、尚且つ人間でもねぇ。でも、相棒の手助けくらいは出来るはずだ』
「デルフ……俺、何でこんなに悩んでるんだ?」
頭にある問題の種を口にする。
「俺はルイズの使い魔だ。罵られたり、痛い目にあったり、犬だなんだの言われたりして、辛いと思う時もある。でもさ、時々見せる照れた顔とか、楽しさや嬉しさで笑っている表情とかを見るとさ、なんて言うんだろう…それだけで俺も嬉しいと思えるんだ。ワルドが来た時、頭ん中でもやもやしてるのが出来て、どんどん大きくなってるんだ。どうしたんだろ、俺」
『(相棒…ソイツは恋ってやつだよ。しかも、相棒はそれにまだ気づいてない。なんとまー、甘酸っぱいねー)』
心(?)の中でデルフは思う。
『相棒、おめぇがあの嬢ちゃんにどんな思いを抱いてるかは、おれっちは分からねぇ。自分で考えて、自分で行動しな』
「あぁ、ありがとなデルフ」
鞘へとデルフを戻す。
「考えろ……か」
そう言いながら、サイトは戻っていった。
翌朝
礼拝堂にて、礼装姿のウェールズと結婚を見に来たキュルケとギーシュがルイズとワルドを待っていた。
扉が開き、借り受けたドレスを身に纏ったルイズとワルドが現れる。
ギーシュは感心し、キュルケは小さく微笑む。
ウェールズの前に二人が立ち、式が始まる。
「新郎、ジャン・ジャック・フランシス・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、このものを愛し、敬い、二人が死を別つまで、妻とすることを誓うか?」
「誓います」
続いて、ルイズに視線を向ける。
「新婦、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。汝は始祖ブリミルの名において、このものを愛し、敬い、二人が死を別つまで、夫とすることを誓うか?」
返事はない。
ルイズは俯き、顔を上げない。
「新婦?」
「ルイズ?」
ウェールズとワルドの声も聞こえていない。
ルイズが顔を上げる。
新婦の冠を外し、ワルドへと突き返す。
「申し訳ありません、子爵様。私は、貴方と結婚できません」
紡がれた言葉は結婚の拒否。
「新婦よ、そなたはこの結婚を望まぬのか?」
ウェールズの言葉に、申し訳なさそうにルイズは言う。
「その通りで御座います。お二人と、友人である彼女達に大変失礼でありますが、私をこの結婚を望みません」
「……子爵殿よ、新婦が望まぬ以上、式を続ける事は出来ない」
ウェールズの言葉を無視して、ワルドはルイズの手を取る。
「ルイズ、緊張しているんだろ?そうでなければ君が僕との結婚を望まぬはずがない」
「ワルド様、貴方に抱いていたものは憧れだったのよ。恋だったのかもしれないけれど、今は違うわ」
ルイズは断言する。
すると、ワルドの表情が変わり、野心を剥き出しにした獣がそこにいた。
「ルイズ、世界だ!僕は世界を手に入れる!その為にも、君の中にある力が要るんだ!」
「私にそんな力なんて無い。……ワルド、貴方は私を見ていない。貴方が見ているのは私の中にあるかもしれない力だけ!私を愛してなんかいない!そんな人と結婚なんてするもんですか!」
狂気じみた目と表情を見て、ルイズは逃げ出そうとするが、手を掴まれ動けない。
「そうか、ならば目的の一つは諦めよう」
「目的?」
今までが嘘のように静かな声で言うワルド。
「そうだ。この任務における僕の目的は三つ。一つはルイズ、君を手にいれる事だ」
「絶対に嫌よ!」
ルイズの言葉を軽くいなす。
「二つ目、君の服のポケットにある手紙」
言われて、ポケットを守るように手を押さえる。
そして、ワルドの正体に気がつく。
「ワルド、貴方まさか…ウェールズ王子!?」
「そして三つ目は……」
ルイズの叫びの後に、ワルドが呪文を詠唱する。
「貴様……!?」
「ウェールズ王子、貴方の命です」
ウェールズは青白く光る杖によって貫かれる。
「貴方が、レコン・キスタ…!?」
「そうさ。まったく、非常に残念だよ、ルイズ」
杖を引き抜き、目をルイズへと向ける。
後ろのキュルケやギーシュが杖を持つが、詠唱が間に合わない。
「さよなら、ルイズ」
「助けて、お願い……」
命乞いの言葉。
だが、その言葉の意味は違う。
ここにはいない、誰かに助けを求める。
「助けて、サイト!!」
ドアが勢いよく開き、人が駆ける。
「ワルドーー!!!」
サイトはイーグル号の艦上で、心ここに在らずの状態であった。
いまだにスッキリしない頭の中には悩みがあった。
――自分で考えて、自分で行動しな。
昨夜のデルフの言葉が頭の中で響く。
――お前がやれるだけの力で、お前にできる選択をしろ。
シンに言われた言葉が響く。
「(俺にできる選択…)」
頭よりも体が先に動く。
それを体現する通りに、サイトは船から降り、走り出した。
『相棒…決心した顔してるねぇ』
「このまま終わるなんてできるか!後悔するような生き方なんて、俺は絶対に嫌だね!」
途端に、サイトの左目に映像が映される。
「(何だ、いったい…?)」
見れば、ワルドの獣のような目。
「ルイズが見てる光景!?」
走りながら驚くサイト。
温和な顔ではなく、獣と呼ぶに相応しい顔のワルドが怒鳴る映像が左目に見える。
デルフを左手に持ち、ルーンが輝く。
今まで以上の速さで駆け抜ける。
「(間に合え……!)」
ワルドが王子であるウェールズを魔法で貫く。
礼拝堂まであと少し。
「(間に合え…!!)」
次の獲物を喰らう目でルイズを見るワルド。
……すけ…、お…が……。
声が聞こえる。
ありもしないのに、確かに聞こえた。
「(間に合え!!!)」
ドアを突き破る。
――助けて、サイト!!
――来てやったぜ、ルイズ!!
「ワルドーー!!!」
勢いのまま、サイトはワルドへと切りかかる。
振り下ろされる剣をワルドは杖で受け止める。
距離を取ると同時に、ルイズを抱え、ギーシュ達のいる場所へと降ろす。
「サイト!?」
「帰ったんじゃなかったのかい!?」
ルイズ達が驚く。
「やり残したことがあって、おめおめと帰れるかよ!」
「ふむ、君が来るとは想定外だが、僕に勝てなかった相手が来たところで!」
「ぜってぇにお前だけは許せねぇ、いくぜデルフ!」
踏み込み、振り切る。
ワルドが飛び、かわす。
「ルイズが、どれだけお前を信頼してたか、憧れてたお前にどれだけ!」
「信用するのは其方の勝手だ!」
魔法を唱えると、風の魔法『ウインド・ブレイク』の衝撃波がサイトを襲う。
受けきろうとするが、吹き飛ばされる。
壁に当たり、呻き声を上げるが、立ち上がる。
「てめぇに一太刀入れば、俺にも可能性があるよな!?」
「入れればの話、だがねッ!」
再び向かってくるサイトに、再び『ウインド・ブレイク』で吹き飛ばす。
それでも、サイトは立ち上がる。
『思い出した!』
途端にデルフが叫ぶ。
「何だよ、こんな時に!?」
『いや~、昔のオレっちの使い手も同じガンダールヴだった。懐かしいね~、なんせ6000年以上も前の話だ』
「昔話なら後にしろ!」
『懐かしいね~、泣けるね~、嬉しいね~、そうこなっくちゃね、ガンダールヴ!俺もこんな格好してる場合じゃねーな!』
叫んだ瞬間、デルフリンガーが輝きだす。
「で、デルフ。今のは…はっ?」
間の抜けた声を出すサイト。
ワルドが『ウインド・ブレイク』を放つ。
咄嗟に光りだしたデルフを構える。
「剣で防いだところでッ!?」
言葉に詰まったワルド。
放った風は、デルフの刀身に吸い込まれる。
光が収まったデルフは錆付いていた剣ではなく、鋭く光る刀身を持つ姿で現れた。
「で、デルフ?」
『これが本当の俺の姿さ、相棒!いや~忘れてた!そういや、飽き飽きしてた時にテメェの姿変えたんだった!つまらん連中に、面白いこともてんで無かったしな!』
「早く言いやがれ!」
『とりあえず、安心しな相棒!ちゃちな魔法は、俺が喰らい尽くすからよ!この俺、デルフリンガー様がな!』
ワルドは興味深そうにデルフを見るが、杖を構え薄く笑う。
「面白い。なら、こちらも本気を出そう。風が最強といわれる所以、その身で味わうがいい」
サイトが切りかかるが、ワルドはかわしながら、呪文を唱える。
そして、呪文が完成すると、ワルドの身体が分身する。
本体を合わせ、五人のワルドがサイトを囲む。
「分身か!?」
「ただの分身ではない。彼ら一個人が意思と力を持っている。風の偏在(ユビキタス)、存分に味わってくれよ?」
「冗談!」
五人のワルドがサイトに向かう。
呪文を唱えると、杖が青白く光る。
ウェールズを貫いた『エア・ニードル』である。
「杖自体が魔法の渦の中心!その剣でも吸い込めぬぞ!」
サイトがデルフで受け流す。
しかし、相手は五人。
こっちは一人。
「(焦んな、我を無くすな、熱くなりすぎるな!)」
――頭の中は冷静に、心の中で熱を持て。
シンの言葉がサイトの中で響く。
「(心に、熱を!!)」
傷ついているサイトが除々に動きの速さが増していく。
反面、ワルド達は息が荒くなり、速さが落ちる。
「(なんなのだ、この平民は!?)」
鍔迫り合いの中、ワルドが問う。
「何故、死地に戻ってきた?」
「後悔しないためだ!」
「後悔、だと…?」
「俺は、前の俺が許せねぇ!たった一回負けたぐらいでへこたれて、後悔するような選択をした、逃げようとした自分が一番許せねぇんだよ!でもな、シンとデルフに言われた!俺に出来る選択をしろ、自分で考えて決めろってな!」
「なるほど、そして…死にに来たと!」
一人のワルドが突っ込む。
「俺は、死ぬつもりは無い!」
サイトが渾身の力で縦切りする。
杖で受け止めようとした偏在が杖諸共、両断される。
「なッ!?」
ワルドが驚愕する。
「言ったはずだ!俺は死ぬために戻ってきたんじゃねぇ!テメェを倒して、皆と、ルイズを守るために、俺を見失わないように、俺は戻ってきたんだ!」
左手のルーンが今までよりも強い光を放つ。
その輝きを受けて、デルフリンガーも光り輝く。
『いいぞ、いいぞ相棒!そうだ!その調子だ!思い出したぜ!俺の知ってるガンダールヴもそうやって力を溜めていた!いいか、相棒!ガンダールヴの強さは心の震えだ!怒り!悲しみ!愛!喜び!なんだっていい!とにかく、心を震わせな!俺のガンダールヴ!』
サイトが剣を振り下ろす。
数瞬で回避に遅れた一人の偏在が切られ、消滅する。
「き、貴様ッ…!?」
『忘れるな、戦うのは俺じゃない!俺はただの道具にしかすぎねぇ!』
「うおおおおおおッ!!!」
最大の加速。
それに向かった残りの偏在は全て切られて消滅。
残ったワルドとサイトがぶつかり合う。
『戦うのはお前だ、ガンダールヴ!お前の心の震えで、俺を振るえ!』
一瞬のすれ違い。
サイトが膝から崩れ落ちる。
ワルドの左腕は切られ、服に血が滲み付き、左腕が僅かに遅れて落ちる。
「くっ、この『閃光』が遅れをとるとは」
脂汗を浮かべて、ワルドはサイトを睨む。
サイトは疲労が限界に達し、思うように動けない。
『あぁ、相棒。無茶をすればそれだけガンダールヴとして動ける時間は減るぜ。なんせ、お前さんは主人の詠唱を守るための使い魔だからな」
デルフが説明する。
「くっ、あの力があれば、このような失態は……」
「あの力?」
サイトが聞くが、ワルドは杖を振り、切られた腕を持って宙を浮く。
「目的は一つしか達成できなかったが、まぁいいだろう。もうじき直ぐここにレコン・キスタの大群が来る。君達はここで終わりだ。フッフッフ、あーはっはっはっは!」
そう言うと、壁に開いた穴から飛び去っていった。
「あの野郎ッ!」
追いかけようとするが、疲労で走れない。
「おい、大丈夫か!?」
ドアからシンがやってくる。
ギーシュが答える。
「あ、あぁ。でも、ウェールズ王子がワルド子爵によって…」
シンがウェールズ王子の下へと近づく。
「やっぱりアイツが…」
「あぁ。レコン・キスタの革命軍だった」
「クソッ!また、守れなかったのか……」
「それに、ここにレコン・キスタの大群が押し寄せてくる前に、この城が崩れそうよ」
キュルケがそう言う。
「それは大丈夫だ。そろそろ来るはずだ」
突然、地面からモグラが顔を出す。
「ヴェルダンテ、ヴェルダンテじゃないか!」
「ここからシャルとシルフィードがいる場所まで続いている」
各々が穴へと入っていく。
最後に残ったシンとサイトはウェールズへと向かい、供養する。
「俺が、悩んでいなかったら……」
「サイト、悔やんでも仕方ない。理不尽なことは沢山ある。これからも」
そう言うと、シンとサイトは穴へと入っていった。
その数分後、城は崩壊した。
穴は大陸の真下まで続き、シャルロットを乗せたシルフィードに拾われた。
しかし、六人と一匹と大人数を乗せたことがないシルフィードは、
「きゅ、きゅい~」
結構ギリギリだったりする。
「わ、悪いな、シルフィード。頑張れるか?」
「きゅい~、きゅい~」
「頑張ったら、うまいもん作ってやるからな」
「きゅい~~!」
「…い、意外と現金な奴だな」
力強く羽ばたき、王宮へと向かう。
王宮に着いたのは、日が真上に来た辺り。
マンティコア隊に取り押さえられ、ひと悶着があったが、アンリエッタによって、その場は納まった。
その後、アンリエッタの自室にシン達は来ていた。
「姫様、例の手紙は、無事、このとおりでございます」
手紙を見せ、差し出す。
手紙を受け取り、ルイズの手を握り締める。
「やっぱり貴女は私の一番の友達だわ」
「勿体ないお言葉です。姫様」
「王女、魔法衛士のグリフォン隊、隊長であるワルド子爵は革命軍、レコン・キスタと分かりました」
シンが判明した事実を言う。
「まさか…ワルド子爵がレコン・キスタに?」
「本当です」
「そうですか…」
そして、アンリエッタは言う。
「ウェールズ様は、どうでしたか?」
その言葉に全員が俯く。
が、
「彼は、戦場で勇敢に戦い、散ってくる、と言っておられました」
シンが言う。
アンリエッタを除く全員が驚く。
「……そうですか」
俯き、消え入る声でアンリエッタは呟く。
それを見て、シン達は退出する。
「ちょっと、何であんな嘘を言ったのよ!」
ルイズが言ってくる。
シンはそれに返す。
「だったら、真実を伝える方がいいのか?」
その言葉に、ルイズ達は戸惑う。
「本当のことを言えば、何でも解決するわけじゃない。時には、嘘のほうが楽なときもある。でも、俺はこの嘘をつき続けなきゃならない。嘘つきは、相手が気づくか、本人が言って終わる。出来れば、永遠に嘘のままの方が、あの王女には幸せかもしれないな」
そう言い、シンは歩いていった。
「くっ、不覚だ。私が、ここまで追い詰められるとは…」
あの大きな屋敷でワルドはベッドへと横たわっていた。
「中々、侮れん相手じゃったようじゃの。どうじゃ、腕の具合は」
温和そうな顔付き、お父様と呼ばれる人物が言う。
彼の言うように、サイトによって切られたワルドの左腕は、何事もなかったかのように再生されていた。
「えぇ、やはり素晴らしいですよ。この力は」
取り出すのはメモリとドライバー。
お父様と呼ばれる人物が笑う。
「しかし、収穫もあったようだね」
「はい。あの平民の力とルイズに眠る力。あの力をメモリにすれば…」
「そう。我々の夢である『虚無』のメモリ。それがあれば、私達と君の夢が叶う」
「付いていきますよ、カーズ様」
お父様、カーズとワルドが笑いあう。
その様子を見ていたアイシャが不敵に微笑んでいた。
「……シン」
「ん?どうした、シャル」
任務から帰ったシン達は疲れも溜まったからか、自室へと帰っていた。
「私は、貴方の過去を知らないし、貴方に起こった出来事も知らない。でも、これだけは言える」
一息して、話す。
「私は、貴方を信じている。誰がどう言おうと、私は貴方の相棒」
その言葉にシンはぽかんとするが、直ぐにシャルの頭へと手を伸ばす。
「今さらだぜ、シャル。それは俺もだ。お前を一人にはしない。絶対に守ってやる」
それはあの時の誓い。
始まりを示す『出会い』から、力を手にしたあの時に交わした約束。
シャルロットが満足げに微笑む。
それにつられ、シンも笑う。
「さて、シルフィードにした約束のために、明日は食材を買ってくるか」
to be countinued
最終更新:2010年05月01日 01:17