彼らのした事、しようとしている事が正しいとは思わない…
今の世界が間違っているとも言い切れない…
でも、このまま腐って生きるのは…ただ目を背けて生きるのは嫌だった。
それをしてしまえばおばあちゃんに、魔法に守られていた頃と同じ事を繰り返してしまう。
だからボクは力を貸した…
格好いいことは言わない。ただ、自分の居場所を守るために……
機動戦士ガンダムSEEDDESTINY-SIN In the Love-
PHASE-7「見えないままに」
帽子の持ち主『しらかわことり』を知っていると告げるシン。
「ラッキー! 一発で当たりだ」
青髪ショートが笑う。
「あ、自己紹介がまだだったね。あたしはスバル・ナカジマ。で…」
「ティアナ・ランスターよ」
青髪ショートとオレンジツインテがそれぞれ名乗る。
シンも一応名乗る。その際ティアナが一瞬「ん?」という顔をしたがシンは気付かなかった。
「シン君。この帽子の持ち主知ってるんだよね?」
「ああ。ここに入院してる」
「じゃ、コレ渡しといてくれる? 式典会場跡に落ちてたって」
帽子をシンに渡すティアナ。
「分かった。本人も喜ぶよ」
受け取ったシンは去ろうとする。
「っ!」
突如左胸に凄まじい痛みを感じるシン。苦痛に顔を歪める。
「ちょっと!? あんた大丈夫?」
ティアナが慌てた声を出す。
「あ、ああ…大丈夫だ…」
「でも顔が真っ青だよ!!」
スバルが駆け寄る。
シンは何でもないと言おうとするが声がうまく出ず、左胸を抑え膝をつく。
「どうしたの!? あーもうっ! スバルっ、誰か呼んできて!」
「うん!」
ティアナの声を受け走り出そうとするスバルをシンは引き留める。
「待ってくれ…大丈夫だから……」
「大丈夫には見えないわよ!」
「それでも大丈夫なんだ…っ」
強がるシンだが顔色は青を通り越して土気色。しかも今度は右袖が赤く染まっていく。
「なに、あんたケガしてんの!?」
ティアナが袖をまくればそこには真っ赤になった包帯が巻かれている。
ティアナはハンカチを出し無理だと分かりながら血を止めようとする。
「結構前のだ…。気にするほどのモンじゃない…」
ティアナを押し退け立ち上がろうとするが力が入らない。
「こんなに血が出てるのに何でもないことないよ! すぐに先生に…」
「いや、ホント…平気だから……」
食い下がるスバルに苦笑い。しかし説得力は0.
スバルはどうしようかとティアナを見る。
(もうっ! 厄介事ばっかり…!)
ティアナは心の中で毒づき立ち上がる。
スバルに合図し強制連行しようとすると背後から声をかけられる。
「お困りですか?」
三人が振り返ればそこには長い金髪の看護師が。
丁度良かったと安心するティアナとスバル。しかしシンはその看護師を見て身構える。
「また…アンタか…」
「? シン君知り合い?」
「ええ、以前彼のお世話をしていたことがあったの」
スバルの疑問にシンの代わりに答える看護師。
「とにかく彼を診てください。突然苦しみ出して…腕もケガしてるみたいです」
ティアナが説明。
看護師は頷きシンに近づく。
「くそ…なんの真似だ……?」
「あなたを助けに来たに決まってるでしょう」
小声で会話。看護師はニヤリとする。
シンとしては張り倒してやりたいが意識を保つのがやっと。そもそもこんな状態でなくとも生身で勝てる相手ではない。
「では後は任せて下さい。彼の御家族にも連絡しておきますので
「はい、お願いします」
シンに肩を貸し去っていく。
ティアナ達はホッと一息。
「あ」
「どうしたの?」
スバルはしゃがんでシンが落した帽子を拾い、ティアナに見せる。
「…」
「病室、聞く?」
受付の列はさらに伸びていた。
「……また今度にしましょ」
ティアナとスバルが去った後、シンが買ったジュースを回収する少女が一人。
さっきの看護師から連絡を受けた、現在シンの事情を知っているただ一人の家族。
少女は外を見る。ここからでは式典会場跡は見えない。
しかしそれでも少女はつぶやく。
「これで…世界は変わるのかな…?」
「大変だよっ、はやて!」
「どないしたんや、フェイトちゃん? OPPAIマウスパッドの撮影依頼でも入ったん?」
軌道エレベーター建設予定地に設けられた統合軍臨時駐屯地。そこにあるはやての私室にフェイトが駆け込んできた。
「ええの~見せるモンがあるんは。ど~せわたしなんて“「ほえ~」なお着替え魔法少女”に気持ち似とるって理由でしかオファー来んもん…」
「そうだね♪ …って違うよ! 撮影依頼じゃなくてヴィヴィオがいなくなったの!
更に言わせてもらえばはやてと“「ほえ~」な(ry”は似てるとは言えない」
「マヂで…!?」
「ええ…ホテルに戻ったらいなくなってた。フロントの人も気付かなかったって…」
ヴィヴィオの身長ではフロントの陰に隠れてしまう。気付かないのも無理はない。
「なのはに連絡しようとしてもつながらないし…。一緒にいてくれればいいけど」
「あ~いや、それはない」
手をヒラヒラさせて言う。
フェイトとしてはこの状況では考えにくいが、なのはと一緒にお出かけしているというのが最後の望みだったのだが。
「なのはちゃん、ラクスさんらと一緒にオーブに戻った。ケガしたまま」
「聞いてないよ!?」
床にリボンをほどいて叩きつけるフェイト。彼女が怒るのは珍しい。
「わたしもさっき『ヴィヴィオのことお願いね』って通信で言われて初めて知った」
「こんな時に~~っ」
頭をかきむしりクルクル回る。イメージ台無しである。
「とにかく探してくる。島の外に出るはずないし」
「わたしも例のMS見に外出るから気にかけとくわ」
ダッシュで出ていくフェイト。
はやては手帳を取り出す。それには幼い頃のはやて、なのは、フェイトが写った写真が入っている。
「わたしかガキンチョのままなんか…なのはちゃんか変わったんか…」
『なんじゃこれは…?』
ヴィヴィオの腕の中からアルが呆れと驚きが半々といったように言う。
銭湯から出て現在地を確認しようと周囲を見回した際、銭湯の屋根に目を奪われた。そこにはMSよりも巨大な青い箱型物体が突き刺さっていたのだ。
「きっとうちゅーせんだよ」
ヴィヴィオの言うとおり宇宙船に見えなくもない。エセルは、
『分からないことを考えても仕方ないわ。それよりもヴィヴィオ、島で人が多い所は分かる?』
今すべきは謎の物体の調査ではなく、シンと合流すること。
そのためまずは人の多い場所へ出て気配を探る必要がある。少し話して分かったが、ヴィヴィオは見た目の割に物事を認識しているようで、市街地への道のりぐらいは分かりそうだ。
「分かるよ~。この間行ったから」
エセルの読みは的中。
『ではそこへ行きましょう』
「何しに?」
予想外な質問。
エセルの「冒険に行こう」発言には乗り気のようだが、目的無しには動きたくないらしい。
(好奇心旺盛な割に面倒臭がりなのかしら?)
エセルは考える。本当のことを言ったところで問題はないのだが『落し物』と思われ警察に届けられたら面倒だ。やはり子供心に訴える理由がいる。
『…勇者様を探しに行くのよ』
「ゆーしゃさま?」
『ええ、そうよ。あなたは私達の声が聞こえる特別な存在なの。そうね…さしずめ聖女といったところかしら。そしてやはり特別である勇者は見つけるにはあなたが必要なの』
アルは「何じゃそれは…」と内心呆れる。どこのおとぎ話だ。
799 :ムキドー:2010/05/09(日) 16:36:37 ID:7fPVGGc.
しかしヴィヴィオには何かしら心を動かされるものがあったようで、
「よーし、ゆーしゃさんを探しに行こー」
二冊を抱えて歩き出す。
(何事も無ければいいがの…)
イタイケな子供を騙しているようで気乗りしないアルだった。
「もう大丈夫みたいね」
水越病院の一室。その中で金髪の看護師はシンに話しかける。
「…薬は飲んだんだけどな……」
シンは右手を握ったり開いたりする。もう痛みは無い。
「久々に精神と肉体が緊張状態にあったせいでしょうね。ドクターも強い拒絶反応が出ると予測していたわ」
「次の日になってからかよ…」
「昨日は常に緊張状態にあったと考えれば不思議はないわね」
「誰のせいだ…」
シンは看護師を睨むが、相手は肩をすくめて受け流す。
「何であんなことを…」
「さあ? ドクターの考えはクアットロぐらいにしか理解できないわ。私達は指示に従っているだけ」
「ならアンタ達は理由もなく、ただ命令だから行動するのか」
「ええ。昔のあなたのようにね」
「……」
「ま、ドクターは上司ではなく親だけど」
看護師はシンに近づき肩に手をかける。そのままシンに唇が触れそうなほど顔を寄せる。
「なっ、おい…!」
シンは真っ赤になって振りほどこうとするが、相手の方が力が強い。
そして看護師は耳元でささやく。
「明日、ガルナハンで紛争が起きるわ」
「!」
「今の世界が平和なのはどこも怯えているから。でも昨日の件で統合軍の絶対性は揺らいだわ」
わざと吐息をかけるように続ける。
「統合軍が力で抑えつけている地域なんて、ちょっとつつけばすぐに…」
「ふざけるなっ!!」
シンは叫び立ち上がる。看護師はヒョイと離れた。
「紛争根絶をするんじゃなかったのか!? なんでわざわざ争いを起こす!」
「『真の平和を作るため』。ドクターが言っていたでしょう?」
「戦争を起こして何が平和だっ!」
看護師は“やれやれ”といった風に首を振る。
「分からない? すでに完成したモノを作りかえるには一度破壊するしかないの」
「今ある平和はどうなる!?」
「あなたが今の世界が本当に平和だと思っているならガッカリね」
「…戦争は無くなった。死ぬ人間も減った」
「指導者と言う名の支配者が現れたから。人が支配されることに慣れたから」
「飢えや差別も解消されてきてる」
「『イノセント』を作り下を見るよう仕向けたから。世界規模の迫害は誰も差別とは思わないもの」
「資源不足だって…」
「アルテリアはただの供給施設じゃない。立派な兵器よ」
「それでも…戦争するよりマシだ」
シンは力なくイスに座る。
シンは知っていた。彼女の言うとおりであるということを。今の平和は以前より『相対的に幸せな人口』が増えただけということを、そしてアルテリア―軌道エレベーター―の真実も、全て知っている。
看護師が再び近づき背後から身を寄せる。
「自分が幸せならそれでいいの?」
「……誰だって、不幸にはなりたくない…」
そう、誰だって幸せになりたい。だから争う。他者より上へ、先へ、前へ。世の中に絶対的幸福などない。所詮『他者より金持ち』だから裕福と言えるのだ。『○○円あれば裕福』などという基準などどこにもない。『幸せ』になるには他者を蹴落とし奪うしかない。
今の世界はそれを公的に行ってできたものだ。
『イノセント』というのは色々理由を付けられ“浄化”という名の搾取をされた人々であり、非常に理不尽な生活を強いられている。絶対的な下を作ることで人々は「アイツよりはマシ」と現状に満足し争わなくなり、その結果紛争や死者は激減した。
だがそれでも争う者はいる。革命家や野心家、真実を知り奮起する人々。彼らはテロリストとして扱われ徹底的に排除される。それを可能にする統合軍の力に怯え、彼らは鳴りを潜める。それに安堵した人々は統合軍を称え、世界に疑問を抱く者は徐々にいなくなる。
そうやって出来たのが今の世界だ。
「アンタ達が…ソレスタルビーイングが動けば不幸になる人が増えるんだぞ。
作り直すために争わせて、それを解決して…そんな方法で真の平和が来るはずがない」
「…そうね。あなたの言うとおりかもね」
「え?」
看護師はシンを抱きしめる。
「ならどうする? あなたはどうやって真の平和を導くの?」
『君はどうする?』。シンの脳裏に先日ローランが言った言葉がよみがえる。あの時自分は「分からない」、「探しに行く」と答えた。これは戦う理由や意志を問うものだったが、今の『どうする?』も同じ気がする。
以前のシン―軍人―は考えなくてよかったこと。しかし個人が戦うには戦う理由も、そしてそれを終わらせる手段も大事なはずだ。それが無ければただの戦争屋と同じになる。
だからシンは答える。
「分からないさ、そんなの。でも、探しもしないで誰かに賛成するつもりも、“無い”って諦めるつもりもない」
看護師は何も言わない。
「俺は妥協点を探せるほど利口じゃない。世の中のこととか、政治のこととかよく分からないバカなガキさ。
でも、大人や偉い奴の言う事が全てじゃないはずだ。
だから…今は足掻くだけだ。恰好悪くても、バカにされても」
部屋に沈黙が訪れる。
不意に看護師がシンの頬に手をかける。
「好きよ、そういうの」
一瞬二つの陰が重なる。
「!?」
「明日、楽しみにしてるわ」
看護師はサッと離れ手を振りながら部屋から出て行った。
『ドゥーエったらオアツイわねぇ~~。ドキドキしちゃったわぁ☆』
「あら、ヒキコモリのクアットロには刺激が強かったかしら?」
部屋を出て裏口へと向かいながら例の看護師が独り言のように言う。実際は念話という魔法で、口に出してしゃべる必要はないのだが。
『言うじゃない。でもヒッキーの知識を舐めてもらっちゃ困るわ』
「あっそ。それで、そっちは上手くいきそう?」
『上手くも何も…失敗する要因ゼロよ。例のキレた男もノリノリよん♪』
ドゥーエにクアットロの顔は見えないが、意地の悪い笑みを浮かべているのは容易に想像出来た。
『ノーヴェ達も帰還したし、あなたはこれからどうするの?』
スカリエッティに与えられた指示は完了した。帰還するのが妥当だが、ドゥーエは少しやりたい事があった。
「彼に興味が出てきたわ。しばらく下に残る」
『うふふ、ゾッコンねぇ』
念話を終了する。
ドゥーエは裏口から外へ出て、統合軍駐屯地へと向かった。
「あ、アスカ先輩」
「よう」
ことりの病室に戻ったシン(病室の前で再び純一につまずいたのは内緒)。皆シンが自腹で買ったジュースを飲んでくつろいでいた。
その様子から察するにシンの異常は伝わっていないようだ。
(上手くごまかしてくれたみたいだな)
ドゥーエにちょっと感謝…しようと思ったところで皆の自分を見る目が生温かいのに気付く。可哀想な人を見る目だ。楓は窓の方を向いていて表情が分からない。
「ど、どうしたんだ?」
眞子が近寄って肩をポンと叩く。
「アスカ…」
「あ、ああ?」
「妹は…脳内だけにしときなさい」
「へ?」
続いて美春が、
「小児病棟の女の子を追いかけて行ったって聞きましたよ?」
「なぁっ!?」
「『もっちーヴォイスキター━━(゚∀゚)━━』って叫んで走って行ったって…」
「誰がっ!? 誰がそんなこと言ったの!? 看護師!? 金髪の看護師っ!? あとどうやって顔文字を伝聞した!?」
もしドゥーエがそんなことを言ったのならば、次に会った時は全てをかけて挑まねばなるまい。例え返り討ちになるのが分かっていても。
「学園長から」
「アンタって人はぁぁぁっ!!」
何食わぬ顔でおしるこ缶を飲んでいるさくらに激昂。この謎ロリが1~10まで脚色したに決まっている。
「や~ん、お兄ちゃん怒っちゃや~☆」
「ゆかりヴォイスはいぬぇーんだよ!」
ならばとさくらは咳払い。
「じゃあこっちで☆」
「原作版に声を変えた!?」
「プリムラちゃんと同じ声っすね」
ことりの言うとおりさくらはプリムラと同じ声質になっている。
「くっ、マズイ」
「ふっふっふ、今のボクの一撃に耐えられるかな?」
後退するシン。さくらはジリジリと距離を詰める。
「お兄ちゃん、一緒にお風呂入ろ~☆」
「コンナコトデオレハーーッ」
シンは壁に特攻。痛みで理性を瞬時に取り戻す。
「ほう、中々見込みのある少年だな」
暦は感心する。
ぶっ倒れているシンに楓はフラフラと近づく。足取りから危険臭が…。
「シン君…」
「か…楓…」
シンの頭のタンコブを優しく撫でながら慈母のように述べる。
「そんなこと…してないデスヨネ…?」
「シテマセンヨ!!」
片言で即答。
「じゃあ…どうして?」
「え?」
「どうして、ほっぺにキスマークがツイテイルンデスカ?」
「!?」
(さっきのか…!)
どこぞの一室でのドゥーエの行為を思い出す。
「あ、兄さん、赤くなった…!」
「あ、いや、ちが…」
由夢が怒気をはらんだ声を出す。
「お~と~う~と~く~ん~?」
音夢の背後にシンは炎が見た。
「人ン家で不埒な行為に及ぶとはね…」
眞子は何をする気なのか準備体操を開始。
楓はと見上げると…
「……」
見なきゃ良かったと後悔した。
(何でこんな事になったんだ……)
シンは意識を失う直前、ことりのむくれた顔を見た、ような気がした。
「…私ルートに入らないとお兄ちゃんって呼ばない…」
アニメ最終回でも呼んでましたよ?
「…お腹空いた…」
『『…』』
ヴィヴィオ&魔導書×2。昨日の出来事により人の少ない初音島商店街手前で休憩中。理由はヴィヴィオの空腹。
『お金は持ってないの?』
首を振るヴィヴィオ。持っていたところで店はほとんど閉まっているが。
『参ったの…』
魔導書は魔力さえもらえれば空腹など感じない。これは『契約者からの~』という件とは別で、魔導書の自己保存機能のようなものであり、足りなかったら代わりに腹が減るだけの話である。
現在の二人はヴィヴィオから過剰ともいえるほどの魔力をもらっているので全く問題ない。
しかしそれがヴィヴィオの空腹を促進しているので、二人は強く出れないのだ。
「あ」
ヴィヴィオが誰かに気付き手を振る。
「あら」
その相手と思われる金髪と緑髪の二人組もそれに気付いてやってくる。
「あらあら、ヴィヴィオちゃんじゃありませんの」
「カレハの知り合い?」
「ええ」
以前シンと一緒にヴィヴィオのお守りをしたカレハとその友人の亜沙だった。
「ママー♪」
「マっ…!?」
カレハに走り寄るヴィヴィオ。仰天する亜沙。
「まあ♪ ママだなんて、困りましたわね」
困ってなさそうにカレハ。
(カレハの子供~~~っ!? 男っ気ゼロのカレハに? いや、でも、似てるし…)
金髪+碧眼(片方)。二次元ではよくある特徴だが、それを言ってはおしまいだ。
「今日はどうしましたの? また迷子?」
「ううん。あのね…」
悩む亜沙の横でヴィヴィオは事の経緯を語り出す。
「俺、卒業したら銭湯を経営するんだ。UFOが突き刺さっててさ、ネコミミ侍女がいっぱいいるんだ…。へへ…いいだろ…?」
「この間は『さらわれた妹を助けるために遺跡みたいな島を徒手空拳で大冒険する』って言ってなかった?」
病室の床にタンコブだらけで体育座りするシンとそれをツンツンすることりの会話
時刻が昼を回ったためシン以外のメンバーはすでに帰途についている。シンはことりが話があるということで置いて行かれた。暦は「妹に手ぇ出したら…」と言い渋々席をはずしている。
「…あのさ、アスカ君に聞きたいことがあるの」
「何だ?」
ことりは深呼吸。少し話題にしにくい。
「昨日、の…ことなんだけど…」
迷う。わざわざ聞くようなことではない。
聞いてしまえば自分は後悔することになる。
聞かないでいれば、知らずにいれば、今までと同じ日々が送れる。しかし聞いてしまえば、“世界”と無関係ではいられない。
そんな予感があった。
「アスカ君が…」
ことりからすれば昨日と今日のシンはおかしかった。特に昨日病院で自分を見た時のシンは今にも壊れてしまいそうな雰囲気だった。
また楓達も様子が変だった。“どこが”とは言えない。強いて言えば、よそよそしい、だろうか。シンからはいつもだが、楓と音姫でさえシンと距離を取っている感があった。
「私達を助けてくれたの…?」
本当に聞きたい事とは少し違う。
すぐに答えは返ってこない。ことりはシンの方を見る。
シンは深い陰のある顔をしていた。普段は決して見せない表情。ことりと同じ年頃の少年には見えない、かといって大人にも見えない。年齢ではなく立場の違いが…人生経験の違いが生み出しているのかもしれない。
シンは静かに言う。
「俺は…誰も助けちゃいない」
言葉だけなら「違う」と取ることができる答え。
しかしことりは「助けられなかった」と言っているように感じた。
「あそこにいた人を助けたのは統合軍さ」
肩をすくめシンはいつものヘラヘラした顔に戻る。
「話ってのはそれだけか?」
「う、うん」
「んじゃ、俺も帰るよ。長居してるとオネエサンにまた蹴られるかもしれないし」
シンは病室のドアに向かって行く。
結局ことりの知りたいことに対する明確な答えは返ってこなかった。だが、以前から感じていた、シンが自分達とは“違う”のではという疑問は確信に変わった。
だからだろうか。ことりにはシンの背中がとても遠くに見えた。
(これでいいの?)
深入りするようなことではない。
(でも…)
シンはドアノブを握る。
(また…届かなくなるのを見てるだけ…?)
『あの時』―二人が結ばれた時―ことりは見てるだけだった。
ならば今は?
ことりにとってシンは『彼』ほど特別な存在ではない。
だが……
「あ、あのっ」
「なに?」
シンは振り返らない。それでもことりは続ける。
「ありがとう」
たった一言。何に対する感謝なのかも明確ではないが、これが今のことりの精一杯。
「……」
シンは何も言わずドアを開け出て行く。
しかしその背中は少しだけ…本当に少しだけ近くなっていたかもしれない。
「しゃべる本に勇者様ですか。メルヘンですわね」
公園にてヴィヴィオから話(MSの事除く)を聞き終えたカレハと亜沙。ヴィヴィオは途中で買ったコンビニおにぎりを租借中。
「でもヴィヴィオちゃん、一人で出歩くのは危ないですわ」
「へーきだよ。だって二人も一緒だし」
言って魔導書を掲げるヴィヴィオ。亜沙はそれを見て苦い顔をする。
「どうしましたの、亜沙ちゃん?」
「え、ううん。何でもない…」
「?」
亜沙は明後日の方を向いてしまう。
(あの本…魔導書? まさか、ね)
『…』
アルはアルで亜沙に違和感を抱いていた。
(何じゃ…あの者の魔力は。あまりに濃い。器が耐えられるのか?)
ちょっと奇妙な空気。
だがカレハにはそんなの関係ネェ。にこやかにヴィヴィオに話しかける。
「それで、勇者様は見つかりそうですの?」
「うんっとね…」
ヴィヴィオはエセルに聞く。そして1、2度頷き、
「この辺にはいないって」
「困りましたわね~。
そうですわ。私達も一緒に探してあげましょう」
「えっ?」
亜沙の見て言うカレハ。
「こんな小さい子一人じゃ危ないですし「一人じゃないもん」、諦めて帰れと言うのも可哀想ですもの」
「そ、そうかもしれないケド…」
引き攣る亜沙。あまり『しゃべる本』とは関わりたくない。
断ろうと口を開くが、
「勇者様はどんな方ですの?」
カレハの中では既に勇者探索パーティが出来上がっているようだ。
(…ま、いっか。カレハがお願いするのも珍しいし……)
自分の根拠のない予感よりも友情を取ることにする。
(こんな小さい子が探してる人も見てみたいしね)
しかし次のヴィヴィオの言葉に二人は顔を見合わせた。
「顔におっきなアザがあって、黒い髪で紅い目の男の人」
「それって…」
「「シンさん(ちゃん)!?」」
「誰もおらんな…」
「いませんねぇ…」
はやてに相槌を打つのは妖精のような小さい少女。名をリィンフォースⅡと言い、最新魔法技術の結晶である。はやてのサポートが主な役割だ。
「ヴィヴィオみたいなチビッ子はこういう場所好きやと思うたんやけどな~」
現在二人はインパルスの様子を見る&ヴィヴィオ捜索のため再開発地区銭湯跡に来ている。
「はやてちゃんが小さかった頃とは時代が変わったんですよ」
「何やと! わたしは今でも小さい! 主に背が!」
「胸もですよ♪」
「おーっと、そやった。それを忘れちゃ~いかんな♪」
「「HAHAHA」」
「→A!」
「上半身無敵!?」
はやてが取り出した『猫っぽい傘』の放ったアッパーがリィンⅡを打ち上げる。
「な、何をするのですか…。自虐ネタでキレるなんて最低ですよ」
「アカンねん…。なのはちゃんにバレた時のことを考えたら正常な思考が出来んのや…」
そういう言葉は普段正常な人が言うものだ、という言葉は胸にしまうリィンⅡ。
「気持ちは分かりますけどサッサと頭を切り替えて下さい」
「○ン○ンマンやないからムリ」
「それは『取り換える』です!
いい加減にしてください! 話が進みませんっ!」
とうとうキレるリィンⅡ。四つん這いのはやての頭の上で地団太を踏む。
「誰もわたしを分かってくれん…」
青少年の悩みを抱え、はやて大地に立つ!
「ヴィヴィオちゃんのことはフェイトさんに任せる(=投げる)として、コレはどうするのですか?」
リィンⅡはボロボロのインパルスを指す。
「なんとか修理出来んかな」
「上に内緒で?」
「モチのロン。そもそもここにずっと置いとくわけにもいかんしな」
覇道財閥に頼めば簡単だが、それではシンを引き込むというはやての算段が崩れてしまう。
しかし、ごく内密にMSの修理というのは難しい。設備や材料はその辺で調達出来るものではない。
「リィンはお偉いさんの弱みとか握っとらんの? レジアス中将の男関係とか…」
「男っ!? 誤植じゃないのですか?」
「いやいや。あのおいちゃんなら『尻を貸そう』も不思議やない」
「………確かに…。
でもリィンは清い乙女なので人の弱みとかは一切知りません」
「清い乙女やって」プスー
「バカにしたっ! リィンは本当に清いのに! はやてちゃんと違って乙女なのに!」
「はやてちゃんかて乙女や!」
バトル開始。リィンⅡは小さい体を活かしはやてを翻弄する。
そこに黒衣をまとった女性が現れる。
「ちょっと」
「ホワイトサンダー」
「ぐはぁっ! くっ、ギ○がおらんからガード出来ん…」
二人は気付かない。
「ねぇ」
「サンシャインビーム」
「ちぃっ! こうなったらツクヨミユニットで…。第0拘束機関k」
「聞きなさい…」
黒衣の女性が二人にアイアンクロー。宙吊りになった二人は静かになる。
「何用で?」
宙吊りのままはやて。
「話は聞かせてもらったわ。あの機体を内緒で修理できる人物に心当たりがあるの」
内緒話ダダ漏れ。こんな場所にいる人も不思議ではあるが。
「ほう…。そりゃまた」
開放されたはやては普段とは違い真面目な顔をする。リィンⅡも身構える。
二人はこの女性に会ったことは無いが、記録映像や管理局の重要人物データで知っている。
「んで…、何が狙いや? わたしに恩売ってもいいことないで?」
「別に裏があるわけじゃないわ。単なる親切心と好奇心。それと少しの仕返しよ」
「仕返し、な…」
この女性ははやての極秘計画を知っている様子だ。
(さて、どうするか…)
はやては考える。
この女性ならMS一機の修理ぐらいわけないだろう。彼女に匹敵する知識と能力を持つ人物をはやては知らない。
(でもリスクもデカイしな)
手放しで歓迎出来る相手ではないのは確か。そもそも彼女は既に“死んだ”はずなのだ。誰かの変装の可能性もある。
(上が探るために送った諜報員、どこぞの犯罪組織のスパイ…。考えたらキリないな…)
「はやてちゃん、はやてちゃん」
「ん?」
「怪しすぎますよ。捕まえて突き出しましょう」
小声でリィンⅡが耳打ちする。
「う~~む……」
正直捕まえるのは無理っぽい。断ってお引き取り願うのが一番安全ではある。
(断る…いや、危ないんは元からや。なら…)
ひとつ頷きはやては結論を出す。
「ほなお願いしようかな、プレシア・テスタロッサさん」
最終更新:2010年05月18日 02:13