仮面ライダーW 第11話『危険人物B/戦場の異邦人達』
ゼロ戦を手に入れ、Wに仮面ライダーと名前をつけてから四日。
何時ものように、シンとサイトは広場に来ていた。
「はあああーーー!!」
サイトがデルフを振り下ろす。
シンはそれを避けると地下水を構え、呪文を唱える。
「『エア・スラスト』」
風の刃がサイトへと向かう。
デルフを前に構えると、風の刃はデルフへと吸収された。
サイトの攻撃はかわされ、シンの魔法や投げナイフはデルフによって吸収またはいなされる。
お互いに決定打を討てないため、相手の一瞬の隙が勝負となる。
その事を理解している二人は、互いにけん制しあう。
先に動いたシンが、地面を蹴る。
「おおおおーー!!」
目線をサイトへと向け、同時に投げナイフを投げる。
「(どっちに避ける…右か、左か…)」
シンは思考していたが、サイトは全く違う行動をした。
「うおおおりゃあああ!!!」
「なっ!?」
サイトは投げナイフをかわしながら、突撃してきた。
驚いたシンを尻目に、サイトがデルフをシンの首元へと宛がう。
「俺の勝ちだ、シン!!」
「ああ、俺の負けだ…」
「……っ、やっと一回勝ったぜーーー!」
デルフを下ろし、ガッツポーズをするサイト。
シンが治り、この三日間で実戦を考えた上での二人の特訓は、二桁を軽く超えていた。
「これで、30戦中1勝29敗だな」
「うぅ、それを言ってくれるなぁ~」
グッタリとしているサイトが言う。
『だが、さっきの判断は上出来だぜ相棒』
『そうっすよ、あの場面で飛び込む度胸が有ると無いとじゃ、結果は違ってたはずっすよ』
デルフと地下水がサイトを賞賛する。
「でも、たった一回じゃな~」
「それでも、一回だ。結構な進歩だぜ、サイト」
激励の言葉に、サイトは気恥ずかしいのか、頬を掻く。
「さて、それじゃあ…」
シンが起き上がり、地下水とショートソードを手に取る。
サイトもデルフを手に取り、構える。
再び特訓を始めようとした時、
「サイト君、シン君!できたぞ!調合に成功したぞ!」
息を切らしながら、コルベールが、手にワインのビンを持って、走ってくる。
デルフや地下水をしまう二人。
コルベールがサイトにビンを渡す。
その中には、茶褐色の液体が波打っていた。
「これって!?」
「君達が言っていたガソリンだ!」
「本当ですか!これでゼロ戦が動かせます!」
「だったらこうしてはいられない!早速行こうじゃないか!」
そう言い、コルベールは走り出す。
サイトとシンも、後を追う。
ゼロ戦の在る場所につくと、サイトは燃料弁にワイン二本分のガソリンを入れる。
「苦労はしたが、まずは君達から貰った油の成分を調べたんだ」
コルベールが得意げに話す。
「微生物の化石から作られていたらしく、それに近いものを探したんだ。そして、見つけたのは木の化石…石炭だ。それを触媒に浸し、近い成分を抽出して、何日間も『錬金』の魔法かけて、できあがったのがそれなんだ」
「ありがとうございます。何日間も」
「いやいや、そんなことよりもだ。早く動かしてくれないか!わくわくして眠気も吹っ飛んでいるんだ!」
ガソリンを入れ終わり、サイトはゼロ戦の中に入り、操縦席に座る。
「先生、そのプロペラを魔法で回してもらえませんか?」
「これかね?これは、あの油が燃える力で回るのとは違うのかい?」
「初めは、エンジンをかけるために、中のクランクを手動で回す必要があるんです。ここには、回すための道具が無いから、魔法でプロペラを直接回して下さい」
なるほど、とコルベールが頷く。
サイトが、各部の操作を始める。
魔法によって、プロペラがゆっくりと回転を始める。
タイミングを計り、点火スイッチを押す。
スロットルレバーを小さく前に傾ける。
すると、くすぶった音と共に、エンジンが始動し、プロペラが勢い良く回り始めた。
コルベールはそれを見て感動し、シンは、動いたか、と分かっていた風にしていた。
全ての計器が正常に作動していると確認したサイトは、点火スイッチを切った。
操縦席から降りると、コルベールと抱き合った。
「先生、エンジンがかかりました!成功です!」
「おお、やったな!しかし、まだ飛べないのかね?」
「ガソリンが足りないんです。飛ばすには、せめて樽5本分はないと」
「そんなにかね!だが、乗りかかった船だ!やろうではないか!」
そう言うと、コルベールは研究室に戻っていく。
その様子を見て、二人は苦笑を漏らす。
押し寄せてくる『戦争』が近づいているのも知らずに…。
―二日後―
その知らせは、まさに風が駆け抜けるかのように、突然押し寄せてきた。
シンが廊下を歩いていると、曲がり角から声が聞こえてきた。
「聞いたか!アルビオンの宣戦布告!」
「あぁ、聞いたさ。タルブに進行してきたんだろ!」
「学院が慌しいのはそのためだ。もしかしたら、戦争に担ぎ出されるかもしれないぞ?」
「(戦争だと!?それも、タルブが襲われているってことは、シエスタ!?)」
シエスタは今、タルブへと帰っている。
最悪の予想を振り払うかのように、シンは走り出した。
広場に出ると、サイトとルイズがゼロ戦の前にいた。
「サイト!」
「シン、その急ぎ様…やっぱり嘘じゃないんだな?」
「…タルブで、戦争が起こってる。相手は、アルビオンだ」
事実を告げる。
サイトとルイズは信じられないと、シンは苦悶の表情を浮かべる。
「お前も、行くのか?」
「俺も、ゼロ戦でタルブに行く!」
「ダメよ!あんた一人で行ったって、どうにもならないわ!」
ルイズがサイトを止めようとするが、サイトは自身の意思を曲げない。
「ゼロ戦がある。燃料もコルベールさんが錬金してくれたおかげで、動かせる。それに相手は空に浮かんでる戦艦だろ?ゼロ戦で何とかなるかもしれない」
「あんなので何ができるっていうのよ!」
「あれは武器だ。おもちゃでもなんでもない、人殺しの道具だ」
ルイズが首を振る。
「いくらアンタの世界の武器でも、あんな巨大な戦艦相手に太刀打ちできるはずないじゃない!」
「…サイト」
シンが静かに話す。
「相手を殺す…覚悟はあるか?」
その問いに、サイトが僅かにたじろぐ。
「迷ってるんだったら、戦場には行くな。迷いがある奴は、簡単に死ぬぞ」
シンはサイトとの去り際に、呟く。
「俺は行くぜ。シエスタを…仲間を助けるために」
そう言うと、シンは走り出す。
「……ッ」
何も言えずにサイトは俯く。
―死―
その言葉が頭を過ぎる。
自分が行くのは戦場。
一般人だった自分が、人を殺す。
敵であるアルビオンの兵を殺し、もしかしたら自分が死ぬかもしれない。
行かなければ、タルブの村の人々が殺されるかもしれない。
行けば、自分はゼロ戦と共に死んでしまうかもしれない。
死ぬのは嫌だ。
でも、人が殺されるのも嫌だ。
そして、人を殺すのも嫌だ。
迷いが、サイトに圧し掛かる。
「…やっぱり、怖いんじゃない」
ルイズの声に、サイトは顔を上げる。
「でも、それが普通よ」
「えっ?」
「誰でも怖いに決まってるじゃない」
「でも…」
「軍人じゃなければ英雄でもない、アンタは普通の平民よ。だから、怖いと思うのが普通なのよ」
ルイズの言葉が、サイトの心に響いていく。
「でも助けたいんでしょ?タルブの村の人達を」
「俺は…」
「あぁー、男の癖にウジウジしてんじゃないわよ!決めたんなら、貫きなさいよ!」
その言葉を聞き、サイトは少し呆けたが、
「……あぁ、そうだな。何時までもこんなんじゃ、誰も救えないな」
決意した顔で、ルイズを見る。
「ありがとな、ルイズ。決心したよ。俺は、タルブに行く」
そう言い、コルベールのいる所へと走り出す。
「(迷ってんな俺!仲間を助けに行くんだ!)」
シンはリボルギャリーの前にいた。
「(何で、サイトにあんな事言ったんだ?)」
自問する。
サイトも、覚悟を持ってゼロ戦に乗ろうとしていた。
それを何故、抑えていたはずの恐怖心を焚きつけたのだろうか。
もやもやとした感情のまま、ハードボイルダーの前に立つ。
そして、置いていたヘルメットを見入る。
それは、この世界に来たときに付けていたパイロットスーツのヘルメットを改造したもの。
あの世界との、数少ない繋がり。
「……あっ」
見て数瞬の内に、シンはもやもやしていた感情が分かった。
「(怖かったんだ…大切な仲間を失う事が)」
サイトが抱いていたモノとは違う恐怖。
大切な人、仲間を失う事への恐怖。
―喪失―
シンは三度も、大切な人々を失った。
一度目は大切な家族を。
二度目は護ろうとした少女を。
三度目は共に戦った戦友を。
その失う事を恐れる心が、シンに重く圧し掛かっていた。
「(でも、動かなきゃ、誰も救えない!)」
ヘルメットをかぶり、ハードボイルダーに乗る。
「シン…」
声が聞こえ、振り返ると、シャルロットが立っていた。
「シャル、俺は…」
「分かってる。貴方を止めるつもりは無い。でも、これだけは言わせて欲しい…」
シャルロットが一度言葉を切り、再び紡ぐ。
「絶対に、帰ってきて…」
「…必ず、帰ってくる」
そう言い、シンはタルブへと向かっていく。
「ひでぇ、何て有様だよ!」
ハードボイルダーでタルブに向かうシンが目にしたものは、空に戦艦と竜が飛び交い、地上は火と轟音が支配する戦場となっていたラ・ロシェールであった。
目の前の惨状に、シンはやり場の無い怒りを抱える。
「(タルブは、どうなってるんだ!?)」
「だ、誰だ!?」
声が聞こえ、振り向く。
見ると、一人の兵士が蹲っていた。
外傷は目立った箇所はないが、立っていないのを推測すれば、骨を折っているのかもしれない。
「誤解しないでくれ。トリステイン学院の生徒の使いだ。訳があってタルブに行きたいんだ」
「何だ、国家の者だったか。すまない…だが、今はタルブに行かないほうがいい」
「どうしてだ?」
「今のタルブには、アルビオン軍の兵、3,000もの大軍隊が集結している」
「なんだって!?」
衝撃的な事実に、シンは驚愕する。
「奴らは、ラ・ロシェールに立て篭っている我が軍に、一斉砲撃の後に、全軍で突撃してくるはずだ」
「くそ、何のためにここまでするんだ!?」
「若者、頼む…誰か、援軍を…」
そういい、緊張が切れたのか、兵士は気絶した。
シンは兵士を目に見えない場所に移動させるために、肩を担ぐ。
―バババババババッ!!!
その背から、不意に巨大な音が聞こえる。
「兵士さん、来たぜ。最強の援軍が」
上を見上げると、ゼロ戦が上空を通過する。
「覚悟決めたんだな、サイト。だったら、何も言わずに、お前が選んだ道を信じるさ」
そう言い、兵士を下ろし、隠す様に木の葉で覆い隠す。
「だから、俺も貫いてやる!自分の覚悟を!」
ハードボイルダーを走らせる。
ラ・ロシェールの町は、火と黒煙が立ち上り、前に見た時とは目を疑うほどに悲惨であった。
上を見れば、ゼロ戦が機関銃で竜騎兵を撃ち落していく。
ゼロ戦のおかげで、竜騎士隊の戦力は削れているが、戦艦からの砲撃が絶えることが無い。
「あのデカブツを落とせるかで、戦況は変わるか」
一人愚痴る。
その時、上空の戦艦が砲撃を開始した。
「クッ、早くいかねぇと、シエスタ達が!」
さらに加速させ、流れ弾となって降ってくる砲弾をかわしていく。
だが、目の前はトリステイン軍とアルビオン軍の戦場となっていた。
「(こんな時に!?)」
だが、迷ってはいられない。
意を決し加速させ、出っ張っている岩を使い、ハードボイルダーが宙へと飛ぶ。
何事かと、兵士が、マザリーニ枢機卿が、アンリエッタが見上げる。
兵士の上を飛び越え、地面に着地。
そのまま停止。
「何者だ!?」
「そこを退いてくれ。俺は、その先へ行かなきゃならないんだ」
「何…そうか、貴様もトリステイン軍だな!だったら、此処で死んでもらおう!」
一人の兵士が突撃する。
【SPIDER】
途端、兵士にワイヤーが巻きつかれる。
「へっ?」
理解できないという風な声を出した途端、兵士は吹っ飛ばされる。
スパイダーショックがライブモードとなり、首を振ったのだ。
それによって、兵士は壁へと叩きつけられ、気を失う。
誰もが、その光景を唖然と見ていた。
その中、シンはハードボイルダーから降り、ヘルメットを外す。
「今のは正当防衛だ。退かないのなら、お前達を倒してでも通してもらう」
「あれは、『ガリアの赤鬼』!?」
「何故、トリステイン軍に!?」
アルビオン軍がシンの姿を見た瞬間、恐れを抱く。
「あれが赤鬼か!?」
「メイジをも地に伏せる存在が我々の国にいたのか!?」
トリステイン軍は突然の存在に、驚愕の声が上がる。
「あの人は、学院の生徒の使い魔…」
アンリエッタも驚きを隠せない。
「静まれ!赤鬼といえど、一人でこの数を相手にできるものか!かかれ!」
アルビオン軍が平静になり、多対一の勝負に持ち込む。
シンは、メモリを取り出す。
【STAG】
【BAT】
スタッグフォンとバットショットにギジメモリをインサート。
三体のガジェットが、相手を威嚇し、飛び出していく。
スタッグフォンが兵士に体当たりをして、気絶させる。
バットショットが兵士の武器を切り落とす。
スパイダーショックが気絶した兵士にワイヤーを巻きつける。
だが、それで全ての兵士が押さえられるはずがない。
「捉えたぞ!」
一人の兵士が、シンに向けて武器を振る。
「地下水!」
『はいよっ!』
かわし、地下水が呪文を唱える。
「オオオォォォ!」
「ふんっ!」
さらに向かってきた兵士達が武器を振るう。
槍の薙ぎをしゃがみで、剣の降り下ろしを横跳びでよける。
さらに兵士が突進するが、呪文が完成。
「『ウィンドブレイク』」
突風が兵士を巻き込み、地面や壁へと激突する。
気絶したのか、兵士は起き上がらない。
『旦那、来てるっすよ!』
四人一組の小隊が、シンへと突っ込む。
メイジがいるのか、火球がシン目掛けて放たれる。
咄嗟にさけるが、兵士が剣を構えていた。
振り下ろす。
『クレイウォール』
瞬間に、土の壁がシンと兵士の間に現れる。
剣は土の壁に痕を残すだけだった。
『油断大敵っすよ、旦那』
「すまない地下水、助かった」
ガシン!!!
金属の音が聞こえ、見るとスタッグフォンが兵士を気絶させていた。
自身の体でど突いたのか、兵士の頭にはタンコブが出来ていた。
「アンリエッタ女王殿下…」
不意に、シンが呼ぶ。
驚きながらも、アンリエッタは返答する。
「何でしょうか?」
「…こういう事を言うのは、多分偽善でもあり、自分の独りよがりかもしれませんが、いいでしょうか?」
「構いません」
顔を向けないまま、シンは言う。
「両軍の兵を、出来るだけ殺さないで欲しいのです」
「……」
「これを軍人の前で言うのは、確かに酷だと自分でも思います。ですが、誰だって死にたくなどないはずです。兵士の帰りを待つ人も、自分の故郷に帰りたい者もいるはずです。だから…」
言葉を切り、言う。
「投げたような言葉ですが、お願いします」
そう言い、シンは大きい声を上げる。
「倒されたくないなら、その道を開けろ!俺は大切な仲間を、助けに行くんだ!」
兵士が臆す。
「全兵に告ぐ。その者の言葉に従え」
アルビオンの指揮官らしき人物が言う。
「指揮官殿!?」
「赤鬼一人でこの有様だ。これでは我が軍に分が悪い」
「ですがっ!?」
「これは命令だ。ならば、お前たちで赤鬼を止められるか?」
「そ、それは…」
「私も勝てる確立は4分ぐらいだ。良くて相打ちか、重傷での勝利だ。ここはあの者の言う事に従う方が身のためだ」
「りょ、了解です」
指揮官がシンへと顔を向ける。
「赤鬼よ、名をなんと言う?」
「…シン=アスカ」
「御主程の腕の持ち主が、何故軍に入らない?」
「………」
「まぁ、聞くのは野暮かもしれんな」
シンはハードボイルダーに乗る。
「…両軍の命が、これ以上散らない事を信じます」
そう言い、タルブへと向かう。
「不思議な男だ…」
指揮官が言う。
「臆するな!士気を上げろ!再び流れをこちらに傾かせるのだ!」
怒号のように叫ぶ。
「「「「「ウオオオオォォォォォ!!!」」」」」
アルビオンの兵がそれを聞き、声を上げる。
「赤鬼が作った好機を逃すな!一気に片をつけるのだ!」
「「「「「オオオオオォォォォォ!!!」」」」」
トリステインの兵が、マザリーニの言葉に声を合わせる。
両軍の戦闘は、先ほどよりも大きな波となった。
「トリステイン、よくここまで耐えるものだな」
竜に跨り、男…ワルドが呟く。
「だが、いくら兵隊が束になっても、強大な力には敵うまい」
ニヤッと笑い、メモリを取り出す。
「…いや、ここはあの男に任せるべきだな。俺が手を出すほどでもない」
竜が翼を広げる。
「今の俺が望むのは、ルイズ…お前の中にある力だ!」
羽ばたく。
「せいぜい頑張ってもらうぞ…『切り裂き貴族』」
その言葉は、羽ばたく音によって掻き消された。
そして竜は、戦場へと飛び立っていく。
サイトはゼロ戦で空中にいる竜騎士隊を相手にしていた。
ゼロ戦に付いている機関銃で、竜の羽を打ち抜く。
竜はその一瞬の内に落ちていく。
「(やっぱり、慣れるようなものじゃないな)」
心の中、サイトは呟く。
人を殺す事に躊躇うのは普通だ。
だからなるべく竜を撃墜する様にした。
だが、所詮は自分に対する気休めだ。
「(どうすりゃいいんだよ?)」
考えていると、
「さ、さすがね!あ、アルビオンの竜騎士隊を虫のように撃墜してるじゃない!」
後ろから声が聞こえる。
「って、なんでいるんだよルイズ!?」
見れば、学院にいるはずのルイズが膝を震えさせながら立っていた。
「あ、あんたは私の使い魔なんだからね!勝手な事は許さないんだから!」
「死んだらどーすんだよ!俺にあんなこと言っといて!」
「だったら死なないように頑張んなさぁあああああい!!!」
理不尽な言葉にサイトは頭を抱えたくなる。
『話し合ってる所わりぃけど相棒』
「ん?」
『右からお客さんだぜ』
竜のブレスがゼロ戦を襲う。
操縦桿を瞬時に操り、機体をロールさせる。
避けることは出来たが、ルイズが転げまわる。
「もう少し丁寧に操れないの!?」
「これが精一杯だ!」
叫び、反撃に移っていった。
シンがタルブへと着いたのは、それから多少の時間が経ってからであった。
「タルブの人達は、無事なのか!?」
見渡せば、美しかった草原は燃え、家や畑は残骸とでもいう程に壊されていた。
拳を握り締め、苦虫を噛み潰したような表情を抑えられない。
「村の人達を探さないと!」
ハードボイルダーを見えない場所に隠し、辺りを模索する。
村の中を探り、山の中に入り草を掻き分けて探っていく。
「そこの者、止まれ!」
声の方角に、兵士が剣を構えていた。
「何処の者だ!答えろ!」
「人を探しているんだ!構っている時間は無い!」
「何を!…そうか、貴様トリステインの者だな!ならば、ここで…!?」
―ガツンッ!!!―
金属同士の打ち合いの如く、音が響く。
途端、兵士が倒れる。
でかいタンコブと、その周りを鳥が囲んで回っていても、おかしくないほどの気絶のしかただ。
「おや、アンタはこの前の青年じゃないか!」
「えっ…べ、ベムさんですか!?」
そこには、フライパンを手に持ち、兵士顔負けのスイングを決めた本人、ベムおばさんがいた。
「どうしてこんな場所まで来たんだい!?戦争の真っ只中に来るなんて!?」
「俺、どうしてもシエスタ達を助けたくて来たんです!」
「じゃが、いくらなんでも!?」
「仲間を見殺しになんて、俺はできません!」
ベムは少しの間、口を閉ざす。
「…どうやら、シエスタはいい男に出会ったようだのう」
そう言い、ベムおばさんは微笑む。
「それなら、この老いぼれに付いてくるんじゃ」
「はいっ!」
二人は歩き出す。
「村の人達は、どうしたんですか?」
シンが聞く。
「今は、この山にある洞穴におるはずじゃ。さすがに兵士達も、そこまで探さぬじゃろう」
それを聞き、安堵する。
「それにしても、さっきのスイングは凄いですね」
「ほっほ、これでも夫と二人で冒険者だったんじゃ。そんじゃそこらの奴らとは年季が違うわい。しかし年の性か、この頃は動きにキレが無くなったがのう」
昔を懐かしむベムに苦笑を漏らす。
「いい表情じゃのう。じゃが、少し陰が混じっておる」
「えっ…?」
「不安かい?大丈夫じゃよ。シエスタ達も村人も無事じゃ。信じなさい」
長い年月を生きた目は、シンの心を簡単に読んでいた。
「そんな陰のある顔じゃなく、もっといい表情で笑いなさい。その方が、シエスタ達も安心できるはずじゃ」
「…はい。分かりました」
そして、二人は洞穴に着く。
「誰だ…!」
一人の男の声が聞こえる。
「大丈夫じゃ、私じゃよ」
「おお、ベムさん。そっちの後ろにいるのは?」
「この者はシンといってな、この前の『暴れ馬人』を退治してくれた男じゃ」
「おお、お前さんがシンか。シエスタ達から話は聞いているぞ」
「それなんじゃが、シエスタ達はどこじゃ?シンはシエスタ達が心配でここまで来たそうなんじゃ」
「ここまで来たのか!?戦場の真っ只中を!?」
男が驚く。
その言葉にシンが頷く。
「なんとまぁ、馬鹿者というか命知らずというか」
「うっ…」
痛いところを突っ込まれる。
「だが、死なずにここまで来たんだったら、その姿シエスタ達に見せて来い」
「はいっ!」
シンは走り、シエスタ達を探す。
「命を散らすかもしれないのに、運がいいのか悪いのか」
「ほっほっ、若いというのは素敵じゃの~」
呆れて男が、笑ってベムが言う。
そんな会話がされている中、シンは洞穴の奥へと来た。
「意外と広いんだな。確かに隠れるには申し分ない場所だな」
そんな事を呟いていると、
「あー、シン兄ちゃんだ!」
声が聞こえ、振り向いた途端に体当たりされる。
倒れはしないが、少しよろめく。
寄ってきたのは、シエスタの弟の一人だった。
「シン兄ちゃんだ!幽霊じゃないよね!?」
戦争の中、自分が死んでここまで来たのかと思っているようだ。
「当たり前だ。死んだらお前達との約束、破っちゃう事になるからな」
「うん!本当にシン兄ちゃんだ!」
「あぁー、シン兄!シン兄だ!」
また別の声。
シエスタの妹が駆け寄ってくる。
「シン兄、無事だったんだ!来てくれたの?」
「あぁ。サイトもシャル達も無事だ。皆が心配で来たんだ、無事でよかったよ」
「サイト兄達も?やったー!」
喜ぶ姿を見て、シンは微笑む。
「二人共ー、何処行ったんですか?」
「シエスタ姉ちゃーん、こっちこっち!」
「シエスタ姉ここだよー!」
二人がシエスタを呼ぶ。
「ここにいたんです……シンさん?」
シンの姿を見て、シエスタが驚く。
「どうして、ここに?」
「シエスタ達が心配で、ここまで来たんだ」
「せ…戦場の中…来たんですか?」
「…あぁ」
「幻覚じゃ…無いですよね?ぐすっ……私が…助けてほしくて、見える…えっく…幻じゃ、ないですよね?」
所々の言葉に、嗚咽が混じる。
「幻だったら……」
近づき、頭を撫でる。
そっと、壊れ物を扱うように丁寧に。
「こうして触ってる感覚は無い筈だ」
「シンさんッ!!」
二人が抱擁を交わす。
「戦争なのに、無茶ばっかりしすぎです!」
「でも、シエスタ達が心配で…」
「シンさんが死んじゃったら、心配してくれる人達が悲しみます!サイトさんやマルトーさん達に、ミス・オルレアンも!」
「……ごめん」
「謝ってもダメです。もう少し、このままでいて下さい」
「…分かった」
少しの間、二人はそのままでいた。
「シエスタ姉、何時まで抱き合ってるの?」
「えっ……あっ!?」
妹の言葉で我に返り、顔を真っ赤にして勢いよく離れる。
「す、すすすすみませんシンさん!私あんな事言っちゃって!?」
「?いや、謝るどころかむしろ助かったよ、ありがとなシエスタ」
「え、い、いや、その…(そ、それってつまり良かったって事ですか!?)」
シエスタは『抱きついたままでいて欲しい』と言った事について謝った。
だが、シンは『心配する人達』の事と思い礼を言った。
その少し空回りしている発言に、シエスタはさらに顔が赤くなりあたふたし始める。
「シン兄ちゃんって『天然さん』だね」
「うん。なんか抜けてるっていうか、にぶいっていうか」
弟と妹が子供が言うにはませている発言をする。
そんな雰囲気の中、
――ガンッ…キン……――
金属の打ち合いのような音が聞こえてくる。
「なに?」
「シエスタ姉、シン兄、なんか音が聞こえる」
「…見てくる。少しだけ待ってろよ」
シンは地下水を取り出し、入り口へと戻る。
――ガキン…カン…!――
「(まさか、ベムさん達に何かあったのか!?)」
入り口から出ると、
「婆さん意外にやるな!おもしれーよ!」
「年寄りはもっと労わらんかい!これだから最近の若造は!」
「若造じゃねー!俺はもう三十路前だ!」
「ワシからすりゃー十分若造じゃ!」
男とがベムが戦っている…というよりも口喧嘩をしている最中だった。
「何だ、また一人出てきたか」
「ん?おぉシンか」
「えっと、何をしてたんですか?」
シンがベムに聞く。
「この若造が来ての。何でも道に迷ったと言ってきたんじゃ」
「だから若造じゃねー!だぁー、早く『赤鬼』って奴を見つけなきゃいけねーてのに!」
「!?」
「んっ、兄ちゃん…さっき動揺したな?てことは知ってるな、『赤鬼』について」
「(こいつ、さっきの気の抜けた態度から一変してる!?)」
先ほどとの変わりよう、そして動揺を見抜いた洞察力にシンは冷や汗を流す。
「まぁ待て、そうかっかすんな。捕って食おうなんて話じゃないんだ。だが、兄ちゃんが赤鬼だったら…」
「…何だ?」
「…頼む、俺と戦え!」
「……は?」
全く思わなかった発言に、シンは目が点になる。
「それがあの男に言われた命令なんだが、俺はただ強い奴と戦いたいんだ!頼む!」
「他の人達には手を出さないか?」
「ああ、俺はあくまで強い奴を探しているだけだ。人質など無用だ」
「……分かった」
「おう!じゃ、いくぜ!」
男は行き成りメモリを取り出す。
「な、メモリ所有者だと!?」
シンは驚くが、男は構わずにメモリを左の掌に注入。
【BLADE】
男の身体が変身する。
体は鋭利な剣のようにシャープなフォルム。
左手が剣と一体化し、右手にディフェンダーのような剣を持っている。
足は以上に細くなり、それが逆にその姿をさらに鋭き刃と思わせる。
『刃』の記憶を内包した男、ブレードドーパントが剣を向ける。
『赤鬼が仮面の戦士になれることは知っている。さぁ、仮面の戦士になれ』
「今まで見てきたドーパントの中でも一番強くて、やばそうだな」
743 :通りすがりの名無し:2010/07/19(月) 18:51:30 ID:unMD69gA
ダブルドライバーを装着。
「タバサ、今までで一番の強敵だ。いくぜ?」
「……(コクッ」
学院にいるタバサが頷き、メモリのスイッチを押す。
【CYCLONE】
【JOKER】
「「変身」」
タバサがメモリをインサートし、倒れる。
シンのダブルドライバーにメモリが転送される。
それを押し込み、シンが持つメモリもインサートし、ドライバーを展開。
【CYCLONE/JOKER】
シンの身体が変身し、Wとなる。
『それが仮面の戦士か。さぁ、来い!』
「一つ言っておく。今は仮面の戦士じゃない」
『私たちは…』
「『仮面ライダーW』」
そう言い、ブレードドーパントへと走っていった。
to be countinued.
最終更新:2010年08月10日 00:48