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仮面ライダーW 第12話『危険人物B > WAKE UP OF ZERO』

仮面ライダーW 第12話『危険人物B/WAKE UP OF ZERO』

―前回のあらすじ―
戦争が起こると知ったシンとサイト。
二人はそれぞれの決意を胸に戦場へと向かう。
地上でシンが、空中でサイトがアルビオン軍と戦闘。
シンはシエスタ達と再会を果たすが、メモリを持つ男に戦いを求められる。
一方のサイトにも、再びワルドとの対決が待っていた。

「はっ!」
Wが走り、飛び掛って拳を振る。
ブレードドーパントはそれを見切って避ける。
蹴りを食らわせようとするが、ディフェンダーに弾かれる。
「ふん!!」
その際にできた隙を付かれ、左手〈グレートソード型〉がWを襲う。
「がっ、ぐわ!?」
その斬撃に耐え切れず、Wが吹き飛ばされる。
「まだまだ!!」
ブレードドーパントが突撃する。
Wの蹴りと拳を時にはディフェンダーでいなし、時にはカウンターで攻撃する。
「がはっ!!」
『シン、メモリをメタルに…』
「くっ、ああ!」
Wドライバーの左スロットのジョーカーメモリを引き抜く。
【METAL】
ブレードドーパントの攻撃を回避し、メタルメモリをインサート。
【CYCLONE/METAL】
「はあああ!」
ブレードドーパントが左手を振るうが、メタルシャフトによって受け止められる。
「何、ぐっ!?」
シャフトを掴み、振り向き様に横薙ぎを当てる。
「さぁ、いくぜ!」
「はっ、面白い!それでこそ戦い甲斐があるってもんよ!」
Wがシャフトを振るう。
ブレードドーパントはディフェンダーで受けるが、サイクロンジョーカーよりもパワーがあるサイクロンメタルに力で押される。
「どんどんいくぜ!」
Wが距離を取る。
【LUNA】
右スロットにインサート。
【LUNA/METAL】
ルナメタルとなり、伸縮自在のシャフトを振るう。
「そらっ!」
「ぬっ、ぐおっ!?」
ブレードドーパントが左手とディフェンダーで弾いていくが、手数の多さに苦戦する。
「おりゃあ!!」
「ぐっ、しまった!?」
Wがディフェンダーを弾き落とす。
さらに猛攻を浴びせる。
「ぐっ、さすがだな『仮面の戦士』、いや仮面ライダーWだったか」
「まだやるか?」
「ああ、ここまで楽しい戦いは久しぶりだ。お前のような強敵に出会えたことに俺の心が昂っている!」
「アンタ、根っからの戦闘狂だな」
「俺が求めるのは強者のみ!今、俺の前にその強者がいる!戦う理由などそれだけで十分だ!」
ブレードドーパントの右手が変化する。
大きくも無骨な大剣〈バスターソード型〉へと姿を変えた。
先ほどの基本形態<ベースフォルム〉から、攻撃形態<アタックフォルム〉となる。
「さぁ、もっとだ!もっとその強さを俺に見せてみろ!仮面ライダー!!!」
「そんな理由で戦う奴に負けてたまるか!!!」



シン、Wがブレードドーパントと戦闘している中、サイトは竜騎兵が乗る火竜を撃ち落としていた。
「そこだ!」
ゼロ戦の機関銃が轟音を上げて、竜の翼膜を撃ち貫く。
羽ばたけなくなり、火竜が落ちていく。
「あれで最後か?」
『ああ。とりあえずだがな、相棒』
最後の一匹を撃ち落とし、サイトは内心で安堵する。
その後ろで、ルイズが膝を抱えていた。
恐怖からか、膝を震わせて小さい体をさらに縮こませる。
「姫様、どうかサイトと私をお守りください……!」
この前の任務でアンリエッタから譲り受けた水のルビーを指にはめ、祈るように呟く。
そして、手に持っていた『始祖の祈祷書』を開く。

『始祖の祈祷書』とは、トリステインの国宝であり、王族の結婚式で巫女がこれを手に持ち式の詔を詠み上げる習わしがある。
アンリエッタはその巫女にルイズを指名したため、ルイズが今もその手に持っていた。
「(始祖よ、どうか私達を救って下さい…)」
始祖にお祈りをしようと、『始祖の祈祷書』を開く。
ページを開いた瞬間、水のルビーと始祖の祈祷書が光り輝く。
「えっ…?」
いきなりの事に、ルイズが目を開く。
だが、驚きながらもその光を放つページを見つめる。
「(何?…私は、この本を見なきゃいけない)」
頭に過ぎる直感を信じて、ページを見る。
その光の中に、文字が書き記されていた。
「(これって、古代ルーン文字!?)」
ページの文字は古代ルーン文字で書かれていた。
努力家であるルイズは、授業で受けたこの古代ルーン文字を読むことが出来た。
「(――序文 これより我が知りし真理をこの書に記す この世の全ては……………これ、もしかして!?)」
そこに記された文を見て驚愕する。
――我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん――
「虚無の系統って、伝説じゃないの。伝説の系統じゃないの!」
思わず呟く。
その中、サイトは矛先をラ・ロシェールの上空に浮かぶアルビオンの巨大戦艦へと向ける。
『相棒、あれが敵の親玉だ。あれを倒せばこの戦いは俺らの勝ちだ』
「ああ、分かってるよ」
デルフリンガーの呟きにサイトが頷く。
「まぁ、無理難題だがな」
「何でだよ!?」
『分が悪すぎる。あっちの大量の大砲に比べたら、こっちの武装なんざ豆粒程度だ。あの兄ちゃんがいればもしかしたらって位だ』
「でも、シンはいない。俺がやらなきゃいけないんだ!!」
そう言うと、サイトはゼロ戦のスロットルを全開にする。
フルブーストで、ゼロ戦が巨大戦艦に向かう。
『無駄だ相棒。勝ち目がねぇ』
冷静に、デルフが現実を突きつける。
だが、サイトはその言葉に耳を貸さない。
『分かっちゃいたが、相棒はアホだね』
ゼロ戦を戦艦に近づける。
瞬間、戦艦の右舷から砲撃音が響く。
途端、ゼロ戦に数多の鉛弾が襲う。
『相棒、散弾だ!!』
デルフが叫ぶ。
鉛弾はゼロ戦の機体を震わせ、傷を負わせ、風防を割りサイトの顔を掠める。
掠めた箇所から血が流れ、サイトは恐怖を感じる。
『第二波が来るぞ!!』
「くっ!?」
ゼロ戦を下降させることで難を逃れる。
「あいつら、大砲に銃弾詰めて撃ちやがったな!?」
『どうするよ相棒?』
近づくことも出来ずに、サイトは唇を噛む。
その轟音が響く中でも、ルイズは聞こえないかのように『虚無の祈祷書』を見入る。
そして、最後の文に目を向ける。

――これを読みし者は、我の行いと理想と目標を受け継ぐものなり。

またそのための力を担いしものなり。

『虚無』を扱うものは心せよ。

志半ばで倒れし我とその同胞のため、異教に奪われし『聖地』を取り戻すべく努力せよ。

『虚無』は強力なり。

また、その詠唱は永きに渡り、多大な精神力を消耗する。

詠唱者は注意せよ。

時として『虚無』はその強力により命を削る。

従って我はこの書の読み手を選ぶ。

例え資格無き者が指輪を嵌めても、この書は開かれぬ。

選ばれし読み手は『四の系統』の指輪を嵌めよ。

されば、この書は開かれん。

ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ

以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。
初歩の初歩の初歩『エクスプロージョン』――

その後に、古代語で書き記された呪文が続けられている。
ルイズがそれを見て呟く。
「始祖ブリミル。あんた少し抜けてるんじゃないの?この指輪がないと『始祖の祈祷書」は読めないし、
その読み手ってのもいなきゃ注意書きの意味無いじゃない」
一人愚痴る。
だが、今はそんな場合じゃないと、頭の中が言ってくる。
直感が知らせてくる。
―自分はその読み手、つまり『虚無の系統』の使い手なのではないか?―
文字は読める。
呪文もつづられているなら、この魔法を使えるかもしれない。
「迷ってる時間なんて無いわ!」
覚悟を決める。
「サイト!」
「何だ…って、大人しくしてろよ!バカ、前が見えねぇ!」
サイトの静止を振り切り、喋り始める。
「その…うまく言えないんだけど……私、何か…選ばれちゃったみたいなの」
「はぁ?」
「いいから、このひこうきとやらを、あの巨大戦艦に近づけて。詐欺かもしれないけど、何もしないよりはましだわ。
とりあえず、一泡吹かせるためにやってみましょう」
「いや、訳が分からんぞ?」
ルイズの言葉にサイトは唖然とする。
「近づけなさいって言ってるでしょ!私はあんたの主人!使い魔は、主人の言うとおりにしなさい!」
そう言われ、サイトはゼロ戦を巨大戦艦へと向かわせる。
だが、散弾がゼロ戦目掛けて宙を飛び交う。
「ちょっと、全然近づいてないじゃない!」
「無理言うな!あの中行くなんて自殺行為だ!」
「それを何とかするのがあんたの仕事でしょ!」
近づきたくても、戦艦は全大砲をゼロ戦へと向けている。
今、サイトに見えるのは戦艦ではなく、要塞が浮いているようにしか思えないのである。
「(何処かあるはずだ、こいつの死角が!)」
必死に探す。
「…ッ、分かった!!」
『おう、見つけたかい相棒』
そして、気づいた。
「『戦艦の真上!』」
大砲が上がらない位置、死角へとゼロ戦を浮上させる。

「少し肩借りるわよ」
「はっ?って、おい何してんだよ!?」
ルイズがサイトの肩に跨り、風防を開ける。
「私の合図までここでグルグル回ってて」
サイトに言い残し、目を閉じ、深呼吸をする。
そして目を開く。
『始祖の祈祷書』を持ち、そのページに書かれた呪文を読み上げる。
『相棒、嬢ちゃんに策があるらしい。ここは言う通りにしな』
「あ、ああ」
言われたとおり、ゼロ戦を戦艦の上で旋回させる。
『相棒後ろだ!!』
途端、デルフが叫ぶ。
その方向を見ると、一騎の竜騎士がゼロ戦目掛け、疾風のような速さで向かってくる。
「ようやく、ようやく俺の出番か!!」
「ワルド!?」
乗っていたのは、ワルドだった。
ゼロ戦を急降下させる。
「何だってアイツが!?今まで何処にいたんだ!」
『恐らく、雲の上で待ち構えていたんだろうな』
振り切ろうとゼロ戦を操縦する。
だが、ワルドが乗るのは風竜。
先ほどの戦闘で戦った火竜とは速度が段違いである。
ゼロ戦の後ろに張り付き、差を縮めていく。
ゼロ戦内にいるサイトとルイズを見て、ワルドがにやりと笑う。
「疼くぞ。貴様が、貴様が切り落とした左手が!!」
ワルドが呪文を詠唱。
「エア・スピアー」
右手に持つ杖が空気を纏う。
「空気の槍で、そのデカ物を貴様ごと串刺しにしてやろう!」
「くそっ、諦められるか!」
その時であった。
光弾が風竜に向かって撃たれる。
「何っ!?」
咄嗟に避けるが、ゼロ戦との差が開く。
「くそっ、忌々しいな『仮面の戦士』!!」
ワルドが悪態をつく。
「さっきのって、まさか…」
「赤鬼の兄ちゃんじゃないか?」
「(自分もライダーになってドーパントと戦ってんだろうに、難儀だなシン…礼を言うぜ!)」
再び撃たれる光弾に悪戦苦闘するワルドを尻目に、サイトは再びゼロ戦を上昇させた。

「さて、うまくいったかな?」
ルナトリガーとなったW、シンが呟く。
『貴様、何処を狙っている!ふざけているのか!』
ブレードドーパントが激昂する。
戦闘の中、目の前にいる相手が自分を見ない事に苛立つ。
「ふざけてなんか、いないぜ!」
銃口をブレードドーパントに向け、引き金を引く。
一つの光弾が放たれる。
『こけおどしか、真っ二つにしてやる!』
左手を振るう。
瞬間、光弾が分裂し、小さな光弾が無数となって襲い掛かる。
『何っ、グオッ!?』
驚愕するブレードドーパントに全ての弾が当たる。
『今が好機…!』
「ああ、一発かましてやるぜ!」
【HEAT/METAL】
ヒートメタルへと変身。
シャフトを構え、ブレードドーパントに突っ込む。
シャフトで横薙ぎ。
ブレードドーパントが両手で阻む。
『ふっ、なッ!?』
「おりゃああああ!!」
熱を纏う右の拳を顔面に当てる。
『がっ!?なんという力…そしてなんて多彩な技!』
ブレードドーパントが起き上がる。
『今まで戦った中で一番の興奮だ!もっとだ、もっとその力を見せてみろ!!!』
ブレードドーパントの足が変化し、両手の剣も形状を変える。
足がより鋭利となり、鉈のような形状となる。
両手はレイピアのような細い剣となった。
『この姿…なるほどな』
構える。
『はっ!!』
踏み込む。
一気にWの間合いに入る。
「なっ、速い!?」
『そこだ!』
左手が振るわれる。
「ぐっ、おりゃ!」
『遅い!』
シャフトを振るうが、ブレードドーパントは間合いから既に離れていた。
『相手は、攻撃を当てて直ぐに離れる戦法に変えている…』
「スピードを極限まで上げていやがる。だがその分、威力をかなり減らしている。手数で勝負するつもりだ」
『さぁ、見切れるか、この速さを!』
再び突進。
速さにかく乱され、幾つもの小さな火花が散る。
「ぐっ、ちまちま攻撃しやがって!」
『……』
突如、Wの両腕が動く。
「どうしたシャル?」
『私に考えがある…』
【CYCLONE/JOKER】
メモリチェンジでサイクロンジョーカーに変身。
『その姿になってどうするつもりだ?』
ブレードドーパントの言葉にWは答えず、静かにその場に佇む。
『何も言わないか。だったら、これで終わりだ!』
踏み込み、駆ける。
『(貰った!!)』
『左から…!』
『なッ!?』
すれすれで攻撃を回避する。
『まぐれか、もう一度!』
『…右!』
再び回避。
『馬鹿な、どうやって予測している!?』
『…風が、教えてくれる』
Wが備えている機能として、微量の吹く風をも感知することが出来る。
これを利用し、ブレードドーパントが動く際に流れる風を感知したのだ。
『くっ!』
ブレードドーパントが突撃する。
だが、Wは先ほどのように避ける。
【CYCLONE/TRIGGER】
同時にメモリチェンジ。
トリガーマグナムを向けて放つ。
「ぐおおお!?」
ブレードドーパントが倒れる。
「さぁ、まだやるか?」
瞬間、空に光が生じる。
白い、どこまでも白い小さな太陽のような光が。
「何だ、あれは?」
『…綺麗な光』
それは大きさを増していき、白い光はその場所を飲み込むように膨張する。
包み込むように膨れ上がる光。
「あそこは、戦艦がいた場所…」

音も無く、光が広がる。
そして、光が晴れると、何かが燃えていた。
『あれは…戦艦?』
戦艦が炎上しながら、力無く墜落していく。
『これは、撤退するしかないな』
ブレードドーパントが呟く。
『仮面ライダー。この勝負、一先ず預けておく』
そう言い残し、何処かへ駆けていった。
『…お疲れ様』
「ああ。ありがとな、シャル」
変身を解除。
予想以上に疲れたのか、その場に座り込む。
「強いな、アイツ…」
呟く。
シャルロットの機転が無ければ、やられていたかもしれない。
シンはそう考えていた。
「(まだまだ俺は、半人前か)」
一人では勝負にもならなかっただろう。
「(でも、だからこそ俺達は…二人で一人なんだろうな)」
二人でなら、どんな事も乗り越えられる。
そんな思いを抱いた。
「シンさーん!」
「「シン兄(兄ちゃん)~!」」
呼ぶ声が聞こえ、振り返る。
笑顔で走り寄るシエスタ達が見える。
「(…そうだな、今は…)」
―生きられた事を、確かに感じよう―



「ルイズ、今の…もしかして」
さっき起きた出来事を、呆然と見ていたサイトが問う。
『虚無だ。虚無の魔法だ!』
デルフが興奮した様にカチカチと音を鳴らし喋る。
『懐かしいぜ!昔見たのと同じだ!いやーおでれーたおでれーた!』
「じゃあ、やっぱり…」
ルイズがサイトの肩から降りて振り向く。
「使えちゃった、みたい…」
自分でも信じられないという風に、ルイズが言う。
「間違い、じゃないと思うんだけど、何か…実感が湧かないっていうか…」
「ルイズ…」
「と、とにかく!戦艦は落としたわよ!」
「…そうだ、ワルドは!?」
サイトが気づく。
『大丈夫だ相棒。逃げてったみたいだ』
「えっ?」

『戦艦落とされちゃあ、アルビオンがこれ以上戦うのは無理だ。何より、あの男が表舞台に出ることは無さそうだからな。
そそくさとどっかに行きやがった』
「そっか…」
重く息を吐く。
「終わったんだな」
安堵と共に圧し掛かる脱力感。
抜けた緊迫感と入れ違いに現れる虚無感。
色々な感情がサイトの中で渦巻く。
「(やっぱ、怖いな…)」
戦場という場所に今一度恐怖する。
「…サイト、下を見て」
ルイズの言葉を聞き、下を見る。
そこには、旋回するゼロ戦を見て歓声を上げているトリステイン軍が見えた。
「サイトが守ったのよ。戦争からこの人達を、トリステインの人達を」
「(…そうだ、俺も何かを守れたんだ)」
―コツンッ
不意に割れた風防から影が三つ。
―キュイキュイ!
―ガガッ!
―シャカシャカ!
シンが持っていたガジェット達であった。
よく見れば所々が汚れ、心なしかグッタリしている。
『おお、赤鬼の兄ちゃんが持ってた奴らじゃねーか!?』
「アンタ達もお疲れ様ね」
「…そうだな」
―お疲れ様―
ガジェット達はその言葉を聞いて、再び風防から出ていく。
「どこ行くのよあいつ等?」
「帰るんだろ、持ち主の所へ」
操縦桿を握る。
「さぁ、俺達も帰るぞ!」
学院に向かって、ゼロ戦は飛んでいった。

「くっ、忌々しい奴だ!あの赤鬼が!」
「そうかっかするな。この戦争はお前の負けだ」
とある山の中、ワルドとブレードドーパントである男が喋っていた。
「貴様!」
「おっと、俺は事実を言っただけだ。俺を恨むのはお門違いだろ?」
「貴様も赤鬼に負けておいてよくそんな口でいられるな?」
話題をそらすためか、嫌みったらしくワルドが吐き捨てるように言う。
「その話じゃ俺も勝てねぇな。だが、俺が負けたのは仮面ライダーに、だぜ?」
「仮面ライダー?」
「『仮面の戦士』が言ってたぜ。俺達はっても言ってたし」
「ふん、有名人気取りか。笑わせる」
「(ますます面白いぜ、仮面ライダーW。お前を倒すのは、この俺だ!)」
「行くぞ、『切り裂き貴族』」
うきうきとしていた男の行動が止まる。

―その名で俺を呼ぶな―

気さくそうな男とは思えぬ程の冷淡な声。
「今の俺は唯の傭兵。強い奴と戦うことが俺の望み。そうは言った」
だが、と続ける。
「昔の俺を引きずり出すのは止めておけ。そうなりゃアンタも、」

―切り裂き魔から逃げられないぜ?―

ワルドが震える。
目の前にいる人物が放つ殺気に恐怖を感じる。
「ああ、注意しておく」
「あら、随分な言い草ね」
不意打ち気味の声に振り向く。
「アイシャ…」
「あら、そんなに私がここにいるのが不思議?」
アイシャが不敵に微笑む。
「前の失敗もあるのよ。これ以上無駄足を踏むと、何時か大きな落とし穴に落ちるわよ?」
「…分かっている」
「ま、その事は別として、貴方」
男を指差す。
「仮面ライダーと名乗った男、本当にいたのね?」
「ああ。その男とも戦った」
その言葉に、アイシャは微笑む。
先ほどのような温厚そうな笑みでなく、邪悪な笑みを。
「やっと、やっと見つけたわ。待ってなさい、タバサ…」
シンの相棒の名前を口にして、アイシャはその場を後にした。



―日記―
アルビオンとの戦争が終わり、トリステインはこの数日大忙しであった。
戦勝のパレードに、アンリエッタ王女…否、アンリエッタ女王の戴冠式。
その際にアンリエッタ女王は『聖女』として崇められ、ゲルマニア皇帝との婚約は解消となった。
その中で、俺達(シン・サイト・ルイズ)は女王殿下から直々に呼び出された。
扉を開けた瞬間に、女王はルイズに抱きついた。
曰く、女王としての職務が辛いらしく、今までどおりの親友でいてほしいらしい。
その後の話は、あの時の戦争の話。
あの時に見えた、白く、全てを焦がす太陽のような光の正体。
ここは極秘機密なため、記さない。
追記:トリステイン軍ではサイトが操縦していたゼロ戦を伝説の不死鳥『フェニックス』として
    祀り上げているらしい。
その後の話として、女王は俺にこう言ってきた。
―貴方は優しいのですね―
酷く、その言葉が残酷に聞こえた。
………
……

「…優しい、か」
違う。
自分はそんな人間じゃない。
どんなに今を優しく生きたところで、自分の手は真っ赤な血で濡れている。
この手が、人を殺してきた。
自分は人殺しである。
軍人だったから、そんなのは言い訳でしかない。
そんな考えをしていると、
―コツっ―
頭に小さな衝撃。
見ると、本(小突いた物)を手にしているシャルロットがいた。

「…また考え事?」
「ん、いや、その…」
「…貴方は深く考えすぎる」
「えっ?」
「それ以上に、自分の事を低く見すぎている」
そう言い、日記を見る。
「お、おいシャル…」
「…大丈夫、貴方は優しい」
その言葉にシンが驚く。
「以前に言った。私は貴方の過去を知らない。でも、知らないからこそ言える」
シャルロットが微笑む。
「貴方が持ってる優しさは、本当の物だから」
「……あ、ありがとな」
少し顔を赤くして、シンが礼を言う。
「(償えるわけじゃない。でも、こんな俺でも頼ってくれる人がいるなら…俺は、その人の力になりたい)」
改めて自分が出来ることを確認する。
今出来ることを、出来るようになったことを。
「あ、そういやここ数日のゴタゴタで言い忘れてたな」
「…?」
シャルロットへと向き直る。
「ただいま、シャル」
「…おかえりなさい」
この前の約束を思い出し、二人は互いを抱きしめ合う。
互いの存在を確認しあうように。
だが、忍び寄る暗く強大な力の存在を、今の二人は知るよしも無かった。

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最終更新:2010年08月18日 22:03
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