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酔っ払いのなのは小ネタ-13

――あの人が嫌い


いつも怖い顔をしているから、嫌い。
私に会うと、寂しげに話しかけて来るから、嫌い。
赤い眼が、血の色のようだから、嫌い。
私も同じ目だけど、やっぱり嫌い。
だけど、一番の理由は……


私 か ら マ マ を 盗 っ て 行 っ ち ゃ う 人 だ か ら 嫌 い


突然現れて、いつも怖い顔でいるから嫌い。
だから私に話しかける時は、決まって私は無視をした。
そんな時の、寂しそうな顔が余計に腹が立った。
そんな私を、ママが注意するのが嫌い。
私がまるで悪い子みたいな気分になるから。
強くて、かっこよくて、大好きなママを盗られる気がした。
私に掛けてくれるママの言葉が、あの人盗られちゃう気がして許せない。

だから私は、あの嫌いな……うぅん、大大大っ嫌いなあいつと対決することにした。

あいつの部屋をコンコンってノックして(決して私の背が低くてインタ-ホンに届かなかった訳では無い)
空けられたドアから、部屋に滑り込んだ。
汚い部屋なら、いきなり文句でも言ってやろうと思ったのに綺麗だった。
余分な物なんか一つも無い、面白みの無い部屋。

ますます嫌いになった。
まるで私がお片づけが出来ない子って言われた気がしたんだから。
どうしたら良いか分からないってオロオロしてるのを見て、私は
ちょっと勝った気分になって、ドカっとベットに座った。

そして言ってやったの

「あんたなんか大っ嫌い!!」って

言った後で、文句でも言われるのかって、待ち受けていても、何も文句は飛んで来なかった。
ちらっとあいつの方を見ると、なんだか酷く悲しい顔で俯いていたわ。
なんだか私が悪者みたいじゃない。
黙っているのに耐え切れなくなって、私が部屋に帰ろうとすると、あいつが呟いた。
決して私が、沈黙に耐え切れなくて逃げようとした訳じゃないわ。

「そっか……嫌いか……」

そうよ、私はあんたなんか大っ嫌い。

――まだ、彼は泣いているんやろか?



煌々とした灯りを落として、すっかりと暗くなった隊舎に帰って来た頃にはもう9時に近かった。
鬱積した疲労は体を蝕ばんで、動かすのも億劫な程に手足は休息を求めていた。
今すぐにでも熱いシャワーを浴びて、太陽の残り香がするパジャマとベットに包まれたい欲求に
堪えながら、私は自分のデスクへと足を運んだ。
部屋についてスイッチを入れると、蛍光灯が瞬いて灯る。デスクの椅子を引いて、どっかりと
腰を落とすと、思わずそのまま突っ伏して寝てしまいたい衝動に駆られた。

けれどそれはあかん。
まだ自分には仕事が残っとる。六課のトップとして、部隊の責任者として、そして私の理想の為。
私が六課を立ち上げる際には、様々な圧力が掛かり、多すぎるほどの反対と戦ってきた。
幸いにもバックに聖王協会やリンディさん達が付いてくれた。反対する心情も私は理解出来る、
実績の乏しい小娘が部隊を編成し、運用する。しかもメンバーは私の騎士団を含めて、現管理局の魔導師
の中でも極上の面子を要求しているのだから。

メンバーを選定する際には、私達のエゴが混ざっていると知りながら、理想と言い聞かせる事でそれを塗り潰した。
毎日反対意見を唱える人の説得に奔走し、時にはバックの力をちらつかせて黙らせる。
明確な却下が出るまで、口八丁手八丁で時間を稼ぎ、圧力をのらりくらりと交わしながら根回しを続ける。
なのはちゃんやフェイトちゃんには相談をほとんどしなかった。
いや、相談をしていても、そう云った交渉の裏で行われる汚い仕事については話さんかった。彼女達は純粋で
無垢や。そしてそれは、長所であると同時に短所でもある。

そうして無理矢理に立ち上げたのが、私の六課。立ち上げの経緯がそれだけに、敵は多い。
同じ組織と言えど、内部は常に蹴落とし合っている。組織の中での予算の奪い合い、発言権の増大を狙っての
工作、現場指揮権の優劣を決める駆け引き。誕生したばかりの部隊の立場ははっきり言って低い。
有力な魔導師が揃っているとは言え、実績の無い部隊に権力は無い。
そして失敗は許されない、なにか落ち度があればそこから付け込まれて、最悪の場合六課は解体される危険もある。
表向きは仲良く話す幹部達は、常に相手の腹を探り合いながら談笑し、管理局の舞台裏で交渉テーブルにつく。
そんな席に居て腹芸と、時には恫喝じみた事をする私は汚れているやろうなと思う。

……こんな仕事をするのは私だけでえぇ

一通り感傷に浸って、今日の仕事の詰めに入るべく私はデスクに大量の資料と、部下達から
上がってきた報告書と申請書に眼を通す作業を開始した。


11時を回った辺りで、ほぼ総ての資料に眼を通し終わり、決済の判子を押して席を立った。
手元の明かりを消し、重たい足を引き摺るようにして出口へと向かう。バックの中のリィンは
とうの昔に寝息を立てて、そんな彼女を起こさないようにゆっくりと持ち上げた。
不意に彼に会いたい衝動に駆られたけれど、時間を考えて自重する。出口のノブに手を掛けた所で
戸締りのチェックをもう一度しようと、部屋を一周する。すると私のデスクからは死角になっている
場所で、硬い椅子を並べて眠っている彼を、シンを見つけた。

大方残業でもして、部屋に帰るのが面倒になったのだろう。どうせ明日は休みだ。
私は一度持ち上げたバックをゆっくりと降ろして、シンへと近づく。彼が起きやしないないかと
酷くどきどきしながら、ゆっくりと彼の頭を持ち上げて、椅子と頭の間に滑り込み太腿に頭を乗せ直した。
男の子とは思えない艶やかな黒髪に、指を通して頭を撫でた。むがむがと言いながら、頭の位置をずらした彼を
愛しく思う。

あの日、虚ろな表情と、夕焼けに似た哀しい赤眼。激情に染まり、憎悪と自己嫌悪にたぎった赤い瞳は、今は閉じられて
安らかに眠っている。私は飽きる事無く、手櫛で漉きながら横顔を見つめているたんや。
寝言で呟く言葉が私であるように、彼の夢の中でも私がいますように、そう願いながら……

言葉になっていない彼の寝言は、猫の様に気まぐれで、雲のように捉え所が無い。
さっきまでの蝕む疲れは、心地良い疲れに変わって私の意識を溶かす。疲れと、普段なら有り得ない状況が私の脳髄を
甘く犯して、こんな一日の終わりなら、悪くない。本音など望むべくも無く、探り合いに疲れた一日の終わりがこんなにも
穏やかなら、私はもっと頑張れる。
願わくは彼に平穏を、傷ついて、裏切られて、何度無くしても、それでも尚誰かの為に怒れる彼に、今は安らぎを。

そんな祈りを捧げながら私の膝で眠るシンの横顔を見つめながら、私は彼の頬を伝う涙と、呟いた言葉にを聞いて
私は涙した。


――ごめん…………守れなくて
あぁ、彼の心はまだ泣いているんや。
手のひらから落ちてしまった命を見つめて、僅かに残った後悔を啜って、シンはまだ泣いている。

生来の物であろう活発さを次第に取り戻してはいても、傷跡はいまだ彼の中で血を流している。
風雨の様な哀惜の慟哭から、まるで凪の湖面の様にさめざめと、形を変えて彼の叫びは私の心に
流れて来た。
それでも手を止める事無く、私はシンを撫で続けた。

なぁシン? いつになったら泣くのを辞めるんやろ?
なぁシン? 私の傷を知ったら、同じ様に泣いてくれるんやろ?
なぁシン? 私はいつになったら、君の傷を癒せるんやろ?
なぁシン? 君は私が逝っても、こんな風に泣いてくれるん?

そんな留めどない思いと問い掛けを抱いて、私も一緒に泣いていた。
救われるより救いたい、偽らざる私の想い。けれど私の傷を見てどう想うだろう?
救う為に手を差し伸べながら、その実救われたいと願う私は醜い偽善者だ。
しとどに落ちる雨のように、頬伝う涙は流れて、今だけは……
私が流した涙は、顎の先からぽたりと落ちて、彼の頬を濡らした。
ゆっくりと目開けて、眠そうに手をごしごしと動かすと、私に気づいて
目を真ん丸にした。

「や!八神隊長!!」

慌てて起き上がろうとする彼の額を抑えて、そのまま私の膝で横になるように促した。
赤い顔をしながら目線をうろうろと彷徨わせている様は、どこか可笑しくて私は微笑んだ。
なんとも言えない、エレベータで相乗りしている時のような、沈黙が場を支配する。先にそれを
破ったのは私。

「なぁ、シン? まだ……泣いてるん?」

私の問い掛けで始めて、泣いて居たのを自覚したのだろう。またも目を真ん丸にした後、恥ずかしそうに
私の腿に顔を埋めた。そして、なにか言いたそうな雰囲気を感じ取って、頭を優しく撫でる。
しばらくそうしていると、ぽつぽつとシンが喋り始めたので、私はそれに耳を傾けた。

「その、すいませんでした……泣いたりなんかして。んで……ありがとうございます……心配してくれて」

返事の変わりに、赤くなっている耳たぶを少しつまんでみた。びくりを体を動かした後、また沈黙。
だから私はまた聞いた。今度より深く。まだ泣いてるのかと、想い出はまだ……君を責め立てるのかと。

「俺は……沢山殺しました。無くさない様に、奪われないように、護る為に……でも結局ダメでした。
 護れなかった、何一つとして……この痛みは決して消える事無く、この先ずっと俺を責め立てるでしょうね。
 でも今は……この痛みが無くなる方が嫌なんです。これは俺の生きる理由の一つだと思うから」

「こっちに来てから、分かった事があったんです。俺が護る為にと戦っても、殺した事実は変わらない、
 そうすることで俺は沢山の俺を作っていたんです……今はそれが辛い。どんな理由を付けても、やった
 事実と責任は俺ですから」

悲哀に満ちた告白を聞いて、私はさらに涙した。そして私の心は、悲しみと共に奇妙な安堵と連帯感を覚えた。
あの日、リィンが逝った事はいまでも私を苛める。私にもっと力が有ればなんとかなったのでは無いだろうか?
誰に聞いても、あれは仕方なかったと答えるだろう。現に皆はそう答える。けれど、たとえそうだとしても
私は思わずにいられない。もっと力が有れば、もっと知識があれば救えたかもしれないと……

私の騎士達は過去に沢山の人を傷つけた。多くの人達と生き物を襲い、時には命を奪っただろう。たとえ過去に
騎士達がした事でも、その責任は現在は私にある。私は夜天の主なのだから。
どれほどの慰めを聞いても、どれほどの言葉を掛けられても、私の過去の傷はじくじくと痛み、私が下す命令で傷つく
相手の憎悪がそれに塩を塗り込める。
過去の痛みをいまだ抱え込み、想いの為に誰か傷つけた。
奇妙な安堵と連帯感の正体はこれだろう。彼を想う気持ちとは別に、私は傷の舐め合いを
求めているのかもしれない。そうすることで私は救われると思っているのかも知れない。
まったくの偽善者だ。自分の事ながら醜くて、反吐が出る……

「なんで……隊長……いや……はやてまで泣いてんだよ……」

気遣ってくれる彼の言葉が今の私には、途方も無く嬉しくて、そして痛い。
いつの間にか身を起こして、膝枕で無く隣に寄り添うように座るシンが
愛しくて、哀しくて。
私の醜い心は歓喜と苦痛に悲鳴を上げる。言葉は嗚咽となって静か薄暗い沈黙の部屋に響き、
思いは溢れる涙になって頬を伝った。
彼の為に泣いていた筈が、今は自分の為に泣いている。情けないと頭の片隅では思いながらも
今はこの気持ちがこぼれて、どうしようもない。

ふと気づけば、優しく抱かれていた。シンの胸は温かく、私がしていたように頭を撫でてくれる手からは、
温もりが伝わって来た。それを認識した私の弱い心は溢れ出して、堰を切った濁流になる。嗚咽では無く、
声を出して大泣きしながら、私を抱くシンに私は抱きついた。

泣き疲れて、それでもぐずぐずと彼の胸に抱かれていた。伝わって来る体温が心地好くて、髪を漉いてくれる手が
気持ち好くて。もうしばらくこうしていたいと思いながら、私は私の傷を彼に曝け出した。
まだこうしていたいと思いながらも体を離して、最後はこう結ぶ。
こうする事は傷の舐め合いかもしれへんなって。

余計な事を言わなければ良いのにと、そう考えながらも私は言った。言わなければならないのだ、自分でそれに
気づいてしまっているのだから。それと知りながら無視などすれば、私は永遠に彼に届かないと思うから。
拒絶に怯えてきつく目を閉じた顔は、まるで凶悪犯が裁判の判決をびくびくと待つように。
受け入れて欲しいと浅ましく震える肩は、死刑囚がその実行の朝に怯える様に似ていた。

――願わくば……もう一度抱いて欲しい

酷く長い一瞬だった。
再び私は抱きすくめられて、年下の彼の胸の中で息をしていた。
見上げてみるとそこには、優しい紅い瞳があった。彼のしなやかな指が
私の涙を拭い、まるで恋人達の様に頬を撫でる。

交差する視線と頬に当てられた掌が熱い。そして一度目を逸らした後で、もう一度
戻ってきた紅い瞳。
言葉を捜しながら話し始めたシンを、一字一句聞き逃すまいと私は見上げた。

「傷の舐め合いかもしれない、でも……それでもいい。はやてが泣いているのは見たくない。
 だから……それでもいいんだ」

優しい言葉と思いはさっきまでとは違って、私の傷を優しく癒してくれた。
湧き上がる歓喜と愛しさに戸惑いながら、ありがとうと言い続ける。それしか言えないから。
頬に当てられたシンの左手に私の右手を重ねて、左手で彼の涙の後を撫でる。
シンの右手がいまだにぽろぽろと流れる私の涙を拭い、絡み合った視線はお互いに
どうしようもなく熱く濡れていて……


ただひたすらに静謐な部屋で、不思議と穏やかな互いの鼓動を感じ、
窓から差す月明かりは、まるで祝福のように私達を照らす。

私達は同時に目を閉じて、吐息が触れ合うまで顔を近づけて……
バックが落ちた音に驚いて、急に恥ずかしくなって二人とも離れた。
音がした方に振り返ってみると、汗をだらだらと流すリィンと目が合った。
多分、その時私は鬼の様な顔をしていたのかもしれない。
二人してリィンの方を見ていた為に、シンには見られなくてよかったと
冷静考えていた。
冷や汗をまるで滝のように流すリィンは、聞いてもいないのに饒舌に話し始めた。

「あ、あのですね! 眠っていたらですね! はやてちゃんの泣き声に驚いてですね!!
 慌てて起きたんです! そうしたら……その……そんな場面で……声掛けづらくて……
 決して夢中になって覗きなんてしてませんよ! つい……その~」

うん、あらかたの事情は解かったわ。多分リィンは悪ぅないかもな。
けれど納得いかへん、理性が許しても感情がリィンを許すわけにはいかん言うてる。
まぁここで話してもあれや、ちょっとお散歩行こうな。

がたがたと震えるリィンをバックに入れて、気まずそうなシンを見る。

「なぁ……シン。明日……デートしよ?」

シンが返事の変わりに微笑むの確認すると、私は明日の服とリィンのお仕置きを考えながら
部屋に戻った。

後日、リィンのメンテ日

シャーリー「リィン曹長、詳しく教えてください!」
リィン「ここだけの話ですよ~はやてちゃんとシン君がですね~」
シャーリー「それでそれで!!」
リィン「本当にここだけの話ですからね、それでゴニャゴニャ~(ry」
シャーリー「キャーキャー!! それホント!?ホントにホント!?」

なのは「ふぅ~ん……詳しく聞かせてね?」
フェイト「メンテに出してたデバイスを取りに来たら、だいぶ面白そうな話してるね?」
ヴィータ「あの色魔め! はやてにそんなことを!!」
リィンⅡ「ひぃぃぃ亜qswでfrgthyじゅぉ;p:@」
シャーリー「私は知りませんよ! リィン曹長から聞いただけですから!!」
リィンⅡ「ヒドイ! 裏切りですぅ!!」


シン「で? なんで俺はいまヴィータ副隊長と模擬戦を?」
ヴィータ「問答無用!! 逝って来い大霊界!! ギガントシュラァァァァクッ!!」
シン「そろそろ俺は本気で死ぬかもしれないな……だがこんな所で俺はぁぁぁぁぁ!!」

なのは「ヴィータちゃんとあそこまでやりあえるなんて……シン、恐ろしい子!!」
フェイト「じゃぁそろそろ私達も行こうか? なのは?」
なのは「そうだね、フェイトちゃん。全力全開で……ね?」

エリオ「あの~止めたほうが……」
シグナム「なぜだ? 少なくとも私は留めるはさらさら無い」
エリオ「…………」
キャロ「でも……シンさん、死んじゃうかもしれないですし……」
ティアナ「シンなら大丈夫よ、シャマル先生も待機してるし。さて、私もアップ始めようかな」
キャロ「…………」
スバル「ティア……今日は私達の訓練は無かった筈じゃ」
ティアナ「自主練よ、文句ある?」
スバル「…………」

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最終更新:2010年11月09日 13:31
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