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ムキドー多重クロス-11

いつあたしらの夢は違えてしまったんやろう…
いや、夢自体は今も違ってはいないのかもしれん。
違うのはそれ以外の…夢の外への想い。
何が大切で何を切り捨てるのか…
何を“守り”何を“倒す”のか…
いつか会ったあの男の子は言った…「大切じゃないものなんか、無い」と……


機動戦士ガンダムSEEDDESTINY-SIN In the Love-
  PHASE-10「戦火の中へ」


「…と、いうわけでぇ」
後方でモザイクがかかっているシンをよそに、フェイトに向き直るさくら。フェイトは相手が相手なので真剣な顔になる。
「余計な手を出さないでもらえるかな?」
「そうはいかn」
「もし断れば…」
フェイトのセリフを遮り言うと、ゴソゴソと何かを取り出す。
「この『ヴィンヴィンと動くイヤンな棒』や『ヴィーと振動するアレ』その他モロモロを使ってキミを同人誌展開にすることになっちゃうけど?」
「―――――っ!!!」
戦慄するフェイト。同人誌展開はマズイ…凌辱系しかない。
どうやらさくらは前回のプリムラの発言に賛同したようだ。
「ちょちょちょっ、さくらさんっ! どこでそんな物を!?」
さくらの手にある物体を見咎め、顔を真っ赤にし音姫が叫ぶ。純情乙女には目の毒だ。
「え、音姫ちゃん持ってないの?」
「持ってませんっ!!」
「またまた~♪ 音姫ちゃんみたいな子は意外と…」
「~~~っ!」♯
「いたぁ~い! 年上に手を上げた~っ」
「へ、変なこと言うからです! えっちなのはいけませんっ」
「『18歳以上w』ノクセニ」
「……」♯
「プギャー」
無言で踏みつけられるシン。モザイクが汚くなった。
「でも実際問題、このままってわけにはいかないよ?」
由夢の発言通りだ。そもそも話が進まない。
「「やっぱり“コレ”しか…」」
さくらとプリムラが同時に言う。
楓はプリムラの手から“ソレ”を奪おうと奮闘中。音姫は怒り、アイシアは“ソレ”をチラチラ見ている。亜沙は苦笑い。ヴィヴィオは寝ている。
「…興味、あるでしょ?」
「「「っ」」」
再び騒がしくなる中、さくらの一言で場がシーンとなる。
「彼女がどんな風に○○のか、どんな○○○をするのか、人は壊れるとどんな反応を示すのか…」
「「「……ゴクリ」」」
「当然始めは嫌がるだろうけどそのうち…」
「泣いて‘おねだり’するようになる…」
プリムラがさくらの言葉を引き継ぐ。
誰からとなくフェイトを見る。gkbrのフェイト。
「じょ…冗談、だよ…NE?」
「「「………」」」
にじり寄る面々。フェイトピンチ!
「だ、ダメだよっ! 別板に移動になっちゃうよ!?」
「「「!」」」
その一言でピタリと止まる少女達。が、さくらは切り札を出す。
「エロい水樹ヴォイスが聞きたいかーー!?」
「「「聞きたーい!」」」
「キャーーーーーーーーっ!!?」
続きは夏コミで…と思いきや―テンジョウノホシ、アカクソメルー♪
「あ、私のだ」
フェイトの携帯電話に着信。音姫がスカートのポケットから取り出しフェイトの耳に当てる。
「も、もしもし?」
『ただ今、留守にしております。御用のある方は』
「そっちからかけてきたのに!?」
『う~ん、イマイチなツッコミやな、26点。ここは「まさかのピーピー詐欺!?」言うんが…』
「…私今すごく忙しいの。相方探しは他でして」
『ふ…フェイトちゃんはあたしがいつまでも相方探して東奔西走しとる思うとるんか…? やったら教えてやろう! 実は』プーップーップーッ
 

「…」
電話を切るフェイト。会話は周囲にも聞こえていた(はやての声が大きい)ので皆が「無理もない」という顔だ。
すると再び着信。テンジョウノホシ、アカクソメルー♪
「…」
キセキノツブ、ヒロイアツメテ♪
「……」
マダミエヌ、ヨルノサキニー♪
「………」
ツタエタイーヨ、マボローシヲヤーブリ♪
「…………」
ジョォーネツテキナー、コトバーハイラナイー♪ ピッ
『遅い! サビが終わってまうやろ!? 着うたフルやからっていい気になりなや!』
「私ね、今本当に忙しいの。大変なの。食い倒れ人形が撤去されたぐらい一大事なの」
『ナ、ナンダッテーー』
「で?」
『えらいことになっとる』
「何が?」
『世界中。テレビなりラジオなりネットなりつけてみ』
それを耳にしたアイシアがテレビをON。夕方のニュースが映る。そこには、
[世界中で暴動多発! 統合軍の対応間に合わず!?]
というデカデカとした見出しが。
どこかは分からないが大勢の人間が手に銃器を持って暴れている映像が流れている。
場面が変わっても建物から火が上がったり逃げ惑う人々の映像など、どこかしこも大変な事態になっていることがありありと分かる。
「な、なによ…コレ」
由夢が呟く。他の面々も目を見開いている。
無理もない。ここにいる全員戦争を見てきたが、それらはMSで行われる、人が人をその手で殺めるものとは少し異なるものだった。
だが今流れている映像では、銃を手にした者がいとも簡単に命を奪っている。
「はやて…コレって…」
『リアルタイムで起こっとることや。統合軍がソレスタルなんちゃらに一杯喰わされたの見て、そこら中の革命家さんらがおっぱじめたみたいやで』
テレビに何かのマークが描かれた旗を掲げている人が映る。
「あれは…カタロン、かな」
「カタロン?」
「マカロン?」
復活したシンの言葉に楓が問う。プリムラの腹ペコ発言は無視。
「地球連合相手にケンカ売ってた連中さ。まだ残ってたのか」
「地球連合が嫌いだったんならラクス様とは仲が良いんじゃ…」
音姫の発言にシンは首を振る。
「クラインの連中はメサイア戦役で一度も地球連合と争っちゃいない。
カタロンからすれば、高みの見物を決め込んでるように見えたんだろ」
「なら、現政権に不満があるのも仕方ない、か」
亜沙は暗い顔で頷く。
「管理局は?」
『あー、それやったら…』
フェイトは電話で何やら相談を始める。楓達はテレビの映像に見入っている。
そしてシンの脳裏には病院でのドゥーエとのやりとりが浮かぶ。

―今の世界は恐怖で押さえつけられているだけ―
―私達が動けば揺らぎが生まれる―
―そしてその揺らぎで戦争が起きる―

―今の平和は“今”を愛する者のための平和―
―そうでない者は“今”に受け入れられることはない―

「くそっ…」
シンは拳を握る。だが、その手にかつての力はもうない。


「…」
とある空間。そこでプレシアはほぼ修理の完了したインパルスを眺めていた。
「随分と物騒なモノを積み込んだのね」
独り言…ではない。いつのまにかその背後に仮面を付けた男が立っていた。
「何のことかな」
「『ノア』なんて…『アートグラフ』の“心臓”よ。どうやって持ち出したの?」
プレシアは男の返答を無視して続ける。
「既に死んだ者にとっては造作もないさ」
「ロクに動きもしない物を…」
「動くさ、いずれ」

「それまでこのバグだらけの『GNドライヴ』で持たせる、と?」
「バグとはひどいな。それはれっきとした“心”だよ」
プレシアはその言葉を聞いて振り返る。そして嘲るような声で、
「機械に心? 笑わせるわ」
だが男は少しも動じない。
「確かに機械が心を持つというのは非科学的だろう。だが…」
一呼吸。男は不敵に笑う。
「元が人間だったのなら、話は別さ」
「何を…」
「アートグラフは心を取り込むらしいね」
「……っ! まさか…『ワイアード』…!」
「フフフ…」
プレシアは再びインパルスを見る。だが、その目は先程までとは違う。わずかな畏怖があった。
「神でも創る気?」
「私が創りたいのは運命さ。神ではなく、人が望む…ね」


「捕まった親友を助けに来たはやてちゃん。しかぁしっ、時すでに遅く親友は○○○に…。さらに茫然とするはやてちゃんにも魔の手が!
あかん! 逃げるんや、はやてちゃん!
だが結局捕まってしまいアレがコレでナニして…」
妄想はヒートアップ。
「そしてついにははやてちゃんも……興奮してキター!!」ハナヂブー
「床を汚すなっ」ミティッシュ箱☆
「あたっ。殴ったね…オカンにも殴られたことないのにっ!」
「ティッシュ箱で殴られたことある奴は少ないだろ…」
「これやーーっ! Fateちゃん、これや! これこそ真のツッコミやで!」
「鼻血が顔に垂れる…っ」
ティッシュを両鼻につめるはやて。乙女のビジュアルとしてはいかがなものか。
「ま、しかしなんやな。エエことずくめやね。ヴィヴィオは見つかるし、相方の住居も判明するし、フェイトちゃんは大人になるし」
「相方?」
「私はまだ何もされてないよっ!?」
「ナニも?」
「黙れぇぇぇ!!」
キャンキャン騒ぐはやてとフェイト。事態についていけない楓が一言。
「あの、それで…」
「おっと、いかんいかん。あたしとしたことが…」
コホンと咳払い。
「改めて…あたしが八神はやて。仲間の回収と状況調査にやってきました」
そう、ここは芙蓉家。
フェイトが電話でヴィヴィオ発見の経緯と現在の状況を話したところ、はやてがこっちに来るということになったのだ。
家に上がり縛られたフェイトを見るなり先の妄想を開始したわけだ。
「えー、んー、魔導書についてはノータッチでええかな」
「ええの!?」
はやての発言に驚くフェイト。魔導書の確保は管理局の義務である。それを放棄するとなればかなりマズイ。
しかしはやてはヘラヘラ答える。
「何も見とらんことにすればいいし」
「でも…」
「お固いな~。誰もタダとは言っとらんよ」
今度は楓達がギョッとする。
「な、なんですか? こっちには人質がいるんですよ?」
悪役台詞を放つアイシア。その背後にフワ~っと影が。
「捕まえましたっ!」
「ひにゃっ!?」
グワシっとアイシアの頭にしがみ付く影。それは人間の数分の1ほどのサイズしかない女の子。
「な、なに、この子…?」
「かわいいー」
「…」
上から由夢とさくらとプリムラ。反応はバラバラ。
「ふっふっふ…紹介しよう。そのミニマムガールはリィンフォースⅡ! 完全自己稼働フィギュアや!! ド○キには売ってへんで!」
「違いますーっ!? リィンはフィギュアじゃなくて魔法生命体とかソレ系ですー!」
「魔法生命体?」
「かわいいーっ。ゆかなボイスだーっ」
「……」
アイシアの後頭部ではやてのウソっぱちに反論するリィン。それに対する反応もやっぱりバラバラ。

「アイシアちゃんにくっ付いてどうするつもりですか?」
やや凄みを帯びた声ではやてに問う楓。はやても一瞬たじろぐ。が、
「リィンはな、ちっこいけど魔法が使えるんや」
「「!」」
「至近距離でドカンといけば…」
「…魔法は殺傷に使っちゃいけないんじゃなかったか…?」
管理局というか魔法を使用する者に共通の規則である。
ちなみにフェイトとさくらはドンパチやってたが、フェイトにとっては防衛&任務執行の上で必要な行為であり、さくらはそもそもアウトローなので例外。
しかしはやてはシンの言葉にニヤリとして答える。
「あたしは綺麗事や理想だけで望みが叶うとは思っとらん」
「…確かにな」
はやてに思うところのあるシンは納得する。
「分かった。で、何だ、条件でもあるのか?」
はやて以外はシンがあっさり譲歩したことに驚く。
「物分かりがええな。ま、力の出せん魔導書とフェイトちゃんと一戦交えた後の魔道士じゃどうしようもないか」
「ぬぅ…」
「にゃはは、見抜かれてるね」
唸るアルと頭を掻くさくら。
アルとエセルだけでなく、実はさくらの魔力(=MP)も残り少なくなっている。はやてはそれを看破したのだ。
プリムラという切り札はあるがリスクが大きすぎるので却下。
(言動はアレだけど、眼と勘はいいみたいだね)
はやての認識を改めるさくら。イカレドクターから聞いていた以上だ。
「ほならば、条件を言うよ」
腰に手を当てはやて。
「シン・アスカを貸して」
「「「え?」」」
「それも管理局やなくて、はやてちゃん個人に」
はやての発言に皆顔を見合わせる。「一体ナゼ?」という意志を込めて。
フェイトもはやての考えが読めないでいた。唯一の男子があのシン・アスカだというのには驚いたが、それをはやてが貸して欲しいというのは不思議でならない。
軍に突き出すのが道理。まさか手元に置いて監視というわけでもあるまい。
「昨日も言ってたな。何が狙いだ?」
「優秀なシン・アスカにはもう分かっとるんちゃうかな?」
「…ふん」
不敵なやり取り。もしシンの思っているとおりなら……。
「な、なんでシン君を?」
「そうですよっ。弟くんを連れて行ってどうする気ですか?」
シンの過去を知らない楓達は疑問の嵐。次々とはやてに問いかける。
「おりょ? 皆さん知らんのかいな。彼は―」
はやてが口を開く。シンの過去を話そうというのか。が、
「―彼はコーディネーターやろ。あたしらには無い知識や技術を持っとるからな」
出てきたのは何とも当たり障りのない文章。
シンがはやてを見れば、‘にへっ’と返される。
「ま、まあシン君物知りですしねっ」
「う、ウンウン。そうだね」「便乗!?」
変なのが混ざっていたが納得したように頷く一同。
「(昨日の事が関係あるわけじゃないみたいね)」
「(だといいけど…)」
由夢と音姫はヒソヒソと話す。シンがMSに乗れることと関係があるかと思っていたのだ。
実際には関係大アリなのだが。
「んなわけで、『ソレ摺ったらクリーニング』対策に使えるかな~思うて」
「ソレスタルビーイングだよ」
「そうそう、『それ吸ったるピッチング』や」
「……」
どんな投球だというツッコミは控えるフェイト。この女はツッコめばツッコむほどボケを加速させる。
…ガチで間違えているのかもしれないが。
「して…返答はいかに?」
はやてがシンを見ると、全員がつられてシンに目を向ける。
シンはしばし考える。
(管理局に協力するのはゴメンだが…)
アイシアにしがみついていたリィンフォースⅡはいつの間にか頭頂部へ移動し座っている。
どの程度の魔法が使えるのかは分からないが楽観視できるものではないだろう。
(CBのことも何か分かるか)
はやての企みも気になるところだ。と、ここまで考えシンは頭を振る。
(何を考えてるんだ…。俺には関係ない。CBも管理局も…)
かと言ってアイシアを見捨てるわけにもいかない。そのぐらいには人間性を保っている。
(守るんじゃない。仕方なくだ。仕方なく…)
心の中で誰にでもなく言い訳をするシン。
 

「…分かった。だからアイシアを放してくれ」
「アイサー。リィン、もうええよ」
はやての言葉を受けフワフワとアイシアから飛び立つリィンⅡ。
「シン…」
申し訳なさそうなアイシア。
「気にすんな」
「悪いようにはせんから安心してや~」
はやてはそう言うが皆心配そうだ。楓が、
「あのっ、シン君に何をさせるんですか?」
「シン君はなんちゃってコーディネーターだからね~。あんま使えないと思うよ」
さくらの言葉に「だよねー」とか「確かに」とか言い合う諸君。
「パパ使えないの?」
「え~~っと…」
「カレハさんが言葉を濁した!?」
いつの間にやら目を覚ましたヴィヴィオがカレハに問う様を見てショックなシン。全ては日頃の行いか。
「あ、言うまでもないけど魔導書×2もセットな。単品では取り扱ってへんよ」
「当然じゃろう」
「ようやく見つけられたのですからね」
「じゃ、話もまとまったところでさっそく…」
「ええっ!? 今から?」
グイグイと背中を押すはやてにシン。
時刻はすでに20時を回ろうかというところだ。まだ夕食も摂っていない。
「ちょーっと急いでてな。悪いけど今夜は帰さへんで~グフフ」
「「「!!」」」
はやてのちょっとしたおふざけ発言(急いでいるのは事実)は完全な地雷。場が凍りつく。
「な、何やこのプレッシャーは…アムロ……!?」
「…」
「そこかっ」
ニュータイプ的なキュピーンエフェクトを発生させ振り返るはやて。そこには、
「……」
「ま、まさに修羅や…逃げ出したいな、リィン」gkbr
「こっちに振らないで下さいー!」gkbr
「そうだね♪ 振るなよ♪」gkbr


ピピピッと呼び出し音が鳴る。
「む?」
遅い夕食の『リリカルヌードル激・情・版!』をすすりながらスカリエッティは通信をONにする。
『ハァーイ、ドクター』
「おや、クアットロではないか。モニター越しでは分けてやれないぞ?」
『結構ですわ。それ辛すぎるから』
「そうかね? 私はこの辛さが人の激情を表現するのに適していると思うのだが」
だがその目は涙目。おまけに汗だくで顔色もよろしくない。
『ま、ドクターが辛死(辛さで死ぬ)しようと知ったことじゃないけどぉ』
(反抗期ってこんな感じなのだろうか…)
最近のナンバーズからの扱いを思い返しちょっと悲しくなるスカ。
『おっと、別にドクターの晩御飯に突撃しに来たわけじゃないんですよ。ドゥーエが』
「駆け落ちでもしたかい?」
『月の近くで拾ったアレ、持って行ったみたいですよぉ』
微妙にスカの発言スルー。しかしスカリエッティはそれよりもドゥーエの行動に興味を持った。
「ほう」
『地球に残るって言うし、一体何をするつもりなんでしょうかねぇ?』
「その顔だと君は何か知っているように見えてしまうな」
『それは失礼♪』
「何だって構わないさ。私の命令をこなした後なら好きにしていいと君達には言ってあるのだから」
『計画に支障をきたすような事でも?』
「大いに大歓迎。何事にもサプライズ、想定外がつきものさ」
『ふふ、イオリアからしてみればそれらも全て計画の内でしょうね』
「ああ。だからこそ私は望むのだ。イレギュラーを、ね」
言ってカップのスープを飲み干すスカ。今にも倒れそうだ。
「…では明日、予定通りに」
『了解』
通信が切れる。
スカリエッティがボタンを押すと目の前のモニター類が上がっていく。モニターの向こうには遠目に地球が見える。
映しているのではなく、実際に窓になっているのだ。
「さあ、もうじき第二幕が上がる。世界よ、私に見せてくれ。その可能性を」
不敵に告げるスカリエッティ。そして………倒れた。


「さてと…」

管理局初音島臨時支部。その一室にてシンとはやては向かい合って座っていた。リィンはこの場におらず魔導書は魔力節約のため本に戻っている。
シンはやや面倒くさそうな顔で、はやてはそれなりに真剣な顔をしている。
「アスカさんは今の世界、いや、統合軍をどう思う?」
「別に…」
どうだっていい―というのが本音ではある。しかし、
「あんたは“力”を手に入れてしもうた。もう無関心とはいかんやろ?」
かつてとは比較にならないほど小さな力ではある。しかしMSという力はどんなに小さくても一個人が持つにはあまりに大きい。
おまけに魔導書まで所持している。
どちらも「いーらない」と捨てるには危険すぎる。
それこそ統合軍にでも引き渡すのが賢いのだが、式典襲撃のウラを知ってしまったシンはためらう。
「まーあの場でこっちに渡さんかったいうことは、何や思うところがあるんやろ」
‘えへらっ’とした顔ではやて。
普段の彼女を知っている、または勘の鋭い人間が見たら、笑っているのは表面だけと分かるだろう。
「そっちも何か“思うところ”がありそうだな」
シンは後者だった。
こういう腹の探り合いは苦手だが、一方的に話をさせられるのも面白くない。反撃を試みる。
「不満はいっぱいやね~。給料安いし、休み少ないし、出会いも無いし…」
指折り不満点を挙げていくはやて。ちなみに出会いが無いのは彼女の性格が原因である。
「一番の不満は何と言っても…」
一呼吸。そしてはやてはとんでもない発言をする。
「ピンクの女王様がムカつくことかな」
なんと恐れ多いことか。別に不敬罪などが存在するわけでもないが、世界の最高指導者とも呼べるラクス・クラインを「ムカつく」などと言えばいつ東京湾に沈められてもおかしくない。
それだけの権威をラクスは持っている。もはやその意志とは関係なく。
そしてそれをさせているのは支持する人々だ。信仰対象ともなっているぐらいだ。
その上ではやては、その権威を支える立場であるにも関わらず「ムカつく」と言ったのだ。
「あんたは神様にでもなったんかーっちゅうねん。平和が大事なのは分かるし、皆が幸せなら確かにそれが一番やろ。
でもな、その平和や幸せってのは押しつけられるもんやない思うんよ、あたしは。
まして、誰かに決められるもんでもない。幸せの基準なんて人それぞれ。やのにあの人は“平和”のために“幸せ”を‘コレ’って決めて強制させとる」
真面目に述べるはやて。この場限りのものではなく、常々思っていたことなのだろうとシンに思わせる。
『専制制度を敷く王に見られる傾向じゃな』
『治世そのものは安定しますがね』
本のまま会話する2人。言われてみれば今の世の中は帝政っぽいかもしれない。ならばその時代に必ずと言っていいほど現れるのは、
(革命家…CBがその役回りか)
シンの中でスカリエッティとラクス達の行動がつながる。
帝政に限らないが治世の安定は必ず崩れる。全ての人間が満足する社会など作れるはずがなく、不満を蓄積させていく者はどこかにいる。
いつの日かその中からであったり、そういった人を救済するためであったりと様々ではあるが、現政治体系を壊すために革命家が現れる。
そして彼らに賛同する多くの人々によって王は追われ、新たな時代を迎える。
これは今までの長い歴史で何度も繰り返されてきた真理。だが、ラクス達はそれを覆そうとしたのだ。
なぜ帝政は続かないのか。簡単だ。革命が成功するからだ。
ならばそれを続けるのも簡単。革命を失敗に、革命家を倒せばいい。
その筋書きは至って単純。まずは強い力を持った革命家役を用意する。当然それは‘ヤラセ’である。次にいかにもな舞台とメンツを整える。
あとは襲撃してきた偽革命家を返り討ちにする。それだけだ。
たったそれだけで世界はこう思う。「反抗は無駄だ」「現政府に任せておけば安心だ」と。
そうやってラクス達は絶対的権威を確立させ、世界を導こうとしたのだろう。
スカリエッティの手紙にあった「世界から争いを無くしたいらしい」というのもこれなら納得がいく。
(けど実際はスカリエッティが裏切ったせいで逆効果になったみたいだが…)
彼らがどういう経緯で知り合いになったのかは知らないが、あの変人を完全に信じていたということは無いはずだ。備えもしてあっただろう
その上でスカリエッティが上手だった、ということだ。
「実はな、ここだけの話なんやけど…」
はやては声を潜め身を乗り出す。手はいわゆる内緒話の形。
シンも釣られて顔を近づける。
「反乱でも起こそうか思うてんねん」

「…」
「あれ? 驚かんの?」
「予想できたからな」
「ちぇ~」
そう、はやてが「あたし個人に協力しろ」と言った時点でそういった事を企んでいるのは予想できた。正気とは思えない。
「つってもま~、今は無理やな。『それ酢? 樽? ビニールリング!?』とか出てきてもうたし」
「ワザとか? ワザとなんだろ!?」―言いかけたが耐えるシン。
シンの内面の葛藤を知らずはやては続ける。
「やり方は気に食わんし、す、スカ…スカルエッチ?怪しいからなー。あれだけの技術の出所も気になるし」
惜しい! でもまぁいいかと流す。
「利用できるモンは利用する。もらえるモンはもらう。せいぜい力溜めるのに使わせてもらおか思う」
中々黒いことを言う。
ふとシンは気になったので聞いてみる。
「CBを倒して、統合軍を潰して、その後どうするんだ?」
「ん~、別に統合軍を無くそうとまでは考えてへんのやけど~」
「んじゃ組織改革でもするのか?」
「そう、それ! やっぱ“守る”ためには“力”って必要やろ。あたしが気に食わんのは軍のあり方であって、存在するんは否定せんよ」
「そうか…」
賛成も反対もしない。
力がなければ守れないのは事実だ。だが、それでいいのかと思わないこともない。
(思うだけだけど…)
「さーて、今夜はここまで~。返事を急かしてもしゃーないしな。ほんじゃ送り…」
「あ、ちょっと待ってくれ」
「…ハッ、ま、まさか…今夜はお泊りしt」
「フンリューゲキ!」
「ごはっ! アトハマカセターになるところやったやないか!」
「ガルナハンの現状分からないか?」
「無視かい…で、ガルナハン? 何かあんの?」
「あるかもしれない」
今、世界中で起こっている紛争は“起きた”もの。ドゥーエは“起こす”と言っていた。ガルナハンと場所を指定した以上、そこには何かがある。
そう、例えば…とてつもない威力の兵器。


「えー、ガルナハンガルナハン、カルバヤン?」
「スタゲ、クオリティ高かったよな」
「スローターダガーマジイカス…ってちゃうわ! ツッコミはどないした!? って、あかーん! あたしがツッコんじゃいかーん!」
事務室(?)のデスクでガルナハンの現状を調べる2人。臨時支部なのでデータルームなどありません。
「まさかのボケ便乗ではやてちゃんにツッコませるとは…恐ろしい子…!!」
「便j」←空耳
「いいから早くしてくれ。何も無いなら帰るんだから」
「パソコンはネット専門やねん。外部データ検索とかマジ勘弁」
「早く言えよ! 俺がやる」
「いやん」
はやてを椅子から押し出す…つもりが居座られた。「イスだけに?」「こんなことで…!」
図らずして2人で1つの椅子を半分コすることになる。ちなみに他にも人がいる。
「すごすぎる…ハァハァ」
「怖い! この女マジ怖い!」
夜間勤務というストレスがマッハな仕事をさせられている人々の中、ギャーギャー騒ぐ2人。
堪忍袋の緒が切れたのか局員A(20歳独身♀)が文句を言おうとシン×はやてに近づく。だがシンの手元を見て言葉を失った。
「な、なんてテクニック…! はやてちゃん、もう…ハァハァ」
「やめろぉぉぉ! 誤解されるだろうがぁぁぁ!! あ、すいません、うるさくしちゃって。この女すぐ黙らせるんで」
そう言いながら片手で信じられない速度でキーを叩くシン。もう一方の手はやての頭を締め上げている。
「///」
「顔を赤くして何も言わずに戻った!? どうすんだよぉぉ!」
「どうにでもしてぇ!」
「吹っ飛b…お、これか」
椅子を高速回転させはやてを弾き出そうとした矢先、目当ての情報を発見。
なお、ガルナハンは先の戦争でZAFTの作戦成功に貢献したため自治権を獲得しており、あまり情報が流れていない。ネット検索で情報を得るのはほぼ不可能。
そのためどこぞの闇情報機関などのデータベースへアクセスするかハッキングでもするしかない。

シンがとったのは前者の方法。ハッキング技術は持ち合わせていない。
話を戻す―そこにはガルナハンの近況が細部に亘りのっている。
シンははやてとは比べ物にならない速度で目を通していく。
(以前から人の出入りが激しい。物資流入も多い。前もって準備していたのか?)
ドゥーエの発言が本当なのはおおよそ確定。だが肝心の理由が見つからない。
「おー、皆で山に穴掘っとる」
はやてはオッチャン達がツルハシやシャベルで働いてる写真を見て言う。確かに山の中腹に穴を掘っているように見える。
「中から掘るんが普通やと思っとったけど、外側にも鉱石とかあるんかな」
「そうじゃなきゃ掘らな……っ!!」
シンは写真の日付を見る。かなり前の物だ。
「そうか…くそっ。CB…」
「どした?」
(ある。ガルナハンには争いを起こす理由が)
大量の物資。巨大な山とそれを掘削する人々。自治という軍から離れた立場。
「ローエングリンゲート…!」
「それって、陽電子砲台の?」
CBの構成員がナンバーズならば、その数は少ない。紛争根絶と謳っている以上‘攻め’に人数を割く必要がある。かといって守りを薄くするのはあまりに愚か。
(だったら強力な防衛機構があればいい)
CBの本拠地は不明だが、いつまでも分からないままというわけにもいかない。だが目立つオトリを置くことで隠せる時期は長くなる。
「ガルナハンを、活動拠点にするつもりか」


「っちゅーとなんや、奴さんは‘ガルナハンで紛争開始→双方消耗→漁夫の利で基地GET’ゆーシナリオを書いとるわけか?」
「おそらくな。俺に話したのは気紛れとかだろ」
「でもマズイで。軍は今各地に出張っとる。報告したところで大した戦力は出せんやろ」
「それなんだが…今すぐ帰還させることは出来ないのか?」
「無理やった」
「やった?」
「今の装備じゃソ、ソ、ソレビーのMSにゃ勝てん言うて進言したんやけど、聞き入れてもらえんかった」
ソレスタルビーイング、略してソレビー。はやてはワザと間違えていたのではなかったようだ。
「上層部のそのまた上が‘てんやわんや’で指揮も乱れ放題。今軍をアテにしても無駄やね」
『ならば我らが行くしかあるまい!』
静かだったアルがここぞとばかりに発言。はやてには聞こえないが。
「それしか、ないか…」
恐怖、迷い、それはある。だが、ガルナハンとは無関係でもないし見捨てるわけにもいかない。
「八神」
「はやてちゃんでええのに。で、なんや?」
茶化さず普通の対応をするはやて。
「あの機体は?」
「それやったら」
「元の場所に戻しておいたわ」
修理中―そう言いかけたはやてを遮っての声。2人がそちらを見れば妙齢の女性が。
「プレシアさん! もう終わったんかいな」
「むしろ手間取ったぐらいね」
インパルスを預けて半日ほどしか経っていないがプレシアにとっては時間がかかったらしい。
「ホンマ、頼もしいですわ。ほなシン、輸送機まわすから先行っといてや」
「いいのか?」
「モチのロン! あたしも行くし」
「…邪魔するなよ」
「なんやとっ! これでも腕利きの魔道師やぞ!」
はやての怒りを聞き流し走り出すシン。が、立ち止まりプレシアへ向き直る。
「誰だか知らないが助かった」
そして今度こそ走り去る。
プレシアはその後ろ姿にいつか見た少年―妹を捜す兄―の姿を見た。
「今度は坊やの方が迷子みたいね」


夜中に飛び去る輸送機。それを覇道財閥総帥である瑠璃はモニター越しに眺めていた。
「あの様子じゃ、御家族には連絡してないでしょうね」
ふぅと溜め息。そして眼下に座るメイド達に告げる。
「私達も参りましょう。イオリア・シュヘンベルクの未来を実現させないために」
 

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最終更新:2011年01月04日 13:37
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