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The Different Would and Different Day’s2

The Different Would and Different Day’s:

シン・アスカの場合/中編

ガチャリ、キィィ…

態と音を立てるようにして扉の取っ手を捻り、そのまま俺がいる方とは逆方向…つまり、扉がそのまま開かれる右側へと任せるように開け放つ。一秒、二秒、三秒……うん、こないな。

(今回はあのタックルは無しか…しかし油断は禁物。何時襲撃してくるか分かったもんじゃないからな…)

元々はアカデミー時代、室内探索の際に扉を開けた瞬間に集中砲火を浴びないように、と教えられた事だが…まさか軍が存在せず(近いものはあるらしいが)、銃器も一般の手に入り難くなって久しいこの国でその教えが役に立つとは思わなかった。

と、いうのも、以前あいつが来た時に一度、不用意に扉を開けた瞬間に思い切り飛び付かれた事があったのだ。その時は本人曰く「スキンシップ」だったそうだが、予想だにしない衝撃に驚いた挙句、勢いに負けて後ろに倒れ込んでしまった俺からすれば嫌がらせ以外の何物でもない。……その時の姿勢が、まるで押し倒されているような姿勢になって、マウントのまま赤面してしまったのは一生の不覚だ…。

しかも尚悪いのがその反応(あいつ曰く「かわいい」らしい…本当に勘弁してくれ)に味を占めたのか、その後も来る度に何やかんやの手段を以ってその状況を作り出そうとする事で。一回、いないと安心した瞬間に後ろから襲撃してきたからな。いや、マジで。と、いうか逆セクハラじゃないのか、これって。

…まあ、そんなかんなで。警戒を崩さずに我が借家の玄関へと入った俺は、後ろ手で扉を閉めた後も、更に警戒を続ける。と、そんな警戒網に不自然なものが移った。

(……靴が…二足…?)

はてな、と首を傾げる。そこにあったのは大きめの靴が一足と小さめの靴が一足の、計二足。小さめの靴はあいつのものだとして…もう一足は…

……嫌な予感がした。まるで視聴者の大半を敵に回したかのような、そんな覚えのあるような無いような…そんな予感。

(それとも『あ、ありのままを話すぜ。最終回が放映されると思っていたらnice bortになって、放映されなかった。例え放映されたとしても、殺されて首刈られた挙句「○死ね」とか何とか言われる始末。……な、何を言っているか解らねーと思うが、四馬鹿とかデス子とかそんなチャチなレベルじゃねえ。もっと恐ろしいヤンデレの原点と片鱗を同時に目の当たりにしたぜ。』…とか?……洒落にならんな。)

はあ、とその本気で洒落にならない予想に思わず大息がこぼれた。まあ人数が二人に増えようがやる事に変わりはない…ないのだが。どちらにしろ、あいつには勝てる気がしない、というのも確かで。いやいや、そんなことがあろうとなかろうと、俺が今やる事は唯一つしかない。…面倒な事になる前に丁重にお帰り願おう。

そんな強気なのか弱気なのか解らない事を思いながら、俺は引き戸に指を掛け…開け放った。するとそこには…嫌な予想が的中したような二人が、いた。

「ん~、おっかえり~v」
「え、えっと…お邪魔しています?」

…本当に、勘弁してくれ。にこにこと笑顔で元気そうに挨拶をしてくる少女と、対照的に少し戸惑いがちに挨拶してくる、気の弱そうな少年。……それを見て俺はもう一度、いや、今日だけで(前回含む)既に三回目となるその事を思うのだった…

 

―――――――――――――――

「……で?勝手に人の部屋に入った事に対する釈明は全く無しか、あんたたちは。」
「え、別にいいじゃない。勝手知ったる仲…って奴でしょ?」

近くのコンビニから買ってきたのか、じゃが○こ(チーズ味)を咥えながら全く不法侵入に対して悪びれない、その少女の言動に、小さく溜め息を吐く。確かに勝手は知っている…と、いうかこんな学生アパートの勝手所(=台所)なんか、大抵は入り口の目の前にあるから解らない方がおかしい。

「……あんた、合鍵はどうしたんだよ。まさかとは思うけど、型採って作ったのか?」
「ん~?そんな面倒な事する訳ないっしょ。管理人さんに「姉(のような存在)です」…って言ったら、簡単に合鍵発注してくれたけど?」
「ふ~ん………ちょっと待て。誰が姉だ、誰がっ!」

どうでもいい構えで聞いていたために思わず流しそうになったが、聞き捨てならない関係を示す単語に気付き、思い切り突っ込む。が、不法侵入を既に侵しているこの少女には、相変わらず悪びれたところは全く見受けられない。

「でも心ちゃんも、『管理人さんに妹って言ったら楽勝っした』って言ってたからつい…てへっ♪」
「『てへっ♪』ってあんたのキャラじゃないだろ。にしてもあのおおぼけ管理人…この世界でも人の邪魔すんのかよ…っ!」

関係無い事ではあるが、このアパートはアスハ亜洲羽グループ系列の所有物で、ここの管理人は同グループ総帥の一人娘、しかも榊野学園の学生で、クラスメイトだったりもする…閑話休題。

「……まあ、あんたは百歩譲って良いとしても、だ。何でこの、超絶身勝手自己中心鈍感且つ三角関係に発展した挙句、とある一定のルート以外のほとんどのルートで殺されそうな野郎まで連れてきたんだよ。」
「い、いや~あはははは…」

…酷い評である。だが、これでもまだ言い足りない―――と言外に示すかのような非難の視線を篭めて少女…西園寺世界を見遣る。その視線を向けられた世界は予想以上に酷い自分の彼氏への評に乾いた笑いを挙げて、肩を竦めた。

「く、クラスメイトだって言うのに酷いね。僕には伊藤誠って名前が―――」
「黙れ、ほざけ、ふざけんな。何が『誠』だ…言葉と西園寺、どっちにも答え出さないで二股掛けようとしていた奴が。」

ギロリ、と今度はまるで積年の敵を見るかのような眼で、尚も何か言いかけた『伊藤誠』の言葉を遮りながら吐き捨てる。どうやら、素直に口を噤んだ事からすると、少しは(それがほんの僅かなものであっても)罪の意識を感じているらしい。……反省しているかどうかは別として。

「少なくとも俺は、絶対にあんたを許さないからな。……確かに距離を置いていて、言葉の実情に気付かなかった俺もそうだけど。責任転嫁した挙句、呼び出されて暴行される寸前の言葉を見捨てた挙句逃げ出したあんたを、許してなんかたまるか!」
「……でも、その事が切っ掛けで君たちは付き合い始めたんだから、良かったんじゃ…ほら、『雨降って地固まる』っていうし…ヒッ?!」

ドッ、と誠の顔の直ぐ横に何かが突き刺さる音がした。短い悲鳴と共にパラリ、と結構質が細そうな髪の毛が数本空に舞い、少し掠めたのか、頬から血が一筋流れ出す。

「あ、悪い。手が滑った。」

…一応謝罪はしたが、それを投擲した紅い瞳を細め、無表情のまま淡々と言い放っている事からも容易に解るように、決してその通りに受け取ってはいけない。第一決して広いとは言えない部屋内で、どう手が『滑った』らナイフが飛んでくるのだろうか。

と、いうか右手に携えた予備のナイフは一体…そこまでに思い当たったのか、誠が床にへたり込む。何とか立ち上がろうと努力しているようだが立てない…これが、腰が抜けると言う事だろうか。…まあ気が弱くなくても、何の予備動作も無くナイフを投擲されたら、普通の人なら腰が抜けるであろうが。

「それとこれとは話が別なんだよ。何とか暴行される寸前に助け出せたからまだ良かったものの…信じていたあんたに裏切られたも同然に逃げ出されて、言葉がどれだけ傷付いたのか、本当に解ってんのか、あんた!」

……返事は無い。後悔しているのか、それとも剣幕に押されてか―――その姿に、舌打ちしながら制服の袖に隠した、木製(樫の木、内側は鉄張)の鞘を取り出して、その手に持った物騒な代物を収めようとし―――
 

「まあまあ、シンちゃん落ち着いて落ち着いて。一年以上経った今になって、誠を締め上げても仕方ないっしょ。」
「誰がシンちゃんだ。大体あれ一応あんたの彼氏…ってまだ抜身なんだから手を押さえるなまとわりつくな、危険だっ!」

―――たところで、後ろからいきなり衝撃が襲い掛かった。いきなりの出来事に、鞘をポトリと落としてしまう。…羽交い絞めにするという予想外の行動を見せた西園寺に、しまった…っ!と思い多少焦りながらも、その拘束を何とか振り解こうとする。

しかし、後ろから不意を突かれた事に加えて、未だナイフを鞘に収める前だったので強く振り解く事も出来ない。……いくら余り気に入らない相手とはいえ、平凡な人生を送っている女の子に下手をすれば一生残ってしまうかもしれない切傷を負わせる訳にもいかないからな。

だが。そんな俺の小さな配慮(…敢えて心配とは言わない)を他所に、西園寺は尚も両腕を抑えてくる。さて…俺がいくら元軍人で、この世界に来てからも鍛えているとはいえ、身長・体格共に比べるとそうは変わらない(真を以って癪な事ではあるが)。そうでなくとも、バックアタックされた挙句そこから後ろに引っ張られるのは、非常に不安定な体勢になるものである。……引っ張られている対象がそれに抵抗した時は、尚更だ。

「うにゃ、っと、ったあ、うきゃあああっ!」
「うわっ…と!」

案の定、西園寺がバランスを崩す。俺は、その機に乗じて取り合えずその手を振り払った。無論、傷つけないようにナイフを床に落として、だが。更にその勢いを駆って、反転する。……そこまでは、よかった。だけど予想外だったのは、振り払った時の抵抗が余りにも少なかった事で。…てっきり、不安定な場所にいる時の心理として、何かにしがみつこうとすると思ったのにな。

ったく、仕方ない。叫び声?を挙げながら暫くふらふらと、文字通り爪先立ちで辛うじて踏み止まっていた西園寺が、耐え切れずに後ろ向きに倒れこんだ。…その身体を、腕を伸ばして咄嗟に受け止める。

「…はあ。手ぇ焼かせんなよ。」
「あ、あんがと。んー、やっぱ優しいなあ…シンちゃんは。」
「なっ!か、勘違いすんな!俺の不注意のせいで怪我させたらさすがに悪いから、仕方なく…」

「……飛鳥、何時まで支えているの…もとい、何時まで触ってるのかな。」

思いもよらない不意打ちに、そっぽを向きながら反論していると、少し怒気を含んだ声が壁際から聞こえてきた。…言うまでもなく、未だ床にへたり込んでいるへたれの言葉である。何だ、こいつにも嫉妬なんて感情があったんだな…と全国一千人くらい(当者比)の誠ファンが聞いたら怒りそうな事を思いながらも、その言葉に首を傾げる。

触っている…と、言う事は俺が今抱えている何かのことだよな。んで、今俺が抱えているのは…その言葉に従って西園寺の身体を支えている両腕を見てみる。すると…

……物の見事にラッキースケベが発動していました。別の言い方で言うとパルマ、某所の言い方で言うとらき☆すけ。まあ何が言いたいのかというと、西園寺さん(何故さん付け)の身体を支えようとした右手が、思い切りその胸を掴んでいた事で。

「ご、ごごごごめん!!!」
「ふふっ、あははははは…いやー、そこまで必死にならなくてもいいのに。ま、仕方ないか。シンちゃんも『男の子』だもんねー?」
「う、うるさいっ!」

しっかりと支えるためとはいえ、何て事をしでかしているんだ、俺は。そんなからかいのネタを与えてしまった事に対する後悔と、不可抗力に近いとはいえ胸を触ってしまった罪悪感、そしてそれ以上の羞恥心がせめぎ合うのが自分でも解り、更に顔がどんどん熱くなっていくのを感じる。恐らく、今の俺の顔は少し赤くなっている程度の西園寺の顔とは及びも着かないほど、真っ赤になっている事だろう。

(だ、だめだ。やっぱり勝てる気がしない…何で、俺の周りにはいつもいつもこんな奴らがいるんだよ!?)


溜め息の代わりに小さく頭を振りながら、今までの人生で傍にいた『こんな奴ら』を思い出す。アカデミー時代と戦争時にはホーク姉妹(特にルナ)に玩ばれ、終戦後にはラクス・クラインやアスハに色々と弄られ…そして、今になってもこうやってこいつに遊ばれる。……非常に、理不尽だ。

「と、とにかく。足は着いているんだから、もう立てるだろ。離すぞ…と、いうか早く離れてくれ。」
「ん、あんがと。でも…少し、遅かったかな?」

何がだ…と聞き返す前に、背後から金属が軋む微かな音が聞こえた。それと共に、晩秋の…いや、それも画やと言えるかもしれない突風が、部屋の中に吹き荒ぶ。まあ、実際には吹き荒んでなどいないのだが―――背後から徐々に圧力を増していく威圧感が原因である事は明白であった。

良く怪談物で『振り返れば奴が居る!』なんていうが、これもそうそう変わらないんじゃね?と多少の現実逃避をしながら、ゆっくりと背後に向けて身体を反転させる。と、そこには…

「………やっぱり、そうだったんですね…」
「こ、言葉…」

こっそりと、ドアの隙間から部屋の中を覗き込んでいた言葉の姿があった。…ああ、身に覚えがある冷気を感じた時から薄々思っちゃいたよ。嫌な予感も感じていたよ!だけど…よりにもよって、何て姿を、俺は…っ!

もの凄い罪悪感と後悔を覚えながらも、とりあえずは言葉を部屋の中に招き入れようとドアを開ける。……威圧感が倍増したが、キニシナイキニシナイ。もう、慣れっこである。

そんな俺の姿に、言葉はとりあえずは一礼して玄関まで入る。それが、俺の態度に僅かな怒りを納めたのか、それとも小さい頃からの丁寧さが習慣になっているのかは解らないが…俺は、後者だと思う。……目が、死んだままだ。

「薄々、感じてはいました…もしかして、私だけでは(色々な意味で)満足出来ていないんじゃないかって。いえ、それに関しては別に良いんです…そんな中でも私を一番に想ってくれると言う実感がありますから。それに、確かに病弱な私だけでは活発なシンくんの相手は(色々な(ry)時折、出来かねるところがありますし。でも…」

……あの~言葉さん、何でカバンの中に手を入れるんですか? と、いうか見え隠れするその鋭利な刃物は一体…って言ってる場合じゃない!

「でも、でも…っ、よもや、相手が彼氏がいる人だとは思いもよりませんでした。しかも…よりにもよって、西園寺さんですか?!私と西園寺さんに、一体どれだけの確執があったか知らないシンくんではないでしょう!?」
「お、落ち着け、言葉!大体が、今日は来る予定じゃなかったんじゃ…」
「あー、そういえば、心ちゃんから緊急連絡があったのすっかり忘れてたよ。ごめんっ!」

ごめんっ!…じゃねーっ!!心の中で絶叫しながら、やっぱりさっさと帰らせるべきだった…と先程とは別の意味で後悔する。ゆっくりさせた結果がこれだよ!という奴である。

「ままま。取り合えず、積もる話は中に入ってからにしよっか。」
「ええ、そうですね。さあ、シンくん…納得のいく説明をお願いしますね?ふふふ…」

西園寺の妥協案に乗ったものの、態々カバンに隠して運んできた凶器を最早完全に抜き放った言葉が、ハイライトの消えた瞳で、妖しく笑いながら俺に説明を要求する。……納得いかなかったらどうなるのか…考えたくも無いが、少なくともそれだけは止めたい。そう思い正直に釈明をする覚悟を決めて…一句、浮かんだ。

(『鳴かぬなら 殺してしまえ ほとときす』…だったか?)

日本史がすこぶる苦手なシンではあるが、この俳句だけはこれから一生忘れない自信がある。ああ、身をもって体験すれば、それはもう忘れなくなるさ。そう簡単な攻略法を実感しながら、俺は裁判の場へと向かう。……極刑だけは勘弁してほしい…と切に願いながら。
 

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最終更新:2011年01月04日 13:53
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