魔法の森
妖気が溢れ瘴気や胞子が漂い人間、妖怪共にあまり足を踏み入れぬが
住むことが可能であれば、非常に快適な環境の地。
そして人間の里と吸血鬼の住む紅い館のほぼ中間地点に彼女はいた―――
「ん~、終わった」
作業を終えた家の主が作り上げた人形を鞄へ、明日人間の里に出張人形劇に持って行く道具を入れる。
「・・・今度は手伝ってもらおうかしら?」
人形の館とも言われる主、アリス・マーガトロイドは一晩家に滞在していた人間、
「シン・アスカ」に正式な依頼を頼もうかと考えながらベットに横になった。
シン・アスカ、彼は数ヶ月前に巨大な兵器、デスティニーと共に幻想郷へ来てしまった。
当初は異変として博麗の巫女を始めとした力を持つ住人達は成敗しようと動いたが、シンの説明によって偶然来てしまった外
来人と知り、現在は人間の里で「何でも屋」として生活をしている。
なお、定期メンテナンスは基本的にシンがやっているが、時折「河城にとり」と共にメンテナンスをしている。
アリスがシンを知っている理由は先にも記している通り、彼は以前この家にきたことがある。
「何でも屋」で生活をしている彼だが、何も依頼は人間以外からも来る。
その中には妖怪からも依頼がある。
ことの始まりは紅魔館からの依頼だった。
変わってしまった日常 東方版 1
魔法の森のアリス
紅魔館からの依頼、簡単に言えば雑用だった。
メイドがいないわけではないが、咲夜のような有能なメイドはおらず、ほとんど彼女が仕事をしている。
その生活が日常となっているとはいえ、負担を少しでも減らそうと考え館の主、レミリアはシンに依頼をしたのだ。
聞けばシンは有能で、信頼も大きいと評判だった。
ただ何故か仕事をする前に面接、といえるか疑問であるがレミリアに数秒見つめられられ
「内容は咲夜に随時聞くがいい」
と言われ採用された。
吸血鬼の館と聞き、少し緊張していたシンであったが、しばらくすればどうということはなかった。
数日間の仕事を終え、里に帰ろうとするシンであったが問題が発生してしまった。
いたずら好きの三妖精に振り回され、道に迷ってしまったのだ
「まいったな、完全に暗くなった・・・」
魔法の森の瘴気等はコーディネイターのおかげか問題はなかったが、人を襲う妖怪がいないとも限らない。
体力の温存の為に休もうとした時、森の奥に光が見えた。
その光こそアリス・マーガトロイド邸だった。
そこからはアリスにとってよくある話、森で迷った人間を一晩泊め、朝食を出して里へ案内をして終り、のはずだった。
「あら?あなた・・・」
「あはようアリス」
翌日、彼がまた来た。
「どうしたの?まさかまた迷ったの?」
「いや、今日はお礼に来たんだ」
はい、と渡された箱
お礼の品でも入っているのだろう
「別にこんなことしなくてもいいのに」
「一応助けてもらったんだからお返しはしないとな」
「よければお茶くらいは出すわよ?」
「また今度にするよ。今日は仕事もあるし」
じゃあまた、と来た道へ戻ろうとするも
「なあアリス」
「何かしら?」
「いくら寝る必要がないからって、少しはちゃんと休めよ」
泊まった夜、アリスはいつもの様に夜遅くまで人形を作っていた。
さすがに心配になったシンは休むように言うも、自分は食事も睡眠も魔力で補えると言ってやめなかった。
人間だった頃の習慣もあり食事も睡眠もするが、必ずしも必要というわけではない。
徹夜で人形作りも珍しくもなかった。
「じゃないと、いつか体を壊すかもしれないからな」
「・・・そう」
アリスはふと今まで家に泊めてきた人のことを思い出す。
基本的に自分は家にいる間は人形作りに没頭している。
そのせいもあって気味悪がられ、迷ったりしない限りまたここへ来る者は皆無だった。
だが彼は違った。
わざわざお返しの品を届けに、しかも気遣いの言葉も添えてくれた。
「わかったわ、ありがとう」
それが嬉しくて、彼女は正直な気持ちを答えた。
その後、彼女は家に戻り箱を開けてみた。
中はまだ少し暖かさが残るケーキだ。
里にこの時間に店はまだ開いていない
きっと手作りなのだろう
「・・・もう、手の込んだことをして」
紅茶を用意し一口齧る
「ん、おいしい」
(なんだか、こっちもお返ししたくなるじゃない)
それからアリスはよく里へ行き、人形劇をし、時に人形を売りもした。
彼女はそのお金で一つのティーカップを買い、洋菓子の材料を買うのを見かけることが多くなった。
また彼が来たとき、専用のティーカップを渡して共にお茶をするために。
変わったことがもう一つだけあった。
彼女のやる人形劇に恋が出る作品をよくやるようになった。
明日やる劇、「シンデレラ」もそうだ
わかる人が見ればシンデレラはアリスと似ていて、王子様は黒髪赤眼のある男の子だった。
(明日、シンも劇見てくれるかな?)
もしそうなら、と思うと胸がぽかぽかとしてなかなか眠れないアリスだった。
最終更新:2011年01月22日 07:07