「すまないなアリス」
「別に構わないけど・・・」
シンを客間のベットに寝かせ、レミリアは紅魔館へ帰るところであった。
「ところで、何があったのですか?」
「・・・何と言うべきか、今日早苗は泊まっていった方がいい。
原因も帰ればわかるはずだ」
「そ、それは構いません。神奈子様と諏訪子様にも今日は外泊しても構わないと言われましたので」
「…あのバカ者どもが」
心当たりがあるのか、右手を頭に当てやれやれと嘆息する。
「そういえば何でシンを見つけたの?」
「たまたまだ。夜の散歩中に倒れているのを見つけてな」
何となくだが、何か裏があるような気がしないでもないと思う二人だが、証拠がないのであえて深入りしない。
「私は紅魔館へ帰らせてもらう。迷惑をかけた」
扉を開け、翼をはばたかせ瞬く間にレミリアは夜の闇へと消えた。
その速さは幻想郷の上位の実力者に恥じぬものであった。
「…とりあえず、今日は泊っていきなさい」
「お、お願いします」
変わってしまった日常 東方版 4
恋する乙女達と傍観者達
「ごめんなさいね。客間のベットは一つだけだから私のと一緒になっちゃうけど」
「か、構いません。私も急に泊まることになってしまって」
入浴を済ませ、現在二人ともパジャマ姿。
後は寝るだけなのだが、
「それと改めて言うけど、私はシンのこと好きよ」
わかっていたが、やはり面と向かって告げられると違う。
「あ、あの、どうして好きになったか聞いてもよろしいですか?」
「勿論よ。このままじゃフェアじゃないもの」
少しだけ長くなるため、アリスは人形達からホットミルクを持ってきてもらう。
一晩泊めたこと、お礼に手作りのケーキを作ってくれたこと、自分のことを心配してくれたこと、
そして、里で時折見かける彼が不器用で優しい人間と知り―――
「うう~手作りのケーキなんて羨ましい」
「私も彼が泊まった時に手作りの食事を作ってあげたからあなたより少し進んでるわよ」
「はう!で、でもでも私は里に来た時にはかなりの確率でシンさんと会いますからその分勝っています!」
「あら、じゃあ私は人形作りの手伝いでシンに仕事を依頼しようかしら」
「あぅぅ、なら私だってシンさんに神社の御手伝いを…」
「「………」」
「「…プ、あはははは」」
いつの間にかどちらがシンとの触れ合いが多いか白熱し、どちらもシンのことを大好きで、そんな自分達につい笑ってしまう
。
「ふふふ、もうお互いにシンに好きでしょうがないのね」
「はい、まったくです」
「もう!女の子二人にこんなに想われてるのにシンは今頃素知らぬ顔で寝てると思うと悔しいわね」
「ですけど、それゆえに振り向かせる遣り甲斐ありますよ」
「確かにね。ねえ今度シンとどっちが先にデートするか勝負しましょうか」
「むむむ、ならば受けないわけにはいきません!
…でも最初は三人でお出かけしませんか」
「…そうね、最初はそれくらいでいいわね」
まだまだ互いに恋に初心な二人
「私達、恋敵『ライバル』ね早苗」
「はい!でも、同じ人を好きになった友達でもあります」
「…そうね、友達よ私達」
幻想郷の一日は終わる…
「ひどい目にあったが、まあシンを保護できただけ及第点か」
紅魔館にたどり着き、レミリアは自室の窓から中へ入る。
実は夜の散歩というのは嘘である。
以前シンが紅魔館から帰る途中迷ったという報せを聞き、再び同じことが起こるのは目覚めが悪いのでレミリア自らがシンを
上空から見守っていたのだ。
「お嬢様、窓は出入りする為の物ではありません」
「許せ咲夜、その分出ていた甲斐があった」
自室で待ち構えていたメイド長、十六夜咲夜が少々不機嫌な眼差しにもどこ吹く風のレミリア。
気づいた時からおそらくここで待ち構えていたのだろう。
「何かあったのですか?」
「うむ、シンがある事件に一方的に巻き込まれていてな。
私もその場からシンを助けて逃げるのが精一杯だった」
その言葉に目を見開く咲夜
レミリアが逃げに徹したことにも驚くがそれ以上に
「あの、シン『様』は大丈夫ですか?」
「問題ない。近くのアリスに保護させた
事件の方にも明日私が苦情を出しに行く」
「そう、ですか」
よかった、と溜息を吐く咲夜
「しかし咲夜、お前も変われば変わるものだな」
「う、お恥ずかしながら」
「フ、まあいいさ。ならば明日にでもシンの様子を見に行ったらどうだ?」
「よ、よく考えておきます…」
咲夜は顔を赤くしながら部屋から出ていく。
「…さて、」
寝る前にもう一ヶ所だけ行かなければならない。
紅魔館は咲夜の能力で見た目以上に中が広い。
それこそメイド達の休息所があるほどだ。
「あら、パチェ」
だが本に集中していてこちらに気づいていない
長い付き合いだからこの状態では何を言っても無駄だろう。
そのまま通り過ぎようとしたのだが、
「・・・ん?」
レミリアが足を止め、振り返りパチュリーの本を見る。
表紙からして魔法関連の本かと思っていたがそれは擬態だ。
実際は見る限り『男の子と仲良くなる方法』的なものが書いてある。
「・・・頑張れパチェ」
本に穴が開くのではないかと凝視する友人に背を向け、ある人物のもとへと急ぐ・・・
「美鈴」
「あ、お嬢様どうなされました?」
紅魔館の門番、紅美鈴
付き合いはおそらくフランを除けば最も長く、咲夜が来る前には個人的にも親しかった。
「今後、紅魔館に影響を与えるであろう変化にお前に重大な頼みがある。」
「・・・かしこまりました。この紅美鈴、いかなるご命令であろうと必ず」
「では告げる!夜が明け次第『紳士用ベット』『一つ』と『ベビーベット』を最低でも『二つ』用意せよ!」
「ハッ!!・・・・・・は?」
「確定事項ではないが、将来を見越してな。
フランにも妹か弟ができると思うとさぞ喜ぶだろうからな」
では頼む、と告げ
「いや、ここは思い切ってダブル、いやトリプルか・・・いやしかしフランに悪影響が・・・」
何やらブツブツと呟きながら自室へと戻っていった。
「・・・そうなりますと将来シンさんが上司になるのでしょうか?」
紅魔館、かつて悪魔の館と恐れられたここも今や幻想郷の空気に触れ、すっかり気のいい者達の集まりとなっていた。
果たして当主の理想どおりの未来が来るのか、それは神でも悪魔にもわからず――――
おまけ
時間は少し戻って魔法の森のとある場所にて
「あはははは!!酒もってこーい酒~~~」
「八ツ目鰻持ってこ~~い!!ついでにおでんも出せ~~~!!」
ここはミスティアの経営する屋台。
本来八ツ目鰻専門だったのだが経営難+八雲紫の援助によって品揃えが増えたのだ。
そして本来今日はミスティアの友人チルノ、リグル、ルーミアで宴会を開こうとしてたのだが今現在の客、
神奈子と諏訪子が突然押しかけとても宴会どころではなかったので後日に変更された。
「いや~私は嬉しいよ諏訪子。早苗に好きな男が出来たんだから後は子供が出来れば万々歳だよ!」
「ほんとだよね~でもそうなったら私達おばあちゃんって呼ばれるのかな」
「違いないねぇ!それに今日は外泊許可出したんだ。もしかしたら後一年近くで・・・」
「ふふふ、神奈子よ、お主も悪よの~」
「いえいえ諏訪子ほどでは」
『あっはははははは!』
ほとんどこの調子だ。
今では完全に顔が真っ赤で酔っている。
ミスティアは宴会が延期したのは少々遺憾だが、商売人である以上文句は言わない。
だがあまりにも態度が悪いのだ。
実際チルノ達は最初こそ同席していたのだが、余りにうるさく+絡んできたりするので退散したのだ。
これにはさすがに頭にきて、追い出そうとしないだけ商売人である。
「お客様、申し訳ありませんが本日はそろそろ・・・」
「ああ!?何だい文字通りお客が神のあたし達の祝宴に水さそうってのかい!?」
「そうだそうだ~焼き鳥さえない所に来てやっただけありがたくおもえ~!」
『ブチッ!』
この時、ミスティアの怒りは最大限を突破した!!
もう誰も彼女をとめることは出来ない!!
「・・・お客様、本日は特別に私の特別な『歌』をお贈りします」
「お、気がきくねぇ~」
「じゃあ一曲おねが~い」
「では・・・」
この時、弱小な小動物たちは持ち前の危機察知で逃げようとしたがもう遅い
『かぁぁなぁしぃぃぃみぃのぉぉぉ、 むこぉぉぉぉへぇとぉぉぉぉ・・・・・・』
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「な、何これぇぇぇ!!?」
聴いた瞬間、身の毛もよだち、吐き気や頭痛、言いようのないマイナスの感情が渦巻き、とても意識を保っていられるものではない。
「嫌ぁぁぁ!包丁は誰かを刺す物じゃないぃぃぃ!!」
「やめてぇ・・・もうお腹の中に誰もいないからそんなことするのやめてぇ・・・・・・」
すでに泣き叫び、何やら幻覚まで見始める始末。
だがミスティアの怒りがおさまるまで、延々とこの歌を聴かされるのだろう・・・
なお、シンとレミリアはここから少し離れた地点におり、人間より高い感覚を持つ吸血鬼は一部始終を聞いていたそうな。
このおまけ話はミスティア怒らせたら恐い、レミリアは実はいい吸血鬼、という話ではなく
お酒を飲んでも迷惑をかけてはいけないという、ただただ当たり前な話なのでした。
最終更新:2011年01月22日 07:14