彼が幻想郷に来た時、巨大な兵器同様に自身も重傷を負っていた。
当然彼は永遠亭で引き取り、回復するまで兵器もこちらで預かることになり、
看護をするうち彼の肉体が常人の物とは明らかに違うことに気付いた。
それもそうだ。明らかに武器を搭載した機体のパイロットが民間人のはずがない。
―――兵隊―――
その考えに至った時、私はかつての罪を呼び起こした…
変わってしまった日常 6
刹那の中の、永遠の誓い
―――戦争になる―――
「自分さえよければそれでいい」とよくある考えの通り、自由気ままに生きて来た私には戦争が起きる可能性があると聞いた時、怖くてしょうがなかった。
次第に訓練の密度が上がっていき、戦争は時間の問題となった時私は最悪の決断をした。
家族を、仲間を、故郷を見捨てて逃げたのだ
「…またあの夢か」
既に過去を割り切ったものと思っていたが、どうやら自分はまだ罪の意識に囚われ続けたままのようだ。
無理もないのかもしれない。
一月もの時間があれば、嫌でも相手を理解することができる。
「シンはさ、兵隊だったんだよね?」
「そうだけど、何でそんな事を聞くんだ?」
「…怖かったり、逃げ出したいって思わなかった?」
「そうだな、思わなかったことなんて殆どなかったな」
過去を思い出しているのだろう、とても悲しい顔をするも、
「でもだからって逃げ出すわけにはいかなかった。
俺は力を手に入れて、それを使って生きている以上はそうしたくなかったからな」
「どうしてなの?」
何故シンはそこまでして戦ったのか聞かずにはいられなかった。
自分には到底不可能なことを何故。
「『戦争をなくす』、それを実現するために…」
信じられなかった。
そんな夢のようなことを実現するために戦いに身を置いたのだ。
だがシンの表情は誇りを持つ、とても十代の少年の物には見えないほど大人びていた。
そして、きっとその夢を実現するに等しいことを成し遂げたのだろう。
この時からだった
私がシンに一種の憧れに近い感情が生まれ、時と共に恋へと変わったのだ。
私とは真逆に、シンは最後まで自分の信念と共に戦い抜いたんだ。
だからこそ弱さに負けた自分には到底相応しくないと理解してしまった。
それでも縋るように彼への想いは大きくなる。
何て愚かしい話だ。
「私、どうすればいいのかな…」
「教えてあげましょうか?鈴仙」
「ひ、姫様!?」
後ろから現れた主、輝夜がゆっくりと近づいてくる。
「まるで寂しすぎて死んじゃいそうな顔しているのね」
「そ、れは・・・」
弱い自分なんかがシンに相応しく、と続けようとするも人差し指を口に当てられる。
「もう、いつまでも泣き言を言っては駄目よ。」
「で、ですが・・・」
「いい鈴仙?確かに貴方は大きな過ちを犯したわ。でも全てを償うことができなくても、今あなたは生きてる。
なら生きて生きて幸せになりなさい。それは誰にでもある権利でもあり責任よ」
「権利と、責任…」
「ふふ、それにずっといじけてて誰かにシンを取られてもいいの?」
「だ、駄目です!」
シンの隣に自分ではない誰かがいる―――
それを思った瞬間、今までの葛藤を無視していた。
「・・・ほら、答えなんて出てるでしょ。
今の叫んだ言葉が本当の気持ちなんだから」
「あ…」
「それに、永遠亭ではあなたが一番活動してるのだから、ね」
ウインクをされ、鈴仙は考える。
本心は確かに出た。後は自分がどうするべきか―――
「わかりました。ですがもう少しだけ考えさせて下さい。
私自身が納得できるまで」
「ええ。貴方自身が答えを得られるまで、よく考えなさい」
「はい、失礼します」
そういえば、この場所は姫のお気に入りの場所だったなと思い至り、その場を去ろうとする―――が、
「鈴仙」
不意に呼び止められ振り向く
「決めることができないなら、私がシンを取るわよ」
その言葉に心臓が鷲掴みにされたような衝撃が走る。
冗談かと思ったが、輝夜の声は本気だった。
「…肝に、銘じます」
「ええ…」
鈴仙は永遠亭までの道を歩み、輝夜から逃げるように走った。
自分と違い、進むべき道に躊躇いの無い輝夜との差の大きさが、ただただ悔しかった。
一人残された輝夜は鈴仙同様、満月を見る上げる。
だが大きな違いがある。
とても嬉しく、誇らしげな表情だ。
―――
永琳、私の運命はすごく嫌なものみたい。
不老不死になったことは後悔なんてしてない。
失ってしまった物はたくさんあるけど、得ることのできた大切なことも沢山ある。
でも、あの年齢で自身の信念を貫き通せる少年と出会えた奇跡も、不老不死のおかげというのは複雑ね。
今まで出会った人間と違い、私と何度会っても心を囚われることもなく、私を特別な存在としてではなく、ただ一人の「輝夜」個人として接してくれた。
そしてどんな困難なことにも立ち向かう愚直なまでに真直ぐな心の持ち主。
だからこそ愛おしく切ない。
いつか来る別れがとても辛くなる…
でも私は目をそむけない。
今まで多くの命を失い、奪ってきたことの責任の為にも、絶対に私は歩く(生きる)ことを躊躇わない。
彼の傍で刹那の時間を過ごしていきたい。
そして別れが来た時、泣いて、決して忘れない。
「好きよ、シン」
永遠に…
最終更新:2011年01月22日 07:21