1
――ここは・・・どこだ?
ああ・・見覚えがある。ここはいつかの戦場跡の夜だ。あのMSの残骸たちは俺がつくったものだ。
全てがモノクロの瓦礫の世界。違う、一色だけ鮮明な色がある。
赤だ。鮮血の赤。戦火の赤。相棒の目の下のラインの赤。
分かった。“ここ”は俺の夢だ。俺の過去だ。
しかも大戦後の地獄だ、最悪だ。いや、家族の死に様の夢も最悪か。
早く起きてあの娘に会わないと。
見てしまう。
――もう戻りたくない。あっち側を、あの頃を思い出してしたくない!
『なあアスカはやらないのか?』
不意に後ろから声が聞こえた。
――クソックソックソッ・・・時間切れだ。
ザフトの野戦服を着たヒョロリと背の高い、短髪の若い男だ。俺もモノクロで分かりにくいけど少し色の違う野戦服を着ている。
確か名前は・・ジャック。ジャック・ウイルソンという第4小隊の男で・・・・敵の銃弾を受け、輸血ができないまま最期を迎えた男だ。
男の目の下には黒いくまができ頬はくぼんではいるが、瞳は危うく煌めいている。モノクロの世界でも分かる狂人の目。
振り向いた先には裸の女を数人の男たちが輪姦している。
『今日もお前がハイスコアなんだぜ?エースのお前がやらないなんて、どうかしてる』
――どうかしているのはお前達だ!“ここ”で俺をエースと呼ぶなッ!ぐッ・・体が過去の通りにしか動かない!!
あの女はブルーコスモスのテロ集団の生き残りのスナイパーで生け捕りにした奴だ。こいつらのせいで民間人6人が死んで16人が重傷を負った。
別の方向を見てみると。
別の兵士たちが男のテロリストを生きたまま木に縛って銃剣の的にしている。下を噛んで自殺しないように猿ぐつわはするが、目隠しをしてやらないところに凶気を感じる。
所々から赤い液体が流れているが急所からは出ていない。
もっと怯え、もっと痛み、もっと苦しみ、もっと恐れ、朝になってようやく動かなくなるのだと俺は知っている。
モノクロの草むらを音をたて踏み進んでいき、何かガサガサと作業をしている。なにか切っているような仕草だ。そして、明らかに俺以外のうめき声が聞こた。
振り返る俺は頬を歪ませて笑っていた。頬には、数滴赤い液体が散っている。
『俺は犯るより、殺るほうが好きなんだよ』
俺の右手には血塗られたデカいナイフが、左手は男の生首の髪を掴んでいた。生首の表情は暗くて分からないのに、傷口からはポタポタポタ・・・と滴っている血の赤だけが鮮明に分かる。
――掻っ切ったのは・・・・俺だ。
また赤が増えた。
過去の俺は今の俺の意思とは関係なく過去を忠実に再現していく。その残忍な笑いすらも。
『俺はやりたいようにやる。ただ――それだけだ』
生首をマワされている女のほうに投げた。
女は生首を見ると一度絶叫し・・・・心が壊れた。どうやら親しい間だったようだ。
『おいおい、もう少し考えろって。あーあ、おっかねーなー、もったいねー』
それでもジャックはあまり怒ってはいない。まるで読みかけの新聞を取られた程度にしか感じていない。むしろ笑っている。
まともな言葉が出せなくなった女は心が死んだ後でさえも数人に嬲られ続けている。あれはもう女ではない、ただの性欲処理用のモノだ。
覚えている。この頃の俺は罪悪感というものを無視し続けた。
覚えている。この時の俺はこの狂った宴に参加したくなかった部下たちのために一人、殺人鬼の仮面を被っていた。いつからかその偽物の仮面は本物になってしまって、手放そうとしてもすぐに戻ってくる今じゃ厄介ものだ。
戦場には不思議な一体感があって、それを乱そうとする者は戦闘中に後ろから味方に殺される可能性が多きく、この頃は物資が不必要になった武器しか来なくて全員大きなストレスを抱え危険な状態で、もし俺が逆らったら部下も他の小隊に戦場で殺されていた。だから俺はこいつらに合わせる他無かった。民間人に手を出しているわけじゃない、民間人を犠牲にするテロリストは人間じゃないのだと自分に言い聞かせた。俺も戦場の狂気に飲まれていた。
だが許せなかった。テロリストさえいなければ、子供がバラバラになって死ぬことも、その亡骸を抱えてその子の親が泣くこともなかったはずだ。半分が戦場の狂気のしわざなら、もう半分は――怒りという俺の意思だった。
この時の俺もただのモノだ。十字架の代わりに銃を担いで歩く死体だ。
周りを見ると死体やMSの残骸から流れ出た赤い液体が一点に流れ集まり、その一点には赤い二葉の芽が生えている。
そしてなぜか“それ”はもっと血を求めていることが分かった。『シン・アスカ』は戦いに飢えていることを知った。
『クッ・・アハハハッ!!!』
俺が狂い、楽しそうに笑っている。過去の俺がなぜ笑っているのか今の俺には分からない。笑うしかなかったのだろうか。笑って狂うしかなかった。
灰色のガイアアサルトが俺を見下ろしている。赤い涙を流しながら虚になった俺を見下ろしている。
――イカレテいる。みんな、俺を含めてイカレテいる。
だが知っている。この過去の夢に出ている奴らはほとんどが死ぬ運命だ。俺の部隊だけが生き残る運命だ。誰が悪い?俺はどうすればよかった?
なあラクス・クライン。お前が地獄におとした奴らはお前の名前を後ろ盾に強姦をしているぞ。キレイごとを歌わないのか?
なあアスハ。この時、俺たちが始末した奴らはムラサメ・・お前の国のMSを使っていたぞ。国と国の理想を守るための力じゃなかったのか?
なあアスラン・ザラ。奴らも所属していた軍を裏切って行使するだけの身勝手な正義をもっていたぞ。どれが一番正しい正義なんだ?
なあキラ・ヤマト。人はみんな同じなら、お前も殺戮願望と姦淫願望で戦場に出て戦ったんだろ?ここは自由だ。死ぬまで人を殺せる。殺されるまで女を犯せる。
これが人の本性だ。
殺戮願望と姦淫願望こそが人の本性だ。
戦場という環境でこそ目覚める人の本性だ。
人であるかぎり逃れられない呪いのような性だ。
戦場。ここは――地獄だ。
ここが地獄なら、鬼は罪悪感を無くした俺たちか?
罪を犯し、罪人を殺し続けた俺たちは“人”と呼べるのだろうか?
いや、人だったのだろう。
出会ったばかりのこいつらは確かに人だった。
恐怖で銃をかたときも離せないほど弱かった。初めのころはジョークを言い合うほど気のいい奴だってたくさんいた。現地の子供たちと遊んだりすることが大好きな奴だっていた。体がでかくて無口だったけどたまたま拾った子犬を陰で可愛がっていた奴だっていた。
人だったんだ。
戦場で心が死んだ弱い俺たちはいつからか人を、人であることをやめてしまった。
じゃなきゃ・・・・楽しんでいるわけがない。こんなことを正当化しているわけがない。当たり前なんだと思っているわけがない。
みんな狂った笑顔のまま死んでいった。みんな狂う前はいい奴だった。
戦いを謳歌しながら死んでいった。
地獄を謳歌しながら死んでいった。
これが俺のいるべき世界なのか?
これが俺がいくべき世界なのか?
誰か教えてくれ!!
――もし、そうなら。もう・・・・死にた
「シンさん?」
後ろからあの娘の声が聞こえる。モノクロの世界がひび割れていく。ひびから眩しいくらいの橙色の光が漏れてきた。
「ねえ、シンさん!」
はッと、俺はビクンと1回体を痙攣させ、ようやく夢という過去の自分から解放された。体中に纏わりつく、時間が経って冷えた汗が気持ち悪い。それになぜかとても体が重く、ふるえる程に芯から寒い。ここは・・・ガイアのコックピットか。確か俺はエドさんとMSに乗っての模擬戦の途中、海賊からの襲撃があって・・・・。ガレージに戻ってそのままガイアの中で眠ってしまっていたらしい。
体中が痛い。理由は簡単、俺は一度もエドさんに勝てなかったからだ。よく吐かなかったと自分を褒めてやりたいが、勝てないという事実は男にとっては悔しいものでしかない。
「いや、生きたい」
寝ぼけた頭からなぜか自然にその言葉が出てきた。我ながら身勝手だと思う。
「?」
目の前にいる娘は俺が何を言っているのか分からずキョトンとしている。
「顔、青いよ。大丈夫?」
ディエチが心配した顔で俺の顔を覗き込んでくる。本当に目と鼻の先という近さだ。
そうだ、俺はこの娘と待ち合わせをしていたんだ!時計を見ると・・・・35分ほど待ち合わせの時刻を過ぎていた。
「あ・・待ち合わせ――」
「そんなことよりうなされてたよ」
だが彼女は遅れたことよりも、俺のことを心配してくれていた。
「それにひどい汗・・・」
そう言って、目の前にいる彼女はハンカチを取り出して、俺の額の汗を拭ってくれた。
恥かしいから、と止めようとするも俺には腕を上げるだけの気力も残ってはいなくて、ただ体を揺らせて荒い呼吸をし頭の機能の回復を待つことしかできなかった。
「もう大丈夫だよ。ありがとう」
彼女の心配している顔が見たくなくて少しだけ無理して笑ってみた。
「無理、しなくてもいいよ」
けどそんな虚勢は空しく見透かされる。すこしだけ彼女の瞳が悲しく見えた。
「・・・・ごめん」
俺は弱くなったのだろうか?少なくても大戦中の俺なんかよりは強くなったはずなのに――今日も人を殺せなかった。ビームブーメランで胴体を少し斬って海賊の機体を行動不能においこんだだけ。収容された海賊のパイロット達は無傷だった。こちら側に死傷者がいなかったからよかったけど。
コックピッドを狙って一撃で仕留めたほうが効率がいいことなんて分かっているのに、散々やってきたことなのに――俺はどうしてしまったんだ?俺は俺なのか?『羅刹』シン・アスカはどこにいった?
『うなされていたが、悪い夢でも見たのか?』
「ああ。・・・戦後の戦場の夢を、な」
『そうか』
8は知っている。ついこないだ悪戯心でガイアの中のデータを見てしまった8は、大戦後のガイアが見てきた死体の数や様、シンがどのような苛烈な戦いをしてきたのか片鱗を知ってしまっていた。
冷たい体に力が入らない。頭がボーとする。久しぶりにあの類の夢を見たが気分のいいものではない。
だがこの震えている手は間違いなく。
人の体に銃剣を突き刺す感触を思い出しかけている。
人の首をナイフで掻っ切った味わいを忘れさせない。
人の頭をスコップで叩き切った手触りを知っている。
温かい血風の味を、戦場の雨の冷たさを、むせる戦火の匂いを、懐かしんで欲しがっている自分がいる。
けど・・俺は――
「俺は“ここ”にいてもいいのかな?」
まだ頭がボーとする。自分でもわけの分からない質問だった。
「いや。いてもらわないと困るから」
そっけない返事だったが俺はそのそっけなさに嬉しさと、
「そっか・・いいのか。・・・・・・ありがと」
心の安らぎを感じる。ああ、だから『安心』って書くのか。
「ほーらッ、行くよッ」
彼女が俺の手をとって立ち上がらせた。力は強いが、優しい女の子の手で。
「わっとと!・・・・ああ」
不思議だ。
さっきまであんなに雨に打たれ続けたように冷たく重かった体が、彼女が触れた手の甲から日向ごっこをしていたように気持ちのいい温かさが広がっていく。まるで夜明けの太陽を見たときのようになんとも言えないぐらいに心地いい。まだ必要とされ、まだ生きているのだと実感した。
俺は引っ張られながら頭だけ向けて、大戦後の地獄を共にし、今さっきの戦闘で返り血(オイル)に汚れたガイアに聞いた。
「忘れるなって言いたいんだろ? 忘れられるかよ」
いつか俺は死んであいつらの待っている地獄と呼ばれるところに落ちるだろう。
生きている限り自分の明日に夢をもつこともできず、この娘と離れて眠れば悪夢を見続けるだろう。
ならせめて生きている今だけは・・・・・あれ?
俺はいつからこの娘を好きになったんだっけ?
俺はなんでこの娘を好きになったんだっけ?
俺はこの娘を好きになってもよかったんだっけ?
なあガイア、ダメだと言ってくれよ。じゃないと俺は――まるで生きている人のように。
「俺は・・幸せを夢を見てしまう」
身勝手なエゴを誰にも聞こえないような声で呟く。
当たり前だが返事はない。
とりあえず今は早くパイロットスーツを脱ぎ、その後は赤服ではなく、持ってきた違う服を着ようと決める。
そうすれば祖国を持たない英雄にして有力者から恐れられる悪鬼『シン・アスカ』ではなく、彼女に『シンさん』と呼ばれるただの男になれるから。
2
ショタシンという言葉が俺に火をつけた。
シンがショタ化でお願いします。
シン「世界ってのはどこもモノクロだ。MSって“力”が有っても無くても、魔法ってものが有っても無くてもそれは変わりない」
ディエチ「ねえシンさん、嘆きたいのは分かるけど・・・・ぷっ・・ごめんッ・・あはははっ!」
シン「笑うなーー!!」
ディエチ「はははッ!だってその姿(ショタ)じゃ、全然いつもの迫力がないもん!」
シン「うう・・・・なんで俺だけこんなこと(姿だけ子供化)に・・」
ディエチ「大丈夫。可愛いよ」
シン「全然嬉しくない!というか俺にそんなもの求めないでくれ」
ディエチ「でも、シンさんに首輪と犬耳をつけたがっているヒトはけっこういるらしいよ」
シン「マジでか!?じゃあ今度から一緒に歩いてくれ」
ディエチ「かく言う私もその一人でね」
シン「日常の中に潜む危険性はここにいたァ!?」
ディエチ「ところでシンさん、せっかくだから――はい、コレ読んで」
シン「なんだこれ。・・・これを俺に言えってのか?」
ディエチ「うんッ!」
シン「良い顔で頷くな・・・。ちょとこれパス――」
ディエチ「一回だけ!一回だけでいいから!」
シン「なんでそんな必死なんだよ。はぁ・・・一回だけな」
シン「僕、大きくなったらディエチお姉ちゃんと結婚する!」
ディエチ「シンちゃーーん!!」
シン「うわ!抱きつくな、あと目が危ない!」
ディエチ「血は繋がってないから大丈夫!」
シン「これが義姉を持った時の恐怖か!?」
ディエチ「シンちゃん、良い子良い子!!」
シン「シンちゃん言うな!!あと嬉しいけど、胸、胸!!」
ディエチ「赤くなって可愛い。もうワシャワシャしたいよ」
シン「もう勝手にしろ!」
ディエチ「じゃあペロペロしていい?」
シン「んっ・・・。耳を舐めるな!あとハァハァすんな!8、俺を助けろ!!」
8『この世界にそんな都合のいいモノ(法律)があるわけないだろ』
8『今いる世界とお前の運命がたまたま“そう”だった。ただ――それだけだ』
シン「B級映画みたいなセリフ吐いてしめようとするな!!」
ディエチ「もうこのままでいいと思わない?」
シン「思ってたまるか!!」
ディエチ「はむはむ」
シン「あッ・・あああッ・・・・アマガミはらめーーー!!!」
最終更新:2011年01月22日 08:33