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夜向性 ◆pLz4u.wgPs氏の小ネタ02

シン「・・・ここにも雪が降るんだな」

ちらちらと降り出した雪を店のガラスごしに見上げながら、
俺は大して旨くもないコーヒーを喉の奥に流し込んだ。
時計の針は午前一時半を示している。十時頃に入店したはずだから、経過したのは三時間。
ドリンクバーで粘るのもそろそろ限界だ。
雪による交通機関の混雑も踏まえると、これ以上ファミレスで粘るのは得策とは言えない。

シン(領収書の整理は終わったし、報告書の作成はアパートに帰ってからにするか)

大学を卒業し親元を離れて独立することを考えていた俺は、親友の勧めで教職に就くことになった。
もちろん、これは表の事情。
裏の事情は、ある都市で行われているらしい非人道的研究の有無を確認すること。
そして、可能ならそれを再起不可能になるまで破壊することだった。
そんなわけだから、自然と毎日忙しく走り回ることになるわけで。
情けないことに、俺は今日の今日まで世間がクリスマス一色に染まっていることすら気づいていなかった。

シン「師走か・・・もうそんなになるんだな」
紫「せっかくの聖夜も独り身の貴方にはあまり関係のないイベントだったかしら」

突然かけられた声に振り向くと、そこにはもう見慣れってしまった胡散臭い笑顔をした女性が立っていた。
俺の周りで、神出鬼没な現れ方と出会い頭の嫌味な口調を両立している人物は一人しかいない。
妖怪の賢者と呼ばれていて、何故だか俺を異様に気にいってくれている『八雲紫』さんだ。
近づいてくる気配も店員の入り口での受け答えもなかった所を見ると、また“スキマ”を使って瞬間移動してきたんだろう。

シン「・・・紫さん」
紫「あらごめんなさい。でも、人を驚かせるのは私の趣味みたいなものですもの」

現れた瞬間を誰かに見られたかもしれないと一瞬焦ったが、周りを見回してそれが杞憂だということに気付いた。
誰にも見られていないタイミングを計算するなどこの人にとっては初歩の初歩。
そもそも、教えてもいないのに俺の外出先までたどり着いている時点で、人間の理解の及ぶ相手じゃない。
心配するだけ無駄だ。
その考えを裏付けるように、本人はちゃっかり俺の隣の席を占拠して何食わぬ顔で店員にドリンクバーを注文している。
後でレシートを見るまでもなく、代金は俺持ちだ。

シン「だったら、もう少しひねってくださいよ。五年前からずっと現れ方が変わってないって・・・」
紫「天ぷらはお笑いの基本なのよ、シン」
シン「天丼です。まぁ、五年もこんな調子だったしもう慣れましたけどね」
紫「こんなにたくましくなっちゃって、お姉さんは悲しいわ」
シン「喜ぶ所でしょう、そこは」
紫「まぁ、ショタ顔はあまり変わってないのだけれど」
シン「言わないでくださいよ! 気にしてるんだから」
紫「ふふ、やっぱりこのくらいの年の男の子はからかうと楽しいわねぇ」ニコニコ

出会ってから十五年、知り合って五年にもなるが、相変わらずこの酔っ払っているようなノリにはついていけない。
しかも、いざとなると万物に精通した知識とでたらめな能力で戦いのルール自体を根底からひっくり返すのだから余計に手に負えない。
それでも憎みきれないのが、この人のいちばんずるいところだ。

シン「男の子って・・・俺もうすぐ社会人なんですけど(男が見る目が無いから
私に彼氏ができたこと無いんだってこの前酔っぱらった時に喚いてなかったっけ)」
紫「妖怪からすれば、たかだか二十やそこらなんて赤子も同然ですわ」
シン(だったら、お姉さんじゃなくてお婆さんだろ。わざわざ突っ込まないけど)
紫「あ、そうそう。休暇は取れてるんでしょう。実家に帰ってくるのがいつになるかって皆ヤキモキしてたわよ」
シン「年明けには一度戻るつもりですよ。マユ達にお年玉をあげないといけないし」
紫「相変わらず過保護なのねぇ。あの子ももう大学生でしょう? シスコンもほどほどにしたら?」
シン「ほっといてください」

そして何より、彼女は俺の裏の顔を知っている。
日本の国土に位置しながら完全な治外法権を持つ実質的な独立国家。
『学園都市』に潜む闇を(どうやってかは知らないが)最初に嗅ぎつけ、俺に真相の究明を依頼したのも彼女だ。
その際に日本政府にも極秘裏に協力を依頼している辺り、紫さんの人脈の広さがうかがえる。

紫「さてと、そろそろ本題に入りましょうか。シン、この街の暗部はどのくらい調べがついているのかしら」
シン「まだまだ全然ですよ。思ってた以上に根が深いものばっかりで」
紫「報告書なら読んだわ。よくもあれだけ考えつくものね、量産型能力者計画に絶対能力進化計画・・・etc。
同じ人間同士でしょうに」

世界の二十年先を行くと言われた『学園都市』、科学において並ぶものなしと言われたその栄光は
蓋を開けてみればひどいものだった。

人体実験まがいの超能力者の開発、
クローン技術を応用した超能力者の量産、
その実験で生まれた二万人の子を犠牲にすることでレベル6と呼ばれる最強の能力者を造り出す計画。
置き去りにされた子どもを人体実験に使った計画。
他にも挙げればきりがない。

何より恐ろしいのは、ここではそんな狂気が当たり前の日常になっていることだ。
守るべき大人達は被害者を気にもかけないで、守られるべき子供たちは何の疑問もなく
危険な投薬や実験を受けている。
その事実を知った時、ここは人間の負の部分を煮詰めた地獄の釜だと、俺は本気でそう思った。

シン「・・・時々、どうしようもなく悲しくなりますよ。どこを掘り返しても、無責任な奴らばっかり出てきて。
そいつらのせいで大勢の子供がひどい目に会ってるのに、報いすら受けないんて。そんなことが許されていいはずないのに!」
紫「・・・(なまじ根が優しい分、この子には余計に堪えるんでしょうね)」

世界が違っても、人を人とも思わない連中のする事はみんな同じだ。
弱い立場の人間を犠牲にして強化人間やエクステンデッドのような被害者を作り出して、
自分達が都合のいいように世の中を回そうとする。
この街には、そんな奴らが多すぎる。

シン「守るために力が欲しかったのに、力だけじゃ守れないなんて。
自分の無力が嫌になりますよ」
紫「・・・(こんなにも心を傷つけて。一人立ちさせるのはまだ無謀だったのかもしれないわね)」

けど、このままじゃ終われない。
この街で出会った仲間と事件を解決していく中で、ようやく掴むことができた微かな真実。
計画の内容を知るたび裏に見え隠れする学園都市が作られた目的。
そして、計画を潰すために喉元深く切り込んだ一太刀を、寸前でするりとかわす奴ら。
間違いなく俺は、全ての元凶に手が届くところまで来てるはずだ。
なのに、あと一歩、いつもあと一歩が届かない。

シン(必ず追い詰めて見せる。こんなこと、もう許してなんかおけるか!)
紫「・・・(はっ! よく考えれば、消沈したこの子を慰めて好感度を上げるなら今がチャンスなのでは! )

紫「・・・シン!」
シン「・・・はい?」
紫「・・・ほら、女性を待たせるのはマナー違反よ!」
シン「・・・だから、なんですか」
紫「え、お姉さんの胸の中で泣きじゃくりながら疲れて眠りなさい、って流れだと思ったのだけれど違ったかしら」
シン「二十歳すぎたいい大人が、そんな恥ずかしい真似出来るわけないでしょう」
紫「えぇ~」
シン「だいたい、泣きなさいはともかく眠りなさいってどこのラスボスなんですか」
紫「ここにいるじゃない、幻想郷のラスボスが」
シン「・・・(そういえばそうだった)」

静かに燃えあがらせていた闘志を紫さんのフォロー(?)とも言えない様なボケに鎮火された俺は、
雪が本格的に降りだす前に店を出た。
会計を済ませて外に出ると、暗くなり始めた空が凍えるような風と小雪で出迎えてくれる。
この寒さが続くのなら、当日はホワイトクリスマスになりそうだ。

紫「それで、この後はどうするの」
シン「特に予定はないですね。部屋に帰って、借りて来た0080を見るくらいしか」
紫「毎年それじゃないの。よく飽きないわね」
シン「ポケットの中の戦争は名作でしょうが! もうすぐバーニィの命日なんですよ!
   今日から見ないでいつから見るっていうんです!」
紫(一体、何がこの子をここまでさせるのかしら)

紫さんも付いてくる気まんまんだったので、せっかくだからと家に招いて手料理をふるまうことにした。
もうじきクリスマスなのだから、一人より二人で過ごした方が楽しいだろう。

シン「それにしても便利ですよね。スキマで好きな時に何処へでも行けるんですから」
紫 「そうそう。決して家までの道のりを端折ったわけじゃないのよ」

第八学区に借りている家に到着すると、ドアを開けようと鞄から鍵を取りだす。
レイやデュランダル会長が援助してくれているおかげで、俺はパーティーすら開けそうなくらい広い家を借りさせてもらっている。
というか、どういう根回しをしたのか学園都市に着いた時にはもう家が用意されていた。
「マンションの一室とか一人用のもっと狭い部屋でよかったのに」と連絡を入れると
「広ければ防音にもなる。女性を連れ込んでも大丈夫だ」というずれた返事を返されたので
「童貞には不要な気づかいだ」と釘をさしておいた。本当に余計な御世話だ。
鍵穴に差し込んだ鍵を回して、ようやく俺は安らぎの我が家へと戻ってこれ・・・。

シン「あれ?」
紫 「どうしたの」
シン「鍵が開いてる。おっかしいな、出るときにちゃんと閉めたはずなのに」
紫 「俺は悪くねぇ!って犯罪に遭う人間の常套句よね」
シン「ゲームが違いますよ。それに学園都市のセキュリティは結構すごいんですから
   犯罪なんて・・・犯罪なんて・・・」
紫 「あるかもしれないわよ。ここって、地味に治安悪いし」
シン「(心配になってきた)おーい、誰か来てるのかぁ?」
紫 (殺し屋の可能性は考えないのかしら。もっとも、生半可な相手でこの子を殺せるとは思えないのだけれど)

家を出るときにカーテンを閉めておいたので、部屋の中は真っ暗だ。
住むのに慣れたといっても、暗闇の中で明かりのスイッチを見つけるのはなかなか難しい。
俺は辺りに気を配りながら手探りで奥へと進んでいった。

シン「えっと、確かここら辺に明かりが・・・」

??? 「「「「「「 メリークリスマース!! 」」」」」」
 パァン パァン

シン「」
紫「」

まばゆい光と、炸裂音。
それが部屋の灯りとパーティー用のクラッカーだと気づくまで俺は呆然と立ち尽くしていた。

麦野「驚いてる驚いてる。サプライズ大成功だにゃ~ん」
垣根「どうだ、わざわざ先回りしてたかいがあっただろうが」
一方「カカカッ、さいっこうのバカ面だったぜ、せんせェよォ。これで後一年は笑うネタに困んねェな」
打ち止め「憎まれ口を叩きながらもあなたが一番一生懸命に準備してたよって、ミサカはミサカは突っ込んでみたり」
シン「・・・お前ら」

そこにいたのは、俺が初めて任された特別クラスの生徒達だった。
触れただけでベクトル(向き)を変換する能力をもつ学園都市の第一位『一方通行(アクセラレータ)』
この世に存在しない物質を作り出す暗黒物質(ダークマター)という能力を持つ第二位垣根帝督(かきね ていとく)
『原子崩し(メルトダウナー)』というレーザーのようなビームの様な光線を放てる能力を持つ第四位麦野沈理(むぎの しずり)
いずれも、この学園都市でもトップクラスの超能力者だ。
ちなみに、その超エリートの教育になんで俺みたいなぽっとでの教師が選ばれたのかは分からない・・・けど、大体予想は付いている。
たぶん、性格が最悪なくせに力だけはあるこいつらの面倒を誰も見たがらなかっただけだ。俺も半ば無理やりだったし。

一方「なンだ、感動して声も出ねェのか。頭ン中は意外とメルヘンだなァせんせェ」
麦野「全く気付いてなかったみたいだしね。」
シン「そりゃ驚くだろ。それに気づいてなかったのはお前らのほうだ」
垣根「ああ? 」
シン「今日はまだ23日。明後日がクリスマス、クリスマスイブは明日だぞ」

?「「「・・・はぁ!?」」」

本気で気づいてなかったのかこいつら。
気の抜けた視線がだんだんと怒りに染まり、打ち止め(ラストオーダー)に集まっていく。
この子は一方通行が紆余曲折で預かった子供で複雑な事情を抱えてるんだが面倒くさいのでここでは省くことにする。
このつるしあげられ方から察するに、たぶんこの子が発起人だったんだろう。

麦野「ら~す~と~お~だ~ちゃ~ん?」
打ち止め「あ、あはは、間違えちゃったってミサカはミサカは・・・。って、みんな顔が怖い!」
一方「待てコラァ、無駄な労力使わせやがってこのクソガキィ!!」
紫「貴方達、クリスマスがいつか知らなかったの」
麦野「実験ばっかでクリスマスなんて愉しんだことないし」
垣根「昔過ぎて忘れちまったよな」
シン「はぁ・・・ったく、お前らは」

ま、祝ってくれるためにわざわざ集まってくれたんだからここは素直に喜ぶべきかな。
そんなことを考えて気を抜いた時だった。
奴がとんでもない爆弾を自分の足元で起爆させたのは。

一方「で、そッちの紫色のババアは誰なンですかァ。恋人にしちャ年いッてんなァ」
シン「あ、馬鹿!」
紫「・・・」ニコッ
一方「・・・なン!?」バクン
垣根「一方通行が黒い何かに飲まれた!」
麦野「ええ、オートで発動するはずの反射は!?」
紫「どうも生徒の躾がなっていない様ねシン。無礼には相応の罰が下るってゆとり教育では教えてくれないのかしら?」ニコニコ
シン「躾は親がするべきで・・・。って、紫さんどこまで飛ばしたんですか!」
紫 「さあ?」ニコニコ

やばい、本気で怒ってる。俺でも話しかけることに恐怖を感じるくらい本気で怒ってる。
あまりの威圧感に垣根たちも何も言えずに目をそらしてるし。
くそ、こうなったらどうにかして褒めちぎって・・・

打ち止め「お願いあの人を返してって、ミサカは綺麗なお姉さんに涙目で頼んでみる」
紫「あら、綺麗なお姉さんだなんて。しょうがないわねぇ」テレテレ

シ垣麦*1

紫「はい、正直のご褒美よ。彼はもうちょっと待ってね、今こっちに戻すから」
打ち止め「わぁい! 見たことないくらい綺麗な飴玉だぁってミサカはミサカは興奮気味にはしゃいでみる!!」
垣根「もしかして単純な人なのか?」ヒソヒソ
シン「なわけないだろ。すぐに許してくれたってことは冗談半分だったんだよ」ヒソヒソ
麦野「あれで?」ヒソヒソ
シン「下手なこと言うなよ。次元のかなたに飛ばされて二度と帰ってこれないかもしれないからな」ヒソヒソ
垣根「なにそれこわい」

一方「・・・グッ」ドサッ
麦野「あ、帰ってきた」
垣根「磯くせぇ、海まで飛ばされてたのか」
一方「・・・どうなってやがる。11次元ベクトルを用いた座標移動(ムーブポイント)なら、反射して防げるはずだ」
紫「転移なんてしてないわ。存在そのものをその場に“いたことにする”だけだもの。
『境界を操る程度の能力』にベクトルなんて存在するわけないでしょう」
麦野「・・・マジ?」
一方「オイオイ、なンだァ、なンですかァ、なンなンですかァ、この化け物は」
垣根「先生、周りにもっとまともな女はいねぇのか? この間遊びに来たっていう『八神さん』といい、
でたらめな奴らばっかりな気がするぞ」
シン「え、まともな女性? ああ、まともな女性ね、まともな女性・・・」
打ち止め「いや、思い浮かばないならいいよ、ってミサカ」
シン「いないわけないだろ! 俺だってまともな女性の一人や二人、・・・ええと、あれ?」
一方「考え込んだ時点でアウトだっつうの」
麦野「レベル5ってこの街でも敵なしってほどダントツで強かったはずなんだけどねぇ。
世界の広さを見せつけられた気分だわ」

垣根「で、どうすんだ。ケーキは晩までとっとかないとだし、ゲームでもやるか」
一方「いっつも教室でやってンだろ。今更感が半端ねェぞ」
紫「駄目じゃないの、シン。先生なのに学校で勉強を教えてないの」
シン「こいつらは基本的に頭がいいから勉強はできるんですよ。教えなきゃならないのは根本的な常識です」
垣根「俺の未見物質(ダークマタ―)に――――」
一方「常識は通用しねェ」キリッ
垣根「人の決め台詞を遮るとはどういう神経してんですかねぇ、このクソもやしはっ!」ギリギリ
一方「悪いなァ、常識が通用しないンだよ」ニヤニヤ
シン「お前ら、暴れるなら表でろ!」
麦野「せんせぇ、なんかないの?」
打ち止め「退屈だってミサカはミサカはあくびしてみたり」
シン「そうは言っても、俺だって準備してなかったし、64は上条の家に貸し出してるし」
一方「あの三下の家、結構遠いぞォ」

前言撤回だ、こいつら全然可愛くない。
とはいえ、何か時間をつぶすものが欲しいのは確かだ。

シン「・・・って、DVDプレーヤーに何セットしてるんですか、紫さん」
紫「どうせ暇なんでしょう。借りてきてるこれでも見ましょうよ」ガチャガチャ

一方「ハァ? アニメなンて下らねェモン見たがるやつなんざ」
打ち止め「わぁー、でっかいロボットだぁって、ミサカはミサカははしゃいでみる!」
一方「よっしゃー、全員視聴決定で文句ねェな」
垣根「ほんと、揺るぎねえなお前」
紫「世界観の説明はどうするの? 」
シン「見てれば分かってくるだろ。じゃ、始めるぞ」

ポケットの中の戦争、少年少女鑑賞中・・・

麦野「・・・・」ウルウル
打ち止め「・・・・」ポロポロ
垣根「・・・・トイレ行ってくるわ」グスッ
一方「・・・誰だこれ見ようっていった奴ァ」ゴシゴシ
紫「・・・・」ニコニコ
シン「泣けるだろ?」
一方「どうすンだ、この死んだ空気をよォ!! クリスマスパーティーがお通夜会場に早変わりしちまったじゃねェか!」
シン「大丈夫だ。小説版だとハッピーエンドだから。今度貸してやるから」
一方「そういうこと言ってるンじャねェンだよ。今すぐ貸してくださりやがれお願いしますゥ」
シン「突っ込みが他にいると楽だな。交代しないか、明日から」
一方「絶対かわってやンねェ!」

その後も、

麦野「どきどき王様ゲーム大会~!」
シン「あ、俺パス」
垣根「おっと、通すわけにはいかないぜ」
一方「ここから先は一方通行だァ」
シン「その仲の良さを日常でやってくれれば俺の苦労が三割は削減されるんだがなぁ!!」

騒がしいながらものんきなイベントは続いていき

シン「というか麦野は帰らなくていいのか。アイテムもクリスマスムードだろ」
麦野「う~ん、最近雇った運転手兼雑用が滝壷といい感じになちゃっててね。なんというか、少し帰りづらいのよ」
垣根「マジか・・・。あの滝壷ちゃんが見も知らない男の間の手に」
シン「知ったかぶりするなよ。顔も見たことないだろ」
垣根「一度言ってみたかった。反省はしていない」
麦野「フレンダも最愛と仲良くショッピング行っちゃうし・・・鬱だわ」
一方「はぶられてンのかよ、だせェ。いてッ、痛えッておィィ!!」
シン「お前はまたそうやって人を傷つけるようなことを」ギリギリ
ミサカ「それ以上いけない、ってミサカはミサカは割と本気で心配してみたり!」アセアセ
垣根(安心しろ、ああ見えて結構手加減してるんだ)
麦野(本気でやったら肉体強化レベル5くらいいくもんね、あの先生)
打ち止め(マジで!ってミサカは意外な事実に戦慄してみる)
紫(本当はそれだけじゃないのだけれど、面白そうだから黙っておきましょうか)

いつの間にか、時間はあっという間に通り過ぎていた。

一方「腹減ってきたな」
垣根「おつまみ程度しか作ってなかったし、仕方ないだろ。ピザか寿司でも頼もうぜ」
シン「それよりは俺が作った方が早そうだな。ちょうど休暇をゆっくり過ごすために冷蔵庫に色々詰め込んでたし」
垣根・一方「・・・・え?」
シン「何だよその顔。俺が料理作るのってそんなに変か」
紫「イメージは合わないわねぇ」
シン「俺だって料理のイメージが合う男なんて嫌ですよ」

垣根「やべぇなんだこのくそ豪勢な料理の数々はまじやべぇ引くわ」
一方「なんだこれ、くそうめぇぞこんな料理食ったことねぇまじやべぇ引くわ」
シン「お前ら人を馬鹿にしないと飯も食えないのか」
紫「相っ変わらず、美味しいわねぇ。女として立つ瀬が無いわ」
麦野「・・・男に負けた」
打ち止め「・・・同じく」

シン「さて、御飯も済ませたしケーキも食べたし、そろそろ風呂に入って・・・」
紫「お酒でも飲みましょうか」
シン「・・・紫さん、俺今は教職なんですけど。しかも生徒の前なんですけど」
紫「いいじゃないの。打ち止めちゃんは寝ちゃったし、どうせ皆は明日も冬休みなんでしょう。誰も困らないわ」
シン「そういう問題じゃないんですよ。だいたい、そっちの世界で飲酒がどうなってるかは知りませんけどね。日本の法律じゃ・・・うおっ!?」

いきなり下半身がスキマに飲み込まれてしまった。
何とかして抜けだそうともがくが、腰から下がまるでコンクリートに埋まってしまったかのようにびくともしない。

紫「細かいことはいいっこなし。あなた達も飲む?」
垣根「いいんですか?」
紫「もちろん。宴会の席でお酒が飲めないなんてつまらないでしょう?」
シン「拘束を解けえ! いいから解いてください!」
紫「解いたら止めるじゃないの」
シン「当たり前です。未成年なんですよそいつらは! むぐぅ!?」
紫「はいはい、五月蠅いのを黙らせた所で酒盛りと行きましょうか」
一方「焼酎のコーヒー割とかねェのか」
麦野「なにそれ、想像だけで吐くわ」
シン「もがあああああぁぁっ!!(無視してないで猿轡取れこらああぁぁ!!)」

意図せず始まった大宴会は、隠しておいた酒類が加わったことでさらなる盛り上がりを見せた。
もちろん教師として未成年の飲酒は止めようとしたが、相手は一人で軍隊を相手にできるレベル5の超能力者三人相手だ。
にべもなく拘束されて、その三人にのりのりで酒を注ぐ紫さんを睨むことしかできなかった。
打ち止めが既に寝ていたことと、ペースが速かったせいですぐに潰れたのが不幸中の幸いか。

シン「まだ縛られてた所がひりひりする。紫さんも小しは手加減してくれればいいのに、まったく」

床に転がっていた生意気な生徒達に毛布をかけてから、俺は一人で庭に出た。
雪を見ながら酒でも飲み直すかと思ったが、あいにく振り止んでしまったのか空には満月が映し出されている。

シン「そういえば、俺が戦う羽目になったのもこんな満月の夜だったな」

庭に備え付けてある木製のテーブルに貰い物のグラスとワインを置いて、俺は星空を見上げながら飲むことにする。
だが、残念なことに地上の光に遮られて星はほとんど見えなかった。
少しがっかりしていると、いつの間にか隣に来ていた紫さんが俺と同じように空を眺めていた。

紫「賑やかな子達ね。あれなら退屈しそうにないわ」
シン「ええ、賑やか過ぎて校舎と俺の財布までぼろぼろですよ。始末書なんて何枚書かされたことか」
紫「あの子達の面倒をあなたが見ると知ったときには驚いたけど、思ったより楽しそうで安心したわ。
  もしかしたら、天職だったのかもね」
シン「教師がですか?」
紫「さてね。・・・はい、お酒。飲むんでしょう?」

うながされるままに椅子に座って、紫さんの酌を受ける。
真冬だというのに寒さを感じないのは、紫さんが何かしているおかげかもしれない。
鈍く光る星空の下で値段以外に違いの分からないワインを味わいながら、
俺達はとりとめのない会話をかわしていった。
やがて、会話も止まり心地よい沈黙が場を支配した頃、紫さんは空を見上げながら話し始めた。

紫「ねぇシン。皮肉なものだと思わない? 自ら生みだした地上の光に阻まれ、人は真の輝きを瞳に映すことができない。
  なのに誰もそれを気にも留めないの。
  まるで、元から星空など存在しないかのように。
  もっとも、見えるものに溺れて見えないものの素晴らしさを忘れてしまうほうが愚か者にはふさわしいのかしら」
シン「この街も同じだって言いたいんですか?」
紫「私がそう言っていると思うのなら、少なくとも貴方にとってはそうなんでしょう」
シン「・・・」
紫「人は弱く、脆く、儚い。悲劇を忘れ、他者を見下し、世代が変わるごとに過ちを繰り返す。
  この街のような場所は、人が滅びない限りこれからも作られ続けるでしょう」
シン「・・・」
紫「それでも、あなたは戦えるの? 戦い続けられるの?」

紫さんの言っている事はたぶん正しい。
この学園都市にしても、救いようのない事件を生み出しているのは俺とどこも変わらない同じ人間だ。
特別な力を持っているわけでも、始めから狂っていたわけでもない。
悲劇があって、惨劇があって、苦悩があって、喜びがあって、それに耐えられない人が追い詰められて事件を起こす。
だから、事件は幾らでもおこる。未来永劫おこり続けて行く。

シン「俺は・・・」

俺がしていることは、吹き飛ばされた花を元の場所に返すことだけだ。
取れた葉っぱで千切られた根でもう一度花を咲かせられるかもわからないのに、見かけだけは元通りに戻す。
きっとまた咲いてくれると信じて。
それは、きっと花壇全体からみれば無駄な行為なのかもしれない。
新しい花を植えてしまった方が早いのかもしれない。
それでも――――

シン「戦いますよ。取り返しのつかない過去や、手の届かない未来が救えなくたって・・・」

俺は紫さんの目を真っ直ぐ見て答えた。
やめるわけにはいかない。せめて、刀割れ、心折れるまでは

シン「今ある現実で決着をつけた過去を、未来の誰かに託せるのなら、俺は誰とだって何とだって戦います」
紫「・・・(過去との決別だけでなく、未来まで見据えるようになったのね。
  人を導く立場になったことがいい方向に影響している。ふふ、あの子たちのおかげかしら)」
シン「・・・紫さん?」
紫「・・・ごめんなさい、変なこと言って。少し飲み過ぎたのかもしれないわ」
シン「急に黙りこむからびっくりしましたよ。もう夜も遅いし休んだ方がいいんじゃないですか」
紫「そうね、そうしようかしら。・・・シン」
シン「・・・?」
紫「・・・本当に、大きくなったのね」
シン「最初からそう言ってるじゃないですか。俺はもう子供じゃないって」
紫「ええ、とても残念で・・・少しだけ寂しいけれど」

紫「本当に、心から喜ばしいわ」

エピローグ
クリスマス当日、シン達はそろって思いもよらないプレゼントを受け取った。
巨人が履く様な靴下に入っていたそれらの贈り物は、どうやって調べ上げたのか本人達が欲しがっていた物が入っていたという。
監視カメラにも映らず、あらゆる警備をかいくぐって現れた姿の見えないサンタクロースは誰だったのか。
予想はできても、その真実を掴める者は恐らく誰もいないだろう。

シン「ところで、なんで俺へのプレゼントだけこうなんですかね」
紫 「え、何が?」←裸にリボンを巻きつけてセクシーポーズ中
シン「いい話っぽかったのに最後まで自重しろよ、あんたって人はあああああああぁぁっ!!!」

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最終更新:2011年01月22日 09:41
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*1 ( 幼女、GJ!!