仮面ライダーW 第14話『悲しみのR/復讐鬼』
これまでのあらすじは…
コールルという男から依頼を受けようとしたシン達だったが、ドーパントによってコールルは殺されてしまう。
この事件を探そうとするが、シャルロットは【惑星の本棚】で調べられなかった項目を探すために血眼。
終には、探すためにキュルケと共に、とある屋敷へと赴く。
そこで、馬車に轢かれたというスーちゃんと呼ばれる少女とであった。
その一方で、シンは一人でコールルがいた不良グループのボス、ワグナスと出会う。
ワグナスに怒りを覚えるシンだが、再びドーパントがワグナスの仲間を襲う。
Wに変身し、ドーパントを倒そうとするが、そこにナスカドーパントであるワルドが立ちはだかる。
目の前にある命を救えなかった自分に対する怒りと、心の中で泣いている気がするドーパントを利用するワルド
に対する怒りが混ざり合った時、シンに眠る【種】が再び目を覚ました。
「ノヴァール。アイシャの姿が見えないが、何処に行ったか知ってるかね?」
とある屋敷内の食卓場。
そこで優雅に食事を取っていたカーズが、自身の息子であるノヴァールと話す。
「アイシャ姉さんなら、たしかさっき外に出かけたよ」
「仕事じゃないかしら。最近お姉さまそういうの多いですから」
紅茶を飲みながらノヴァールが、デザートのショートケーキを舌で味わいながらシェリカが言う。
「そうか。まぁ、頑張ってくれるのなら、それに越したことは無いか」
そう言いながら、デザートに出されたレアチーズケーキを口に運ぶ。
「むっ……今日も中々の出来栄えだな」
そう言い、カーズは二人との話し合いに興じた。
「(この感覚は……)」
W、シンは頭の中が冷静(クリア)に、しかし憤怒という熱が込み上げてくる感覚に陥っていた。
「(……同じだ)」
その感覚は、あの時と同じ。
あの世界、C.E.で感じたモノと。
MS〈兵器〉に乗った時に、時々あった現象。
シンは知らないが、あの世界の一握りの人物が、それをこう呼んでいた。
【Superior Evolutionary Element Destined-factor】
その頭文字を取った名前、【SEED】と。
『こけおどしか?まぁいい。その首、貰うぞ!』
ワルド、ナスカが接近する。
剣を斜めに振り下ろす。
だが、シンはその剣閃をスローモーションを見ているように避ける。
「ハアアア!」
トリガーマグナムでナスカの頭部を殴る。
『がっ!?』
怯むが、剣を薙ぐ。
しかしW、シンはそれをかわし、炎の弾を放つ。
先程よりも大きな炎がナスカを襲う。
『グッ、何だその力は!?』
【HEAT/JOLER】
ヒートジョーカーとなり、ナスカに接近。
『命知らずか!』
「ウオオオオオオ!」
剣閃の中を掻い潜り、灼熱の拳を腹に叩き込む。
『ゴホッ!?』
「ワルド、お前だけはーーー!!」
拳の連撃を浴びせる。
『グッ、思い上がるなよ!』
背中からナスカの特徴である、ナスカウィングが現れる。
そして飛翔。
『ハッ!』
ナスカの手からエネルギー弾が出現。
Wに向けて放たれる。
だが、Wはそれを回避していく。
『(……凄い)』
シャルロットは、今の現状に驚愕していた。
ワルドが使用するメモリは、上位メモリと呼ばれるゴールドメモリ。
通常のメモリよりも、内包されている記憶や能力も、他のメモリとは比較にならない。
その上位メモリであるナスカドーパントを、難なく圧倒する。
『(シン……貴方は一体)』
シャルロットの思考を他所に、シンはメモリをチェンジする。
【LUNA/METAL】
「落ちろ!!」
ルナメタルとなって、シャフトをナスカ目掛けて振る。
ゴムのように伸びるシャフトが、ナスカの足に絡まる。
『しまっ!?』
「ぬおりゃあああ!」
一瞬で、ナスカは地上に叩きつけられる。
『グッ、何なんだコイツは…!?』
自身を圧倒する相手に、ワルドが声を荒げる。
「終わらせてやる、ワルド!」
【HEAT/METAL】
ヒートメタルとなった瞬間、Wの周りが熱を帯びる。
そのまま、メタルメモリをシャフトのマキシマムスロットへとインサート。
【METAL―MAXIMUMDRIVE―】
メタルシャフトから灼熱が噴出す。
「『メタルブランディング!!!』」
その勢いに乗って、ナスカに必殺技を叩き込もうとする。
『あらあら、少し騒ぎ過ぎじゃないかしら?』
だが、声と共に禍々しい光弾がWに放たれる。
「なっ、グワッ!?」
光弾が当たり、Wが吹き飛ばされる。
『今のは………シン!?』
「くっ。お、お前は……!?」
攻撃を仕掛けてきた方向を見る。
そこには
『お久しぶりね。仮面ライダーさん』
女性のような姿だが、その威圧感は人ではない。
しかし、怪物と呼ぶには、余りにも人に近い姿。
赤と黒、そして薄紫の色合いが不気味さを醸し出している。
唯一つ言えるのは、Wにとっては脅威なる存在。
『禁忌の記憶』を内包するタブードーパントが宙を浮遊していた。
『まさか、あの日のドーパント……!?』
「何でお前が、こんな場所に!?」
W、シンとシャルロットが驚愕する。
相手が二体、さらに上位メモリのドーパント。
一気に戦況が変わる。
『あらあら、そんなに身構えないで欲しいわ。私は今日挨拶に来ただけよ』
「挨拶…だと?」
タブーが下降する。
『えぇ、そうよ。挨拶……タバサ、貴女にね』
『ッ!?』
『ようやく見つけたわ。何時か、何時かきっと貴女を手に入れる。それまで待っていなさい』
突如、タブーが光弾をW目掛けて放つ。
「ッ!?」
Wは身構えるが、光弾はWの前の地面に着弾。
砂煙が舞い上がり、辺りが晴れると、そこにドーパントの姿は無い。
『……逃げた?』
「……」
無言で、シンはメモリを引き抜き、変身を解除。
解除された瞬間、【SEED】状態の特徴である光を映さない目が出てくる。
だが、それも一瞬で元の目の色へと戻る。
辺りを見回すと、あのドーパントもいなくなっていた。
辺りにいるのは、ドーパントにやられた男達だけ。
「くそっ……!」
守れなかった自分に怒りを覚えるが、何時までも此処にいてはまた守れないと感じ、シンはその場を去る。
その背を見た後、屋敷を見つめる一人に気づかずに。
ハードボイルダーで学院に戻ったシンは、シャルロットの部屋に戻っていた。
「でだ、何を調べてたんだシャル。何か熱心に紙に書き記してたけど」
「…本について」
「本?」
こくりと頷き、いくつかの紙を渡す。
それを受け取り、内容に目を通す。
「【復讐の鬼】?」
「…【惑星の本棚】で、調べられなかった」
「……惑星が持っている情報で、調べられない物か」
考える素振りをする。
「なぁシン。俺、さっき本の中を見たけど…これ、この世界の本じゃないんだ」
「……なんだと?」
サイトの言葉に驚愕し、本を手に取る。
ページを捲るとそこに書かれていたのは、
「…俺たちの、世界の文字」
ルーン文字ではなく、サイトやシンの世界で使われている日本語だった。
「もしかして、シャルロットが言ってたのって、これのことだったのか?」
サイトがシャルロットに聞く。
それに首を縦に振り、肯定の意を示す。
「貴方たちにしか、この文字は読めない」
「確かにな。この世界の人間には、知らない文字だからな」
「調べたいって言ってるけど、どうすればいいんだ?」
「読むしかないな。じゃ、任せた」
そう言い、シンはサイトに手渡す。
「えっ、俺!?」
「教官の命令は絶対だぜ?」
「うぐっ……」
特訓で、一応は教官(という立場)としてサイトの面倒(付き添い人として)を見ているシンだが、ここで
その立場を使う。
「シンの鬼野郎…」
「いいから早く読めって」
ニヤニヤしながら、読むことを渋るサイトにシンは促す。
やがて、観念したようにサイトは読み始める。
内容としては、実に単純であった。
―数年前に夫を失い、二人暮らしをしていた母親と娘がいた。
決して裕福とはいえない暮らしだったが、二人は充実した生活を送っていた。
しかし、ある日を境に、その状況は一変してしまった。
娘が交通事故にあってしまった。
娘は意識不明の重体。
夫を失い、さらに娘までも失ってしまうのかと、母親は毎日涙を落としていた。
だが、ある一つの事を耳にしてしまった。
娘に起こった事故は、ある人物が計画したものであると。
それを聞いた日から、母親は泣くのを止めました。
その顔は、今まで笑顔で輝いていた面影は無く、まさに悪鬼のようなモノに変わりました。
目的は一つ。
娘を殺そうとした人物を見つけ出し、
―フクシュウシテヤル―
数々の危険を乗り越え、母親はその人物に出会いました。
そして、母親はフクシュウを成し遂げました。
しかし、その身は既に罪という解かれることの無い錘が巻き付いていた。
その腕で娘を抱くことは二度とできない。
母親は、最後に娘のいる病院へ足を運びました。
最後に娘の顔を見ると、母親は病院の屋上に来ました。
そして………。―
「……これで、終わりだ」
サイトが読み終える。
復讐に染まり、娘を助けることも触れることもできない悲しき母親の物語。
「色々わからない言葉があったけど、悲しい物語なのはわかったわ」
「……可哀相」
「なんだか、復讐を題材にしてるとはいえ、理不尽ね」
すべてを聞き終え、その物語の感想をそれぞれが述べる。
「……復讐か。わからなくも無いな」
「……」
その言葉の内容を知っているからか、サイトはシンを見る。
「いや、独り言だと思ってくれて構わねぇよ。しかし、何でこれが本棚で検索されなかったんだ?」
「この世界の物じゃないからか?」
「この世界にあるが、本の内容がわかる奴がいないから、惑星も記憶に無い……まぁ、謎に満ちている
点は変わらないな」
「……あら?」
突然、キュルケが何かを思い出す。
「シャルロット、この話…あの人たちと被らない?」
「……私もそう思う」
「どうしたんだ二人とも?」
サイトが聞く。
「この本があった屋敷に、本みたいに母親と女の子がいたわ。その女の子、一週間前に
馬車に轢かれたらしいの」
「…何だと?」
「シン、それって!?」
「今度は何?」
驚くシンとサイトに、ルイズが聞く。
「今日、シンが依頼の手紙を貰ったんだけど、その依頼主がドーパントに殺されたんだ」
「そいつが不良の一味だったらしく、そのリーダーのワグナスって奴が、最近馬車を乗り回して人を轢いたって
話だ」
「じゃあ、その轢かれた子っていうのは…!?」
「シャル達が行った屋敷の娘さん、ってわけだ。ったく、偶然にしちゃあ出来過ぎだよ」
「ちょっと、出来過ぎって言うのなら、その子のお母さんが!」
ルイズがその先を言う前に、シンが走る。
「お前たちはその屋敷に行け!」
「シン、お前は!?」
「復讐の対象がわかってるんだ!俺はそっちに行く!」
「助ける気かよ、あの人でなしを!」
サイトの言葉に、シンの足が止まる。
「あんな最低な奴が死ぬなんて、自業自得だろ!?お前が助けなくても」
「サイト」
静かな声が響く。
「確かにあの男は最低で、クズな男かもしれねぇよ」
「だったら!」
でもよ、と付け足す。
「そんな下種野郎でも、俺は救い上げようとする馬鹿みたいだ」
その言葉を言い残し、再び走り出す。
「……変わったな、本当に」
サイトは頭を掻くと、振り返る。
「じゃあ、さっきの話の屋敷に行ってみようぜ」
その場の全員が頷き、走り出す。
広場に出ると、既にシンがハードボイルダーに搭乗していた。
「頼んだぜ、お前ら」
「ああ。でも、言っておくぜシン」
サイトが拳を打ち出す仕草をする。
「不良のリーダーに、ガツンと一発入れて頭覚ましてやれ!」
「へっ、言ってくれるよ」
そんなやりとりをして、サイトたちは屋敷に、シンはワグナスがいる廃屋敷へと向かった。
『貴方、それでも【NAZCA】の所有者なの?』
屋敷へと戻るとアイシャの冷徹で静かな声が響く。
その言葉にワルドが言葉を詰まらせる。
『呆れたわ、前に言ったはずよ。今度失敗すればどうなるか…』
『肝に銘じている。だが、今回は収穫がある』
『収穫?』
アイシャが聞き返す。
『そうだ。あのドーパント、【REVENGE】についてだ』
再び、廃屋敷へとたどり着いたシン。
ヘルメットを外し、左手に地下水を持つ。
「地下水、何かあれば頼むぜ」
『へっ、お任せを』
古びれた扉を開ける。
薄暗くなり、夕日となった太陽の光が屋敷の中を不気味に照らす。
その時、
………ズゥーン!!!
小さく響く音が木霊する。
『上からっすよ!』
「いくぞ!」
階段を上り、廊下を突き進む。
近づいた事により、如々に響く音が大きくなる。
「さっき行ったホールか!」
その扉を見つけ、荒々しく開く。
「グウッ、何だお前は!?俺様が何をしたというんだ!?」
「お前が!お前が娘を!!私の子をーーー!!!」
そこにいるのはワグナスと、復讐に身を染めた女性。
「あれが、シャルたちの言ってた子の母親…」
その、話と違いすぎる容姿にシンは驚く。
穏やかそうで笑顔が絶えなさそうと聞いていた顔は、悪鬼が取り付いたように歪み。
微笑ましそうに見るように細められた目は、その中に黒い憎悪が溜め込まれているかのように淀み。
ふわふわとしていた栗色の髪の毛は、その殺意に呼応するように刺々しかった。
「返せ!あの子を、返せ!!!」
「この女、あの時の奴の親か!?」
「お前さえ、お前さえいなければ!サーリィは!!!」
母親は杖を振るい、そこにあった石の破片を集め、2メイル程のストーンゴーレムを作り出す。
「行きなさい!」
ゴーレムが走り、腕を振るい上げる。
「嘗めるなよ、この女!フレイム・ダーツ!」
その攻撃をかわし、炎の矢がゴーレムを襲う。
命中した炎の矢がゴーレムを火で包む。
「どうだ!…なっ!?」
「こんのーーー!!!」
だが、母親はそれを気に留めずにゴーレムをワグナスへと向かわせる。
『旦那、こいつはヤバイぜ!?』
「ッ、ああ!」
炎の拳がワグナスに襲い掛かる。
「う、うわあああああああ!?」
「『エア・スラスト!』」
腕ごと風の刃で切り落とす。
「誰!?」
「お、お前は!?」
両者が同じ方向、シンを見る。
「あんた等を、救いに来た」
サイトとルイズを連れて、再び屋敷へと来たシャルロットとキュルケ。
シルフィードを待たせ、屋敷の入り口で止まる。
「ここが、その屋敷か」
「……」
先ほど来た時と同様に、ノックをする。
しかし、誰もやってこない。
「もしかして、もうここには…」
「いないみたいね」
ルイズとキュルケが言う。
しかし、シャルロットはそのドアノブに手をかける。
すると、
「……開いた」
ドアに鍵は掛かっていなかった。
「何でだ?」
「考えててもしょうがないわ。入りましょ」
キュルケの提案で、全員が屋敷へと入る。
最初来た時と同じ静けさが、今は不気味に思える。
「これからどうする?」
「……二手に分かれる」
シャルロットがサイトとルイズを指差し、二階への階段へと指を向ける。
「あなた達は二階にいるサーちゃんの様子を…」
その後に、自分とキュルケを指差す。
「私達はこの屋敷を散策する…」
「了解。んじゃ、いくぞルイズ」
「こら、勝手にご主人様の前を歩かないの!」
そんなやりとりをして、二人は階段を上がっていった。
「それじゃ、私達も行きましょ」
互いに散策を始める。
「休憩室……目ぼしい物は無さそうね」
「食堂……(クゥ~)……///」
「寝室はっと……ここは、何も見なかったことにしましょ」
「?………!?(バタン!」
※何があったかは個人で考えてください。
散策して、最後の部屋に着く。
「書室、かしら?」
部屋の中は机と椅子、そしてその上に置いてあるペンや紙といった、質素な感じの部屋であった。
「……?あれは」
机にある紙が目に入る。
「手紙かしら?…読んでみる?」
その問いに、紙を開いて答える。
『愛する我が娘 サーリィへ
貴女がこれを読む時、私は貴方の前からいないかもしれません。
目覚めない貴女を見るたびに、私は涙を流してしまうほど悲しみにくれました。
あの日に起こった悲劇を思い出すたび、私は恐怖し、相手を憎むことしかできません。
でも、私は決心しました。あの男を……ワグナス・ヒューストリオに、貴方の敵を討つと!
それから私は復讐を企てました。あの男を殺す為だけに、この日を待ちました。
そして私は今日、あの男を殺します。
サーリィ、こんな愚かな母親でゴメンナサイ。
貴女を一人にする、こんな最低な母親でゴメンネ。
そして、娘一人助けられない無力な母親で…本当に、ゴメンネ。
さようなら。
永遠に貴女を愛する母より』
手紙を読み終える。
手紙の所々が、水滴で濡れた後が付いていた。
「……あんな太陽みたいな母親(ひと)が…」
「…………」
二人は無言になる。
「二人共!?」
サイトの大声が響く。
書室から出ると、サイトが階段から顔を出していた。
「あの、サーちゃんって子にッ!?」
「ガイアメモリを挿入するコネクタが!?」
「な、何ですって!?」
「……!?」
「助けに来た?馬鹿な男だ」
「……貴女が、サーちゃんって子の母親ですね」
ワグナスの言葉を無視し、問いかける。
少し驚愕したような表情で母親はシンを見る。
「何で、娘の名前を…?」
「フレア・ランス!」
無防備となった母親に、ワグナスが炎の槍を撃ち出す。
「ッ!?」
「『アクア・タイド』!」
しかし、炎の槍は水の波によって打ち消された。
「せこい真似すんな。じっとしてろ」
怒りが混じった忠告をする。
舌打ちが聞こえるが、シンは関係なしという風に母親に話す。
「相棒から聞きました。…はっきり言います。こんな事をしても、貴女の娘は喜ばない!
ただ悲しみが残るだけです! それをわかっている筈です!」
「あなたに何がわかるの! 私はあの子を救うためだけに、今日まで生きてきた! そいつを
殺せば…!!」
「人を殺しても、人は戻らない! そんなことをすれば、貴女は…!」
「覚悟は、しているわ。もう、私は戻れない…あの子と二度と、会うことが出来なくても…!」
「………」
「さぁ、退いて。私はあの男を討つ。サーリィの敵を…!」
「…生憎だけど、言ったはずだぜ」
シンが地下水とダガーを構える。
「俺は、あんた等を救いに来た、ってな」
「…退きなさい」
「貴女が引けない理由のように、俺にも引けない理由がある」
「……これ以上は言わないわ。退きなさい!」
「退かない!」
「じゃあ、力ずくで!」
杖が振るわれ、ゴーレムがシンの前に現れる。
その拳が振るわれる直前、
―コオオオオオオ!!!―
叫び声と、窓が割れる音。
そこには、復讐【REVENGE】に生きる野獣が現れた。
「な、何なの…あれは!?」
「ば、化け物!?」
「ッ!? この人がドーパントじゃなかったのかよ!?」
ドーパントは自分の目標に目を向ける。
だが、
―コオオオオオオオオオオ!!!???―
ドーパントが突然のスパークを起こす。
表面は黒く澱み、黒煙が取り巻く。
それが収まると、そこにいたのは…
「お…かあさん…?」
栗色の髪と同じ栗色の目をした少女がいた。
「そ、そんな……サーリィ……なの!?」
寝ているはずの娘が現れ、混乱する母親。
「あ、あいつは…!?」
ワグナスは、驚愕で震える。
あの時の事件で、死んだと思っていた女が生きている事に。
「一体、これは……」
シンは困惑するが、スタッグフォンが突如鳴り出す。
「シャルか。どうした?」
『サーちゃんって子に、ガイアメモリのコネクタがあった…!』
「……待ってくれ。そこにサーちゃんがいるのか!?」
『どうしたの?』
「わかんねぇ! ドーパントが来て、黒い煙に包まれたら、サーちゃんって子が此処にいるんだ!」
『!? どういうこと……!?』
「なるほど。要するに、思念体ってわけね」
納得したようなしぐさでアイシャが呟く。
肉体を必要としないドーパントの誕生。
それが成功を果たしている。
「そう。使用者の強い思い…いや、執念がメモリの力を増幅させ、所有者の肉体が無くともドーパントを作り出せる。
これは驚くべきことだ」
ワルドは椅子から立ち上がると、
「新しいドーパントの誕生だ」
自信を持ってそう言った。
『そっちはどうなってるんだ?』
「……サーちゃんはここで眠っている。そっちに行くのは不可能」
スタッグフォンから、シンの舌打ちが聞こえる。
『訳が分からないが、何時までも放っておけない! 何か策はあるか?』
「………代わって」
スタッグフォンをサイトに渡す。
「へっ? ど、どうすんだ?」
シャルロットがサーちゃん、サーリィに顔を向ける。
「惑星の本棚に入って……彼女に会う」
「シャルロット!? あ、会うって言っても、どうやって彼女に!?」
キュルケが困惑する中、シャルロットが本を片手に持つ。
「惑星の本棚は私の意識の中。だから、彼女の意識を私の意識に呼び込めば、きっと……」
左手でサーリィの手に触れる。
また、あの冷たさを感じる。
「(これは、ガイアメモリの……)」
だが、その感覚に耐えて、惑星の本棚へと入る。
そこには数多の本棚と、一人の少女。
少女、サーリィは近づいてきた人へと顔を向ける。
「貴女は誰?」
悲しみ、空しさ、怒りが詰まったような声。
その声に怯む事無く、シャルロットは言葉を返す。
「私は、貴女を救いに来た。貴女達を本気で救おうとしてる人と一緒に」
「私を…?」
その言葉を聞き、サーリィはふるふると体が震える。
「無理よ、無理よぉ」
膝を着くと、その場で涙を流す。
「私、もう戻れないよぉ……お母さんと一緒にいられないよぉ」
「……貴女は、ガイアメモリを?」
近づき、一緒の目線で彼女と話す。
「お母さんと小さなことで喧嘩して、家を出てった後に男の人から……」
サーリィは続ける。
「でも、使うのは怖くて…でも、その時」
サーリィの脳裏に焼きついているのは、
暴れて走る馬車。
怒号のような声を上げる男。
そして、無意識にコネクタへとガイアメモリを挿入した自分。
「………」
彼女は死を逃れるため、ドーパントへと変身しようとした。
しかし、完全にドーパントへとなる前にワグナスの不良一味に轢かれた。
そして、今の状態になってしまった。
肉体を持たぬ、執念のみに従う人形となったドーパントが生み出されてしまった。
「この頃、心の中で何かこみ上げてくるんです。達成感みたいなものが。でも、それが過ぎると…
今度は何か空しさが湧き出てくるんです。それが続いて、今では自分じゃ抑えきれなくなって……」
自分の中に溜まったモノを吐き出すように呟く。
肉体がなくとも、心はドーパントと同化していることで、思念体のドーパントが行った行動がサーリィの心を
蝕んでいった。
恨みや執念を晴らしていくドーパントの行動は、サーリィ自身をも泣かせてきた。
「う、ううっ!?」
「!? どうしたの…!?」
突如、サーリィが苦悶の表情を見せる。
体からは黒い煙が渦を巻いてサーリィを包み込んでいく。
「だ、駄目……また、クル…は、早く……逃げっ、うううあああああああああああああああああ!!!!!」
叫びとともに、サーリィから黒い波動が漏れ出す。
「っ!?」
「は、早く……だ、誰か…と、止め……て」
『果タス、アノ男ニ……復讐ヲ……絶対ニ……殺ス!』
サーリィの顔の横に、ドーパントの顔が映し出される。
その顔は、今までの鳴き声ではなく途切れ途切れに言葉を繋げる。
「『アアアアアアアァァァァーーーーーーー!!!!!』」
「きゃあああ!?」
両者の叫びとともに膨れ上がった波動は、シャルロットを惑星の本棚から強制的に退出させた。
「ッ!?」
目を見開くと同時に、その場に倒れる。
「シャルロット、大丈夫!?」
「平気か!?」
少々青ざめた顔でシャルロットが話す。
「……想像以上にメモリの力が強くて、強制的に退出させられた。…凄くマズイ」
『おい、そっちはどうなってる?』
サイトからスタッグフォンを受け取る。
「惑星の本棚で、彼女と話してた。でも、メモリの力が強すぎて吹き飛ばされた…」
『……あぁ、だからか』
どこか納得したような声が聞こえる。
「? …そっちはどうなってるの?」
『あのサーリィって子が、呟いてたんだ。「お母さん、ごめんなさい。あの時、喧嘩なんかして…ごめんね」って』
「それって……」
『まだあの子も、母親も救える!』
「お母さん、私…私…」
「もういい。もういいのよ…ごめんなさい。こんな母親で、娘も守れない母親で、ごめんね…」
二人の目から大粒の雫が溢れ出す。
「っ、あ、あ…」
「サーリィ…?」
突然、サーリィが母親から離れる。
「お…母さん……に、逃げて…は、早く」
『殺ス…! モウ誰デモイイ! コロス!』
再び黒い煙とスパークが起こると、そこにいるのは殺意の衝動に駆られた獣であった。
動くことすらできない母親に向かって、その腕が振るい上げられる。
「やらせるかーーーーー!!!」
シンは全身を使ったタックルで、ドーパントを母親から遠ざける。
「あ、あれは…」
「あれは本当のサーリィじゃないです。復讐に飲まれた…鬼です」
シンが母親へと顔を向ける。
「必ず、貴女の子を…救います!」
ダブルドライバーを装着。
【JOKER】
メモリを起動。
「行くぜ、タバサ! 絶対に二人を救い出すぞ!」
【CYCLONE】
「分かってる。あの本のような悲しい結末には…絶対にさせない!」
「「変身!」」
メモリをインサートする。
【CYCLONE/JOKER】
二つの電子音と共に、Wへと変身。
「さぁ、やるか!」
襲ってくるリベンジドーパントを飛び越え、背後に回る。
「おらっ!」
リベンジドーパントが振り向いた瞬間、顎にパンチを浴びせる。
怯む姿を待たず、回し蹴りを頭に喰らわせる。
回転をしながら、瓦礫へとドーパントが吹き飛ばされる。
『コオオオオオオオオオオ!!!』
だが、諸ともせずにリベンジドーパントが雄叫びを上げて立ち上がる。
「お前はたくさんの人を泣かせた。メモリの所有者さえも…!」
【HEAT/JOKER】
ソウルサイドのメモリをチェンジして、ヒートジョーカーに変身。
『コオオオオオ!』
リベンジの腹部から先端が尖角な触手が現れる。
素早い速さで、Wの腹部へと向かう。
―ガッ!!―
『コオオオ…ッ!?』
勝利を確信したリベンジだったが、
「そんなお前を、俺たちは絶対に止める!」
『私たちが持つ……』
「『Wの力で!!』」
寸でのところで、Wの両手が捉えていた。
「残念だけど、現実はそううまくいかないわ」
「…な、なんだと?」
どういうことだと、ワルドはその言葉の意味を問う。
「貴方が発見したその事実。残念だけど、”もう前から知っているわ”」
「!?」
信じられないとでも言いたそうな顔。
その顔を見た後に、アイシャが話を続ける。
「昔、”私のお父様のお父様”もその事に熱心に研究していた頃があったの。でも、直ぐにこの研究
は終わったわ。貴方と同じ結末よ」
そのまま、ティーカップを手に持つ。
「それにね、あの状態のドーパントは、通常のドーパントよりも格下なのよ」
「ば、馬鹿な!? そんなはずが…!」
「リベンジは復讐を果たし、また復讐を果たす事で凶悪になるドーパントよ! それがあれだけの力しか
出せない。本来なら上級メイジ数十人以上いても勝てる力があるのよ!」
「……ッ」
フラフラと、ワルドが椅子に力無く座り込む。
「こんな、はずが……!」
苦虫を噛み潰した顔で、己の計画が破綻した事に怒りを募らせる。
アイシャは、そんな様子の夫を尻目に部屋を出て行く。
「でも、憎しみが人を強くするのは……あながち嘘では無いわよ」
そう言葉を残した。
「(憎しみ……仮面ライダー、お前は俺の道の障害に過ぎん! 俺はいつか果たす。あの時のようではなく、
力を手に入れたこの俺が!そのために、俺は力を、もっと力を!)」
「お返しだ。ハアアアア!!!」
Wの右手が、ヒートメモリの特性によって高熱を放つ。
当然、触手を掴まれているリベンジドーパントは、身悶えするほどの苦痛を味わう。
『コオオオオオオオオオオ!?』
【HEAT/METAL】
右手で触手を抑えながら、左手でボディサイドのメモリをチェンジ。
ヒートメタルになると、触手を再び両手で掴む。
そのまま、ハンマー投げの要領で回転を始める。
「ハアアアアッ!」
『コオオオオオ!?』
「うおおおおりゃああああ!!!」
回転が速くなり、絶妙な瞬間にリベンジを投げ飛ばす。
『コオオオッ! アイツ! アイツヲ!』
途端、リベンジの顔を隠していたバイザー部分、体に纏っていた拘束具が弾き飛ぶ。
バイザー部分に本来あるべき目は、塞がれている。
拘束具が無くなったことによって露になった体の部分は、生々しく鼓動を脈打っていた。
「第二ラウンドってところか」
『気をつけて…来る!』
『コオオオァァアアアア!!!』
リベンジは再びWに突進。
「グワッ!? さっきよりパワーが上がってる!」
『メタルのメモリでも防戦一方なんて……』
リベンジの攻撃を腕で数回捌くが、少しずつ押されていく。
「ハッ、ガアッ!?」
パンチによって、吹っ飛ばされる。
『アイツ、アイツダ』
リベンジがワグナスを標的に定める。
「く、来るな化け物! フレイム・スフィア!」
焔の球がリベンジに着弾すると、そこから包むかのように炎が燃え盛る。
クラスとしてはトライアングル並みの威力。
「やったか!?」
歓喜の声を上げながら叫ぶが、リベンジは虫に刺されたかとでも言いたげに、腕を横に振る。
たったそれだけで、包んでいた炎は消えた。
「なっ!? くっ、クソがああああああ!!!」
フレイムダーツを連射するが、気にも留めずに、リベンジは進む。
魔法の使い過ぎにより、ワグナスがその場に座り込む。
「ち、畜生!」
そのまま後ずさりするが、壁によってこれ以上は進めない。
『コオオオオオオ! 復讐!』
「う、うわああああああああああ!」
その腕が振り下ろされる前に、
【HEAT/JOKER】
「やらせるかーーー!!!」
W、ヒートジョーカーの右拳がリベンジを殴り飛ばす。
『これ以上、あのドーパントを野放しには出来ない』
「だったら、俺たちがやることは…」
ジョーカーメモリをマキシマムスロットへインサート。
そのまま、マキシマムスロットを叩く。
【JOKER―MAXIMUMDRIVE―】
「ハアアア、ハッ!」
一瞬の溜めの後に跳躍。
「『ジョーカーグレネイド』」
Wが真ん中から分断すると、そのまま空中からリベンジに突撃。
「オラッ!」
左、ボディサイドのジョーカーがその左拳を打ち込む。
『ハアアッ!』
そして右、ソウルサイドのヒートがその右拳を打ち込む。
左右からの二段攻撃によって、リベンジはスパークを起こす。
『コオオオオオオオオオオオオ!!!』
絶叫を上げながら、リベンジは無くなっていくかのように消えた。
「できたのか、メモリブレイクを…」
『心配ない…』
サーリィの体、左腕からメモリが排出される。
宙を舞い、そのままブレイクされる。
「……っ、やったなシン達!」
「す、少しだけヒヤッとしたわ」
「頑張ったわね。シャルロット」
「ああ、そうだな」
「は、はは、ざまあみろ。ざまあみろ!」
変身を解除すると、ワグナスが叫ぶ。
「消えて無くなっちまった。ざまあねえぜ!はあーはっはっは!」
叫びから高笑いを始める。
その姿に、シンは怒りが込み上げてくる。
「このやろう…」
歩み寄ろうとするが、
「歯を食いしばりなさい」
「はっ…?」
―バキィッ!―
「グハッ!?」
右ストレートが一発、ワグナスの頬に入った。
「一発。一発でいいわ。でもね、これをただの一発と思わないで頂戴」
殴った人物、サーリィの母親は続ける。
「これは、私とサーリィが受けた苦しみの分よ。覚えておきなさい」
「こ、この女…!」
殴ろうとする拳を、
「お前はそれを受けるぐらいのことをしてきたんだ」
シンがその根元を持って止める。
「は、放しやがれ!」
「それに、俺もお前にやらなきゃいけないことがあるんだよ」
そう言うと、右で拳を作る。
「さぁ、お前の罪を数えろ」
右拳は、ワグナスの真正面から顔に入る。
―バキッ!!!―
「ぱじゅっ!?」
そんな声を出しながら、数メートル飛んで地面に激突する。
白目をむきながら、意識を失う。
「今のは俺の拳じゃない。お前が切り捨てたコールルと…」
ワグナスから視線を外す。
「この親子の魂だ」
そう言い、帰ろうとする。
「ありがとうございます」
…前に、母親が例を言う。
「誰だか分からないけれど、本当にありがとうございます」
「例なら相棒に言ってください。貴女の娘を助けたのも、相棒です」
「娘は……帰ってきてくれるんですね?」
「えぇ、少し時間は掛かるかもしれませんが、目を覚ますはずです」
「よかった。よかった…」
母親が涙を流す。
悲しみや憎しみではなく、喜びの涙を。
「いいんですか、復讐は?」
「もう私の中で、復讐は終わらせました。もう大丈夫です」
「そうですか、よかった。貴方が復讐に身が染まらなくて」
そう言い、今度こそ扉を開けてその場を後にした。
日記
―サーリィはあの後順調に回復しているらしい。
あの母親もまたあの生活が出来ると喜んでいる。
ワグナスはあの後密かに暮らしているらしい。
不良もやめて真面目に生活するようだ。
不良グループの奴らも手伝うとか聞いた。
これを機に働き口も探せればいいんだが。
そして、この事件は終わったが、まだ気に残すことがある。
あの怪人、奴はきっとシャルを狙いに来るだろう。
何故かは分からないが、嫌な予感がする。
アイツを護るためにも、俺はまだ強くならなきゃいけない。―
「っでだ、何やってんだイルククゥ?」
「きゅい、お腹減ったのね! 何か食べさせてほしいのね!」
「今何にも持ってないから、もう少しで昼時だから少し…」
「待てないのね! 仕方ないからシンを食べるのね!」
「ちょ、ちょっと待て! 何でそんな結論に!?」
「シン…その人は誰?」
現在、混沌(カオス)となっている模様。
イルククゥは空腹なため、頭が回らずにシンを食べるという結論に。
シャルロットはシルフィード(イルククゥ)が人に変身できるという事実を知らないため、
いきなり入り込んで来た女性をシンに聞く。若干怖いオーラを出しながら。
シンは二人の要求やら質問やらに苦戦中。
「やめろイルククゥ! 本気で俺を食べようとするな! シャルロット! その杖をしまってくれ!」
「「無理(なのね)」」
「うわああああああ!!!」
そのままダッシュで逃げるシン。
そんな馬鹿騒ぎの大声が、学園の窓から響いていった。
その後、シャルロットには何とか説明し、イルククゥにはちゃんとご飯を用意した。
最終更新:2011年01月25日 16:38