1
「ガンダムが一杯だな。流石ガンダム、使いやすい。……っく! 許してくれ、00! 俺はこのガンダムに浮気している!」
「落ち着け刹那。確かに今ゴッドガンダム使ってるけど、そもそも百時間ぐらい00一本で進んでたんだ。別にいいだろ?」
「違う! それは違うんだ、シン。俺は、初代ガンダムの使用ミッションで、νを使いやすいと思ってしまった。あの時既に浮気が始まっていたのかもしれない。百時間00を使ったのは……俺への戒めだ」
「初代? ν? ……あぁ、アムロさんの事か。確かにパイロット低レベルでもνはC4あったら闘えるしな」
此処はとある幻想の地。人里からも、妖怪の住家からも若干離れた一軒家。そこでシンと刹那はガンダム無双3を遊んでいた。男二人の他は、全て女性。男女比率の偏った空間。
「あら? でもこれって色んな人形を動かして楽しむ遊戯でしょ? 色んな物を使えば良いじゃな――「違う!」キャッ!」
突然の刹那の叫びに、女性の内の一人、アリスは驚く。
「あぁ、きっとほら、刹那は専用機だからさ。色々あったようだし、思い入れが深いんだよ」
とフォローを入れるシン。
「それにこの手のゲームは好きな機体をスタイリッシュに動かすって楽しみもありますから! まぁ無双シリーズって入口を広げてありますから、そこまで深くはやり込まないですけど。簡単ですしね」
「早苗ってゲーマーだったの……」
そして熱弁を奮う緑の巫女さんと、そんな早苗に呆れる赤白の巫女。
「刹那みたいに一つに集中するのは珍しいよなぁ。色んな機体あるから、一通り使いたくなるんだよな、俺は。UCとか凄く使いやすいなぁ」
現在テレビ(アナログ)の画面では白基調で一本角の生えたMSと、三体に分身した格闘ガンダムが騎士鎧のガンダムと戦っている。
「……シンは、自分の人形に思い入れは無いのかしら?」
熱中する少年にアリスは声を掛けた。
言葉通り、シンはディスティニーを殆ど使っていない。アリスにはよく分かっていないが、実際ライセンスを獲得してからは、一度も。
「シン……」
アリスの問いに答えないシンを見て、霊夢は胸が痛む。
霊夢はシンの過去を知っている。その、結末も。
だからこそ、シンは心の底で自分と元の世界との繋がりを嫌っているのでは無いかと、そう思えるのだ。
少年の無惨な結末。それを知っている以上、霊夢は何も言えない。アリスも気まずい顔をしている。きっと彼女も知っているのだ。
「ん~、ディスティニーって悪くないんだけど、SPが使いにくいんだよなぁ。普通過ぎるっていうか……、後性能知ってるしなぁ」
「「え?」」
シンは呑気に答える。
「あぁ、確かにそうかも知れませんね」
「使いやすいからこそ、後回しになるな。尖った性能は使っていて楽しい。サザビーもまたガンダムだったと言える。クシャトリアも良いガンダムだった」
早苗と刹那が続く。画面内ではゴッドスラッシュタイフーンがナイトガンダムを爆殺している
「あっ! 今回は負けかぁ。……次は何使う? 早苗するか? あ、それとも霊夢やアリスもするか?」
「ゴッドスラッシュタイフーンもガンダムだったな。早苗、良いぞ」
霊夢、アリスを無視してゲームは続く。
二人は流れが分からない。
「ん? あぁ、こんな時間か。刹那、早苗、俺はおいとまするぞ。二人はどうする?」
「私はこのリボーンズガンダムの4設計図を手に入れる系の仕事があります!」「待て早苗!それだけはガンダムとして認めん!」
「幻想郷では常識に縛られちゃいけ無いんですよ! 刹那さん!」
「ガンダーーーーーーーーーーーーム!!」
「ありゃ、じゃあ俺帰るけど、二人も守矢の神様に心配かけるなよ。……お前ら二人はどうする?」
「え? あぁ、えぇと、帰るわ」「えっと、じゃあ私も」
シンと連れ立ってそれぞれの住家に帰る霊夢とアリス。
二人は先程胸の内に沸き上がった疑問、聞きたくなった。
「シン。貴方、戻りたいとは思わない?」
霊夢が口を開く。アリスは聞き役に徹するつもりだ。
「ん? 薮から棒だな」
「気になったのよ」
霊夢が初めてシンと出会った時、その状態は最悪だった。身体的に傷付いていたのもあるが、それ以上に心が砕けていた。世界に対する呪いしか放てなくなってる程、少年はおかしくなっていた。
よくぞ此処まで戻ったモノだ。幻想郷と言う彼が元いた世界よりも遥かに穏やかで破天荒な土地柄が、良かったのかもしれない。
だが出会ったばかりの頃の呪いを聞いていると、それは表面的なもので、体が直れば元の世界への復讐という、暴走を起こすのではないか。
馬鹿げてはいるが、当時は本気でそう思ってしまうほど、シンは疲れ果てていた。
そんな心配する霊夢やアリスに、シンは笑顔を返した。
柔らかい、優しい笑顔を返した。
「どうだろうな……、未練が無いっていえば、きっと嘘だけど。それ以上に、居心地が良いんだろうな、此処。……自分が思ってる以上に、きっと俺は残酷なんだな。薄情なんだよ」
シンの横顔に影が指す。
そんなシンに対して、アリスが口を挟んだ。
「そんな事は無いわ! あっ、え、その、シンは十分過ぎるほど優しいわよ……」
ほぼ勢い任せに言ったのだろう。語尾まで言い切ることなく、顔を赤く染める。
きっとアリスにはアリスで、シンに引かれる事件があったのだと、霊夢は予想付けた。
なぜなら霊夢もまた、そうである以上。
「あんがと、二人とも。…………今日は何か食べに行かないか? 俺が奢るよ」
「……ふふっ、良いわね」「こう見えても意外と食べるわよ?」
「げぇ、流石に破産は勘弁してくれよ!」
三人の影が伸びる。仲良く寄り添い、少年を包み込むように、
幻想郷は、今日も平和。
「ちょっとぉ!早苗ぇ、もう八時だよ?ご飯はぁ?」
所変わって先程の一軒家。幼女姿の神様は、画面に熱中する二人に文句を言う。
「待ってください!刹那さんと一勝負しています!このリボンズさん、言う事が一々ウットウシイデス!」
「そいつはそういう奴だ。ガンダムではない」
「もう、二人ともぉ!神奈子、何か言ってやりな!」
諏訪子は手助けを求める。しかし……
「うはっ、もしかしてトランザムれば早苗すっぽんぽんじゃね?ひゃっほう!」
この様である。
「ご飯食べた~~~~~い!!助けて~~~~!」
諏訪子の声が、虚しく夜に響いた
2
一本の田舎道。少年の住む世界では見る事の叶わない、のどかな光景。
幻想卿。
そこが今現在シン・アスカの住む世界であった。
何故此処に居るのか? CEに帰れるのか?
当初はそればかり頭にあって、色々と馬鹿をやった。半壊のデスティニーで暴れた事など、思い返せば顔から火が出るほど恥ずかしい。幸いな事に、住民の気質か、大事にならなかった所為か、今シンは幻想卿という世界に十分に馴染めている。
確かに生身の人間をMSでどうにかしようとは思っていなかったが、それでもモノがMSだけに、万が一という事もある。軍人の取る行為としてはあまりにもおかしかったと、今は分析できる。
そのように考えるとあの時自分を止めた、そしてその後受け入れてくれた皆には感謝の念が尽きない。
人に受け入れてもらえる。それがどれ程幸福なのか、シンは身をもって理解する事が出来たのだ。
「世は事も無し。そいつが一番だな」
ついつい口からついて出た、シンの偽らざる本音。
「あら?騒ぎが起こると色々と動き回る男の言葉とは思えないわね」
そんな物思いにふけるシンに声をかける人物。振り向かなくてもシンには分かる。
「そう言うなよ、アリス。なんかさ、せめて役に立ちたいんだ」
シンの後ろからゆらりと近付く金髪の魔法使い。シンには違いが分からなかったが、レトロな見た目の魔法使いという名の泥棒とは違うい、れっきとした種族だとか。
兎も角、今ではシンの馴染みの一人である。
「あら?歓心じゃない。でも無茶はダメよ、貴方は巫女や魔理沙と違って弾幕も作れない本当に一般人なんだから。……全く貴方といい、守矢に居るあのがんだむ馬鹿といい、外の人間はおかしいわね」
「分かってるさ。異変をややこしくするような真似だけはしないよ。でもまぁ手伝いぐらいならって気分になるんだよ」
アリスが心配していてくれる事は、今のシンならばよく理解できる。昔の自分ならば間違いなく反発していた言葉だ。
本当に自分は変わった。
刺々しい言い方しか出来ず、人の言葉の後ろにある本心になど構う余裕すらなかった。あの時はただただふがいなかった凸でも、今ならば酒ぐらい一緒に飲めそうな気になる。……いや、それは辞めておこう。
しかし一つ分かる事は、自分もアイツも周りを見る余裕が無かったのだ。今でも凸達が正しいとは、今だからこそ絶対の正しさではないとはっきり言えるが、かといって全部否定しようとも思わなくなった。何故ならば向こうも周りを省みれないほど必死だったのだから。
この幻想卿は全てを受け入れる。
その考えはシンの心を軽くした。受け入れる事、そこが自らを受け入れてもらえる下地になるのだ。あの時は、自分達も凸達もどちらもそれが分かっていなかったのだ。
「ハハッ」
シンは笑った。コッチに来てからというもの、心の底から笑えている。やはり余裕があると言う事なのだ。嘘ではなく、本当に今ならば凸の話も聞いてやれる気がする。
「あら、何を笑っているのかしら?……この後どうするの、シン。私は里に行くつもりだけれども……、貴方は?」
アリスが尋ねて来るのだが、少しだけ頬が赤い。一体どうしたというのか?
「どうした?もしかして風邪か?無茶すんなよ。体調悪いなら看病ぐらいするさ」
シンは深い考えはなくおでこをアリスのおでことくっつける。どうやら熱は無いらしいが……
「ひゃああぁぁ!?ああああアン、アン、貴方!なななななな何をしてるっ!」
さらに顔を燃え上がらせるアリス。もしかすると魔法使いという種族独特の病気でもあるのか?だとするならばシンには何も出来ない。
しかしシン自身には出来なくても、解決出来そうな人脈を持ちそうな人物ならば一人、思い当たりがある。幻想卿を守る、素敵な巫女さん。
「こりゃまずいな……。霊夢に頼めば何とか出来るか」
シンなりに現状を確認し、その問題解決のために、博霊の巫女の名を口にする。あくまでも善意で。アリスが何故顔を赤くしたのか、根本的に勘違いしたまま。
「……何ですって?」
途端アリスの周りの空気が一気に下がる。
「あれ?」
シンは直感でまずい事に気付いた。これはラキスケをした時に通ずるものがある。アリスの目の前でけーねにセクハラを(心ならずも←此処重要)してしまった時と同じ、つまり殺気だ。
「お、おい、アリス……さん。何故、そんなに怒ってらして……?」
シンは恐る恐る声をかけた。結果は勿論――
「そんなに腋チラが良いのかぁぁぁぁぁああぁぁ!!!!」
「ちょっ!ゴリアテ人形勘弁!!ギャアアアアァァァァァァァァァアアァァァ!!」
あはれシンは一筋の流星となるのであつた
「ん?ラブコメの匂いがしたわ。それも私にとって面白くないタイプのラブコメ。もっと具体的に言うとシンが女とフラグを強固にしたわ。」
「具体的、過ぎない?」
所変わって参拝客の少ない神社、縁側で茶を飲む赤白と黒白の二人。
「しっかしあの霊夢がねぇ、そんなにシンが気に入ったか?いや、私も面白い男だとは思うけどねぇ」
「ええ、好きよ」
少しからかいがちに聞いた魔理沙の言葉に、霊夢は迷う事なくストレートに答えた。その目の真っ直ぐさは、聞いた魔理沙の方が間違っている気にすらなる。「お、おう。……何か私が馬鹿みたいだ。からかえなかった。でも待てよ?巫女の立場があるなら軽々しくは……」
魔理沙は柄にもなく結界の事を心配してみる。
「あら、巫女が誰かを好きになっちゃいけない理由がある?生きているなら当然の感情でしょ?恋の魔法使いの言う事じゃ無いわ」
飄々としたモノである。
だがそれを見ると魔理沙も納得する。きっとそれだけ恋い焦がれる何かが、シンとの間にあるのだ。一切喋ろうとしないが、それだけ大事な思い出なのだろう。
いつか聞き出してみたい。そんな欲求に駆られる。しかしそれは今ではない。あの赤目の少年が居るときが良い。この恋をしている自分を誇っているような風格さえある巫女さんを真っ赤にさせてみたいのだ。
それと同時にもう一人の人形使いで今まで無愛想だった、今現在里では角が取れて子供に人気のある友人の顔も思い浮かべる。
「こりゃ結構な強敵同士だな、アリス。クックック」
「どうしたのよ、魔理沙。急に笑って」
「いやいや、異変と同じぐらい面白い事になりそうだと思ってさ。私は見学と洒落込むぜ。シンの友人役としてな」
「流石に分からない事言ってるわね。はぁ、お茶が美味しい」
「さぁっ!一段落したんで私に茶菓子もくれ。つぶあんでもこしあんでも、大福なら食べてやるぜ」
「アンタいつの間にか人ん家の茶菓子チェックしてんのよ!」
幻想卿は今日も平和。
「ね、ねぇ、早苗。最近居間がやたらと外風の機材に塗れていない?具体的に言うとゲーム機が……」
蛙座りの神様がデジタルハイビジョン薄型テレビに写る、配管工が乗るカートゲームに熱中している、緑の巫女に疑問をぶつけた。 隣に居るゴリラをガンダムと叫ぶ異界からのおバカは無視だ。
「ハイ、諏訪子様。幻想卿は常識では縛れないんです!」
「いや!自信満々だけど、その言葉言ってりゃ何やっても許される訳じゃ無いからね!?免罪符じゃ無いから!そこのお前もクッパやドンキーはガンダムじゃねぇって何度言ったら分かんだ、この馬鹿!」
「神奈子様にお願いしたら買ってくれました。これも信仰に繋がります」
「繋がんない!繋がんないよぅ、早苗ぇ!!……もう!神奈子は何やってんのさ!」
ちらりとオンバシラの立派な神様に目を向けると……
「ほらほら、諏訪子!この角度の早苗何か、可愛いと思わないかい!?やっぱり早苗は可愛いねぇ」
撮影会という言葉に見事に買収されていた。
「どうにかしてぇぇ!だれかー!!」
「心配するな、諏訪子。お前も早苗も立派なガンダムだ。神奈子は…………ジオングかもしれない」
「お前は黙れ!この馬鹿ガンダム!もぅ嫌~~~~~~~~!!」
やっぱり幻想卿は平和。
最終更新:2011年02月15日 15:58