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平和の人氏の東方小ネタ2

 あの少年と出会ったのは随分と前だった?
 それともつい最近だった?
 自身もあまり覚えていない。
 でも、出会っているのは確か。少年と出会った日も、確か。
 あの少年、シン・アスカと出会った日は、あまりにも鮮烈だったから。


空が吠えている。
『ウワァァアアアァァァァアアアッァァアァッッッ!!』
 機械的に創られた人の声が、幻想の里に響く。全ての人間が、見えもしない言葉の主を捜している。
 目に見えるような範囲にいれば、その人間、いや、妖怪も問わず炭と化す。
 それ程の大事が、穏やかな世界を浸蝕していた。
「うん、一応確認する限り人里の被害はないよ。慧音も大丈夫ってさ」
 銀髪の少女が、緑髪の巫女に語りかける。
「すいません妹紅さん。上白沢先生にも本当に……」
「気にする事はないさ。私も妹紅も里の人間には世話になっているしな。…………それにしても、“外”の世界の技術がこれ程凄いとは思わなかったよ。これでは人も妖怪も関係ないな」
 慧音は不安そうな子供の頭を撫でた。
 遠くに響く音。慧音には理解できないが、ビームと言うらしい。
「私が此処に来てから、信じられない進歩。進化という言葉に疑問を持つような過剰火力だよ」
 妹紅は睨みつけるように、煌めく夜空を見上げた。
 轟音がもう一つ。
 大地を揺るがす。
「……刹那さん、大丈夫ですよね?」
 早苗は、おかしな外来人の名を呟いた。


「くっ! 強い!!」
 刹那はエクシアのコクピットで吐き捨てた。
 目の前にいる目標に届いていない。何れ突き放される予想が、刹那を焦らせる。
 ピエロのような顔模様の、光の翼を生やす、CBとは明らかに異なるガンダム。
 誰が乗っているのか定かではない。回線を開いても話しが通じない。錯乱しているのかとも思ったが、どうも受ける印象が違う。
 何よりその戦い方は、恐慌状態の人間の為せる業ではない。腕を考えるならば、あのフラッグの男か、アリーレベルのパイロットだ。いくら直してもらったとはいえ、GNドライブの完璧ではないエクシアでは相手が悪い。
「くっ! アンタはどうしてこんな事をする!? アンタの神は、何を求める!!」
 聞こえないと分かっているが、そう吐き捨てざるを得なかった。

「コレは……!」
 紫は焦っていた。
 異変とは比べものにならない異常が来ると予感した時、彼女は打てる手を全て打った。いつものように巫女に解決を任せていては、取り返しのつかなくなると確信があったからだ。
 だからこそ外から流れ着いたロボットを修理した。頭を下げてでも蓬莱人や神、妖怪、吸血鬼問わず協力を取り付けた。つまり、幻想郷の全てを以ってしてもという体制である。
 しかし足りない。
 実際やって来た災厄は、そんな物では足りない。
 幻想郷の中では神足り得ても、外で風化していった存在達では、“外の力”に対抗出来ないのだ。
 実際自身も幻想郷の中では万能に近い力も、外では自ら引き込めるのは精々人ぐらい、それも理から外れようとしている人生を捨てた者か、悪人ぐらい。外で力を振るっても、対したことが出来ないのだ。
 幻想郷に来れば、此処のルールに縛られる。
 本来ならばそう在るべきで、だからこそこの陣容で何とかなると思っていた。
 しかし結果は?
 何故か適用されないルール。結果として使える戦力は同じく外の力のみとなった。
 紫達妖怪では、生き延びることは出来ても、有効打が無い。止めるにせよ殺すにせよ、幻想郷の者では通用しないのだ。
「ふがいないわ……」
 紫はかつて無いほどに焦っていた。

「どうなってんのよ。コレ……」
 霊夢は己の前に広がる、荒々しい暴力の応酬に、身動きしなかった。
 空を掛ける青の人形。鉄の塊。
 霊夢の全く知らない世界の交錯。弾幕とは異なる光の交わり。
 生命を掛けたやり取りは、霊夢にとっても未知の体験であった。
 もはや人がどうにか出来る問題ではない。逃げ出したい気持ちが無いとも言えない。
 だが、霊夢の足は動かなかった。
 巫女としての責任感から? それとも敗北を認めたくないから? 自分にもまだ出来ることが有る?
 おそらくそのどれもが違う。
「……何よ、アイツ」
 光の羽を生やす、道化師の人形は、泣いている。子供のように泣いている。
 あれは何故? 何故泣いているの?
 迷い子のように、泣き声を上げている。
 胸が痛む。
 子供のように泣き叫ぶあの道化師から、霊夢は目を離す事が出来なかった。



「………………ンッハァ! ……? 夢かしら」
 いつもの境内が目の前に広がっている。
 それにしても何と昔の夢を見ていたんだろうか?
「……昔? そんな昔だったかしら……?」
 この辺が随分と曖昧になっている。紫にいじくられでもしたか?
「あら? 失礼しちゃうわ、霊夢ったら。折角サービスであの子の夢、見せて上げてるのに」
「ひゃぁああ!?」
 霊夢は座ったまま三十センチほど跳んだ。空は飛べるが、このような跳び方はのーせんきゅーだ。
「うふふ、可愛らしい夢でも見ていたのかしら?」
「………………」
 こいつの所為か。懐かしいことは懐かしいが、シンにとってはいい思い出とは言えないだろう。それに自分と二人きりな訳でもなく。見せるならばもっと良い場面を欲しいものである。
だが――
「ん、特別な夢かも。私が、アイツと出会った夢だし」
 霊夢は空を仰ぎ見る。雲一つ無い。もう赤い涙をこぼすような空にはならない、幻想郷の空を。
「さて、と。シンが来る前に何か創っておきますかね」
 伸びを一つ、背骨が鳴る。随分寝ていたようだ。
 食事を創って待つなど、自分も案外小娘のようだ。なんだか楽しくなって来る。こんな自分も良いかもしれない。
「今日も変わりが無くて、いい天気ねぇ」
 巫女の言葉が心からこぼれた。

幻想郷は今日も平和。


「あ、因みに私が覗いた結果、シンはアリスと仲良くティータイムね。アリス宅で二人きりよ? さよなら~」
「……シンには食事より関節技の方がいいかしら?」
 こんなんでも、平和。



「諏訪子様? どうされたので?」
「諏訪子、コレはガンダムじゃない」
「いやぁ、体操服姿の早苗も可愛いなぁ~」
 幼女神は現在居間で取り囲まれていた。若干一名おかしいが。
「ち、違うんだよ。別にゲームしすぎだから制裁とか、そんな風には思ってなくて……」
 結論を言えば、諏訪子は早苗達が興じていたゲームデータを壊した。自身では今ひとつ使い方が分からないので、わざわざシンを呼び寄せてだ。
 諏訪子はシンならば頼めば口を割らない男なので、今回の相方、という名のもし早苗達に追求された時の人身御供にピッタリだと思っていた。
 本来ならばシンがやってしまったということにして、言い逃れるつもりだった。
 だが勿論あっさりばれる。そもそも機械得意なシンがそんなヘマするはずが無い、わざとだという考えで、わざとならば→何故? →頼まれた→誰に? →早苗達がゲームしていることに文句言う人、則ち諏訪子。という華麗な推理で看破された。
 本来ゲームしすぎの一言は間違ってはいないが、早苗とガンダム馬鹿の妙な迫力に気圧され口が上手く回らない。
「あーうー……」
 言い訳、言い訳を……
 焦りすぎた諏訪子が咄嗟にだした答えは。
「わっ、私も遊んで見ようかなぁ、何て思って、それでついうっかりと……あーうー」
 まずいか? いくら何でも丸分かりだ。諏訪子はしくじったと思っていたのだが……
「なぁんだ、そうだったのですね!? それならば諏訪子様でも楽しめる、オススメが有りますよ!」
「今度からは諏訪子も混ざれるな。実にガンダムだ」 二人は結構機嫌が治った。何とか乗り切ったと思った諏訪子だが、この後ぶっ通しで五十時間近くゲームをやらされる羽目になる事を、彼女は知らない。

「いい加減、誰か助けてぇ~~~~~!」
「ほら諏訪子、この早苗の笑顔。コレ手に入れるためには日本一つでも足りないぐらいの価値が有るねぇ」「うわぁーん! みさえは黙ってろぉ!!」

 幻想郷はやはり平和

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最終更新:2011年02月25日 23:38
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