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そろそろ多重クロス-02

1

瓦礫の山に覆われ地、決して光を拒む闇に覆われた空。
それがアーククレイドルの中に広がる世界。
この終末を感じさせる場所に対峙する者達がいた。
遊星達チーム5D'sと、巨大なマシーンに乗る、全ての黒幕であるZ-ONE。

その両者の間に割ってはいる声と人影。

「待て、不動遊星…」
「アポリア! それにシン!」

声の主、それは機動要塞フォルテシモでの決闘で機能を停止したと思われていたアポリアだった。
そして全身に傷を負った彼の両手の中には、同じく傷つき、意識を失ったシンの姿があった。
シンを守るように抱くアポリア。
傷つきながらも一歩一歩に力強さを感じさせる歩みでジャック達の元へと向かい、腕の中で眠るシンをジャックとクロウへと託す。
龍可と龍亜、アキとシェリーはシンの傍らへと駆け寄り声をかけるがシンは気を失ったまま。

「命に別状は無い…シンを頼む」

そう告げると、今度はゾーンの方へと歩みを進み始める。
ゾーンと対峙するために。
荒廃した未来を共に生き抜いた自分だからこそが出来る、友としての使命を果たす為に。

「ゾーン。私が何故あれほどの絶望を味わいながらも行き続けていたのか…それは私の中には希望を求める心があった、希望を信じる心があったからだ」

アポリアが語る、そして振り返る自らの過去。
度重なる絶望を前にしても、アポリアはそれを希望の力を持って乗り越えようとした。
彼が抵抗という名の戦いに身を投じたのも、荒廃した世界をたった一人で旅し続けた事も、それは希望を欲する心が彼にそうさせたのだ。
もしも本当に、彼の心に絶望しか残っていなかったのなら、彼は死を選択していたはずだ。
だがそうはしなかった。
死を拒み、一人で生きる続けると言う最も困難な道を、彼は敢えて選んだ。
希望があると信じていたからこそ彼は歩き続けた。
希望をこの手に掴めると信じていたからこそ彼は歩き続けた。

「私は彼らとのデュエルを通じて…私の中に希望が残っていると信じ続けてくれたシンの想いを通じて…私はそれに気付いたのだ。思い出したのだ。
 だからゾーン! 君にも思い出して欲しい! 君が遊星やシンに抱いていた希望を!」

アポリアの叫びに、だがゾーン答えることはしない。
その仮面の下にある表情を窺い知る事は出来ない。
だが自分の声は、思いは届いていると感じたアポリアは、言葉を止める事は無い。



「君は“サーキット“を完成させるために、私をネオ童実野シティ送り込み、サーキットを完全なものとする為にアンチノミーを、そしてシンを送り込んだ。
 だが何故アンチノミーの記憶を消した! 何故シンを私達と共に行動させなかった! それは計画の妨げにしかなら無い事だ!」

彼らは計画の遂行ために手段を選ぶ事はしなかった。
だと言うのにZ-ONEは自らイレギュラー要素を作り出した。
アンチノミー・・・ブルーノの導きにより遊星はクリア・マインドの境地へと至り、そしてアクセル・シンクロを取得した。
三皇帝と離れて行動する事となったシンは、三皇帝の行き過ぎた・・・非道とも言うべき行い苦悩しに、結果的には妨害となる行為を選んでしまった。

「彼らはアーククレイドを止めようとする程までの進化を果たした! その進化こそが君の望んでいた事じゃなかったのか!?
 5D'sなら人類の未来を変えるほどの進化を成し遂げるかもしれない。
 そう思ったからこそ君は切欠となるようアンチノミーを。シンを可能性の一つとするために遊星達の元へと送った! 人類に僅かに残った最後の希望の花を咲かせるために!」

それがアポリアがたどり着いた結論。
でなければZ-ONEの行動に説明が付かない。
Z-ONEの沈黙が、アポリアに自分の考えが間違ってはいないと言う確信を持たせた。

「ならば何故、その進化を成し遂げ、未来を託すに足る存在になった彼らを抹殺しようとする、Z-ONE! 
 私は君が抱いていたはずの希望を私は思い出して欲しい! Z-ONE…ぐぅっ!」

アポリアの傷ついた体のいたるところがショートしはじめる。
命を、そして魂の輝きをかき消そうと刻一刻と、死が彼の体を蝕んでいく。

「勝負だ…Z-ONE」

デュエルディスクを展開し、Z-ONEへ宣戦するアポリア。
これまでの今までの絶望を背負ったデュエルではない、希望を守るためのデュエルだ。
自らの背後にある希望を守るための。

「…私は君達の中に希望を見た。そして私は分かったのだ。
 君の成長とチーム5D'sの中に生まれた絆、そしてシンの勇気こそが私の求めていた希望であると…その希望がある限り、私は戦える!」

遊星達へと振り返り、そう語ったアポリアの表情からはどこか穏やかな物だった。
それは絶望と言う仮面に隠されていた、彼の本当の姿だった。

二人の、未来を賭した決闘が始まろうとしていた。


次回予告

  (V (V)
 彡[ ・Y・]ミ  <シン?! どうしてお前が!!


   ○    <遊星! お前が正しいって言うのなら俺に勝ってみせろっ!
   /|>ミ//
   広//
  ○―=○

<次回、「シン・アスカ死す!」 ライディング・デュエル、スタンバイ!

                \カットビングダゼオレー!/

2

雲ひとつ無い、光差す陽の下。
遠くから聞こえるのは雑踏と、目の前に広がるのは華やかな街並み、そして様々な表情を浮かべた人々。
それらが見渡せる青々と茂った並木に囲まれた道を一人の男が歩いていた。

彼の名はシン・アスカ。

この世界に現れた時、まだ幼さの残る少年であった彼も、今では凛々しいという言葉が似合う青年へと成長していた。
そして今の彼は、未来へと進み行くこの世界を見届ける旅人であった。

「久しぶりだな、この場所も」

歩みを止めたシンの口からこぼれた感嘆の言葉。

眼前に広がるのは彼が旅路の始まりの地とし、そして旅の終着の地と決めていた場所・・・ネオ童実野シティ。
旅立ってから流れた幾年月の中で、当然ながら彼の記憶の中にある旅立つ以前の光景とは随分と変わっている。
だがここに生きる人達の笑顔は変わってはいないと思った。

いつの間にか目を瞑り、様々な思い出を呼び起こしていた。
自分が旅の途中訪れた幾多の地の事。
そこでは様々な出会いがあった。
そこで多くの騒動に巻き込まれ、そして再開を約束して多くの別れがあった。
だがどんな場所であっても、ここと同じ様に笑顔があった。

旅の記憶を思い起こしていく内、自分がこのネオ童実野シティで生きた日々が思い出される。


“彼ら”と共に目的を果たす為に、この世界へと送り込まれ、戦い、その果てに自分達は負けた事。
結局、“彼ら”の目的を果たす手助けする事が出来なかった。
代わりに、一つの希望を託された。

『どうかこれから創られる未来を見届けてください』

その言葉を胸に、この世界に果たして希望が生まれてきたのかを確かめるためにシンは旅し続けた。
そして今日、これまでの旅の中で確かめてきた事の全てを伝えるためにこの地に戻ってきた。


そうだったと、立ち止まってないで早く伝えよう。
そう思って目蓋を開いた矢先。

「うわ?!」
「んなっ?」

小さな悲鳴と小さな衝撃がシンの体を揺さぶる。
何事かと悲鳴の方に視線を向けると、一人の少年が道路に尻餅をついていた。

「大丈夫か?」
「いったぁ…」

先程の衝撃と悲鳴、そして少年の状況から察するにどうやら自分とぶつかってしまった様だった。
少年の手を取り助け起こし、助け起こした少年に怪我をした様子が無い事に安堵する。
服が少し汚れていたが、それも手で払い落とせば消えてしまう程度の物だった。

「怪我してないか?」
「はい…ちょっとおしりが痛いぐらいです」
「わるいな、こんな所に突っ立ってて…」
「いえ、ぶつかったのはこちらですから」

外見の割に物腰がやわらかい少年は、腰まで届く長く赤い髪を腰のあたりで一まとめにして青いブレザーを纏っていた。
彼の姿にシンは見覚えがあった。
もし記憶に間違いなければ、それは。

「君は…まさか」
「えっ?」
「いや…あぁ、アカデミアか」
「はい。いま帰りなんです。それでその…」
「ぶつかったって訳か…気をつけて帰れよ、未来の決闘者」
「はい!」

少年は元気良く、文字通り輝くような笑顔で答えた。
それに釣られるように、シンも頬が緩んでいくのを感じる。

「おーい!」

後方から声が聞こえる。
少年と共に振り返ると、少女がこちらへと走ってくるのが見えた。
色は違うが、少年の制服と似通ったデザインのブレザーを纏っている黒髪の少女だ。
彼女もまたアカデミアの生徒で、年齢的に少年の学友なのだろう。

「もう、あまり先にいかないでよ」
「ごめんごめん」

自分よりも元気な少女に気圧される少年。
二人のやり取りから、とても信頼しあっているのが見て取れた。

「――はもうちょっと人に配慮してもしなきゃいけないと思うの」

少女が呼んだのは名前は赤い髪の少年の名前。
それを聞いてシンの内心で驚嘆し、どこかで納得した。

「やっぱり…か」
「ん? ねぇ――、この人は?」
「うん、さっきちょっとぶつかっちゃって」
「はぁ…だから、周りに気をつけなさいってば」
「ごめん…」
「おいおい、そこら辺にしてあげな」

助け舟を出す様に会話へと割り込む。
それに胸をなでおろして安堵する少年と、不満気味ながらも従う少女の対比が面白いと感じた。

「すみません。お騒がせしちゃって」
「いいんだ…明るいのはいい事だから。俺はそろそろ行くよ。二人とも気をつけてな」
「はい、それじゃ失礼します」
「じゃあね、おじさんも気をつけてね」
「…おい、俺はおっさんじゃないぞ!」

少女は少年の手を引いて、いたずらめいた笑顔で走り出す。
じゃあねと、一度振り返って笑顔と共に手を振って元気よく走っていく。
シンはその後ろ姿を、小さく手を振りながら優しい目で見送った。


ネオドミノシティから少し離れた場所に小さな草原。
この世界の未来を賭して共に戦った四人の墓標、その前で膝を付くシンの姿がそこにあった。
墓標の下には誰も眠っていない。
これは彼らがいた世界から失われてしまった景色を、この墓標を通じて彼らにも見えるようにと願いから建てた物だ。
今、シンはこれまでの旅の全てを報告していた。

「…これが俺が見てきた世界です」

全てを語り終え、そっと目蓋を閉じる。
浮かび上がって来るのは先程の少年達の姿。
去り行く二人の後ろ姿から“彼ら”が望んだ希望を感じる取る事が出来た。
彼らが次の時代を、この未来の続きを創り続けていくのだという思いと共に。


「…これからは、あなた達が創る未来を見届けていきます」

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最終更新:2011年06月07日 11:08
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