1
幻想卿のとある人里離れた森の奥。
そこには赤い瞳が特徴的な青年が、ひとり静かに暮らしていた。
「こんにちわー。おじゃましまーす」
ある日、いつも通り畑の世話をしていた青年の家に、一人の少女が訪れた。少女の名は古明地こいし。他
者の心を読む妖怪にして地霊殿の主、古明地さとりの妹である。
少女――こいしもまた、本来は心を読む妖怪であるのだが、彼女は心を読む為の第三の眼を閉じてしまっ
たために心を読むことはできない。その代わりに無意識を操る程度の能力を手に入れるに至ったのだが、
それは青年は知らないことだろう。
こいしは勝手知ったるなんとやらか、慣れたように青年の家へと入り込んだ。そんなこいしに向かい、青年
の飼っている白い犬が吠えるが、こいしは意に介さず屋内へ進んでいった。
そんな飼い犬の鳴き声をきっかけに、青年が空を見上げてみれば、陽はすでに真上を過ぎて傾きかけてい
た。時間にして三時くらいといったところだろうか。
「……一息入れるか」
そう呟き、青年は少女に続いて自身の家へと戻るのだった。
「えーと、お茶請けはっと……」
二つの湯呑みをお盆に乗せて、なにか無いかと棚を漁る。
そんな青年の背後へ、こいしは朗らかな声を飛ばす。
「私は大福餅がいいな!」
「そういえば一昨日買ったのがあったっけ……全部出しちゃうか」
「やった!」
そうして縁側に腰掛け、二人は並んでお茶を啜る。
「美味しくない……」
舌を出して苦い顔をするこいしに、続いて青年も渋い顔をする。
「これなら昨日の方がまだ美味かったな……明日は別の淹れ方を試そうか……」
口直しにと二人の間に置かれたお盆に乗せられた茶請けの大福餅に手を伸ばす。口に運ぶと一転、こい
しの顔がぱっと明るくなる。
青年も咀嚼しながら頷く。
「これは正解だったな……今度霊夢にも差し入れしてやろう」
隣に座るこいしも頷きながら大福餅を頬張っている。
二人並んで午後のお茶をのんびり楽しむその様は、端から見ていて実に微笑ましいものであった。
お茶の時間も終わると、二人は各々の時間を過ごしていた。
青年が部屋で筆を持ち、なにやら物書いている間、こいしは青年の後ろで寝転がって絵付きの本を読みふ
けっている。
と、そこへこいしがふと顔を上げて窓へと眼を向ける。木製の壁を四角に切り抜き、板で塞ぐ仕組みのその
窓は現在開け放たれており、そこからは夕焼け色に染まった空を覗かせ、カラスがのんきに飛んでは鳴い
ていた。
「あ、私もう帰らなきゃ」
こいしは本を本棚に戻し、玄関へと向かう。未だ紙に筆を走らせ下を向いたままの青年の横を通りすぎる。
部屋から出ようと玄関に向かう途中、こいしは振り返って青年に言った。
「おじゃましました! また来るね!」
「うん。またおいで」
下を向いたままそう呟く青年に気を良くしたように頷くと、こいしは玄関から出ていった。
青年は筆を置いて立ち上がり、風を入れるために開けたままだった玄関を閉めようとし――ふと、外へ顔を
だす。
辺りを見回しても、そこには青年の小さな畑が広がっているだけであり、すでに少女の姿はどこにも無かっ
た。
「…………」
玄関を閉め、部屋に戻る。畳の上に置いておいた急須を片そうとして、お茶がまだ残っていたことに気づい
た。空だった湯呑みに注いで口をつける。最初は濃くて苦いだけだったお茶も、何度か使う内に薄まり丁度
良い味に落ち着いていた。
「………………」
お茶を飲みながら、お盆に乗せられた皿ともう一つの空の湯呑みに視線を向けた。いくつかの大福餅を乗
せておいた皿も、すっかりきれいに平らげられている。
青年がここ幻想郷に身を置くようになってから、それなりに経っている。ここでの常識にも慣れているつもり
だ。
しかしそれでも気になるものは気になった。
「なぁ、レイ」
縁側に目を向けて呼び掛けると、犬小屋から白い犬が顔を出した。自分の名前を呼んだ飼い主に尻尾を
振って応じる飼い犬に、青年は続ける。
「俺はいつも誰にお茶を淹れてるんだろうな……?」
そんな青年の呟きを、聞く者こそいても、答える者は居なかった。
「……以上が、最近の地上でのこいし様の活動です。さとり様」
「そう……ありがとう、お燐」
ところ変わり、場所は地下世界。旧地獄地霊殿。
彼女――古明地さとりはペットに探らせていた最近の妹の動向の報告に頭を抱えた。
「……今度あの子にはちゃんと言っておかなければなりませんね。まさか能力を使って人間に奉仕させて
いたなんて……」
「いえ、それがですね、さとり様」
「なに?」
主人であるさとりの言葉に、火焔猫燐は口をはさんだ。どう言ったものかと数瞬悩んだが、ここは主人の心
を読む能力を頼ることにして、一言。
「人間の方は無意識なんです」
「だからこいしが人間の無意識を操って……え? 違う? こいしは何もしてないの?」
心を読み取った主人の反応に、燐は頷いた。
「はい。面白がって気づかれないようにはしているようなんですが……こいし様をもてなしているのは人間
の無意識です。いや、こいし様が無意識を操ってるんじゃなくて、人間が無意識に……」
「大丈夫よ、分かってるから」
そも、こいしがあの人間の元を訪れるようになったきっかけは、雨宿りにと小屋に訪れていたこいしに人間
が気がつかないまま無意識にお茶を出したのがきっかけらしい。
「……勘が良いのか悪いのか判断に困るわね」
「本能ってやつですかねぇ……」
もてなす本能とはどういう進化の過程で刻まれるものなのだろう。
どうやらこいしを叱るだけで済む話でもないようだ。
「……今度、茶菓子を包んで挨拶に行きましょうか」
「でも何て言って渡すんですか? あの人間はこいし様のことは知りませんよ?」
「どうしたものかしら……」
地底に広がる妖怪たちの世界で、よもや自身のことで頭を悩ませている妖怪がいるなど当然青年は知る
由も無く……
その後も青年は無意識に妖怪に茶を振舞うのであった。
ちなみにしばらくして、黒猫を連れたさとり妖怪に「いつも妹がお世話になっています」などと見に覚えの無
いことを言って頭を下げられた上、茶菓子を差し出された青年が目を丸くする姿があったのだが……当のこいしは相変わらず何処かを流離っていたのはいうまでもなかった。
2
幻想入りしたMSによって蹂躙される幻想郷。
数々の幻想を追いやってきた圧倒的な「科学」の力を前に、如何な人妖も抗うすべを持たなかった。
これに対抗できるのは、同じくMSを操れる外来人シン・アスカしかいない。
だが肝心の乗機であるデスティニーは、稼動すらおぼつかないほどに損傷していた……!
早苗「霊夢さん、今こそ神降ろしをするんです!」
紫「幻想郷を救えるのは、貴方たちしかいないの!」
華扇「幻想郷を守る……それが博麗の巫女の役目でしょう?」
妖怪の山の技術水準では歯が立たないCEの未来科学を前に、科学とは対極に位置する神の力が振るわれる!!
霊夢「金山彦……力を貸して頂戴!!」
シン「凄い、ボロボロだったデスティニーがみるみるうちに直っていく!」
それが金属製品であるのなら、どれだけ複雑であろうとも金属、製鉄、鉱業の守護神である
金山彦に扱えないものはない!
魔理沙「さあ、遊びを解さぬ無粋者どもに、ガツンと一発ぶちかましてやれ!」
シン「行くぞデスティニー! 幻想郷の平和を乱すやつらは……俺たちが止めてみせる!!」
金山彦ってパラジウム合金もあっさり作れてたし、PS素材もいけるんじゃね? と思った次第。
最終更新:2011年06月07日 11:28