祭りも既に夕刻
シン達も十分すぎるほど楽しんでるであろう・・・・・・
と思いきや―――
「シンさーん、アリスさーん、みなさーん、どこですかー?」
「姫さまー、シーン!」
なんということでしょう
どうやら全員はぐれてしまったようです。
そのなかでも運良く合流できたのが早苗と鈴仙
ただ本命のシンと出会えないのが不運であるが
(それにしても……)
早苗は隣の鈴仙に対してふと疑問に思うことがある
シンに対して特別な感情があるのは確かなのだがどうもアリス達と比べると後ろ向きなイメージがあるのだ。
(やっぱり、みんなシンのこと好きなんだな……)
対して鈴仙はやはり過去の負い目はそう簡単には抜けず、なかなか一線を踏み出せずにいた。
「あの、鈴仙さ……」
「こんばんは~!!」
『わひゃぁ!?』
意を決して早苗が鈴仙にシンのことを尋ねようとした瞬間、背後から大音量の声を掛けられ二人とも変な声をあげて驚いてしまう。
「あやややや、どうやら驚かせてしまったようですね」
「文、私達意外の方達にも迷惑でしょう」
「あ、文さんと椛さんでしたか……」
早苗と同じ妖怪の山出身であるが『射命丸文』と『犬走椛』だ。
「これは大変失礼しました。清く正しい射命丸文でございます」
「すみません御二人とも、驚かせてしまいまして」
「いえいえ、御二人とも今日はお祭りに?」
「よくぞ聞いてくれました早苗さん!本日は私と椛が里のお祭りの記事を……」
文と椛は幼馴染であるため仲は良好であり、今日のように椛が暇な時は文と同行し取材の為に幻想郷を共に飛び回っているのだ。
天狗の新聞と聞けば大抵はデマがほとんどなのだが、文の新聞『文々。新聞』は正確性が高く天狗達の間では話題の上、
妖怪の山以外では紅魔館と香霖堂が契約して読んでいる。
「……長くなりそうだね」
「すみません、文はこうなってしまうと……」
矢継ぎ早の質問攻めを行う文も文だが、律義に答える早苗も早苗だ。
しかも今ではどの屋台がおいしいかと若干ずれて来ているのは女の子である以上しょうがない。
ちなみに椛と鈴仙は意外かもしれないが会う機会多い
文の連れで取材で永遠亭を訪れたり、椛が薪を売りに里へ来た際には鈴仙も薬を売りに来ていた等である
「それはそうと鈴仙、シンに恋してるのですか?」
「なッ!?」
「覗き見するつもりはなかったのですが、何度かあなたがシンを見つめているのを、ね」
『千里先まで見通す程度の能力』
斥候である椛の重要な能力
記事のネタを探している時に偶然に見てしまった光景
許されざる罪人が許しを求めるような眼差しを
「鈴仙、ある程度の事情は知っています。
ですが貴方自身の幸せの為に生きてもいいのではないのですか?」
「でも私は、シンみたいに強く……」
「なら貴方はシンの何を知っているのですか?」
「……ふぇ?」
「彼が強いと感じた、それ以外には?」
『自分の信念を貫いた』
それはとても立派で強い心の持ち主だ
だが、鈴仙はようやくシンのことをそれしか目に入ってなかったことに気付いたのだ
自身の罪に囚われてたがゆえに
「……馬鹿だな私、シンの都合のいいところしか見てなかった」
「でしたら知っていけばいいじゃないですか。
誰にでも弱さはあなたや私、無論シンもあるのですから」
考えたことが無かった
自分はシンのことを手の届かない高みの人として見ていただけだったのだ
「まずはお互いのことを知ることから始めたらどうですか?」
「……うん!そうだね、まずは僅かでも互いに知らないとね!」
憑き物が取れたような明るい表情が戻った
「その意気です鈴仙、そうでないと想いは届きませんよ」
「ありがとう椛!そうと決まれば……!」
「ほうほう、八雲紫のお蔭で海産物を・・・・・・」
「はい!久しぶりにお刺身が食べられて・・・・・・」
「早苗!!」
「は、はいッ!?」
「ほらほら早くシンを探さないと誰かに取られちゃうよ?」
「ま、まだ文さんと・・・・・・ま、待って~~~~」
文の取材中だった早苗の手を掴んだ鈴仙は強引に祭りの中へ消えていった
「あやや、まだ途中でしたのに・・・・・・」
「まったく、恋する乙女は何とやらですね」
「ほほう、やはりあの噂は事実でしたか・・・・・・」
『シン・アスカを巡る恋の戦いの兆しあり!?』
以前誰かの天狗が書いた記事であったが、よもや事実であったとは
「念のため言っておきますが、邪魔をするようなまねはやめてくださいよ」
自然と顔がにやけていた文に釘を刺す。
「当然ですよ椛!私は『清く正しい射命丸』なのですから!」
「はいはい」
記事にするかは別にして個人的に追いかけるのだろうが、椛自身もおそらくそうするのだろうと思うと、ついつい笑みを浮かべてしまった・・・・・・
「そういえば文、先ほどの花火の暴発は何だったのですか?」
「どうも地霊殿の方々が用意した花火が引火したらしいですよ」
地霊殿組花火格納庫現地にて―――
燐「うえ~ん痛かったよ~~」
永琳「よく我慢したわね、もう大丈夫よ」
さとり「あの、こいしを見ませんでしたか?」
幽々子「いいえ、でも探すから安心して」
空「うにゅ、ごめんなさい・・・・・・」
レミリア「うむ、その想いを忘れるな。」
地霊殿の用意していた花火が突如暴発し、不幸中の幸いが負傷者が燐が軽い火傷のみにであった。
そのため一時混乱するも祭りは続行されることとなったが、シン達はそのせいで離れ離れになってしまった。
紫「それにしても、花火の近くで弾幕ごっこなんて、ね」
諏訪子「いやはや、この私も空の迂闊さがここまでとは見抜けなかったよ・・・・・・」
きっかけは花火を保管していた倉庫に侵入した三匹の妖精を発見した空が捕らえようと弾幕を発射、ということだ。
残念ながらその妖精たちは未だに捕まってはいないらしい。
紫「治療をするのに永琳がいてよかったわ・・・・・・」
諏訪子「そのかわりシン達見失っちゃったけどね」
紫「本はといえば空に力を与えたの貴方と神奈子なんだから少しくらい責任持ちなさいよ」
諏訪子「あ~う~」
変わってしまった日常 東方版 7
ただ今全員迷子中
咲夜side
「困ったわね…」
瀟洒と言われながらこうも簡単にはぐれてしまうとは何とも情けない話だ。
「あ、咲夜さん?」
「一人でお祭りですか?」
いっそ時間を止めて探そうかと考えが過ったところに二名、「魂魄妖夢」・「八雲藍」が声をかけてきた
実はこの三名、主人に仕える者同士それなりに交流があり、友人と言える関係になっている。
「恥ずかしながら、現在迷子状態よ」
「と言うと、レミリア様と?」
「ふふ、残念ながら違うわ」
確かに以前までなら妖夢の考えのように主と来てたかもしれないが、現在は好きな人と来ている。
シンのことを思ってか、若干頬を染めたのを見た藍は察しがついた。
「私達も紫様と幽々子様を妖夢と共に探していたのですが、咲夜は見かけませんでしたか?」
「残念ながら……この祭りに来てるのですか?」
「ええ、まったく幽々子様は私の剣術の稽古を受けないで黙ってこちらに来て、この前も……」
「わかります妖夢。私も紫様には常々……っとすみません、私達はこれで失礼します」
「ええ、もし見つけたらお知らせします」
「ありがとう、それと咲夜……」
藍が咲夜の耳元へ顔を寄せ
「あなたの恋、頑張ってくださいね」
「なっ!?」
まるで子を見守るような笑顔で見られるも、すぐに妖夢と共に主を探すために踵を返した。
「……瀟洒の肩書、返上するべきかしら」
随分変わってしまった自分にどうしたものかと二、三頭を振りながらシン達を探すため歩きだした。
「まさか咲夜さんに好きな人ができるとは……」
「おや、聞こえてましたか」
自分達も彼女のように変わる時が来るのだろうか?
だが先の見えぬ未来より、現在の問題を解決するためにも互いの主を探すのみだ。
輝夜side
「屋台に出る食べ物も中々侮れないわね」
他の乙女と違い、輝夜はシンを探す傍ら綿飴を食べながら屋台を回っている。
探すのを第一にしないのは自信がある現れである。
「すみません、焼鳥二つ」
「は~い……げ」
「あら?」
綿飴を食べ終えた後に丁度あった焼鳥屋に顔を出したら決して浅からぬ因縁を持つ相手、妹紅であった。
「そういえば焼鳥屋をしてるってどこかで聞いたけど、本当みたいね」
「ああそうだよ。だから早くこれ食べてどっか行ってちょうだい」
焼鳥を渡した後にシッシッと手を振るという暴挙をするが、個人的な因縁があるのでどうしてもこのような対応をしてしまう。
「そうね、大事なお祭りの日に暴れるわけにはいかないものね」
以前なら口喧嘩程度なら起こっているはずなのだが、あっさり身を引いたのは少々予想外だった。
「…最近、何かあったの?」
「ええ、とても大きな病にかかったわ……
『恋』という名のね」
「なッ!?」
生命として必ず訪れる『死』
蓬莱人という永遠の寿命がある以上、愛する者を失っても生きていかねばならない運命。
だがもしも自分が輝夜と同じ立場であったのなら……
「勿論先にある運命はわかっているわ。
そしてどうしようもなく打ち拉ぐでしょうけど……」
「私はそれでも好きな人とともに居たい
たとえそれが束の間であったとしても、自身の信念を貫いた『彼』のように、私の想いを貫きたいの」
憂いの表情から一転、輝夜の顔は同性で宿敵であるはずの妹紅すら見惚れてしまうほどの生気に溢れた美しい笑顔を見せ、祭りの人だかりの中へ姿を消した。
「…そういえば、誰を好きか聞かなかったな」
女としての生きる道を見た妹紅は、それほどの切欠を作った人物のことを聞かなかったのは思い出し、『これから』を生きていく覚悟を持つ輝夜が羨ましかった。
シン・アリス・パチュリーside
さてここまでがシンを探している乙女達である
では肝心のシンとアリスとパチュリーはというと・・・・・・
「シンとはぐれなかったのはよかったけど・・・・・・」
「どうしてこうなるのかしら・・・・・・」
アリス、パチュリーの視線の先には・・・・・・
「シ~ン~、焼き蕎麦食べた~い」
フランドール・スカーレットに右手を引かれ、
「お兄ちゃ~ん、かき氷食べた~い」
古明地こいしに左手を引かれ、
「はいはい、今行くからな」
しょうがないと思いつつも素直に付き添うシンの姿があった
―――次回完結編に続く
最終更新:2011年06月07日 10:07