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怒声が耳にこびりつく。それは怨嗟の声。シンはただ、しくじったとだけ感じた。
恐ろしい憎悪がその身に浴びせられるが、もう慣れてしまった。凄いものだ。だが心苦しさは消えない。
なぜならばーー
『人気のアウトオブアメリカは三着に敗れました!!』
ボケー! 死ね~!! シン君もっと精一杯追うべきなの!!
自分に賭けてくれた期待を、不意にしたという事に他ならないから
シン・アスカ。不思議な事にジョッキーやらされてます!!
「やってくれたわね、アスカ君」
栗東の美人調教師相沢先生に睨まれて、身を縮めるシン。元々期待を裏切るという行為を嫌うシンはこの瞬間が何より嫌だった。
「少し慌てすぎではないかしら? あの子はよーいどんの競馬で勝ち負けできる子なのよ?」
「おっしゃる通りで」
シンも負けた理由は理解していた。ベテランに煽られた上で、一番人気で気負っていたというのもある。
しかし何よりも……
(言うこと聞いてくれないんだよなぁ)
荒馬を乗りこなす技量が、単純に足りていない。こればかりは自分でも自覚していた。そもそも馬を操るには、繊細な技術が必要なのだ。
元々体を動かすことについてのセンスは高いシンであったが、その手の繊細さは自身では得意と思わない。レイの役目だ。何故デュランダル議長がこんな仕事をさせて来るのかも、良く分からなかった。
「聞いてるかしら?」
「はい、勿論」
「はぁ、まぁいいわ。…………サフィーはあんなに見事に乗るのに、なんで他の馬では…」
サフィーと言うのは本名ファーストサフィー、今年の牝馬クラシックの不動だと言われる牝馬である。何故かシンのお手馬であった。レイに聞いた所によると、デュランダル議長の馬主強権で乗せてもらっているとか
シンは暇な時があれば、過去レースのビデオを見ている。何故か四年間もジョッキーをしているのだが、それでも若手。まだまだ勉強することが多い。最初は分からないことだらけで文句しか出なかったが、近頃は慣れたせいか、それとも馬が可愛く見えててきたせいか、ジョッキーにも真面目に取り組んでいる。真面目にしたからといって、成績が急上昇するわけでないのが、悲しいところだが。
「おぉ、流石に鷹さんは上手いな」
No.1ジョッキーの腕に感嘆していると、隣に誰かの気配が近付く。
「残念でしたね、先輩」
後輩の少女、穂高秋。実家が牧場とかで、更にはちょっとばかり複雑な事情があるそうだ。以前聞いた。因みに明らかにフラグ臭いイベントが起こるのだが、シンは華麗にたてるだけたててスルーしていたりする。無論、無自覚に。
「秋か。……仕方ないさ、悔しいけど。今回は俺が下手うったんだよ。アメリカはG1勝てる馬だしな」
拳には知らず内に力が入る。いけない、力んでも、馬に悪影響が出るだけだというのに。
「不思議よね」
「うわぁ、ミカ! どっから現れたんだよ」
横合いから更に口を出すのは、アイドル休業中で厩務員的な事をしている霧島ミカ。見た目何処かの超銀河妖精に似ているが、口には出さなかった。
「何がですか?」
「だって秋ちゃん。コイツファーストサフィー見たいなクセ馬は乗れるのに、アウトオブアメリカみたいな素直な馬で下手うつんだもの」
「それは仕方ないだろ」
仕方ないという一言で終わらせるのはどうかと思ったが、実際ジョッキーの勝率は一割程度。二割に乗れば世界的名人クラスだ。ある意味、他力本願なスポーツマンなのだ。つまり思い通りに行かないことの方が圧倒的に……
「でも分かったの」
いかないと言う前に、ミカの言葉で遮られた。しかし分かったとは何だ?
「何ですか?」
秋も同様だ。
「秋ちゃん。シンが買ったG1、覚えてる?」
「えっと、先輩は去年のオークスと、ヴィクトリアマイルと、二年目にスプリンターズSですね」
二年目でG1と言うのは、運があっても中々に早いそうで、お陰でシンは競馬会の期待の若手扱いされている。
「そう、そしてその時乗ってたの全部牝馬。重賞も牝馬で殆どとってる」
「え? そんなこと…」
「そういえばそうですね」
「つまり、シンは女の子のみならず、牝馬もこますジゴロって訳」
「待てよ!幾ら何でも言いがかり……!」
言い返そうと声を荒げそうになったが、思い止まる。馬がいるのに大声はNGだ。
「いえ、先輩はそれぐらい言われても仕方ないです」
「無いわよ」
「えぇ~?」
笑い会う二人の気持ちがさっぱり分からない。ハミを掛けれたら。そう思わざるを得ないのであった。
所変わって北の大地は北海道。とある広大な土地の中にある、豪奢な建物。床には温かそうな立派な絨毯、暖炉では火が弾け、室内の牧歌的な雰囲気を強くしている。
「レイ、シンはまだフラグを回収していないようだが? それと何時になったらサードステージが出来るんだい?」
「ギル、シンには無理な話だと思います。それとサードステージの母馬は2010ですとファレノプシスです」
「(´・ω・`)そうか。史実期間過ぎるとどうしても淋しくなるなぁ」
レイはパソコンで競馬ゲームに興じる指導者に、最も気になった事を尋ねる。
「ギル。何故……、シンをジョッキーに?」
これもディスティニープランに影響するのかもしれない。そう考えるとレイも真剣にならざるを得ない。全ては、己のような存在を出さないために……
「いや、競馬というものが遺伝子云々でたやすくいくものではないと分かってしまってからすっかり嵌まってしまって。どうせだったら知ってる人間集めて馬主体験も良いかなと思ってね。レイも調教師頑張ってもらいたい。何せ最年少調教師だからね」
「え? ディスティニープランは……?」
「いやぁ、馬は中々に可愛いよ、レイ」
理由になってない。とにかく今は自分の尊敬する人物が馬に夢中であると言うこと。果して本当に着いていくべきかどうか、迷う。
「ふぅ。……シン、どうやら当分シリアスな体験は出来んぞ」
レイは遠く栗東で無駄にフラグを建設する友人を思いながら、今度自分が預かる事になった現役馬のファイルを眺める。
もう一度パチンと、暖炉が音を鳴らしていた。
一方
「うん、アウトオブアメリカはシンで決まりや。今度のユーエスエスケープもシンや。もう決まりやで、相沢さん。…………ふぅ、こんだけええ馬用意したら、いずれシンも私の内助の効に気付いてくれるやろ、うふふ…………」
とある一馬主がよこしまな思いを抱いていたとかいないとか
因みにクロス元というとおかしいが、ネタはウイニングポスト、及びウイニングポストワールド。シンの能力をウイポ的に表現すると牝馬穴馬豪腕大レースぐらい
最終更新:2011年10月24日 04:48