アットウィキロゴ

五十四 達士 ◆my7zURWM5氏の小ネタ-04

シンはマユから缶を受け取りふたをひらく。
オレンジが断面からしぶきを上げる柄の描かれた缶から炭酸飲料特有の空気の音が響いた。

マユ「はい、お兄ちゃん。ジュース」
シン「あぁ・・・っていうか、マユ。いつも言ってるだろう、こういうのはやめろってな」
マユ「マユわかんないもーん」

こちらの指摘など何処吹く風と言わんばかりにシンの真横にポスンと腰掛ける。
既に殆どの支度を終わらせているのだろうが、一応は兄として注意をしておくのを忘れない。

シン「マユ。料理のほうは大丈夫なのか?それに、宿題は終わらせたのか?」
マユ「うん。もう、火は切ってあるしね。宿題なんか授業中に終わっちゃうよ。それに、お兄ちゃんと一緒に居たいから・・・」

くそう、かわいいなこの妹は。
内心でデレデレになりながらシンは屈した。
もう一度マユの頭をかき抱くように抱きしめて撫でてやる。
マユは顔を赤らめて微笑みながら、なすがまま。
彼女にとって兄とのスキンシップは何よりも優先される事項であり、それを拒否するなどありえないのだ。
一通り撫でた後、シンはマユの髪の毛がくしゃくしゃになっていないかと確認する。
マユもまた、手櫛で軽く整えると、彼女自身のジュースのふたを開けて軽くすすった。
シンもまた、缶を傾け、咽を潤す。
オレンジに少しばかりの苦味が在る独特の味。
少しばかりいぶかしみ、銘柄を確認しようとした時

マユ「そういえばさ、お兄ちゃん今日は遅かったけど、なんかあったの?」

妹からの突然の質問に、缶から目を逸らし、シンはあぁ、と呟いてからマユへと視線を移してからつい先ほどまであったことを語り始めた。

マユ「演劇・・・お芝居のこと?」
シン「あぁ、それではやてが脚本を書くってことになってな・・・まぁ、俺としては悪いとも思ってるんだけどな・・・」

語り終えてから、シンはなんともはなしに天井へと視線を向けた。
何せ、くじを引いて、一番のはずれくじである演劇を当てたのは彼自身だ。
どんな理由があろうとも、本来は彼が引くはずではなかったのであろうとも。
それは紛れもない事実なのだから。
元来、彼は意外と根に持つタイプだ。
それが自身に対してであれ、他者に対してであれ、ある意味彼は平等に接する。
無論、敵味方に別れるという大前提はあるのだが・・・

シン「ま、そんでもって更に事態は急転直下。もう演劇をさくっと終わらせてしまおうって言うクラスメイトを押し切って、
   結局はやてが脚本を書くことになったんだけどな」
マユ「なんか問題あったの?あのおん・・・はやてお姉ちゃん、文章とか書くの得意だったじゃない。そのまま始末書だけ書いてろって感じで」
シン「そうは言ってもなぁ・・・」

確かに、はやての文章能力は凄まじい。
読む者をひきつけ、物語の中に引き込む魅力を持っている。


ある少女がその文章力を聞きつけて、ラブレターの代行を依頼した時のことだ。
その書かれた内容があまりにも素晴らし過ぎて、もらったほうは号泣。
更にはその文学少年だった彼はその文章を高名な出版社に持っていくとすぐさま賞を頂いた程。
最も、はやては元からそんなものに興味はないのでがん無視したらしいのだが・・・
何はともあれ、少女のラブレターで文学賞を頂いたほど、彼女の文才は評価されている。
のだが

シン「あいつが本気で納得できる作品なんて、どうなっても劇におさまらないだろう?」
マユ「あー・・・確かに。完璧主義だもんね・・・」

マユは、呆れたように、納得したように呟いてからごまかすようにジュースを口に含む。
シンもつられてジュースを口に含む。
相変わらず甘いのに苦い。
何処のメーカーの新作だろうか。

マユ「・・・ねぇ、お兄ちゃん」

不意に、マユから声をかけられる。
彼女は上目遣いに、こちらを頬を赤らめてちらちらと見つめていた。

シン「どうした?なんか熱でもあるのか?」
マユ「う、ううん!?そ、そうじゃなくて!!」

マユの額に自分のそれを押し当てる。
やはり熱い。
しかもかなりの高温だ。
シンは相変わらずいきなり熱を出して倒れる妹にため息をついた。

シン「あのな、マユ。辛い時には辛いってちゃんと言え。俺たちはたった二人の兄妹なんだからな」
マユ「あ、うん・・・兄妹、だね・・・」

何かをかみ締めるように、眉根を寄せて、胸を押さえつける。
それは、まるで自分の中から湧き上がる衝動を押さえ込むように見えた。

シン(これは、まずい・・・)

シスコンを極めた彼にとって、妹の感情など手に取るように分る(と思っている)。
こちらに心配をかけぬようにわざと気丈に振舞っているのだろう(と思い込んでいる)。
そう考えただけで目頭が熱くなる。
何か熱いものが目からジワリと湧き上がってくるが、それは今この状況で行うものではないとこらえる

シン(まずは精密検査・・・いや、治療だ!)

色々と静かに勘違いして暴走し始めた彼はそのまま止まらず頭を回転させ続ける。
管理局きっての天才。
才能の権化とまで言われた頭脳を酷使して解を導き出そうとして



シン「待ってろマユ!今お兄ちゃんが助けてやるからな!!」
マユ「話が飛びすぎだよ!?ていうかなんでそんな話になってるの!?お兄ちゃん!」
シン「あぁ、ちょっと待て、今救急車を」
マユ「だから大丈夫だってば!!」
シン「でも、本人に自覚症状がない場合も・・・」
マユ「もう!だから問題ないんだって。ほら、熱ももうないでしょ?」

そういわれて、再びマユの熱を測るが・・・

シン「・・・うん。平熱だ・・・」
マユ「ね、大丈夫って言ったでしょ」

やれやれとため息をついて、兄の暴走を納めた彼女は、深くため息をついた。

マユ「もう・・・お兄ちゃんは心配しすぎ。私だってそこまで軟じゃないんだよ?」
シン「でもな、マユ・・・」
マユ「心配してくれるのは嬉しいけど、行き過ぎはだめ。でしょ?お兄ちゃん」
シン「マユ・・・」

女の子の成長は早い。
つい最近まで無邪気にお風呂に入ろうとか、一緒に寝ようといってきた彼女は、もう料理までこなす淑女になってしまった。
今年に入ってからはタオル一枚で「背中を流すね」と言ってきたり、ネグリジェを着て「・・・今日は、寝かせないでもいいよ?」
と言ってくる程度になっている。
無論、シンも兄としてそれを断ったことなどない。
背中を流してもらう時など、「嫁に行く前の最後の孝行」をしてもらっている時の父親の感覚だし、
寝る時などは前までは悪かった寝相が、もう、静かなものでしかないのだから。
そして何より・・・

シン「・・・女の子の成長は、本当に早いな・・・」
マユ「えへへ・・・もう今のがきつくなってきたんだよ」

マユはシンの呟きににこりと微笑み、己の胸に目を落とした。
エプロンを押し上げるほどの圧力。
イメージで言うならば肉まんか、それともりんご二つ分の、それ。
かく言うシンの幼馴染にして親友のである高町なのはと八神はやては、毎回マユに会うたびに人には言えないような目をして彼女を見ているほどだ。
理由は分らないのだが・・・
尻も肉付き始めて、今までの少女らしさから女らしさへと変わっていく過渡期のような危うさ。
しかし、その危うさがあまりにも魅惑的な一人の少女。
マユ・アスカ。
御年13歳。
中学校に入ったばかりの少女である。
そのからだは既に高校生かと見まごうばかりで、彼女本来の可愛らしさから何度もアイドルの推薦が来たほどだが、紛れもなく中学生である。
中学生からはおろか、高校生からも告白をされたことがあるが、去年まで赤いランドセルを背負っていたのである。
まぁ、本人がその全てを断っているのだが・・・

マユ「ね、ね。マユ可愛くなった?襲いたくなったりした?若い性の衝動に駆られちゃったりしない?」

ぐいぐりと胸を強調するように、四つんばいになってこちらに顔を近づける。


瞳は憂いを帯びて煌き、唇にはリップを塗っているのかうっすらと艶がかかっている。
シンはそんな大人びてきた妹に

シン「あほか」

言い放ってでこピンを一発。
そのまま立ち上がると、シンに寄りかかっていたマユがバランスを崩して前のめりに倒れこむ。
たいした衝撃でもなかっただろうに、マユは大げさに額を押さえて涙目でシンを見る。

シン「お前が可愛いのは当たり前だが・・・そうやって何でもかんでも大人びろうとするな。子供は子供らしく、子供を楽しめよ」
マユ「うぅ~~~~~・・・」

シンはそう言い放ち、ジュースを一気に飲み干してそのまま握りつぶしてから分別ゴミとして分けてから放り込んだ。

マユ「・・・(おっかしーなー・・・あれ、スピリタスにポカリを混ぜた奴を入れてたはずなのに・・・)」
シン「うん?なんか言ったか?」
マユ「ううん!!何にも言ってないよ!?あ、もうこんな時間か・・・お兄ちゃん!おなか空いてない?
   すぐに盛り付けるからちょっとまってね!!」
シン「え?あ、ああ・・・」

なにやら突然まくし立てたマユに、シンはいぶかしみながらも返事をする。
同世代とはいえない程度には年が開いている妹だが、これほどまでに意思の疎通が出来ないとは思わなかった。
これが、男と女の差なのかと思いながらも、年頃の彼の胃は既に空腹を訴えて抗議の音を立て始めていた。
正直、妹が作ってくれたものだけでは物足りないのだが、だからと言っても今から一品作る時間は空腹状態がもちそうにはあるまい。

シン(ま、後でコンビニ行ってなんか買い込むか・・・)

無用な出費だが、仕方あるまいと考えていると、軽い電子音の呼び鈴がなったのに気が付いた。
このビルの呼び鈴は少し特殊で、入り口のゲートからの呼び鈴と、玄関先からの呼び鈴の音が違うのだ。
その上、むやみやたらと高いセキュリティを誇っている。
今回鳴ったのは、玄関先からの呼び鈴だった。
マユが飛び出そうとするのをシンは片手で抑えてシンは一人で玄関へと向かう。
音を立てずに玄関まで行って、そのままの流れで電子キーのロックをはずす。

シン「はいは~い。どちら様で・・・・」
フェイト「あ、シン。夕飯ちょっと多めに作りすぎたんだけど・・・一緒に食べてもいい?」

そこには、一つ上の階にいる金髪の幼馴染が、お鍋を持った姿があった。



シンとなのは達は幼馴染
~学園祭、あるいはシンにとっての黒歴史・中~



アリサ「んで、昨日は優雅に美女二人に囲まれてお食事をしました、と?」
シン「そうだけど・・・なんだよ、相変わらず機嫌悪そうだな」

翌日。
登校したシンは早速アリサに絡まれていた。


いつもならばアリサと共に登校してくるすずかは、家の事情で遅れるとのことらしい。
そのためアリサは『二つの意味でいつも通り』フェイトと登校してきたシンに話しかけて、昨日のことを聞き出した。
ちなみにフェイトは日直のために教室にはいない。
アリサはシンの机の上に腰掛け、シンを見つめる。
上品ではないその仕種が、何故か彼女がやると品の在る優雅なものに見えるのが不思議だった。

アリサ「でも、マユちゃん怒ってたんじゃないの?お兄ちゃんと二人っきりなのを邪魔されて」
シン「いくらあいつでもそんなことはないだろう。それに、あいつにとってフェイトやお前らは姉みたいなもんだろ?」
アリサ「姉・・・ね。姉をあんな目で見る妹ってのは、正直心臓に悪いわよね・・・」
シン「?なんだそりゃ?」
アリサ「なんでもないわよ」

アリサはそういって、彼の妹を思い出した。
マユ・アスカ。
シンの妹にしてスタイル抜群、運動神経も兄同様に優れ、さらには成績も学年トップと言う才媛。
その上驕ることはなく、女子生徒からも憧れの目で見られるほどだが、たった一つ。
しかも重大な欠点があった。
それはブラコン。
しかも極度に捻じ曲がり、ゆがみを更に拡張させて構築し、補強し、武装し、増援し、要塞化するほどに固められたほどの。
いっそ病的といえるそれは兄と自身を邪魔する全てなど滅びされ、寧ろ自分と兄以外に存在価値などないというほど。
だからこそ、彼女にとって昨晩は用意周到にしていたに違いない。
シンは知らないが、マユの行動は両親やアリサら幼馴染によって多くを阻害されている。
それでもなお彼女はその間隙を突き、シンに接触をしてくるのだ。
そんな彼女が両親不在と言う一世一代のチャンスを逃すはずもないだろう。
現に、アリサのところにも、シンの両親が不在であるという報告はなされなかった。
にもかかわらず、そんな防備を無視するかのように突破した親友の行動力に舌を巻くを同時に憧れる。
やはり、一番最初に出会った時間と過ごした期間が長いからであろうが、そんなことで挫けるほど彼女は弱くはない。

アリサ「ま、今頭一つ抜けてるのはフェイトなんでしょうけどね・・・」
シン「だから何がだよ」
アリサ「うっさい!!あんたはもっと気を回しなさい!!」
シン「わけが分らん!!」

アリサが勢いをつけて机から降り立ち、そのままの勢いを利用してシンに詰め寄るのと
シンがいすから立ち上がりアリサに詰め寄るのはほぼ同時。
クラスメイトも剣幕こそ凄いがいつも険悪な雰囲気にはならない二人の喧騒にまたかとため息をついた。
とは言え、彼らのいざこざに巻き込まれたなら自分達が痛い目を見ることを経験則的に知っているからだ。
そして、彼らのいさかいを止めることができる存在がいることも

なのは「はーい、シン君ストップ」
フェイト「アリサも、やりすぎだよ」
アリサ「なのは!フェイト!」
シン「なのは、いつ来たんだ?」
なのは「今さっきなの。そこでフェイトちゃんとあったからね・・・というか、シンもアリサちゃんも落ち着いてよ。
    とりあえず何があったのかはフェイトちゃんに教えてもらったから」
アリサ「ふん!・・・なのはに免じて許してあげるわよ・・・」


シン「こいつは・・・はぁ、なんかやる気失せたわ。なのは、おはよ」
なのは「うん。おはよう、シン。アリサちゃんも、おはよう」

なのはの言葉に、シンもアリサも言葉の矛をおさめて、席に着く。
もっとも、アリサはシンの机の上であるのだが。
それを見た実質一人で二人のいさかいを納めたなのははにこりと笑みを浮かべるが、しばし教室内を見渡して

なのは「そういえば・・・はやてちゃんは?この時間帯に来てないのって珍しいよね?」
シン「え?あぁ、確かにな」
アリサ「珍しいわね。時間に律儀なはやてにしては・・・明日は雨かしら?」
シン「体調が悪けりゃ他の奴が連絡くれるだろ?だから、大丈夫だよ」
なのは「確かに・・・そうなの。ヴィータちゃんからは連絡着てないし・・・フェイトちゃん、シグナムさんから何か連絡ない?」
フェイト「ううん。ないよ・・・っていうか、シグナムはあんまり携帯も得意じゃないから」
アリサ「ふーん・・・じゃあ、なんか登校途中であったのかしら・・・」
シン「大丈夫だよ。あいつはなんだかんだ言って誰よりもしっかりしてるんだ。それにあいつが何かに巻き込まれたなら俺たちにも何らかの連絡はくる。
   だから落ち着いとけ」

静かに、しかし絶対の自信を持っていうシンの言葉に、他の三人が沈黙する。

フェイト「・・・うん。そうだね」
なのは「はやてちゃんだしね。きっとみんなのお弁当に気合を入れて今頃走ってるんじゃないのかな?」
アリサ「ま、そうよね・・・てかあんた、やけにはやてのかたを持つわね・・・」
シン「それだけあいつは信頼できるということだ・・・普段は暴走しがちだけどな」
フェイト「・・・そうだね。ちょっと、ね」
なのは「にゃ、にゃははは・・・ごめんはやてちゃん。フォローできない・・・」
はやて「あれをただの暴走と言っていいのかは激しく疑問だけどね・・・」

四人はそろってため息を一つつき、ふと、アリサが疑問を感じてシンのかばんを見る。

シン「なんだ?まだ飯の時間じゃないからやらんぞ。というか、飯の時間でもやらんぞ、この腹ぺ娘」
アリサ「ち、違うわよ!!私はたんに、ティスはどうしたのかと思ったのよ!最近見てないから」
シン「ティス?あぁ・・・デス子のことかよ」
なのは「シン・・・いい加減ティスって呼んであげなよ」
シン「いいんだよ。昔からデス子だったんだから、というか、なんでそんなに名前の呼び方で言われるんだよ」
なのは「だって、ねぇ・・・」
アリサ「あんたセンス悪いのよ」
フェイト「私は、可愛いと思うよ?」

散々に言われて、シンはそっぽを向いて、今はいない自身のデバイス(相棒)のことを思い出した。
ユニゾンデバイス、デスティニー。
正式な名前はあるらしいのだが、デスティニー曰く「人間には発音できませんので。というか、出来たら世界が発狂しますので」とのことらしい。
シン・アスカのデバイスにして、シンが『生まれる前から側にいた存在』らしいのだが、正確なところは管理局の精密検査でもわかってはいない。
女性型のユニゾンデバイスで、普段は妖精の様な姿をもった『進化するデバイス』である。

アリサ「で、ティスはどうしたのよ。最近あの子姿が見えないけど、そっちこそなんかあったの?」
シン「デス子は今週一杯定時精密検査中だ。つことで、俺にも今は任務はないんだ」
フェイト「ティス、すっごいいじけてたね。『あそこのご飯は美味しくないから行きたくない』って」
なのは「あの子は食べるの大好きだからね。見ててこっちが癒されるの」
アリサ「あ、わかるわかる。あんなに小さいのに口いっぱいにご飯を食べるの、ハムスターみたいよね」
シン「あいつ・・・この前俺が気に入ってた期間限定の焼きソバまで勝手に食いやがって・・・」

ギリッとシンが奥歯をかみ締める。
彼が久々に気に入った期間限定焼きソバを、いつの間にか勝手にドヤ顔で食べていたのを思い出したのだろう。
本人は気が付いていないが、拳が震えるほどに強く握り締めているのをみてなのは達はクスリと笑った。
普段はあまり見せないが、そういう子供っぽい仕種は、彼女達の心の琴線を振るわせる。
惚れた弱みとは自覚しているが、もう少し余裕を持ったほうがいいのではないのかとも。

アリサ「なに男がいつまでも細かいこと気にしてんのよ。男だったら女のわがままくらい受け止めてやりなさいよね」
シン「だったら男にも甘えさせてくれよ・・・くそ」

そういいきりながら、シンはちらりと時計を見やる。
もう、予鈴がなり始める時間だ。


これは本格的に何かあったのかと思い、携帯を取り出してはやての家族にメールで確認しようとした瞬間

はやて「間に合ったーーー!!?」

それと同時に件の八神はやてが教室の扉を破壊するかのごとき勢いで入ってきた。
かなり急いだのだろう。
息を荒く弾ませて、肩で息をしている。
はやてはそそくさとかばんからタオルを取り出して額に張り付いた汗を拭き、コンパクトを見ながら軽く整えながら
シンのとなりの席を奪った。

はやて「いやー皆おはよう」
アリサ「グッモーニン」
なのは「おはよ、はやてちゃん。ギリギリだったね」
フェイト「おはよう、はやて」
シン「もうおそようだ。というか、予鈴が鳴ったのになんでお前は他人の席を当たり前のように使ってるんだ?」

はやてが座っている席の本来の住人は苦笑するようにかまわないといって、まだ友人と話していた。
それをシンがすまんと目配せをすると、はやても同様に苦笑しながらお辞儀をする。

はやて「すまんなー。いやな、ちょっと皆に聞いて欲しいことがあってん」
シン「それは構わないけどな。もう予鈴なったぞ、次の休み時間にしとけ」

しかしはやては不敵そうに笑みを浮かべて腕を組み、自分のあまり豊かではない胸を張った。

はやて「今日は先生も遅刻や。せやからもう少しは大丈夫やで」
シン「なんで知ってるんだよ」
はやて「いや、途中で追い越してきたから」
アリサ「はやては本当、走るのだけは得意よね」
なのは「長距離走はかなりのものなの。それ以外は、まぁあれだけど・・・」
はやて「あっはっは。皆誉めてるんか貶してるんかどっちかにして!!」

はやてが泣きそうな子狸の顔をしながら言ってくるのを、皆は華麗にスルーした。
この程度は既にお約束の一部と化している。
はやては詰まらなさそうにしながらかばんから紙の束を取り出した。
紙の束はB4サイズの典型的な用紙であり、左上をホッチキスで止められていた。
表紙には何か書かれているが、ここからではまだ分らない。

シン「なんだそれ?」
はやて「ふっふっふ・・・説明するよりもまずは見てからのお楽しみや!!」

はやてにズイと押し付けられたシンに集まるようにアリサとなのはとフェイトが顔を覗き込ませる。
とたんに女性特有の甘い香がシンの鼻腔をくすぐるが、まぁ、そこはなれの問題であった。
気を取り直そうとして、シンがその表紙にかかれた言葉を読み上げる。

シン「えーっと・・・『笑えないお姫様~百年かけた願い事~』なんだこれ?」


はやて「聞いて驚き!!これこそ・・・私が一晩叫んでもがいて苦しんで書き上げた・・・文化祭の演劇用のシナリオやーーーー!!」



クラスメイト’S「「「な、なんだってーーーー!?」」」



シン「ぬあ!?」

突然自分を中心に叩きつけられるように届いた驚愕の声にシンがひっくり返りそうになる。
それをなのははそっと受け止めた。

なのは「大丈夫?」
シン「す、すまん・・・なのは。ちょっとビックリした」
なのは「だよねーというか、このクラスの皆ちょっと耳ざとすぎるの」

シンの黒髪を胸の辺りに感じながら、なのははシンをそっと抱き寄せる。
シンもまだ驚きからさめていないようで、なのはのされるがままだったが、教室内はそれどころではなかった

男子生徒1「まじかよ!速すぎじゃねーの!?」
女子生徒1「そうだよ、まじちょっぱやだよ!ちょっぱや!!」
女子生徒2「見せて見せてーーー!!」
男子生徒2「つーかどんな劇なんだ?俺は断然殺陣が出てくるようなアクションがいいんだぞ!!」
女子生徒3「はぁ!?いまどきアクションとか・・・ハラオウンさんのほうが運動神経いいでしょう?あんた達なんかより!」
女子生徒4「はいはいはーい!!私は断然ラブロマンス!!恋愛モノがいいと思いマース!!というかそれ以外認めませーん!!」
男子生徒3「んだとー!こっちにはシンだっているんだぞ!それだったら絶対アクションものだろうが!!」
男子生徒4「そうだそうだー。演劇で恋愛なんて誰得だーーーー!!」
女子生徒5「・・・私は、男の子同士の・・・」
男子生徒5「え?それありだったら俺はフェイトさんとなのはさんとか・・・」
女子生徒6「はぁ!?あんた何気持ち悪い事言ってんの?ここは月村さんとアリサさん一択でしょ!?」

いつの間にやら自分達の欲望を開放させ始めた級友をみて、シンが頭を抱える
横を見ればなのはも苦笑を浮かべ、アリサに至っては怒りを押さえ込むように肩を震わせている。
フェイトは・・・あまり理解していないのか、シンをみてニコニコと笑みを浮かべていた。

はやて「はーいはい!みんな静かにー!!静かにーーー!!!」

ぱんぱんと手を叩いてはやてが鎮めようとしているが、あまり効果はない。
彼女の声はよく通るのだが、この喧騒の中では焼け石に水だろう。
シンはやれやれと首をふると、ずっとこちらを見ていたフェイトがそっと耳を寄せてきた

フェイト「どうする?鎮めようか?」
シン「いや、大丈夫だろ・・・というか、なのははもう俺を放せ」
なのは「え?やだ」
シン「即答かよ・・・」


なのは「だって、シン君抱き心地いいんだもん。あったかいし。ちょっと硬いけど」

なのはとシンに聞こえる程度の声にシンは首を振る。
個人的にはなのはにもいい加減にして欲しかったのだが・・・
と、シンはアリサに目を向ける。
彼女はついには肩だけではなく、拳を震わせている。
シンはなのはとフェイトに耳をふさげと伝えると、二人とも一瞬で何事かわかったのか即座に耳をふさぎ
シンもまたチャンスとばかりに席を立つが



アリサ「ビィィィィィィィィィイイイィイィィィイイィイィィィィィクワイエッッッッッッッツッッ!!!!!!!」



瞬間大喝が響き学校が震えた。
声を出したアリサは満足したのか、鼻を鳴らして乱れた髪を一払いで整えてはやてへと視線を向ける。

はやて「ぴぅ!?」

よく分らない叫び声をあげ、思わずびくりとからだを震わせて椅子が音を立てる。
本来ならば誰も気にしない程度の音だったが、今は違う。
地下鉄もかくやと言わんばかりの喧騒は一瞬にして凍結したように静まり返ったためにその音はやけに響いてしまう。
わたわたと可愛らしくあわてた後、シンに縋りつくように身を隠したはやてに

アリサ「・・・んじゃ、説明して。はやて」
シン「何事もなく進めて行くって・・・お前は凄いな」

シンは、幼馴染に心の底から尊敬とも、呆れともとれる響きで賞賛した。
今までの剣幕は一体なんだったのかと思っていると

アリサ「え?だってあのままだったらはやてが何にも説明できなかったでしょ?だから静かにっていったのよ」
シン「・・・それであの声はでかすぎるだろ・・・」
なのは「わたし、耳ふさいでたのにキーンって音がするよ・・・」
フェイト「私も・・・」
アリサ「し、仕方ないでしょ!?必要な犠牲だったのよ!」
シン「まぁ、あんな声がよく出せるもんだな」
アリサ「な、なによ。文句あんの?」

どこか挑発するように、しかしそれでいて主人に怒られそうな子犬のように瞳を潤ませるアリサに、シンは口の端を少しだけあげた。
そのまま、右手をアリサの頭に乗せてそっと撫でる

シン「ま、結局は静かになったからいいってことだな」
アリサ「あ、当たり前でしょ!!ふん!これだからあんたは・・・あう、頭撫でないでよ・・・セットが崩れる・・・はぅ」

文句を言いながらも払いのけようともせず、しかも放そうとしたらこちらを上目遣いに見上げてくるアリサにシンは苦笑しながら撫で続けた。


はやて「・・・おーい。わたしから説明させてもろうてもええやろうか?」


シン「え?あぁ、やってくれよ。というか、なんで一々俺に聞くんだ?」
はやて「いや、なんで言われても・・・ねぇ?」
なのは「アリサちゃん、蕩け過ぎなの」
フェイト「いいなぁ、アリサ・・・」

なにやらシンを半目でにらみつけるようなはやての言葉に続くようにして
なのはがどこかむくれる様にそっぽを向き、フェイトは指を唇に当ててアリサをうらやましそうに見つめていた。
周囲を見渡すと、何故かシンとアリサを囲むように円陣が出来上がり、ひそひそとなにやら呟く声が聞こえる。

男子生徒3「砂糖が・・・砂糖が・・・」
男子生徒6「くそう・・・シンめ、見せ付けやがって・・・このリア充が」
女子生徒1「ねぇ、ちょっと誰かコーヒー持ってない?甘くなかったらなんでもいいからさ」
男子生徒2「今の俺なら砂を食っても砂糖に感じられると思うんだ」
男子生徒4「やめとけ、それは幻覚だ、幻覚、だよな・・・?」
女子生徒6「くぅうぅぅぅぅ・・・まさかのアリサさん受け!?なんであれがすずかさんじゃないの!?」
男子生徒5「お前、耐性なさ過ぎだな。俺なんていつもフェイトさんや高町さんと仲のいいところ見せ付けられてるからな・・・慣れっこだぜ!!」
女子生徒5「・・・もしアリサさんがD組みのバレル君だったら・・・ごはん6杯はいける・・・」

なにやら注目されすぎた気がして、シンはさっとアリサの頭から手をのける。
その時アリサがあまりにも悲しそうな顔をした気がしたが、気のせいだと割り切った。

シン(今度コーヒーおごってやるから許せ)

割り切ったと思ったのは自分だけだったようだが。
コホンと一つ咳払いをしたはやては、そんなシンに何か言いたそうに口を開け、「むぅ」という言葉で濁した。
それから息をついてから再び説明のために先ほどのシナリオを書いたという紙束を掲げた。

はやて「んじゃ、シンには後で私らに翠屋おごりと言うことでかたはついたし・・・続きいこかー」
シン「ちょっとまて!いつの間にそんなことになってんだよ!?」
はやて「まぁ、私も一晩で全部の台本を書くなんてできひんかったからなぁ・・・ま、大まかな流れとかを説明するわ」
シン「シカトかこのやろう!!」

シンが地団駄を踏むのを横目でチラと見ただけで黙殺し、はやてはシナリオの表紙をめくる。

はやて「まぁ、今回は演劇やしな・・・ぶっちゃけシェークスピアとか見たいに長丁場はできんから、サクッと終わるタイプにしてみましたわ」
女子生徒8「しつもーん」
はやて「はいはい。一個だけやでー。答え続けたらきりがないからな」
女子生徒8「んじゃ、えーっと・・・その物語って、御伽噺みたいな感じなの?」
はやて「せやで、王子様がお姫様を救い出すラブロマンスや」

その回答に教室内は賛否両論だった。
もっとアクションなのがいいという意見や、百合が無いと嫌だとか、BLがないとか考えられないという少数意見もあったが全て黙殺した。

はやて「はいはい。しーずーかーにーなー。やないともっ回アリサちゃんに頼むでー・・・よっし、静かになったな。んじゃ、肝心の物語やけど」

シナリオは、御伽噺としてはありきたりといっていい内容のものだった。
ある国にとても美しいお姫様がいた。


しかし、お姫様は笑うことができなかった。
それは、ある魔王が姫に笑うことができない呪いをかけたからだった。
それを知ったお姫様は嘆き悲しみ、その涙と声に呪いが混ざり始め、国さえも侵し始めた。
徐々に無くなっていく笑顔に、お姫様は更に嘆き悲しむ。
魔王はその嘆きを取り除くためにその国の全ての時間をとめてしまった。
それから百年たち、隣国の王子が魔王を倒し、お姫様を救うためにやってくる。
様々な困難を乗り越え、傷つきながらも最後には魔王を倒し、お姫様を救い出す。
そして、お姫様に笑顔を取り戻すという・・・物語としてはありきたりなものだった。

はやて「どやろか。まだ荒削りな部分はあるけど、これやったらラブロマンスありで、しかもアクションシーンもふんだんにあるからな
    色々なところの要求にこたえましたで」
なのは「結構面白そうなの」
フェイト「そうだね・・・でも、魔王も少しかわいそうかも」
アリサ「はん!手に入らないからって自分以外に笑顔を向けて欲しくないとか・・・どんな奴よ!イメージとしてはお姫様に捨てられたストレイボウね!!」
シン「やめろ!!お前はトラウマを呼び起こすつもりか!?」
女子生徒1「うん。いいじゃん、面白そうお姫様と王子様か・・・そこに魔王も惚れていたから三角関係・・・」
男子生徒5「悪くないよ、八神。てか、一晩でよく考えたよな・・・」
女子生徒4「流石ラブレターで表彰をもらった女」

やいのやいのと持て囃されて、はやては「いやいや、おーきにおーきに」と、まるで選挙投票前日の政治家のように手をふったがふと真顔に戻り

はやて「あー・・・でもな、これ変えるかもしれへん」
なのは「なんで?お話としては纏まってた気がするけど・・・?」
フェイト「うん。ちゃんと御伽噺みたいになってたよ?」
女子生徒1「そうだよーかえるなんて勿体無いよ」
女子生徒5「・・・もし変えるなら、魔王と王子が真実の愛に目覚めてそこから二人でラブロマンスを・・・」
男子生徒4「なぁ、お前も少し黙ったほうがよくないか?」
男子生徒5「リアルはまずいだろ、せめて二次元にしておけよな」
シン「・・・で、かえるって何をだ?」

収集が付かなくなる前にシンが質問する。
はやては答えずらそうに「あー・・・・」と無意味な空気を消費しながら虚空を見上げ、やがて意を決したように

はやて「実はな・・・納得できてないんよ・・・」

苦笑しながら言うはやてにシンはおろか教室の皆が驚く
ストーリーとしては分りやすく、簡潔に描かれているというのに、なにが不満なのかと。

はやて「纏まらせすぎてもうたんや」

簡潔かつ、あまりにも淡々と、しかし悔しそうにいう彼女に皆が押し黙る

はやて「確かに分りやすいストーリーっていうお題目、アクションもあって、ラブロマンスもありサクッと終れるストーリー
    せやけどなー・・・どうしても納得できてへんのよ・・・骨組みは決まっとるし、肉付けもいいはず。


    やけど筋がちごうとるみたいなな・・・ものっすっごい気持ち悪いんよ・・・」

それは、書き手としての本能なのか、それともシナリオを作るということはこういうことなのかはわからなかったが
シン達には伝わった。
だからシンはそっと隣のはやてに微笑みかける。

シン「ま、シナリオを書くって言い出したのはお前だからな・・・好きにすればいいさ」
はやて「シン・・・」
なのは「がんばって、いいものに仕上げようね」
フェイト「私も、できることがあれば言ってね?」
アリサ「でも、早く仕上げなさいよね!日程は決まってるんだから」
女子生徒5「・・・わ、私も、手伝う・・・」
男子生徒4「お前に手伝わせるのはなんか怖いからな・・・俺もやるぜ!!」
女子生徒1「あんらたちじゃいつまでたっても終わらないわよ。仕方ない。くじで決まっちゃったんだからね」
女子生徒2「私達、結局文句言ってたばっかりだからね・・・うん。八神さんの思うとおりにやってね!!」

クラスが一丸となって応援し始めるなか、はやては顔を仄かに赤らめてからはにかむように笑みを浮かべた。
皆が、何かに目標を持って進む。
それが、自分とならなおのこと喜ばしいことだと、彼女は信じているのだ。
だから、その言葉は自然に出てきた

はやて「みんな・・・ありがとうな。わたし、絶対いいシナリオを仕上げて見せるからな!!」

ぐっと拳を振り上げると、クラスメイトも皆拳を上げる。
そんな中、拳を上げなかった少ない人数のうちの一人であるシンは

フェイト「はやて、よかったね」
シン「そうだな」
なのは「はやてちゃん。いつもつっぱしっちゃうからね・・・たまにクラスで浮くけど。今回は大丈夫そうだよ」
シン「だな」
アリサ「んで、あんたはなーにニヤついてるのよ」
シン「気のせいだ」

そんな幼馴染が誇らしくて、皆の中心になれているのが喜ばしくて。
ほんの少し、笑みを浮かべていた。

男子生徒5「んじゃあさ、役は誰がやるよ!?」
男子生徒6「おまえなぁ・・・まだ八神さんが変えるかも知れないのに役決めしてどうするんだよ?」
女子生徒3「気が早すぎ、ちょっとは空気読みなさいよね」
男子生徒5「う、うるさいな!疑問に思っただけなんだから、気にしないでくれ!!」

そのまますねるような仕種をする男子生徒に、はやてが思い出したように語り掛けた。

はやて「あ、大丈夫やで。さっきも言ったけど、筋が違うだけやから・・・まぁ、メインキャストの王子様とお姫様は変わらんよ」
女子生徒2「まじまじ!?」
女子生徒1「じゃあ、お姫様は誰がいいかなー」
女子生徒4「そりゃ断然フェイトさんでしょ!!あの金髪・・・あのナイスバディ・・・そして私達にも優しくしてくれる笑顔・・・


      まさしくお姫様はフェイトさんよ!!」
フェイト「えぇ!?」

突然の流れに、フェイトがおろおろとし始める。
あまり見ない親友の姿になのはが何かフォローをし始めようとした途端


男子生徒1「いーや!!お姫様は高町さんだ!」
なのは「え?私?」

突然呼ばれて振り返る。
あまりにも唐突なその言葉に、なのはがしどろもどろとおろおろし始め

シン「っておい!なんで抱きつくんだ!?」

シンに何故か抱きついた。
だが、局所に起こる混乱など、この暴雨の前では水滴にすぎない。

女子生徒3「ちょっと!なんで高町さんなのよ!!外国的な物語なんだから金髪はお約束でしょ!?」
男子生徒1「甘いな・・・確かにフェイトさんの金髪も捨てがたい・・・しかし!この物語は笑えないお姫様の物語!!
      いつもシンにたいしてにこやかに微笑んでいるフェイトさんでは役柄が違う!!」
女子生徒5「・・・高町さんも、いつもシン君に微笑んでる」
男子生徒1「だからだろう!?だからこそそういう顔を見てみたいっていう渇望があるんだよ!!」
女子生徒2「なにそれ、それだったらフェイトさんも一緒でしょ?」
男子生徒3「俺は月村さん!!」
女子生徒6「なにぃ!?それだったら断然アリサさんでしょ!?勝気!強気!ツンデレ!!更には金髪!!そして極め付けにくぎゅーーーー!!
      これ以上の猛者が何処にいるのよ!!?くぎゅーーーーーーーーーーー!!」
シン「・・・お姫様は人気だな・・・」
男子生徒4「ちなみにお前は王子役な。はい決定!」
シン「はぁ!?勝手に決めるな!!俺は小道具作製でいい」

突然振られたシンに、しかし周囲は逃さない

女子生徒2「はぁ?なに言ってんの?お姫様がさっきの四人の誰かなんだから王子役はシン君でしょ!?」
シン「なんでそうなるんだよ!?」

シンの心からの突っ込みに、瞬間クラスが静まり返る。

女子生徒1「・・・ねぇ、あれガチで言ってるの?」
なのは「えと・・・うん」
女子生徒3「まじ?まじなの?」
フェイト「うーん、シンっていつでも本気だから・・・」
男子生徒2「ありえねー。ありえねーよ・・・」
アリサ「あの・・・馬鹿・・・」
シン「な、なんなんだよ・・・おいはやて、何とか言ってくれ・・・って、はやて?」

いきなりホームグラウンドでアウェーになりつつあったシンは、最後の頼みとはやてに頼み込む。


しかし、彼女は

はやて「・・・なんでわたしだけ候補に挙がってないん?」

床にへたり込んでさめざめと泣きながらのの字を指でなぞっていた。
その光景に、他のクラスメイトも気が付き、なぜかしまったという顔をする。

女子生徒2「あのー・・・八神さん?」
はやて「わたしかてお姫様やりたかったのに・・・」
男子生徒1「い、いやでも・・・八神さんは脚本で、監督だから・・・」
はやて「監督が主演の作品とかあるもん!座頭市とか最高やったもん!!」
シン「おいはやて、なにすねてんだよ・・・」
はやて「むーー・・・・」

むすっと膨れたはやては、やはり気に入らないらしく

はやて「・・・・・・決めた」
シン「は?何をだ?」
はやて「決めた、もう覆せん」
シン「いや、だから何をだよ・・・っと」

なのはが抱きついたままシンが顔を見ようとした瞬間。
はやてが立ち上がり、そして

はやて「男女逆転劇にする!!」
シン「は?」

わけのわからない言語を話し始めた異星人を見る目つきで、シンがはやてにクラスの心境を代弁する。
はやては気にもせずにうんうんと頷き

はやて「せや、私が選ばれへんのやったら意味無いわ。ちゅーわけで、男女逆転劇や!!お姫様は男子が、王子様は女子がやるんやで!!
    あ、これ通らんかったら私シナリオ書かんから」

とんでもないことをサラリと、しかも凄まじい王様発言を満面の笑顔のドヤ顔で言い放ったはやてに

シン「お前ちょっとはさっきまでの感動返せよ!!!!」

今日、二日連続でクラスの心が一つになった、シンのクラスメイトの心の代弁突込みが炸裂した。




◆□◆□◆

ちなみに・・・・
今回一番の被害者は大チャンスを逃してしまったマユでも
ひたすらいじられ続けたなのはでも、
色々と人間関係にヒビを入れられそうなシンでも
自分がなにやら百合めいた目で見られていたことが明らかになったアリサでも
ましてや自分勝手にいい話を台無しにしたはやてでもなく。



すずか「えと、あの・・・・先生?なにしてるんですか?そんな教室のドアの前で泣き崩れちゃって・・・」
新任教師「つ、月村さぁーーーーん・・・せ、先生は、先生は要らない子なんですかぁああああああああぁぁ!?」
すずか「ちょ!先生!!ここじゃ目だって・・・あぁもう、シン君は何をしてるの?」

全く出番が無かったすずかと。
遅刻してしまったために一致団結した教室に入ることも職員室に戻ることもできずにおろおろしていた新任教師(めがねで巨乳。実は美人)
の二人である。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年10月24日 06:19
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。