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この作品にはあるネタが含まれています。TS、逆転、反転などにティンとこられて嫌悪成される方は読み飛ばしていただけると幸いです。
なのは「あのね、シン君」
それは、放課後の帰り道の途中。
唐突に語られた言葉だった。
高町なのはとシン・アスカは、日が沈みかけ、夕日によって赤く染め上げられかけている町を二人で歩いていた。
季節は春の様相を見せながらも、未だ肌寒い。
なのはは厚手のセーターに身を包み、シンもまた長袖を着用している。
もっとも、シンは袖をめくり、襟元もネクタイを緩めたままであるのだが・・・
その姿がなのはは嫌いではなかった。
ぼさぼさの黒髪に、鋭い瞳の彼にはその姿がやけに似合っていたからだ。
かといって、それが粗野には見えないような絶妙なライン。
粗野ではなくラフとワイルドの間にあるような妖しさ。
シンは不思議そうになのはを見やる。
シン「・・・なんだよ、いきなり」
なのは「うん、あのね。ちょっと相談したいことがあるんだけど・・・」
シン「重要なことなのか?」
なのは「うん、割と」
なのはを見つめる気だるげだったシンの赤い瞳に真剣さが宿るのを見て、なのははつと見上げていた視線を下げる。
唇を少しだけかみ締めて、己の本心が悟られないように。
シン「腹も減ったしな・・・スタバでも行くか・・・」
なのは「ううん。歩きながらでいいよ。シン、今月はお小遣いピンチでしょ?」
シン「いいんだよ。俺が今すぐコーヒーが飲みたいんだからな」
ぶっきらぼうな、それでいて分りやすい気遣い。
なのはに対して大切なことを話すためにどこか場所を設けようと言うのだろうが
内心でそっと微笑み、再びシンを見つめなおす。
最近自分の身長を追い越した彼を見つめて
なのは「あのね・・・この間、なんだけどさ・・・・」
ユックリと大きく息を吸い込む。
陽射しは暖かくとも、冷たい空気が肺の中に広がり自分自身が冷静になるような錯覚に陥る。
無論、それは錯覚でしかなく、冷たさが冷静さに転じることなどありえるはずも無いのだが。
赤い瞳からさっさと話せというような死線に突き動かされるように、なのはは言葉をつむぐ。
なのは「ユーノ君から・・・告白されたんだ」
なのはのその一言に、シンは大きく目を開き、歩みを止めて
シン「はぁ!?」
信じられない問いばかりに大げさに声を荒げた。
シンとなのはは幼馴染
~四月馬鹿の大盤振る舞い~
シンは視線だけを動かして内心でそう叫んだ。
冷静になれと心の中で繰り返し、息を吸い込もうとして、やめた。
そんなことをしても意味はないと思ったからか、それとも別の理由からなのかは彼にもわからなかったのだが・・・
シンとなのはたちには共通の友人がいる。
一人は金の髪を持つハラオウン家の養女、フェイト・T・ハラオウン。
一人は茶色の髪を持つ、明るい彼女達のムードメイカー、八神はやて。
彼ら四人は、幼い頃から死線をかいくぐった戦友同士であり、一線級の魔道師である。
笑い、怒り、悲しみ、時には喧嘩することさえあったとしても、その認識に間違いはなく、前線においてその力を遺憾なく発揮した。
しかし、そんな四人以外にもう一人。
影の立役者というべき者が存在する。
彼らのように華々しい戦果を上げるわけでもなく、彼らを率いる将でもない。
時には彼らの戦いをその知略で救い、その優しさで和ませ、勇気を持って前線へと赴いた者。
ユーノ・スクライア
彼女達のように卓越した魔力も、攻撃手段も何も持たずに。
それでもなお彼女達と共に戦い抜いた戦友である。
だから、なのはの呟いた言葉にその名前が出てきたこと自体が信じられなくて
シン「・・・告白、されたのか・・・?」
なのは「・・・うん」
シン「いつ?」
なのは「えと・・・この前の任務の後だから・・・一週間前、かな?」
シン「誰、からだ?」
なのは「えと・・・ユーノ君」
なのはの言葉を、一つ一つかみ締めるようにシンは空へと視線を向ける。
赤い空、赤い雲、そしてわずかばかりの暗い藍色へと変化しつつあるそれらを見つめて何を言えばいいのかとわずかばかり口の中で反芻しながら、とりあえずの言葉を探し出した。
シン「・・・そうか・・・」
なのは「そうかって・・・なんかいい加減だなぁ」
本気で相談してるのに、となのはがふてくされるのを気配で察したが、シンにとってはそれは仕方の無いことだった。
その内容はあまりにも重大で、唐突で。
ぶっちゃけ信じられないことではあったのだけれども・・・
シン「それは、まぁ・・・重大だな、割と・・・」
なのは「うん。かなり、かな」
分りきった社交辞令でしかなかったが、返された言葉にシンはため息を付きたくなるのを懸命にこらえた。
これ以上の不幸なんていらないし、それがただの迷信だとしても、確率としては排除していきたいのだ。
まぁ、それでも一言文句は言っておかねば気がすまないのだが。
シン「ていうか、そんな重大な話を帰り道で言うなよな・・・」
なのは「だって、シン君と二人っきりなんて今くらいしかないんだもん」
シン「しかし、だからって・・・」
なのは「フェイトちゃんやはやてちゃんにも相談なんて出来ないもん・・・あの二人が何を言うかなんて決まってるんだから」
シン「あー・・・まぁな」
うねるような納得の言葉に、シンはここに居ない二人の戦友を思い浮かべた。
彼女たちはどういうわけか、彼に想いを寄せている。
それこそ、普段は人の好意に対して鈍感なシンでも気が付いてしまうほどに。
しかし、彼らは距離が近すぎた。
戦友として男女の区別なくいられた時代から、当たり前のように共にいたのだから、それもやむなしである。
本来ならば、彼女達の誰か一人と心を通わせればいいというだが。
シンにはそれが出来なかった。
あまりにも皆が近すぎて、皆で共にいるのが当たり前すぎて。
誰一人として離れて欲しくないなどと思ってしまうほどに。
ある意味では、シンこそが彼女達に依存しているといえるほどなのだが・・・
余談ではあるがそんな彼を見て某喫茶店の長男は「このヘタレが!!」という言葉と共に末の妹に頭を冷やされたと言う。
ちなみにその日、桃色の光が地上から夜空へ向かっていると言う目撃情報が多数確認された。
その後、なのはが夜空を見ながら某野菜人の一人が言った「花火に対する悪口」を口にしていたのはいまだに忘れがたい思い出だった。
ある重病患者は、その光を見て自分の命を懸けた手術に挑む決心をして、見事成功したという話があるが今は関係ないので割愛する。
ともあれ、そんな風にシンを中心としたスクェアラー(実際はもっと多いのだが)が展開し、だれか一人が抜け駆けしようとすると他の二人に阻止されると言う現状が続いていた。
また、これを見て某提督の息子は「これぞアスカ三分の計」とのたまった後に金色の稲妻にその身を焼かれることとなった。
だからこそ、動かせるとしたらシン本人しかおらず、誰も彼もがどうなるのかとトトカルチョに目を向けている中。
突如として外部からの侵攻を許してしまったのである。
これを、フェイトとはやてが知れば嬉々としてユーノとくっつくように仕向けられてしまうだろう。
さらには、他にもえげつない手を打って出てくるのかもしれない。
親友同士でそれはどうなのかと思わなくは無いのだが、普段の暴走した彼女達を良く知るシンにとってはそれは用意に想像できる最悪の未来予想図の一つであった。
心の中で呟いて、なのはを見やる。
なのはも、どうしていいのか分らないのか、シンを見つめたまま彼の出方を伺っていた。
しばしの沈黙が流れ、シンはつと前を向き歩みを再開させる。
なのは「あ!ちょっとシン君!!まってよ~」
いきなり帰り始めた想い人に、なのはが文句を言いながらも追いつく。
そのまま横に並び、頬を膨らませシンをジト目でにらむ。
なのは「・・・いきなり逃走って、ひどくない?」
シン「いつまでもあんな所で青春物語なんざやってられるか・・・歩きながらでいいだろうが」
なのは「歩きながらのほうが、恥ずかしい気がするけど?」
シン「それでも誰が聞き耳立ててるかわからないんだ、こっちのほうが良い」
なのははそういうものなのかと呟く。
やはり、男の子というものは良く分らない。
これまで十年近くを共に過ごし、お互いが空気のようになっていてもいまだ彼との間には大きな溝がある気がする。
それは、男と女という大きすぎる溝ではあるのだが・・・
シン「俺は」
考えていたなのはの思考を無視するように、シンが口を開く。
その唐突な一言に、なのはもにらみつけるのをやめて、静かに彼の言葉を待つ。
シン「俺は、お前の気持ちを尊重する」
なのは「・・・シン」
その言葉に、なのはは無性に悲しくなった。
まるでなんでもないかのように、彼女などなんでもないかのように感じられて。
気持ちの降下に従うように、視線が地面を向いてしまう。
一体何を期待したのかと、これまで誰も選べなかった彼に、どうしろと言うのかと。
暗く、重い感情に支配され
なのは「・・・それって、さ。わたしがユーノ君と付き合ってもいいって事なの?」
シン「選ぶのは、お前だ・・・幾ら俺が何を言ったって。お前の気持ちが違うのなら・・・仕方ないさ」
なのは「私が・・・シン君以外の誰かと一緒にいてもいいっていうの?」
シン「それも含めた上での尊重、だ。なにせ、俺は臆病だからな」
なのは「わたし、シンのそういう自嘲的なところ、好きじゃないな」
シン「別に、性分だからな」
あぁ、彼はいつまでも彼なのだと、なのはの瞳が潤み始めた時。
シン「けどな」
なのは「・・・?」
これまでの自嘲を含んだ声ではなく、しっかりとした芯の通った声に、なのはが顔を上げる。
シンの顔は少しだけ歩幅を広げたせいかあまり見えない。
シン「もし、お前が離れて行くっていうのなら・・・許さない」
なのは「え?」
なるほど。
確かになのはとユーノはお似合いだろう。
なのはのように光が燦々と降り注ぐような明るく、優しげな風貌に心には。
ユーノのような穏やかで優しい笑みが良く似合う。
それは自分のように斜に構えた性格でも、人を小ばかにするような言葉や笑いでもなく。
ただ壊すことしか出来ない自分などでは到底たどり着けない境地であることは理解している。
しかし・・・
シン「お前は・・・お前らはもう俺の一部なんだ。それなのに、勝手に誰かのものになろうとするな。そんなことは許さない」
なのは「えと・・・どういうこと?」
シン「~~~~ッ!!だから!!」
なにやらちぐはぐなことを言い始めた彼に、なのはの疑問が刺さる。
シンはそれに対して肩を怒らせ始めながら、何かを噴出させるように。
シン「お前らは!その、あの・・・俺のなんだよ!!だから、その・・・お、お前らの気持ちなんて知ったことか!!」
前を向いたまま、顔を背けて言い放った。
なのははその言葉をユックリと吟味しながら、しかし彼は言葉をとめない。
シン「大体!!俺は選ばないんじゃない!!全員を選んだんだ!!それをあの人は・・・自分だって義理の妹やらイギリスのご令嬢やら忍さんやらがいるくせに・・・好き勝手言いやがって畜生!!」
なのは「いやいや、お兄ちゃん忍さん一筋だし。てかシン君、さっきと言ってること変わってるよ?私の気持ちを尊重するんじゃなかったの?」
シン「はぁ!?だから尊重してるだろうが!!俺から!お前らを!離さない!!これ以上ないだろうが!!」
なのは「うわ、幾らなんでもそれは男尊女卑じゃない?すこし引くよ?」
シン「やかましい!!」
歩幅を増やして前を行くシンを見て、なのははクスリと笑う。
潤んだ瞳をそっと手でぬぐい、彼の側へと駆け寄るために。
その傲慢で、優しい、きっと今頃は頬を赤らめ「なぜあんなことを言ってしまったのか」と心の中で悪態を付いているであろう彼女の暴君の下へと向かい
シン「あぁ、それと一つ聞かせてくれ」
なのは「なに?」
いつもよりも当社比2倍は鋭い瞳に、ドキドキさせるなのはに対して。
シン「ユーノって・・・女だろう?」
そういう趣味なのか?と戦友にして異界の親友に思いをはせ、これから彼女にどうやって顔を合わせればいいのかと思考していたシンに対し。
なのは「あぁあれ?嘘だよ。今日ってエイプリルフールだし」
まるでなんでもないかのようにのたまった。
ちなみに、この後なのははシンにしばらくの間口を聞いてもらえなくなったと言う。
その姿を見てフェイトとはやてはネタに走った親友に対して最敬礼を送ったのは、また別の話である。
ユーノ・スクライア。
遺跡発掘などを生業とするスクライア家に生を受ける。
その後、PT事件や闇の書事件などへと関わりながらも自身の研究分野へと躍進していった。
女性であるのだがその名前と一人称が僕であることやその口調から性別を間違えられることがある。
ちなみに現在恋人は居ない。
しかし、片思いの相手がいるらしいのだが、ライバルが多すぎてどうしても一歩が踏み込めないとのことである。
また、彼女が酔っ払った時にロケットを開いて中にある写真に対し
「ぼくだってがんばってるんだよ~」
「う~・・・もっとかまってよ~」
「ひっく・・・ぐす・・・ンのばか・・・・」
などと呟いている姿が確認されたと言う。
2
なのはとシンは幼馴染・外典
なのは「フェイトちゃんはかわいい。そしてシン君はかっこいい」
なのは「金髪の美少女と、黒髪の美少年が、一見平凡だけど実は凄い才能を持った美少女(私)を奪い合う」
なのは「百合、戦闘、お色気・・・様々な要素を凝縮し、それでいて修羅場も恋愛も併せ持つ・・・展開に」
なのは「まさにこれぞ私の夢!!私の業!!」
なのは「わが世の春が来た!!なの!!」
なのは「そう考えていた時期が私にも無かったの」
シン「ここまで言っておいてなかったのかよ!?」
なのは「え?だって、女同士とかありえないじゃない?」
はやて「せやな。非生産的やしな」
フェイト「私も、あんまりないかな?」
なのは「だって、女同士ってなに考えてるか微妙にわかっちゃうから・・・なんていうかありえないの」
シン「そういうもんなのか?」
はやて「あれー?シン、なんでわたしを見ながら聞いてくるのかなー?」
なのは「そりゃ、フェイトちゃんとはよく一緒に寝るし、思わず美人でかわいくて色っぽくて、うらやましいって思うけどさ」
はやて「たまに殺意を覚えてまうけどな。あの色っぽさは。特に胸の大きさとか!!」
なのは「あ、でも同性でもたまにむらっときちゃうような感じはあるの」
シン「おいこら」
なのは「なんていうのかな・・・コウノトリを信じている子供に無修正のポルノを見せ付ける感覚・・・っていうのかな」
はやて「俗に言う、純真無垢な子ほど汚してみたいっていうあらわれってやつやな?」
シン「はやて、なんで俺に相槌を打つようにいうんだ?」
なのは「だから、もしかしたら私がそういった感情を得ていた可能性はあるけれど・・・」
はやて「あー・・・なるほどなー」
シン「ん?どうかしたのか?」
フェイト「二人とも、なんでこっちを見てるの?」
なのは「あれを見てるとそういう感情も起こらなくなるの」
はやて「せやな」
フェイト「え?どういうこと?」(座っているシンに抱きついたりごろごろしている)
シン「?」(拒絶することなくそれを当たり前に受け入れている)
はやて「あんな小さい頃から子犬みたいに付きまとってるの見せられたら・・・そんな気も起きんわな」
なのは「寧ろ私もあんなふうに抱きつきたい。抱きしめたい。ごろごろしたいの。甘えたいの」
はやて「でも、あんまりなのはちゃんがそういうのをやってるところ見んな。どして?」
なのは「いや、その・・・は、恥ずかしい。から・・・」
はやて「乙女発言いただきましたー!!」
シン「んで、二人はなんであんなオーバーリアクションで小声なんだ?」
フェイト「どうしてだろうね?あ、シン枝毛があるよ」
シン「・・・お前もなんで俺に当たり前みたいに抱きついてるんだよ・・・この季節は暑いんだからな・・・」
3
「う・・・あ・・・」
八神はやては朦朧とする意識の中目を覚ました。
茹だる様な熱とまとわりつくような湿気が肌に汗の結露を結んでいる。
体は風邪をこじらせたようなけだるさとあやふやな感覚を伝え、まるで夢のように感じさせた。
しかし、この熱と雄と雌のすえた匂い、そして首に感じる圧迫感がそれを否定する。
まるで糊でとめられていたような瞼を渾身の力をこめてゆっくりと時間をかけて開いていく。
瞳に入る光量は少ないが、もともと暗闇に慣れた身にはさしたる不都合もなく、周囲を観察することができた。
一番最初に映ったのはコンクリートの床と薄暗い部屋。
それなりの広さはあれども目覚めたばかりで 薄暗いために完全には見通すことができない。
そして、
「あぁ、目が覚めたんですね」
自分につけられた首輪から伸びた鎖を、椅子に腰掛けながらもてあそんでいる一人の少年。
黒い髪に鋭い赤色の瞳、何も上半身にまとわずに白い肌をさらけ出しているそのよく知っている姿を確認して。
「し・・・ん・・・」
「えぇ、おはようございます。はやてさん・・・いや」
少年はにまりと、まるで獲物をいたぶる捕食動物のような笑みを浮かべて
「遅かったじゃないか、このメス豚」
彼、シン・アスカは言い放った。
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最終更新:2014年02月02日 13:46