このお話ではシンとISヒロインとの間にフラグが発生します。
もしそのような内容が苦手な方はスルーをお願いします。
第一話~~時空の向こうは不思議の学園でした~~
――数年前IS世界――
世界各地で白騎士事件以来の“ISらしきアンノウン”による襲撃事件が発生。各国の軍事、IS関連施設は壊滅的被害を受ける。
各国は無用な混乱を避ける為に情報統制を徹底。
“ある人間からの情報提供により"アンノウンを率いていた機体は髪の毛付きとガンダムと呼称されることになった。
φ
―― 多元世界。場所は宇宙――
「ミネルバ、こちらシン。異常なし、続けてパトロールに当たります」
(今日もこのまま何もなければいいけど)
ジ・エーデル・ベルナル、エグゼクターシステムとの戦いの後、世界は安定にむかっていた。
シンの所属するZEUTH――地球人緊急救援連合は人手不足である。先の戦い後、皆それぞれの役割の為にあるものは地球へまたあるものは木星や外宇宙へ旅立って行った。
それ以外のもの達は別の地区や宙域を担当している。そしてこの宙域を担当しているのがザフト及び旗艦のミネルバである。
(そろそろ帰投時間か、
戻ったらシャワーでも浴びて少し寝よう)
そう一息入れたその時だった。計器類からのアラートが鳴り響く。
「……! この反応まさか」
シンはデスティニーで反応のあったポイントに駆け寄る。
「やっぱり時空転移かまた何かがくるのか?」
デスティニーの視線の先には小さいながらも次元境界線に歪みが生じていた。
コンソールを操作し通信回線を開く。
「ミネルバ。こちらシン、
哨戒宙域にて時空転移発生。座標を送り――」
通信を遮るように再びアラートが鳴り響く。歪みが大きくなっている。
そしてシンは気づく、これはただの時空転移じゃないと、
「まさか時空震動!?」
飲み込まれれば何処に飛ばされるかわからない。
「マジかよクソッ!」
焦りを隠すこともなくデスティニーのスラスター出力を全開にし離脱を図ろうとするが、歪みはそれを上回るスピードで規模を広げデスティニーを飲み込んでいく。
(ダメだ間に合わない……!)
「うわあぁっ!」
激しい衝撃と光に包まれるなかシンは気を失う。そして多元世界から彼だけが姿を消した。
「――つまり、突如敷地内に現れたということか?」
遠くで声が聞こえる。誰なんだ?
「はい、織斑先生。気づいた時には既に倒れていて、一体どこから入って来たのか、それにこのIS……」
倒れていた? 誰が?
シンは声に導かれるようにまどろみの中から次第に意識をはっきりさせる。
どうやら自分はベッドの上にいるらしい。
上半身を起こし辺りを見回すと二人の女性がいた。
一人は出るとこは出て絞まるところは締まっているメリハリの効いたボディライン。そして緑のショートヘア、やや幼さの残る顔立ちに眼鏡を掛けた女性。
もう一人はスーツの似合う背が高い鋭い目つきをした威圧感のある女性だ。
(ここはどこだ? 俺は確かデスティニーに乗って時空震動に巻き込まれたはずだけど……)
「目が覚めたようだな。
今から幾つか尋問をする。
お前は何者だ?」
スーツの女性が問い掛ける。立っている為かシンを見下ろす形になる所為で威圧感が増しているように感じた。
「えっと、シン、シン・アスカです」
「何処かの組織に所属しているのか?」
シンが着ているパイロットスーツの左肩に描かれたザフトのロゴマークを見て問い掛ける。
「はい、ザフトに」
「ザフト?」
(ザフトを知らない? それなら)
「じゃあ、ZEUTH、地球人緊急救援連合というのは?」
「聞いたことがないな山田君は?」
「いえ、私も聞いたことが……」
やや困惑気味の表情で、眼鏡の女性はかぶりをふり否定の意をしめす。
(そんな……! ザフトもZEUTHも存在しない世界なんて……俺は一体どこに飛ばされたんだ?)
この世界は多元世界や時空崩壊とは関係ない世界ということだろうか?
もしそうだとしたら、こちらの事情を話しても信じて貰えないだろう。こんな事は初めてだ。
「尋問を続けるぞ。なぜお前はIS学園の敷地内で倒れていた?」
スーツの女性が質問し、シンは思考の海に沈みかけた意識を引き上げる。
「倒れていた? 俺がですか?」
どうやらここは学園らしい。するとこの二人は教職員だろうとシンは考える。
「他に誰がいる? お前は学園の敷地内で倒れ、気を失っていた。」
(そんなバカな!)
シンは気を失う直前まで確かにデスティニーのコックピットにいた筈である。
何かの拍子にコックピットから弾き出されたのかとも考えたが、いくらシンといえどもそんな事になれば無事では済まない。
「それが、俺にもよくわからなくて気がついたらベッドの上だったんで……何でこんな事に……」
嘘は付いていない。デスティニーのコックピット内で気を失い目が覚めたら見知らぬ天井だったのだから
(とぼけている様子は無さそうだな……少なくとも“何故自分がここに居るか”についてはだが)
何故ここに居るか分からないと言うことは何かしらの目的があってここに侵入してきた訳ではないということか
スーツの女性はおおよその推測を立てる。
(そういえばデスティニーはどうしたんだ?)
転移する時機体ごと歪みに飲み込まれた以上デスティニーも在るはずだとシンは考えた。
「あの、俺が乗ってたモビルスーツは?」
「モビルスーツ? 発見した時はお前とこのIS以外、何もなかった筈だが」
スーツの女性が手に持ったピンク色の携帯電話を見せる。それは確かにシンの持っていた物であった。
「何でアンタがそれを持ってるんだ?」
それはシンの大切な妹の形見である。
幾ら尋問されている身とはいえ他人に触られるのは気分のいいものじゃない。
シンは怒気を孕みつつスーツ姿の女性に問い掛ける。
「そう睨むな。倒れていたお前の近くに落ちていた」
「そ、そうだったんですか、拾ってくれてありがとうございます」
シンはばつが悪そうに礼を言う。
(ところで、ISって何だ? 携帯の事を言ってるようだけど)
「あの、携帯返して貰っていいですか?」
疑問は増すばかりだが、とりあえず形見の携帯を返して貰おうと手を伸ばす。
「ああ、だがまた後で見せてほしい」
そう言ってスーツの女性は携帯を差し出す。
二人の手が携帯越しに重なった瞬間、シンの頭の中に大量の情報が流れてきた。シンとこの世界を融合させ統合性を図るかのように
「どうかしたのか?」
スーツの女性の声でハッと気づく。
「あ、いえ何でもありません」
(――!何だったんだ今のは?)
シンは平静を装いつつ携帯を受け取る。正直内心気が気でない上に、頭が割れそうだったが唐突に、漠然にこの世界の事を理解した。
IS〈正式名称インフィニット・ストラトス〉
元は宇宙空間での活動を想定されたマルチフォーム・スーツであるが後にパワードスーツとして軍事転用されその圧倒的な性能により各国家の抑止力となった。
女性にしか扱えずそれ故に女尊男卑の風潮が広まった世界。それがこの世界の成り立ちだ。
シンの元居た世界にもパワードスーツは存在していたが――グティと呼ばれる物で、こちらは後にモビルスーツに取って代わられた為今では殆ど使われない――それとは比べ物にならないほどのスペックをISは有していた。
(あのサイズでモビルスーツ並の戦闘能力か……そういえばこの携帯のことをISって言ってたけど)
「あの、この携帯がISって本当ですか?」
「本当ですよ。アスカ君は知らずに持ってたんですか?」
眼鏡の女性が答え、問い掛ける。スーツの女性はいつの間にか退室したようだ。
「ええ、まあ……」
(これがISだって!?)
俄には信じられないがこの世界の人間がそう言う以上事実なのだろう。転移してから――携帯が――ISになったのかその前からそうだったのか分からないが
「それで、ちゃんと調べたいからその携帯を見せて欲しいんだけどダメかな?」
眼鏡の女性が詰め寄り――ベッドの上に座っているシンの目線に合わせる為――両手を膝に当て前屈みの体勢で聞いてくる。
その所為か大きく開いた胸元から谷間が見えた。谷間だけでなく薄い青色のブラも……シンは慌てて視線を逸らす
アンタそれ絶対服のサイズがあってないだろ! とも言えずシンはどうしたものかと考える。
ISとはいえ妹の形見であることに変わりはない。だからといってこのままでは埒があかないのもまた事実。
不意にドアの開く音がする。スーツの女性だ。
「山田君、許可が下りた。そっちはどうだ?」
「それが……まだ……」
「あの、許可って何ですか?」
「お前のISを分析するのにラボを借りる許可だ」
(最初から調べる気満々じゃないか……)
「分かりましたよ」
ため息をついてシンは携帯をスーツの女性に渡す。
「なんか凄く大事なものみたいなのにごめんなさい」
眼鏡の女性が申し訳なさそうに頭を何度も下げる。
「気にしないで下さい。俺も何でこいつがISになってるのか気になるんで」
どちらにせよ侵入者である自分に選択権など無いことはシン自身が一番よく分かっていた。
「そういえば、こちらの自己紹介がまだでしたね。私は山田真耶って言います。そしてあちらの方が――」
「織斑千冬だ。ここで待っていろ。
鍵は掛けさせてもらう悪く思うな」
千冬はそう告げ真耶と一緒に退室する。
(どのくらい待てばいいんだ……?)
とりあえず今は二人を待つことにした。
Ф
「山田君、奴をどう思う?」
二人は別室のラボへ向かっていた。
「アスカ君のことですか? 悪い子には見えませんでしたけど」
「そうか……」
(……先ほどのあれは何だ?)
“先ほどのあれ”というのは、シンに携帯を渡し二人の手が携帯越しに重なった時のことである。
シンがこの世界の情報を得たように千冬もまたシンのもと居た世界――多元世界――のことを唐突に漠然とだが理解していた。
故にシン・アスカが悪い人間ではないということは千冬にも分かっていた。
(どちらにしろ全てはこのISを調べてからか)
そうこう考えてる内にラボへ着く。二人はカードキーを通し中に入る。
「不明な部分が多すぎますね。」
携帯を解析器にセットしコンソールを操作しながら真耶が千冬に話しかける。
解析に掛けてみた結果ある程度までは分かったがコア以外にも所々解析不能な部分があった。
「解析不能な部分には未知のテクノロジーが使われているみたいですね。
それにデータの一部が欠落しているみたいで……」
「もう少しだけ続けよう」
千冬も解析に加わりコンソールを操作すると、突如目の前のモニターが切り替わる。
(これは……OSか?)
MOBILE SUIT NEO OPERATION SYSTEM
Generation
Unrestricted
Network
Drive
Assault
Module
G.U.N.D.A.M
――Ver.2.5.3 Rev.07――
Z・A・F・T
(ガンダムだと!?)
OSのイニシャルを見た千冬は、目を見開き驚愕する。ガンダムという言葉に心当たりがあるからだ。
「織斑先生、どうしたんですか?」
「……いや、何でもない」
(このISは“あの事件”と何か関係があるのか?)
あの事件とは、織斑千冬が現役引退前に起きた今では知る者が殆どいない隠蔽された事件。
その中心にいたISらしきアンノウンの中にガンダム――上層部による呼称――と呼ばれる存在があった。
(偶然にしてはできすぎている……)
恐らくシン・アスカはこの事件に関係してない。だが、ガンダムというISがここにある以上ただで帰すわけにはいかない。
「あいつはこれがISだと知らなかったそうだな」
「はい、そうみたいです」
腕を組み、顎に手を当て考える。
「山田君は引き続き解析を頼む。私はシン・アスカの尋問を再開する」
思考を終え、そう告げると千冬はラボを退室した。
Ф
シンは改めて自分の居る部屋を見渡す。あるのはまる椅子二つと自分が腰掛けているベッドのみ。なんとも素っ気ない部屋であった。
(問題はどうやって帰るかだよなぁ)
この世界が多元世界とまったくの繋がりが無いなら、此方から帰るのはほぼ不可能だろう。向こうからの接触を待つしかない。
可能性としては特異点センサーに引っかかるのを待つしかないというのが現状である。
まだ幾つか気になることはあったが――携帯を受け取った時にこの世界の情報を得た事など――
ドアの開く音によってシンは思考を打ち切る。ドアの前には千冬だけが立っていた。
「何か解りましたか?」
預けているのは妹の形見である。シンとしては出来れば早く返してもらいたい
「済まないが、もう少しだけ調べさせてくれ」
「そうですか……」
仕方ないのは分かっているがやはり落胆してしまう、落ち込むシンを見かねてか千冬が告げる。
「終わったら必ず返す。心配するな」
「ここに来たのはお前に見せたい物があるからだ」
「見せたい物? ですか……」
「付いて来い」
「あの、ここって」
着いた先は、暗いモビルスーツデッキのような場所。自分達以外、人の気配が感じられない。不意に明かりが灯り、何かがシンの目に留まる
「あれって……ISですか?」
「訓練用だがな、これに触れてみろ」
第二世代型IS打鉄。それは両肩に大きな盾を纏った鎧武者のような姿をしていた。
「でもISって女性にしか反応しないんじゃ――」
「既に前例はある。やってみろ」
前例とは千冬の弟、織斑一夏のことだ。
前例がある以上、試してみる価値はある。それに本人が知らなかったにせよシンはISを所持していた。
何かあると千冬の勘が告げていたのだ。
「ハア、わかりましたよ」
シンはどうも納得いかない様子で答え、打鉄に触れる。すると打鉄は淡い光を放つ
「嘘だろ? こいつ動くのか?」
狼狽するシンをよそに千冬は思考を巡らせる
(さて、問題はここからだ……)
「もういい、手を離せ」
「あ、はい」
シンが手を離すと打鉄は沈黙した。
「あの、俺、自分がISを動かせるなんて知らなくって」
シンは焦りを隠さずに言う。まさかこの世界の人間でもない自分に反応するなんて思ってもみなかったのだから
「ああ、知ってる。お前がこの世界の人間でないことも含めてな」
「な、何でそれを!?」
「お前に携帯を返した時、
私の頭に直接情報が流れ込んできた。お前もそうなのだろう? 最もあれがISの能力かお前自身の能力かまではわからんがな」
シンはあの時か! 情報を得たのは自分だけではなかったのかと、思い返す。
「そこでお前に提案があるこの学園に入学しろ」
「入学ですか……でもいいんですか? 俺何かが……」
「貴重な男のIS操縦者だ。それにお前のISには解析不能な部分が多すぎてな、データが欲しい。どうせ他に行く宛てもないのだろう?」
確かにこの世界に来たばかりのシンに行く宛てなどない。
ならば闇雲に移動するより一カ所に止まり迎えを待つ方がいい。
「分かりました。あの、よろしくお願いします」
こうしてシンはIS学園に入学することになった。
最終更新:2012年07月03日 10:25