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ちくわヘルシー氏のIS小ネタ-02

1

カチャカチャ……

シン「よっし……できた、っと」
一夏「そんじゃ早速、スイッチを入れて試運転を――」

ガチャッ。

箒「二人とも、入るぞ――今日は何をしている? 機体の整備か?」

一夏「よう、箒。ほらほら、こっち来て見てくれよ、コレ」
シン「整備じゃなくて、ちょっとした工作なんだけど」
箒「工作とは、この丸い機械のことか? そっちは白色で、あっちは赤色だが」
一夏「ペットロボットの『ハロ』っつーんだ。雑誌に作り方が書いてあったし、プログラムソフトも付録で付いてたからさ。整備課から材料と工具借りてきて、シンと二人で作ったんだ。ほら、可愛いだろ?」
箒「やけにはしゃいでるな、どうした?」
シン「なんかハロを雑誌で見つけてから、ずっとこの調子なんだ」
一夏「俺にも分かんねーけど、妙に気に入ってなあ。どうしてだろうな? 懐かしい感じがして、部屋とか廊下とか連れまわしたくなるんだよ」
箒「なるほどな……しかしアスカ、お前はなぜ浮かない顔をしている?」
シン「……なぜだか分かんないけど、元上司の顔がチラつくんだ。関係ないはずなのに」
箒「?」
一夏「いいから早くスイッチ入れてやろうぜ? それ!」カチッ!

……コロ、コロコロコロ。

箒「おお、動いたぞ」
白ハロ『ハロ、ハロ。バナージ、元気カ?』
シン「バナージぃ?」
一夏「うがっ、いきなり俺の名前を間違えてやがる……。バナージじゃないぞ、俺の名前は一夏だ。いーちーかー。はい、りぴーと、あふたー、みー」
白ハロ『ハロ、ハロ。一夏、一夏』コロコロコロコロ
一夏「そうそう、その調子だ」
箒「驚いたな、コレはしゃべるのか?」
シン「ちょっとしたAIを積んでるんだ。それなりに会話できるみたいだな」
箒「ほう、そうなのか」
一夏「ハロ、あっちが箒だぞー。んであっちがシンだぞー」
白ハロ『ハロ、箒。ハロ、シン』
箒「……ロボットに名前を呼ばれるとは変な感じがするな。あっちの赤色のはアスカの分か?」
シン「ああ、簡単な性格設定もできるみたいだから、少しいじってたんだ。俺の方が早く作り終わっちゃったし」
一夏「いったいどんな性格にしたんだ?」
シン「うーん、性格は複数作ってみたけど……すっごく適当にやったから、どうなってるかは分かんない。とりあえず工具を返してくるから、二人でちょっと試しててくれよ」
一夏「おう、了解だ」
白ハロ『オ土産ヨロシク頼ムゼ、シン』
シン「ははっ、分かったって」

ガチャッ、パタパタ――

箒「待て、私まで一緒に試すのか?」
一夏「まあまあ良いじゃねーか。面白いだろ?」
白ハロ『箒モ一緒ダ、箒モ一緒ダ』コロコロ。
箒「まったく、仕方がないな。付き合ってやるか」


一夏「さーて、それじゃあ最初のヤツを試しますか」カチッ!
箒「簡単なAIなのだろう? それほどの違いは――」

赤ハロ『トゥ、ヘアーッ! モウ止メルンダッ! モウ止メルンダッ!』ピョン、ピョン。

一夏「……なんだ、このハイテンションなのは」
箒「しかも言っていることの意味が分からんぞ」
赤ハロ『シン、コノ馬鹿野郎ッ! バカヤロウッ!』
白ハロ『何言ッテンダ、コイツ』
一夏「これは絶対にミスだな、うん」
箒「さっさと次のヤツに行くとしよう」カチッ!
赤ハロ『俺ハ……焦ッタノカナ……』シューン…

箒「まったく、騒がしい性格だった」
一夏「何だったんだかなあ。まあ、設定を変えて、次だ次」カチッ!

赤ハロ『ハーハッハッハッ! モウ誰ニモ止メラレンサッ!』ピョン、ピョン。

箒「一夏、次に行くぞ」
一夏「ガッテンだ」カチッ!
赤ハロ『無駄ダッ! 抗ウカッ……!』シューン…

箒「……コメントをするのも嫌だ。次はマトモなんだろうな?」
一夏「……流石に三度目なんだから大丈夫だろ」カチッ!

赤ハロ『全機抜刀ッ! 突撃ッ!』ピョン、ピョン。

箒「どこへでも行ってしまえっ!」カチッ!
赤ハロ『ダガ覚エテオケ! ソノ一撃ガ穿ツモノハ……』シューン…

箒「もういい、私は部屋に戻る」
一夏「ちょ、待てって、箒。最後まで試してみないと――」
箒「断言するが、マトモなものは絶対にないっ! 私の勘がそう告げているっ!」
白ハロ『箒、落チ着ケ、落チ着ケ』
一夏「まだまだあるんだから、一つくらいは平気なのが……あったら良いな」


赤ハロ『変ワラナイ明日ハ嫌ナンダッ!』

赤ハロ『生キルホウガ、戦イダッ!』

赤ハロ『キーシャーマーッ!』

赤ハロ『狙イハ完璧ヨッ!』

赤ハロ『許シマセンヨ、ギルヲ裏切ルナンテコトッ!』


箒「私は部屋に戻る。気にするなというのが無理だ。私は戻る」
一夏「ま、待ってくれよ、箒。もう残り一つだから、な? な? な?」
箒「離せ、嫌な予感がする」
白ハロ『スイッチ、オン』カチッ!
箒「待て、勝手にスイッチを入れるな――」



……コロ、コロコロコロ。

赤ハロ『ハロ、ハロ、一夏、箒』

一夏「おおっ! 最後にマトモなのが来たっぽいぞ!?」
箒「……確かに、コレならな」
赤ハロ『トモダチ、トモダチ』
白ハロ『トモダチ、トモダチ』
一夏「うん、こっちのハロとも仲良くやってるし、大丈夫だろ」
箒「しかし、今度はどうして普通なのか――」

赤ハロ『ハロ、守ルカラ。ミンナ守ル、約束スル』

箒「なんだ、作った奴に似ただけか」
一夏「設定をいじると、そうなるのかもな」
箒「ラウラとシャルロットには作らせない方が良さそうだ。あの二人に似たとしたら、何をしでかすか分からん」
一夏「あー、確かに。なんか大暴れしそうだな」
箒「騒動の一つには確実になるだろう。そして私達がとばっちりを食らうのも確実だ」
一夏「ははは……そう言えば、シンのやつ遅いな。もうとっくに戻ってきててもいい頃なんだが」

ガチャ。

シン「ただいま、遅くなってゴメン」
箒「やれやれ、ようやくか」
白ハロ『オカエリ、オカエリ』
赤ハロ『オカエリ、オカエリ』
一夏「シン、お帰り。何かあったのか?」
シン「ん、実はさ。途中でラウラとシャルに会って、ハロの話をしたんだ。それで――」
箒「まさか……アスカ、お前――」

シン「二人もハロを作りたいって言ったから、ちょっと手伝ってきた。性格も変えてみるらしいから、まず俺のがどうなったかを確認しに――」

箒「こんの馬鹿者がああああああぁぁぁぁっ!」ダダダダダダッ!
シン「へ?」
一夏「と、とりあえず二人を止めに行った方が良さそうだな。ハロ、行くぞ」タッタッタ。
シン「え?」
白ハロ『一夏、待ッテクレー』
シン「はい?」

ポツーン。

シン「……ハロ、俺って何か悪いことしたかな?」
赤ハロ『気ニスルナ、俺ハ気ニシナイ』
シン「はあ……」


余談。
結局この後ラウラとシャルがそれぞれハロを完成させるが、二機ともすぐに逃亡。整備課を占領して仲間を増やし、食堂でシンを取り合う全面戦争を始めてしまう。
赤ハロはシンを庇って犠牲になり、さらにこの騒動が原因でハロが学園内で全面禁止に。
一番泣いたのは、ハロを気に入っていた一夏だったそうな。


おまけ、没になったシャルっぽいハロ。

ハロ『ハロ、ハロ。シンハドコ、ドコ?』
箒『……アスカなら、まだ帰ってきていない』
ハロ『シンイナイ……サミシイ、サミシイ……』コロコロコロコロ。
箒「さっきまでの性格より随分と大人しくなったな」
ハロ『シン、約束シテクレタ。ズット一緒ニイテクレルッテ……』コロコロコロコロ。
箒「しかし……シャルロットにそっくりなのは気のせいか?」
ハロ『シン、好キ、大好キ。ズット一緒、ズット一緒。大好キ、大好キ』コロコロコロコロコロコロコロコロ。
箒「……どうしてこうなった」

2

ハロ『ハロ、ハロ。セシリア、鈴』コロコロ。
セシリア「……この丸い物体は何でしょうか?」
鈴「おもちゃのロボットじゃない? 誰がこんなモノを持ち込んだのかしら――」
ハロ『オ兄様ハドコダ、オ兄様ハドコダ』コロコロ。
鈴「うん、ラウラ以外考えられないわね」
セシリア「シンさんでしたら、こちらにはいませんわよ?」
ハロ『オ兄様イナイ、胸ガ張リ裂ケル、涙ガ止マラナイ、壊レテシマウ』コロコロコロコロコロコロコロコロ。
鈴「うわ、反応がラウラそっくり」
ハロ『ドコダッ、オ兄様ッ。オ兄様ッ、オ兄様ァ――ッ!』ピョン、ピョン。

コロコロコロコロ……――

セシリア「行ってしまいましたわ」
鈴「? セシリア、向こうからまた何か来るわよ?」

――……コロコロコロコロ。

ハロ『シンハ僕ト一緒。約束、約束、ズット一緒。大好キ、離サナイ、渡サナイ』

コロコロコロコロ……――

鈴「…………」
セシリア「…………」
鈴「私は何も見なかった、見なかったんだから」
セシリア「そうですわね、わたくし達は何も見ませんでした」

3

ザアアアアアアアアアア――

ラウラ「ちっ、買い物の帰りに夕立とは……運が悪い」
シャル「雨が降るなんて聞いてなかったからね、傘も持ってきてないし……」
ラウラ「傘を買って帰るか?」
シャル「これだけ降ってると、雨が止むか弱まるのを待ってた方が良いんじゃないかな」
ラウラ「それもそうだな。仕方がない、少し雨宿りをするか」
シャル「じゃあ、そこの喫茶店に入ろうよ」

   ◇

シャル「あちゃあ、全然弱まる気配がないや……」
ラウラ「かれこれ一時間だ。いくらか濡れるのを覚悟するしかなさそうだ」
シャル「荷物だけは濡らさないようにしないと。せっかく服もたくさん買ったんだから」
ラウラ「とは言うが、せめてもう一人はいないと厳しいぞ――」

――カラン、カラン。イラッシャイマセー

シン「良かった、二人ともここにいたんだな」
シャル「え、シン!?」
ラウラ「お兄様!? 迎えに来てくれたのか!?」
シン「ああ、傘持って行ってなかっただろ? 中々帰ってこなかったし、多分足止め食らってるはずだって思ってさ」
シャル「でもシン、そんなに濡れて……」
シン「ちょっと走ってきたから濡れたかも。まあ、俺のことは気にしなくていいって」
ラウラ「お兄様……私のためにそんな姿になってまで……」
シン「ほら、みんなも心配してるから。二人とも、早く帰ろう」
シャル「……うん! シン、ありがとう!」
ラウラ「お兄様! 帰ったら部屋に来て私をメチャクチャにして良いぞ!」
シン「帰ったら部屋に行ってメチャクチャに説教だ!」
シャル「はいはいラウラ、冗談が過ぎるとシンが雷を落とすからダメだってば」
ラウラ「むう……私の愛も未だに雨模様か」

   ◇

ザアアアアアアアアアア――

シン「荷物はなるべく俺が持つよ。はい、これが二人の分の傘」
シャル(……まあ迎えに来てくれるぐらいだから当然だけど)
ラウラ(……私達の分の傘は用意しているわけだ)
シャル(……シンと相合傘……)
ラウラ(……お兄様と相合傘……)
シン「? 二人とも、傘を握りしめてどうかした――」
シャル「ていっ!」バキッ!
ラウラ「フンっ!」バキッ!
シン「……はい?」
シャル「ゴメンねシン! 傘が壊れちゃったよ!」
ラウラ「すまないお兄様! 傘が壊れてしまった!」
シャル「だからシンの傘に入れてくれないかなっ!?」
ラウラ「だからお兄様の傘に入れてくれっ!」
シン「……俺にはシャルもラウラも傘を"壊した"ようにしか見えなかったんだけど」
シャル「ちょっと力が入り過ぎちゃって! 本当にゴメンね!」
ラウラ「お兄様、日本の傘は脆いのだな! 私は知らなかったぞ!」
シン「……いくら丈夫な傘でも、真ん中からわざと"へし折られたら"意味ないって」
シャル・ラウラ「「そんなことは! してな……い……?」

シン「あ、ちょうど良く晴れてきたな。良かった良かった」
シャル・ラウラ「「…………」」
シン「シャル、ラウラ。また降り出さないうちに行こう」
シャル「……ねえ、シン。その前に傘を広げてくれないかな?」
シン「え? けど、もう雨も止んだし……」
ラウラ「……お兄様、私からも頼む」
シン「? まあ、いいけど……」バッ!

シャル「僕はこっち!」ギュッ!
ラウラ「私はこっちだ!」ギュッ!
シン「えっ!? 二人とも何を――」
シャル・ラウラ「「 相 合 傘 ! 」」
シン「べ、別に傘に入る必要なんてないだろ!?」
シャル「ダメっ! このまま帰るからねっ!」ギュゥーッ!
ラウラ「帰るまでこの腕は離さんっ!」ギュゥーッ!
シン「でも――」
シャル「 ダ メ っ ! 」ギュゥーーッ!
ラウラ「 離 さ ん っ ! 」ギュゥーーッ!
シン「……分かったから! 分かったから早く帰るぞ! まったく――」ブツブツ…
シャル「……えへへっ」ギュゥ。
ラウラ「……ふふっ」ギュゥ。

4

 屋上をジリジリと照らす太陽に手をかざすと、掌にまで熱がしみ込んでいく。
 暑い。気温三十度を越える真夏日は伊達じゃなかった。
 それでも、本格的な夏を前にした外気の熱がどこか懐かしい。オーブの夏も、こんな風に湿度も高くて暑かった。
 普段は生徒に解放されている屋上だけど、流石に今は俺以外の生徒の姿は見えない。お肌の調子ってのを気にする女子たちは、こんな日に日光浴になんてする気になれないんだろう。
 かくいう俺もすぐに日陰に退避していた。手に持っているアイスが溶けないように。

 百円で買える、ソーダ味のアイスキャンディー。棒は二つ差し込まれていて、真ん中でパキッと割れるようになっているアレだ。マユとは、よく二人で半分こしてた。
 どうしてこんなものを買ったのか。ご大層な理由はなかった。ただ購買でアイスを見つけて、昔のことを思い出したからだ。
 折角のアイスだし、どうせなら外で食べよう。そう思って屋上に上がってきたんだけど、どうやらそれが正解だったみたいだ。
 空調のきいた食堂より、夏の雰囲気にひたれる気がする。それと同時に、オーブにいたあの頃にも。

 マユと外に遊びに行って、アイスを買って。二人で食べて、また笑って。ずっと笑っていた。
 忘れることのできない大切な時間。絶対に忘れない、背負って生きていくって決めた、大切な過去。

……ちょっと物思いにふけりすぎたみたいだ。
 早くアイス、食べないと。今は分ける相手もいないけど――

「――見つけた。シン、こんなところで何してるの?」

 アイスに手をかけたその時に、ふと声をかけられた。
 大事な人の声に気付いて顔を上げるとシャルが笑っていた。

「購買でアイスを買ったんだ。屋上で食べようと思ってさ、ここに来た」
「わざわざ暑い場所に来て? 変だよ、それって」
「暑い場所で食べるのが良いんだって――そうだ」

 シャルの綺麗な金髪から、背負った太陽の光が眩しくのぞいている。
 青いアイスを綺麗に割って、目の前のシャルに手渡した。
 大事な人だ。大切な人だ。今の俺が、アイスを分けられる人だ。

「ほら、シャルの分。早くしないと溶けちゃうぞ?」
「え、良いの?」
「これはこういうアイスだから。二人で、半分こだ」
「うん! ありがとう!」

 笑顔のままアイスを受け取ると、シャルは日陰にいた俺の隣に座った。
 空いた片手で俺の手を素早く取って、ニコニコと笑うシャル。
 またいつものコレかって苦笑しながら、俺もアイスを口にほおばった。

「日本の夏って暑いんだね」
「そうだな。これからもっと暑くなるぞ、きっと」
「あははっ、それは大変だなぁ」
「そう言うわりには、ちっとも嫌そうじゃないぞ?」
「うん、僕は嬉しいもん」
「どうしてだ?」
「シンがアイスを半分こしてくれるから」
「何だよ、それ」
「えへへっ。今度はオレンジ味が良いな、僕」
「あ、コラ。ちゃっかり次の要求するなよ」
「良いじゃない。ほら、約束約束!」
「まったく……分かったよ、約束する」
「うん! 約束だよ!」

 なんだかもう決まりきったような流れだった。
 二人で手を繋いで、またシャルとの約束が増えて。
 そうやって二人でいっぱい笑い合う。
 大切な人と一緒に。
 アイスはオーブにいた時と同じように、甘くて冷たくて、美味しかった。

   ◇

……なんだか良く分からないけど、食堂に戻ったらみんなが砂糖を吐いて倒れていた。
『甘い空気が屋上からまで』とか、『アイスの半分こは反則だ』とか、ぶつぶつ呟いてたし……どうしたんだろうな?
 ただ、みんなの視線が今日も濃かった気がする。

5


 マユと喧嘩をしたときって、俺はどうやって仲直りしてたんだろう?
 目の前でむくれる大事な『妹』を前にして、ちょっとそんなことを考えてしまう。
 そうだ。父さんや母さんが仲介してくれたときもあったけど、大概は俺が先に謝ったんだっけ。
 そうやって俺が謝ると、マユもすぐに許してくれて、それで二人で仲直り。
 じゃあ、今日も俺から謝った方が良さそうだ。

「ラウラ、俺が悪かったよ。だから許してくれって、な?」
「……フン」

 部屋のベッドに腰掛けながら、ラウラはふいとそっぽを向いてしまう。
 ああ、どうやらこの妹はそう簡単に俺を許してはくれないみたいだ。

 ラウラがこれだけ怒っているのは、今日の昼のことが原因だ。
 アイスを買って、シャルと屋上で半分こにして食べた。それをラウラが知って、除け者にされたと怒り心頭なわけ。
 わざとラウラを除け者になんて絶対にしない。ラウラも今は俺の大切な妹だ。そんなことするはずがない。
 そう言って説得することはしたんだけど、まだまだラウラは膨れっ面のままだ。
 怒ってはいるけど、ラウラが座っているのは俺のベッドの上。そこをどいてくれない。
 みんなでも無理だったし、シャルと一緒でも説得不能だった。仕方ないから俺以外の全員に席を外してもらっている。
 最終手段で、一夏には頼みごとをしてあるんだけど……
 と、ここで部屋をノックする音が聞こえた。一夏が帰ってきたらしい。

「シン、頼まれたもん買ってきたぞー」
「ああ、ありがとう。ごめんな一夏、部屋から締め出しまでして」
「俺のことは気にすんなって。兄妹だったら、喧嘩もするもんだろ?」
「ははっ、違いないや」
「じゃあまた後でな。駄賃代わりに饅頭も買わせてもらったし、俺は箒たちと茶でも飲んでるよ」

 そう言ってまた一夏は廊下を歩いていった。安いお礼だけど、少しお茶でも飲んでてくれると助かる。

「ほら、ラウラ」
「フン……」

 頼んだ品物を受け取って、枕を抱えたラウラのところに歩いていく。
 購買で買ってきてもらったそれを袋から取り出して、ラウラの隣に俺も座る。
 一瞬ムッとした顔を俺に向けたけど、俺の手にあったそれを見て、意外そうな表情に変わる。

「お兄様、それは……」
「大人気、購買限定デザートのデコレーションパフェ」

 これが一夏に買ってきてもらった最終手段。二人で分けることが前提の特大サイズで、値段も張る。でもそんなこと今は気にしていられない。

「これを半分こで、仲直りしてくれないか?」
「……っ! お兄様ぁっ!」

 その一言でラウラの顔がぱぁっと笑顔に変わって、俺の胸に抱きついた。
 パフェだけはひっくり返さないように死守しながら、それでもようやく、俺もほっとした。

「……っておいラウラぁ! なんで俺のスプーンを放るんだ!?」
「二つもいらん、一つで十分だ」
「俺にどうやって食えって言うんだよ!?」
「お兄様、"あ~ん"」
「そんな真似できるかっ!」
「してくれなければ、今日のことは許さん」
「ぐっ……あ~もう、分かったよ! ほら……」
「フフン、それで良いんだ。さぁ、今度はお兄様が私に"あ~んして"をする番だぞ」
「はいはい、"あ~ん"……これじゃいつ食べ終わるんだか」
「ん……私はいつまでもお兄様と、こうしていたいのだがな」

 すっかり機嫌のよくなったラウラが、嬉しそうに笑っている。
 それを見た俺も、なんだか嬉しくてたまらなくて、自然と笑顔になる。
 流石に"あ~んして"はちょっと恥ずかしいけど。
 また『兄妹』で喧嘩をするのも、仲直りをするのも、ホントに良いものだって思った。

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最終更新:2012年07月03日 10:40
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