アットウィキロゴ

東方小ネタ-20

1

「ミネルバよりインパルス! 直ちに帰還してください! これ以上は危険です!」
「分かってるよ! けど――ああもう!」
 叫び、シン・アスカはフォースインパルスガンダムを加速させた。船《ミネルバ》ではなく、摩擦熱で赤く燃えて見える地球へ。そこへ今まさに落ちよう
とするユニウスセブンの破片の上で、今も踏み止まっている一機のMSのもとへ。
「おい! 何やってんだよあんた! もう戻るぞ!」
「これだけでも作動させる! この岩が半分の大きさになれば、被害がかなり少なくなるはずだ!」
 そう答え、アスラン・ザラの乗るザクウォーリアは岩の上に突き立っている巨大な機械――メテオブレイカーのスイッチを入れた。信管が岩に潜り込み、
最後のカウントダウンが始まる。「よし。これで」「もういいな! 行くぞ! ――間に合わない気がするけど!」シンが叫び、インパルスがザクの手を引
いて上昇する。熱と磁場で計器が全てイカれている。もう地球の引力に捕まっているかもしれない。それでも諦める気は無かった。ただスロットルを押し込
み、最大出力でインパルスを翔ばす。
 がくん、とその上昇が止まった。「!?」同時に警報。接敵。「どこだ!」誰にともなく言い、レーダーを確認する。何も映らない。自機を示す中心で光
点が明滅するだけだ。
 ――中心「シン! 下だ!」アスランの声とほぼ同時に、シンは自機の真下を振り向いた。



 インパルスに手を引かれるザクの下半身に、半壊したジンがしがみついていた。「まだいたのか――クソ! 離れろ!」叫ぶが、シンにはどうにもできな
い。ライフルは先の戦闘で弾切れだ。サーベルも届かない。CIWSも角度的に当たらないだろう。「我らが同胞の墓標! 落として灼かねば、世界は変わ
らぬ!」テロリストの声。
「ほざいてろ! アスラン! そいつを排除できますか!」
「――シン、お前が手を離せ!」
「はァ!?」
「こいつは俺が処理する! 俺やこいつを連れたまま引力圏を離脱するのは無理だ! お前だけでも助かるんだ!」
「――馬鹿言ってんなァァァァ!」
 インパルスは手を離した。直後に宙返りして急降下し、ザクの下半身ごとジンにビーム・サーベルで斬りつけた。片手でザクを持ち上げながら、バランス
を崩したジンを蹴り飛ばす。「独りで死んでろ!」
「――まだ分からぬかああ!」
「何が!」
「我らコーディネイターにとって! パトリック・ザラの取った道こそが、唯一正しきものと!」
「――!?」
「知るかんなもん!」
 息を呑むアスランのザクを両腕で支えながら、シンが即座に言い返す。「勝手な理屈で勝手に戦争起こしたアホの言い分なんか知るか! いいから死んど
けカスが!」



「ザフトの、為に――!」
 叫びながら、ジンが摩擦熱で爆走し、細切れの炎となって消える。「――アスラン。ここで残念なお知らせです。インパルスの出力じゃもう地球の引力を
振り切れない。終了です」
「……」
「――? アスラン? 聞いてます?」
「…勝手な理屈で勝手な戦争起こしたアホの言い分、か」
「――あ――す、すいません。なんか」
「いや、それはいいんだ。お前の言う通りだよ。――ただ、ああして親父の言葉を今も信じてる、囚われてる人間がいると思うと、どうもな――」
「――」
 シンは一瞬言葉を失った。戦争が終わって、嫌気が差したからプラントを出た。それはいい。自分もその口だ。戦争は国家の醜い部分を嫌というほど人間
に見せつける。自分が今まで住んでいた国を嫌いになる奴がいても仕方無いと思う。でも――この男はそうではないらしい。何もかも嫌になって、全部投げ
棄てて逃げ出したわけではないらしい。でなければあんなテロリストの世迷言を気にしてやるいわれは無い。
 ――でも、だったら。「あんた――」
「? 何か言ったか?」
「あんたみたいな人が、なんでオーブなんかに――」



「…お前だってオーブの出身だろ」
「出身なだけですよ。あんな国」
「じゃあなんでザフトでMSのパイロットだ?」
「――」
 シンが答えを言おうとした瞬間、がくりとインパルスがバランスを崩した。エネルギー残量10%未満。セーフモード起動。パワー・ギアをOTから2へ
オートシフト。及びロック。「で? 終了だって言うなら、俺とここで心中してくれるのか?」
「絶対《ぜってぇ》嫌。だがちゃんと頼むんならしてやらないでもない」
「ほう? そんなに嫌われてはなさそうだな」
「心中の方じゃねーぞ。こういう時は、俺を助けろバカ野郎、ぐらい言うもんでしょ」
「――俺を助けろバカ野郎」
「…」「…」「…」「…」
「…分かったよ。何とかしてくれ。方法があるんだろ?」
「ザクのシールドを貸してください。インパルスの盾と冷却装置とでフル稼働させて、このまま大気圏に突入します」
「――出来るのか」



「仕様上はできません。でも他に方法が無い。何もしないよりはマシでしょ?」
「やれやれ。どんな奇抜なアイディアを出してくれるかと思ったら、割とたいしたこと無かった」
「無駄口を叩かない。盾を渡したらインパルスの後方についてください。緊急冷却モードは使えますか?」
「さっきから点きっ放しだ――!?」
 アスランの言葉は途中で途切れた。突然ザクがインパルスから離れ、きりもみしながら吹っ飛んでいく。「アスラン!? アスラン! 何やってんです!
?」
「分からん! コントロールが利かない!」
「くっそ――!」
 シンはけたたましく警告を鳴らし続けるディスプレイを殴りつけ、セーフモードを切ってスロットルを押し込んだ。「バカ! 止せ! お前だけでも生き
残るんだ!」「ここまで来て見殺しに出来るか!」ザクを目がけてインパルスが翔ぶ。しかし、すぐに失速した。ディスプレイが一瞬真っ赤に染まり、次々
に消える。「あ――」パワー・ゼロ。システム・ダウン。消え逝くディスプレイに爆走を始めるザクが映る。コクピットを断末魔の震動と、それまで感じな
かった凶暴な熱が侵食する。死ぬ。意識した。自分も。アスランも。
「――!」
 エネルギーを失ったインパルスが翔ぶ。ザクの機体が少しづつ近づき、伸ばした手が届きそうになる。

《遠く 離れてるほどに 近くに感じてる 寂しさも 強さへと 変換(かわ)ってく 君を想ったなら》



その間を何者かが横切った。回頭したインパルスの視線の先に、翼を広げた人型の『何か』がいた。

《街も 人も 夢も 変えていく時間に ただ逆らっていた 言葉を重ねても 理解(わか)り合えないこと まだ 知らなかったね》

 敵。本能が知覚し、ザクを背後に庇いながらビーム・サーベルを抜き放つ。

《君だけを抱き締めたくて 無くした夢 君は》

 敵の接近に合わせて踏み込む。警告と熱で視界が真っ赤に染まる。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。
真っ赤に。真っ赤に。

《「諦メナイデ」と言った》

 真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。
真っ赤に。真っ赤に。

《遠く 離れてるほどに 近くに感じてる 寂しさも 強さへと 変換(かわ)ってく 君を想ったなら》

 真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。
真っ赤に。真っ赤に。

《切なく胸を刺す それは夢の欠片》

 真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。
真っ赤に。真っ赤に。

《ありのまま 出逢えてた その奇跡 もう一度信じて》

 真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。
真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に――



 鳥の囀る声で目を醒ました。「…?」身体を起こす。薄っぺらい布団がシンの身体から落ちる。薄暗い部屋だった。木造に見える。板の隙間から外の光が
零れる。
「起きた?」
「!?」
 反射的に立ち上がり、ホルスターから銃を抜き放つ。扉を開けて入ってきたのは、大きな赤いリボンと紅白の衣装が目を引く少女だった。向けられた銃口
を意にも介さず、けろりと言葉を紡ぐ。「おー。元気元気。やっぱ男の子だね」
「…誰だよ、あんた」
「人に名乗らせる時は何とか。あとは分かるわね? あと、一応私命の恩人だから、それ止めてくれる? 見ての通り、私は丸腰のかよわい美少女だから。
そのくらいは譲歩してもいいでしょ?」
「……」
 一理ある。シンは銃を仕舞い、敬礼した。「ご協力に感謝します。ザフト軍ミネルバ所属、シン・アスカです」
「興味無い」
「お前が言わせたんだろうが!」
「私が知りたいのは、あんたが何処から来たかって事」



「だから、ザフトって言ったろ」
「ざふとって何」
「プラントの――ちょっと待て。あんたザフト知らないのか?」
「自分の常識を押し付けてくるやつって嫌いなのよね」
「――俺は答えたぞ。あんたは誰だ。ここは何処なんだ」
「ここは博麗神社。私は博麗霊夢。一応此処の責任者よ」
「神社――地球なのか? そう考えるのが一番自然だけど」
「幻想郷、よ」
「地名じゃなくて。地球かプラントのどっちかで答えてくれると助かるんだけど」
「……」
 この「……」に、霊夢はたっぷり150秒近くを費やした。「……地球、寄り?」
「首傾げんなよ」
「まあまあ。細かいことはいいじゃない」
「よくねえ!」
「じゃ、次の質問でーす」
「進行すんな!」
「あんた、どうやってここに来たの?」
「……」
 よし、誘導尋問だ。「落ちてきた」と答えて相手が否定的反応を示さなければ、ここは地球であると考えられる。「落ちてきた」



「落ちてきた? 何処から?」
「――ずっと、ずっと上。成層圏、で分かるかな」
「おっかしいなあ。私があんたを見つけた時は、どっちかっていうと『生えてきた』って感じだったけど」
「生えてきた!?」
「うん。壁からにょきっと」
「壁からにょきっと!? 俺壁からにょきっと生えてきたの!? ていうかガンダムもか!? ガンダムも一緒にそこの壁から生えたって言うのか!?」
「がんだむって?」
「モビルスーツだよ!」
「もびるすーつ??」
「またそれか――ああもういいよ。要するに俺は一人でそこの壁から生えてきたんだな?」
「うん」
「俺はいつから植物になったんだ……」
 シンは頭を抱え、うずくまる。「だから私も興味出たのよ。ただの行き倒れなら神社の敷地外に放り出して終了だけど、あんな珍妙な生え方されたらもう
気になって気になって」
「…この場合、植物として生まれてきた事を俺は神に感謝するべきなのか」
「感謝するのは勝手だけど、見返りを期待してんなら無駄よ。あいつグータラだから」
「なんでこんなことに……俺にはまだ、やらなきゃいけないことがあるのに……」
 落ちたユニウスセブン。燃え尽きようとしていたアスラン。ミネルバも降りると言っていた。まだ何も終わっていない。始まってすらいない。「…還りた
い?」



「当たり前だろ」
「ね、ほんとにどうやって此処に来たの? いったい誰の怒りを買って、どんな力を使えば、この結界まみれの幻想郷の、よりにもよってこの博麗神社に、
あんな珍妙な生え方できるの?」
「…こっちが訊きたい」
 それからシンは霊夢に促されるまま、自分が体験したことを話した。ユニウスセブンでの戦闘。大気圏突入。離れ離れになったアスラン。パワーダウンし
たインパルス。そこから先は紅いノイズが入って記憶が曖昧だったが、とりあえず分かっていることだけを話した。「……ふーん」
「成程」
「…何か、分かるのか?」
「……一つだけ、これじゃないかなっていうのはある」
 シンは顔を上げる。霊夢は真顔だった。本気の眼だ。信用できる。「聞かせてくれ」



「あんたは多分――ファイヤートリッパーなのよ」
「……はい?」
「ファイヤートリッパー。こないだ魔理沙に借りた大昔のSF小説に出てきたんだけどね。その能力が一番近いわ。簡単に言うと、火を見ると瞬間移動や時
間移動が出来る能力ね」
「…火なんて見てないけど」
「だからあんたは、多分その亜種なのよ。火を見ると瞬間移動できるっていうのは、つまり生物が本能的に怖れる火を見ることによって潜在的な生存本能が
刺激されて、人間の脳が普段使っていない領域の力――つまり超能力や念動力を発現させるトリガーになる、っていう理屈なんだけど、あんたも似たような
原因で、ここに跳ばされてきたのかもしれない」
「――原因って?」
「あんたの話によれば、あんたはここに飛ばされる直前明白な命の危機に曝されてた。そして火を見ていないのに力が発動したのなら、例えばそれに近いも
の――大気圏との摩擦熱による爆発的なエネルギーの上昇が、発動のキー、あるいはそのまま時空転移のエネルギーになったのかも知れない」
「……そんな、馬鹿な」
「馬鹿で悪かったわね。悪いけど今私に思いつくのはこれだけよ。気に入らないなら他当たって」
「……仮に、そうだとしたら」



 話についていけない頭を必死で回転させ、シンはぽつぽつと言葉を紡ぐ。「俺が、元の世界に戻るには」
「爆発的なエネルギーが必要ね。それこそ大爆発とか、ぶっといエネルギービームとか」
「飛んで火にいる何とかをやれってのかよ……だいたいモビルスーツも無いような場所で、そんなエネルギーがどうやって」
「結構簡単かもよ?」
「そうそう結構簡単に――何? 何だって?」
 自分を振り返ったシンに、霊夢はにやりと微笑んだ。「行こう。善は急げよ。ちょうど知り合いにそういうの得意な奴がいるから」
「そういうの得意って――ちょ、ちょっと待ってくれよ。おい」
「大丈夫大丈夫。ちょっといいのを一発もらうだけだから。ぱぱっと喰らってささっと還ればいいじゃない」
「ま、待ってくれって。喰らうって何だ? おい、人の話聞けよ――」
 面倒事はさっさと済ませよう、というように颯爽と歩く霊夢。それに手を引かれて引きずられるように歩くシン。
 ぱぱっと喰らってささっと還る。

 そんな簡単なことが出来ないのだと、二人はこれから思い知ることになる――


 東方飛鳥紀行
 零. 時を駆ける熱血少年《メルトダウン・タイムダイバー》



 次回予告

 もう勿体つけるのも無駄なので言ってしまうが、二人が向かったのは霧雨魔理沙の家だった。
 ヘイ大将、マスタースパーク一丁と軽めの気持ちで上がりこんで来た霊夢とその他一名に、魔理沙はこれまた軽めの気持ちで必殺魔法の数々をお見舞いす
る。もちろんマスタースパークは焦らす方向で。
 果たしてシンは無事、もとの世界に帰還できるのだろうか。ていうか生き残れるのだろうか。

 次回、東方飛鳥紀行『マスタースパークヤサイマシマシニンニクカラメアブラ』
 恋の魔法は、破滅の序奏。
「テメエ私のマスタースパークに変な呪文くっつけてんじゃねえよ」

2

シン「こんにちわ、霖之助さん」
霖之助「ああ、シンか。いらっしゃい。何か探し物かい?」
シン「花瓶を探してるんだ。今まで使ってたのが割れちゃってさ」
霖之助「花瓶か。それならこれとかどうだ?」
シン「あ、いいなそれ。これ下さい」
霖之助「毎度あり。包むから少し待っていてくれ」

霖之助「……しかし、随分と雰囲気が変わったな」
シン「え?」
霖之助「一年前に初めて会った時に比べて落ち着いた雰囲気になったと言ったんだ。とても魔理沙の着替えを見て狼狽えていた少年とは思えないな」
シン「勘弁してくれよ、霖之助さん……」
霖之助「ははは、これも命蓮寺の修行の賜物かな?」
シン「別に修行って言うほど大袈裟なことはしてないよ。まあ、色々やらされてるけどさ」
霖之助「どんなことをしてるんだい?」
シン「他の人たちと変わらないよ。早く起きて寺の掃除したり料理作ったり、それにお経を読んだり……後は白蓮さんの身の回りのお世話かな」
霖之助「身の回りのお世話?」
シン「うん。まあ小間使いみたいなものかな。お茶を運んだり写経の墨を擦ったりとか、あと着替えを用意したり湯浴みの時に背中を流したりとか」
霖之助「なかなか忙しそうだね」
シン「お陰で充実はしてるよ。じゃあまたよろしく」
霖之助「ああ」

霖之助「なんだろう。今さらりとトンでもないことを聞いた気がする」

3

ある夏の昼下がり、シンが川沿いで涼んでいると、突然河童の河城にとりに声をかけられた。

にとり「そんなわけでそこの人間。ちょっと写真撮らせてくんない? ダブルピースしてくれるだけでいいからさ」

シン「いやいきなりそんなわけでとか言われても」

にとり「いいからいいから。ギャラは弾むからさー」
シン「え、売る気?」

にとり「細かいことは気にするなって。ほらほら、ポーズ取って」

シン「やだよ。なんか怪しいし」

にとり「ああじれったいね! あんたのダブルピース写真が一部で求められてるんだ。四の五の言わずさっさと脱ぎな!」

シン「ちょっ、脱ぐなんて聞いてな……っ! なんだよそのマシンハンド!? やめっ、服が破れ、いやあああああッ!!」


強い日射しの下で、絹を裂くようなシンの悲鳴が辺りに響く――

とりあえず、幻想郷は今日も平和です。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2014年02月02日 13:42
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。