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シン「どうしてこうなった」
気を失ったシオニーを床に寝せ、ぐったりと頭を抱えてしまう。
ただ彼女の尊厳を守りたかっただけだったのに、ただそれだけだったのに。
一体どうして、こうなっちゃうんだろうね」
シン「うるせー! ナレーション気取ってんじゃないですよつーか何で生きてんだアンタ!?」
キラ「細かいことは気にしちゃいけないんじゃないかな」
シン「アンタ間違い無く蜂の巣にされましたよね、マシンガンで全身くまなく」
キラ「細かいことは気にしちゃいけないんじゃないかな」
シン「コピペで抜かすな!?」
キラ「大体それぐらいで僕が死ぬわけないじゃない」
シン「いや、そりゃそうですが………アンタ本当に人間ですか、いや、もうホント今さらですけど」
キラ「多分種族キラなんじゃないかな」
シン「納得できる部分も無くは無いですが、とりあえず刹那さんのパクリはどうかと」
キラ「ガンダムガンダムうるさいよね」
シン「後半それほど言ってねえよ! ていうか失礼だなアンタ!?」
キラ「いい年してガンダムガンダムって、どうかと思うねぼかぁ」
シン「あ、あの、それ本当に刹那さんに向けた言葉なんですよね? 他意は無いんですよね?」
キラ「…………」
シン「…………」
キラ「ガンダムがあるから人は醜い戦いを続けるんじゃないかな、ガンダムなんて無くなればいいんだよ」
シン「アンタ実はどっかの禿の生霊憑いてるだろ!? ていうか全ガンダムファンに土下座してこいよ!!」
シオニー「ぅ……ど、土下座?」
シン「土下座に反応して目を覚ました………これでいいのかなあこの人」
キラ「う、うう………僕は何を? 何かとんでもないことを口走った気がする」
シン(やっぱ憑いてたか………まあいい、今はシオニーさんだな)
シン「あ、あの、シオニーさん」
シオニー「ひぃっ」
シン「………………………キラさん、俺、そんなに顔怖いですか?」
キラ「大丈夫だよ、誰のこととは言わないけどどっかの善良な市民さんよりは怖くないから」
シン「そ、そうですよね、誰のこととは言わないけどカットインが悪役にしか見えない人よりはマシですよね!」
キラ「ハハハ、大概にしないとドリドリされそうだね。でもまあ、君の顔見て怖がったのは事実だけど」
シン「デスヨネー………ま、まずはなんとかしてシオニーさんの恐怖を解かないと」
キラ「どうやって?」
シン「………土下座でもします?」
キラ「意味があるかなあ」
シン「キラさんが」
キラ「言うと思った。じゃあしょうがないね」
シン「あれ、随分素直ですね、てっきりお前がやれって言われるかと」
キラ「ふふっ、馬鹿なこと言わないでよ。先代主人公として当然のことじゃない」
シン「キラさん……………」
キラ「シン…………………」
シオニー「(ドキドキドキドキ」
キラ「ちょっくら腐った頭にハイマットフルバーストかましてくる」
シン「土下座はどうした」
キラ「そうだね、ドラグーンだね。じゃあ土下座しようか」
シオニー「土下座………ふ、ふっ、筆頭政務官を誘拐して土下座で済むとは思わないことね! 踏んであげるわ、さあ土下座なさい!」
キラ「いいでしょう。ただし、貴女が僕の頭を踏んだ瞬間僕の舌が貴女の足をprprしますが、よろしいですねッ」
シオニー「―――――え」
キラ「prprprprprprprprprprpr」
シオニー「ひ、ひぃぃぃぃぃっ!?」
シン「怖がらせてどうするんだよアンタは!?」
キラ「望まれた気がした!」
シン「死ねっ! ああもう、仕方ない………シ、シオニーさん、大丈夫ですよ、何もしたりしませんよー?」
キラ「ちょっと壁とかをバンってするだけですよー」
シン「あんたもう黙れ! え、えーと、この人は無視していいですよ、俺は味方ですよー」
シオニー「…………………本当に、バンっしない?」
シン「ええ、しませんしません!」
キラ「誘拐犯に何求めてるんだろう」
シン「黙れ元凶。ちょ、ちょっとお話ししませんかシオニーさん」
シオニー「お話し? え、ええ、別に構わ」
シオニー「い、いやよ(モジモジ」
シン「え、ええー!?」
キラ「ああ、なるほど」
シン「え、分かるんですかキラさん?」
キラ「思い出すんだシン、君が彼女を連れ去った時、いや、そもそも何故彼女を連れ去ったのかを」
シン「何で…………………………………………………あ゛」
キラ「マニアックなプレイだよねえ」
シン「プレイ言うな! え、ええと、どうしたら………………そうだ、確かポケットに……シオニーさん!」
シオニー「?」
シン「このパンツに着替えて下さい!!」
シオニー「(ガタガタガタガタガタガタガタガタ」
シン「…………………あれ、何か変質者を見る目で見られてる?」
キラ「そりゃ、「自分のパンツ」を「誘拐犯」が「ポケットから」出したら何に見えると思う?」
シン「どう見ても変質者です、本当にありがとうございました。つーか気付いてたんなら先に言ってくださいよ!」
キラ「いや、まさか本当にやるとは思わなくて。相変わらずハイレベルに馬鹿だよね君」
シン「ほっといて下さい! と、とはいえ、このまま俺が持ってるわけにもいかないし………な、投げますよー」
ペイッ ヒラヒラヒラ
シオニー「……………………………………………うぅっ」
シン「泣かれた………」
キラ「そりゃ泣きたいだろうね」
シオニー「もう、帰りたい………リモネシアに帰して………」
シン「………今更ながら、罪悪感が」
キラ「うーん、確かに罪悪感も感じるんだけど」
シオニー「も、もう、帰してくれるんなら、私は、わ、私は、ど、どんなことでも」
キラ「何かこう、いけないスイッチが入るというかなんというか」
シン「そうですね、守らなきゃって気持ちになりますよね」
キラ「………………………………………………………ウン、ソウダネ!」
シン「その間は何だ。なんにしても………シオニーさんっ!」
シオニー「ひぃっ、な、なにぃ?」
シン「こんなことに巻き込んですみません……絶対、貴女をリモネシアに帰しますから!(ギュッ」
シオニー「う、うう、ぅぅう………?(真っ赤」
シン「故郷に帰れないって辛いですよね、俺も………本音を言えば、結構辛かったですから」
シオニー「わ、分かるの?」
シン「ええ。だから、貴女を絶対に貴女の故郷に送り届けます!」
シオニー「え、ええ、そうね、そうすべきね、あの、そろそろ手を離して」
シン「絶対、守りますから、守ってみせますから、だから!」
キラ「ははは元凶がなんか言ってるよ」
シン「黙れ黒幕。にしても、故郷かあ………俺達、何だか似てるのかもしれませんね」
シオニー「似てる? 貴方も故郷に帰りたいの?」
シン「えっ………ええ。そうですね、本当は帰りたいですよ、色々あって、ちょっと顔向けできないですけど」
シオニー「帰りたいなら、帰ればいいでしょう。帰りたくても帰れない人もいるんだから」
シン「…………………はい。そうですね、そうですよね。いつかは、ちゃんと帰ってみます」
シオニー「そう、しなさい」
キラ「二人は似てるか。確かに似てるよね」
シン「キラさんもそう思います?」
キラ「うん、結構そっくりだよ。二人とも…………………………………ドSホイホイだから」
シン「色々ふざけんな!?」
キラ「無自覚なのが一番アレだよね」
シオニー「あ、あの、ところでいい加減手を離して欲しいのだけど」
キラ「そしてこの陥落顔である。ちょろいのう…………………………あ」
シン「十中八九ロクでもなさそうですけど、何か気付いたことでもあります?」
キラ「うん、恋のトキメキはきっとバンっよりも強く心を揺らすもの!」
シン「へーそうなんだー」
キラ「つまり! このままときめいていればメンタルはきっと鍛えられる」
シン「へーそうなんだー」
キラ「大成功だよシン! “寝起きドッキリバズーカでシオニーちゃんのソフトクリーム並のメンタルを鍛えてあげよう”作戦、だーいせーいこーう!」
シン「へーそうなんだー」
キラ「ヒャッハー!」
シン「へーそうなんだー」
キラ「へーそうなんだー」
シン「……………………」
キラ「……………………」
シオニー「え、な、なに? なにか空気が張り詰めて(オロオロ」
シン「キラさん。俺、このドッキリが始まってからずっと言いたかったことがあるんです」
キラ「奇遇だねシン。僕も言わなくちゃいけないことがあったんだ」
シン「(ニコッ」
キラ「(ニコッ」
シン「キラさんめ、死ねぇっ!!」
キラ「君の方こそ全滅だ!!」
ド ワ オ
その後、吹き飛ばされたシンがシオニー・レジス嬢のわりと貧相気味な胸にダイブし、彼女が悲鳴を上げたかどうかは不明である」
シン「だからナレーション気取るなっつってんだろ!?」
シオニー「男の子に胸に抱きつかれた(エグエグエグ」
キラ「あ、脱出する時ずっと胸触ってましたよ?」
シン「やめろ! これ以上その人を追い詰めるな!」
キラ「誰のせいだと思ってるんだか」
シオニー「……もう、お嫁、いけない…………」
キラ「貰ってあげなよ」
シン「適当だなオイ!? ところでさっきから気になってたんですけど、逃げるのに夢中で入り込みましたけどどこですここ?」
キラ「んー。どこってそりゃあ」
キラ「ラブホ」
シオニー「」
シン「ああっ、事態についていけずシオニーさんが気絶した!?」
その後、この一連の騒ぎは“外務大臣ラブホ事変~いけない筆頭政務官~”(原文ママ)と呼ばれることになる。
せめて改名しろという顰蹙を回避した裏には高度な政治的取引があったとも言われているが真相は定かではない。
もっとも、それすらも“リモネシア外務大臣誘拐事件”のほんの始まりにすぎないことは、まだ誰一人として気付いていなかった。
~続かない。
最終更新:2012年12月07日 09:00