第3話『出会~可能性~』

第3話『出会~可能性~』

「あ、飛鳥さん」

診療所の病室からトイレへと向かうシンは診療所の入り口のほうから聞こえた声に呼び止められる。
「ん?ああ、翔子ちゃんか。おはよう」
そう言うと病院着姿のシンは車椅子を器用に動かし、翔子のほうへと近づいていく
「おはようございます、飛鳥さん。あの、遠見先生は?」
診療所の奥のほうを覗き込むように翔子は様子を見ながらシンに問いかける。
「ああ、ごめん。先生、今往診に出てるんだ。昼くらいには戻るって言ってたんだけど、まだ時間あるしな・・・」
そうつぶやきつつシンは待合室の壁にかかった時計に目をやると時計はまだ、10時をちょっと過ぎたくらいの時間を指していた。
「そうだったんですか・・・どうしよう・・・」
翔子もやや困ったようにシンと同じく時計へと目を向ける
「じゃあ、俺の病室にでも来るか?今日も暇してたんだ」
シンがそう言うと翔子はやや頬を朱に染めながら嬉しそうな表情になり
「え?良いんですか?」
翔子は少々わざとらしくシンからの提案に聞き返す
「ああ、構わないよ。今日は誰も来なくて暇だったんだ。」
シンはそう言うと車椅子の向きを器用に変えると
「ちょっと、トイレに言ってくるから、先に病室に言っててくれ」
シンは翔子に先に病室行くように促すと
「わかりました」
翔子はそう言うと病室に向かった

パタン
病室のドアが閉まり翔子は一人、シンの病室へと入る
(飛鳥さん、初めて会ったときは殆どまともに体が動かなかったのに、今はもうあんなに動けるようになったんだ・・・)
この世界におけるシンの目覚めに立ち会っていた翔子としては、目覚めたばかりの思うように体を動かすことのできなかったシンの姿が、とても印象的に脳裏焼きついていた。
(すごいな・・・あんな目に見えて体が良くなっていくなんて、私には考えられないかも)
自分自身、持病の影響もあって今のシンほどではないにしても幼いころから様々なハンデが付きまとっていた翔子としては、今の日に日に体の調子が良くなっていくシンが羨ましく思えていた。
(でも、こんなこと考えてたら飛鳥さんに失礼だよね・・・でも・・・羨ましいな・・・私もいつか・・・」



「いつか・・・なんなんだ?」
「ひゃう!!?」
いきなり声をかけられた翔子は座っていた病室の椅子から勢いよく飛びのく
「ああああ、あ、飛鳥さん!?いつからそこに!?」
普段おしとやかな彼女のあまりの狼狽っぷりに、いきなり声をかけて驚かしてしまったと、さすがのシンも少々罪悪感を覚える。
「え、あ、いや、ごめん、今きた所だったんだけど・・・なんか、ぶつぶつ言ってたから、どうかしたのかと思ってさ」
シンがそう言うと翔子は少々あせりつつも
「い、いえ、何でもありません・・・て、あれ?飛鳥さん、それは・・・」
弁解する翔子は、ふとシンの足の上に載っているものに気づく
「ああ、せっかくのお客さんだからな、これ位はお持て成ししないと」
そう言うとシンは膝の上に乗っていた2本のラムネのビンと煎餅の入った袋を翔子に手渡すと、ベットの近くまで進む
「よ・・・と・・ち、やっぱりまだ、立つのは少し、辛いな・・・」
そうボヤキながらも、車椅子からたつとそのまま1,2歩だけ歩くと倒れこむようにベットの上に乗る
「ちょ、飛鳥さん!?大丈夫ですか!?」
いきなりそんな光景を見せられた翔子はあわててシンの安否を確認しようとする
「あ~大丈夫、大丈夫。」
慌てる翔子をよそにシンは、ひらひらと手を振りながら応答する
シンはそのままベットの上で体勢を立て直すと、ベットを起こして背もたれのようにする
「さて、これでよし」
シンはそう言って翔子のほうへと向き直ると翔子からラムネのビンを受けとる
「びっくりしましたよ、いきなりベットに倒れこむんですから」
シンにラムネのビンを手渡しつつ翔子はシンをとがめる
「あはは・・・ごめんごめん。」
そういいながらシンはラムネのビンのふたを押し込む
しゅぽんと言う子気味のいい音と同時にビンの飲み口を塞いでいたビー玉がビンの中に落ちるとシンはその衝撃で中の炭酸が溢れてこないように蓋を強く押さえつけた。
「フフ」
そんなシンの様子を見ながら翔子が微笑む
「ん?何だよ、いきなり笑って?」
微笑む翔子にシンは問う
「いえ、飛鳥さんが初めて遠見先生にラムネを渡されたときのことを思い出してしまって。」
翔子がそういうと、シンも合点が言ったらしく、あー・・・といった感じで頷く
「あ、あんまりあのことは思い出さないで欲しいかな」
シンは少々引きつった笑いで翔子に答えつつその一件のことを思い出す



―――はい、シン君どうぞ。翔子ちゃんも一緒にどうぞ

―――ありがとうございます、遠見先生

―――どうも

―――・・・・・・・?

―――?どうしたんですか、飛鳥さん?

―――え!?あ、いや、その・・・これ、どうやって開ければいいんだ?

―――え?飛鳥さん、もしかしてラムネ飲んだこと無いんですか?

―――ない。俺の住んでたとこではこういうのは無かったよ

―――じゃあ、この蓋に付いてるパーツで口の所についてるビー玉を押し込んでください

―――そうすると

―――シュポン

―――こんな風にビー玉が中に落ちるんです。

―――へー・・・じゃあ俺も

―――シュボン・・・ブッシャァァァァァ

―――のわー!?

―――あらあら大丈夫、シン君?

―――羽佐間・・・

―――え、えーと・・・初めてですから、しょうがないですよ・・・なんて

―――できれば最初に注意して欲しかったよ・・・

「あれは嫌な事件だった・・・」
どこか遠い目でシンが語る
「あははは・・・そ、そういえば、飛鳥さん、今日もリハビリにはいかれるんですか?」
翔子もそんなシンを見ながらやや苦笑いしつつも、ここ最近のシンの日課であるリハビリについて問う。
「ああ、もっとも遠見先生が帰ってきてからだけどな」
シンはそう言うとベットの脇にある机の上に置いてある煎餅に手を伸ばす。
「でもすごいですよね、飛鳥さん」
翔子の一言に煎餅をつかみかけていたシンの手が止まる
「え?」
「だって、たった1ヶ月でこんなに体が良くなったんですよ?」
シン自身、こちらの世界に来てから半ば自分がコーディネーターであることを忘れていたが、翔子のこの言葉で自分がコーディネーターだと言うことを思いだす
「ああ、そういうことか。昔からそういう体質なんだ、俺」
さすがに何も知らぬ翔子に対してコーディネーターの事を話すわけにもいかずシンは当たり障りのない程度にぼかして語る
「へぇ・・・・・・」
翔子はいまいち納得できないような感じで応答したそのときである


コンコン

病室のドアがノックされる
「失礼します」
その言葉と共に病室のドアが開かれる
「あれ?皆城君?」
そこには、この島における数少ないシンの存在を知る少年『皆城総士』の姿があった。
「羽佐間!?なぜ君がここに?」
不思議そうにする翔子とは対照的に総士はひどく驚いた様子を見せる
「大丈夫だ、総士。翔子ちゃんには偶に話し相手になってもらってるだけだよ」
狼狽する総士に対して、シンは嗜めるように総士に声をかける
「はぁ・・・と、それより羽佐間。すまないが少し席を外して貰えないか?」
総士の一言に翔子はやや戸惑いを見せる
「え?まぁ、別にかまわないよ?」
対する総士もややすまなさそうな顔をする
「すまない。ちょっと個人的な話なんでな」
それを聞いた翔子は納得したようで、病室から退室しようとする
「ああ、そうだ、羽佐間。」
総士に呼び止められ振り返る
「何、皆城君?」
「いや、遠見先生、既に診療所に戻られているぞ。診察室で君のことを待っていた。早く行ったほうがいいんじゃないか?」
それを聞いて、翔子も驚いた表情になり
「え?先生、いつの間に戻ってきたんだろ・・・とりあえず、ありがとう、皆城君。それじゃあ、飛鳥さん、失礼します」
そう言うと翔子は診察室へと向かっていった
「・・・ずいぶん、親しげでしたね・・・」
普段クールな総士にしてはやや棘のある声色かつ、ややジト目でシンに問いかけた
「さっきも言ったけど、翔子ちゃんは単なる話し相手だよ・・・」
対するシンはやや気おされながらも総士に言い返す
「・・・そうですか。まぁ、それより本題に入りましょう。とりあえず、これを見てください」
そう言って総士は手に持っていた大き目の封筒をシンに渡すと、中身を確認するようにシンに促す
「・・・何が入ってるんだ?」
渡されたシンもやや総士の態度を見て眉をひそめる
「中に入っている資料を確認していただければわかります」
総士がそう言うとシンは封筒を空け中身を取り出す。
封筒の中には数枚の写真と同じく数枚の報告書が入っていた。しかし、シンは出てきた写真を手に取るとそこには予想だにしないものが写っていた。
「総士・・・これは、まさか!?」
シンの言葉に総士がうなずく
「はい、これは先日島の近海で発見された・・・MSの残骸です。飛鳥さんはこれがどういう機体のものかわかりますか?」
シンの手にある写真に写っていたのはMSの腕部だった。
「ああ・・・知ってる。」
シンはただ短く答える。答えながら、ほかの写真や報告書を確認し、更に驚いていた。
「・・・総士」
「なんですか?」
意味ありげに自分の名を呼ぶシンに総士が応じる
「これを見てくれ」
シンはそう言って5枚の写真を総士に見せる。
「これが何か?」
総士も心が何を言いたいのかがわからず、困惑する
「ここに写っているMSのパーツは・・・全部、デスティニーのパーツだ」
そう、シンが総士に見せた写真に写っているのは、肘から下だけの右腕、肩を含めた左腕、膝から下だけの右足、スラスターらしき物が付いた放熱フィンのようなパーツ、中折れ式の機構が備わっていると思われる空色の大剣の計5つが写っていた。
「やはり、そうでしたか・・・」
そう言うと総士は更に続ける
「その報告書にもあるとおり、デスティニーの破損部位とそのパーツの破損部位が合致。更にアスカさんの協力で引き出すことができたデスティニー自体のデータと照合しても同様にデスティニーのパーツであることが判明しました」
そう言うと総士は少しの間を空け
「アスカさん、可能であれば、今日これからアルヴィスにご同行願えますか?」
総士のその言葉と、返答を促す視線がシンに突きつけられる
「総士、お前が俺にこの写真を見せたのとアルヴィスまで来いって言うのはつまり・・・そういうことなのか?」
対するシンもまた総士へと聞き返す
「そういうこととは?」
総士もまた、あえてシンへと聞き返す
「・・・・・・つまり・・・デスティニーを・・・直す、てことだろ?」
きわめて真剣な表情で、違うか?とシンは総士に問う
「・・・答えは、アルヴィスにあります」
総士はただその一言でシンに答える
「・・・わかった。アルヴィスに行くよ」
シンもまた総士の言わんとすることを理解し、それに従うことにした。


照りつける太陽が大気を暖め、気温を上げる。

病弱な体を持っているにもかかわらず、無茶をしたつけなのか

俺は少しでも涼しく、直接日の光を受けずにすむ木陰へと逃れている

たった1匹の相棒は俺を気遣ってくれる

「大丈夫だって、少し貧血を起しただけ」

そう言って相棒の頭をなでてやると向こうから誰かが来るのが見えた


「一騎は、みんなと帰らないのか?」
彼はいきなり俺にそう問いかけてきた
「はぁ・・・」
先ほど、木陰で辛そうにしていたこの先輩を拾って、今は遠見先生の診療所に向かっているところだ
「健司みたいなやつが、突っかかってきてくれるの待ってるばかりじゃだめだぜ?」
先輩はそう言うと一瞬間を空け
「自分から、誰かと仲良くならないとな」
この人が言っていることは正しいのだと思う。ただ、それを指摘された俺はどこかむってしていた
「助けてもらっといて、こんな事言うのもなんだけど」
そう言って自嘲気味に先輩は笑っていた
「そうですね・・・」
「う、やっぱり・・・」
うまく言い換えれて、先輩は苦笑いしていた

ようやく診療所に付き、ドアを開ける
「あ~・・・やっとついた・・・」
心なしか先ほどよりもぐったりとした先輩が声を上げる
「か・・・一騎君・・・」
透き通った声が聞こえ、声のしたほうに目を向けると
「羽佐間・・・」
そこには、病弱で、普段あまりあうことのない友人である少女『羽佐間翔子』の姿があった

「ふぅ、助かったよ・・・」
羽佐間の隣に腰を下ろした先輩が謝辞を述べてくる
「遠見先生に、お茶でももらおうか?」
先輩はそう言うが、俺は
「あ、いえ、俺は・・・これで。」
先輩の誘いを断わり、羽佐間のほうへと向くと、彼女はやや照れたようなしぐさをする
「じゃあ」
俺がそう言うと
「うん」
彼女も俺と同様に短く返す。俺は、それを確認した後に、診療所を出た

「羽佐間も検査?」
俺が彼女に問うと
「夜寝るまでは元気だったのに今日も、学校に行けなくて」
彼女が悲しそうに言う
「俺もずっとそんな調子だったよ」
昔のことを思い出し津彼女に返すと
「遺伝なんですよね、これ・・・先輩はお母さんが同じ病気だったんですよね?」
「うん」
彼女の問いに短く返答すると
「やっぱり、私とお母さん・・・血が繋がってないのかな・・・」
正直彼女の何気ない一言はとても切実に聞こえた。だが
「さぁ?でも俺は羽佐間がうらやましいよ」
そういうと
「え?」
彼女はとても驚いたように聞き返してくる
「羽佐間のことを本当に心配してくれる言いお母さんで」
それを聞いた彼女は、うれしそうに微笑み
「うん」
とても短いが俺の言葉を肯定した


俺は、今久々にこの場所を訪れていた
「大丈夫ですか、アスカさん?だいぶ歩いていますが・・・」
俺の間を歩く総士が、聞いてくるが
「ああ、これも元軍人だぞ?いくら弱ってるからって、そこまでじゃないさ」
正直やせ我慢だった。ここ最近のリハビリで、それなりに動き回れる体力や筋力が戻っては来たが、それで、やはり4ヶ月の昏睡による衰えは大きかった
「もうまもなくデスティニーのドックです。そこまでは何とかがんばってください」
そう言うと、総士は再び歩き始め、俺はそれについていった

あれから、更に5分ほど歩くと、1ヶ月ぶりに見たズタボロの愛機の姿があった。しかし、その姿は1ヶ月前とは打って変わり、全身から無数のコードが伸び、腕や、足の破損部位周辺はばらされ、修復作業が行われているのがわかった
「一応、技術半の話によれば、後、一月半もあれば一応ですが、修復ができるとのことです」
総士がそう言うと、俺は修復中のデスティニーへと再び視線を向ける
「総士・・・」
「なんですか?」
俺は振り返ると彼に向けて言葉を続ける
「皆城指令に話したいことがある。今度でかまわないから、指令に話をつけてもらえないか?」
俺がそう言うと総士は何も言わず、ただ俺の言葉にうなずいてくれた



「羽佐間?家に帰らないのか?」
既に帰ったと思っていた彼女が診療所の前で相棒をなでている見ておもわず声をかけた
「もうすぐ、真矢が帰ってくるから・・・」
遠見先生の娘であり羽佐間にっとては無二の親友を彼女は待っていた
「そっか、仲のいい友達が居ていいなぁ。俺のは半分以上卒業しちまった」
少しさびしさを感じながらつぶやくと
「将陵先輩はすごいです。ちゃんと学校にいけて、生徒会長までやって・・・」
翔子が悲しそうにつぶやくと
「違うよ、俺が休んでいる間にみんなが勝手に決めたの」
その言葉に翔子はやや戸惑いを覚える
「勝手に・・・決めた?」
「そう、学校に言ったらいきなり肩書きあってさ、びっくりしたよ」
そういいながらも彼は笑っていた
「そんなのいやじゃなかったんですか?押し付けられたみたい」
翔子はやや気遣うように問いかける
「・・・みんなが忘れずに居てくれてうれしかったよ。俺に居場所を作ってくれたやつらにお返しがしたい。ずっとそう思ってた。」
心か出たであろうその言葉はとても切実なものであった
「良いなぁ、私が学校に言っても居場所なんて無いかも・・・」
翔子はそういいつつも、最近この診療所にできた自分の場所の事を話す着に離れなかった。シンから口止めされていたこともあるが、数少ない自分の場所を独り占めしたいという思いもあった。
「ほら」
彼の言葉に顔を上げると、道の先から歩いてくる親友『遠見真矢』の姿が見えた
「傍に居てくれる友達、大切にしないとな」


翔子や帰ってきた真矢と少し話して将陵が帰ろうとしたときであった。
「あれ?皆城君と・・・ん?あれ?・・・将陵先輩がもう一人?」
真矢のその一言にその場に居た一同が振り返るとそこには総士とその肩を借りたシンの姿があった
「え?え・・・?ええ!?俺が、いる!?」
最初に反応を見せたのは意外なことにシンだった
「アスカさん、落ち着いてください。この人は僕たちの通っている学校の生徒会長で・・・」
総士がそう言うと
「あの、皆城君、先にアスカさんのことを二人に紹介したほうが、良いんじゃないかな?」
翔子が解説を続ける総士に静止をかける
「ん、それもそうか」
総士も翔子の言葉に納得すると
「えっと、じゃあ、俺が名乗ればいいんだよな?」
シンがそう言うと、翔子と総士が頷く
「じゃあ、俺の名前は飛鳥 真。わけがあってこの島に来て、今はここの診療所に入院してる。」
シンはとりあえず、当たり障りのない自己紹介をするちなみに、日本人仕様の名前に直して名乗ったのは、そのほうが馴染み易いという総士の提案に基づいてである
「え!?うちの診療所に入院患者なんていたんだ!?」
真矢が驚きの声を上げると
「ん?家のってことは、君は・・・」
「はい、ここの先生はうちのお母さんです。あ、それと私は遠見真矢って言います。」
真矢が笑顔で名乗る
「そっか、よろしくな、遠見」
シンがそう言うと、未だ驚いた表情をしているもう一人のほうへと向き直り
「えっと、あんたは・・・?」
シンが問いかけると
「え?、ああ、ごめん俺の名前は将陵 僚。総士の紹介どおり、学校で生徒会長やってます」
これが二人の出会いだった
「ああ、よろしくな、僚」
まるで鏡合わせの様な二人
「なんか、くすぐったいな、自分とそっくりな人に名前を呼ばれるのって」
だが、この出会いこそが
「確かにアスカさんと、将陵先輩。こうしてみると双子みたいですね」
竜宮島に新たなる運命の風を呼び込むきっかけであった
「うん、飛鳥さんと将陵先輩本当に兄弟みたいですね」
だがそれは
「う、なんかそんなに言われると恥ずかしいかな・・・ははは・・・」
同時に、この島の少年たちを本来歩むはずだった道よりも激しい戦いが待っている道にいざなうことを、このときはまだ誰も知らなかった。


――――ALVIS会議室

「ソロモンが応答を繰り返しています。700時間以内に明確な応答になる見込みです」
会議の出席者の一人が、報告を行う
「今は敵を迎撃するわけにはいかん。島のコアが人格を形成しないまま敵と接触すれば島全体が敵に奪われる可能性が高すぎる」
それを聞いた真壁が自分の意見を述べた
「やはり、防衛システムをぎりぎりまで低下させるのですか?」
先ほどとは別の出席者がこの島の責任者であり、この会議の議長でもある皆城に問いかける
「今日、生駒と直接話してきた。特にファフナー関連の全兵器を厳重にロックする。」
「敵に奪われた際の打撃を最小限にするためには自ら封じるほかない。」
皆城の意見に続け真壁がそれの補足を述べる
「ですが、それだけではとても、万全とはいえません」
それは至極当然の意見であった
「そこで生駒から提出された危機回避のプログラムがこれだ。」
皆城がそう言って端末を操作すると、会議に参加する全員の目の前に設置されているモニターにその概要が映し出される
「L計画?」
それが作戦の名であった
「実行するにはTSXの投入が大前提ですが・・・?」
「そんな、子供たちを参加させろと!?」
この世界において運用される人型機動兵器ファフナー。竜宮島において、開発、運用される機体には搭乗者の年齢や、適正が大きく関わるものであった。
「この島を運営するものたち全員の決断が必要だ。」
皆城はとても心苦しそうにそれを会議の出席者たちに告げた
(だが、我々にはまだ、もう一枚手札がある)
(彼とあの機体・・・L計画への投入は不可能だが、彼にも選んで貰わねばならないか・・・この先の道を・・・)


次回予告

竜宮島を守るために発動が決定されたL計画

だが、それは2度と戻れぬやも知れない、船出

シンと総士に島を託し、僚は旅立つ

一方のシンも修復されていくデスティニーを前に新たなる戦いの決意を心に決める

二人の決意は同じく戦いを選びながら向かう先は違う

巨人は深海を行き海原を行き、敵を引き付け

残された堕天使は地の底で再度、その身を成す

必ず再開するという思いを互いに胸に

二人の少年はそれぞれの戦いを始めた

次回

機動戦士ガンダムSEED DESTINY×蒼穹のファフナー
                        “The Crimson Wing ”

第4話『船出~ようどう~』

終点見えなき絶望の船旅、戦い抜けティターン

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2014年02月02日 13:38
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。