―――鎮守府・シンの執務室―――
「え?島風と長門と那珂の様子がおかしい?」
第1艦隊の一員である飛龍からの報告を受けたシンは何よりもまず最初に『何故その3人が一括りに?』という疑問に駆られた。
「はい、そうみたいなんですよ・・・」
対する報告に来た飛龍もまたどうにも煮え切らない様子である。
「それにしても、その3人が纏まって行動してるなんて珍しいことも有るネー」
シンの隣でそれを聞いていた秘書艦の金剛もシンと同じ感想を持ったらしく、そのまま疑問を口にする。
「わたしも直接確認したわけでは無くて、川内や電達から相談されたことなので詳しいことはなんとも・・・」
それ聞いたシンはどうしたものかと思案する。こういうときに限って参謀であるレイと艦隊の頭脳である霧島が揃って出張と遠征に出てしまっているため、相談役がいないのである。
「うーん、資材庫荒らしの犯人も捕まってないのにそういう話も出てくるとなぁ・・・」
数日ほど前から連日起きている資材庫からの食料品の盗難事件の件で犯人(現在容疑者として一航戦の2名を取り調べ中)探しをしていたシンとしては思わず頭を抱えてため息を吐いてしまう。
しかし、シンがため息を吐くと同時に執務室の扉が開き、利根が入室してきた
「提督、資材庫荒らしの犯人を捕らえることに成功したので報告に参ったぞ!!」
「何だって、利根本当か!?」
思わぬ朗報にシンは机から身を乗り出す
「ウム、意外なことに犯人は島風の奴じゃったぞ。それに加えて共犯者も捕らえたぞ!まさか那珂と長門まで手引きをしておったのは以外じゃったな。」
それを聞いたシンは椅子に座り再度頭を抱えた。
「??」
そのシンの様子を見た利根は状況が理解できずにただ首をかしげ、その様子を見た金剛と飛龍も苦笑いせざるを得なかった。
―――鎮守府・食堂―――
「で、何でこんなことをしたの島風?それに那珂さんに長門さんまで・・・」
現在、鎮守府の食堂では大淀による3人への事情聴取が行われていた。
「それはその・・・」
「まぁ、その、なんだ・・・」
「えっと、その、あの~・・・」
三者三様に弁明しようとするも3人ともそういうことには普段縁のないメンバー名だけに皆口篭ってしまう
「はぁ、どうしたものかしら・・・」
ペンを置き大淀も頭を抱えてしまう。しかしその時である。
「おーい、大淀よ、提督を連れて参ったぞ!!」
丁度良く利根に連れられて、シン、金剛、飛龍の3人が食堂へとやってきた
「大淀、話は利根から聞いたけど、どうなってんだ?この3人が資材庫から食料品を盗んだって?」
食堂に入ってきて開口一発目にシンは自分の疑問を率直に述べる。
「前科のある赤城さんや加賀さんはわからないではないけど何だってまたこの3人が?」
同じく飛龍も疑問を口にする。
「本当に飛龍の言うとおりデース。それにしたって、島風や那珂ちゃんどころかナガモンまで何故こんなことをしたのデスカ?」
ここに来て、皆言いたい放題である。
「提督、それに第1艦隊のお二人も・・・」
やってきた3人を見て大淀は自体の好転の兆しが見えてきたと判断し、胸をなでおろす
「「「提督・・・」」」
取調べ中の3人もシンの姿を確認するときまずそうに俯いてしまう。
「はぁ、で、何でこんなことしたんだ、3人とも?」
「「「・・・・・・」」」
大淀の変わりに3人の対面に座ったシンが尋問を開始する。
~~~提督尋問中~~~
シンが尋問を始めてからも、3人はどうにもはっきりしない回答ばかりを続けていたのだが、ここに来て今回の事件の主犯である島風が遂に口を開いた
「その実を言うと・・・この前那珂ちゃんがアレを拾ってきたのが発端でね・・・」
「ちょ、島風!?」
唐突な島風の言葉に那珂が慌て始める
「はぁ、仕方ない、那珂、もう諦めて話してしまおう。もうここいらが限界だろう・・・」
なにやら観念したように長門が那珂を諌める
「そんな長門さんまでぇ~・・・」
那珂は一人取り残され涙眼になってしまう
「うー・・・」
「はぁ、那珂・・・話してくれないか?」
シンがどうにか話してもらおうと、那珂を促す
「・・・じゃあ、提督・・・那珂ちゃんたちのことを怒らない?」
那珂はやや涙目かつ上目遣いでシンに問う
「事の次第によるな・・・」
「うーん・・・じゃあ、一旦島風の部屋まで行きましょう。あの子はあそこに置いてますから。島風、いいよね?」
那珂がそう言うと
「うーん、仕方ないか・・・じゃ、提督たち、私の部屋まで着いてきて!」
島かぜはそう言うとあっという間に大淀が止めるまもなく食堂から出て行ってしまった。
「あ、こらぁ!島風!!・・・もぅ・・・仕方ありません提督、島風の部屋に向かいましょう」
大淀はため息をつきながらシンに進言する。
「提督、とりあえず島風の部屋に行って見るネー。那珂ちゃんとナガモンも、その方が話しやすいと思いマース。」
大淀の言葉に同調するように金剛も進言する
「はぁ、そうだな・・・二人とも島風の部屋まで行けば、話してくれるんだよな?」
シンは頭を掻きながら長門と那珂に当と二人は同時にうなずく
「どうやら二人はその気みたいですね、提督」
飛龍が悪戯っぽく笑いながら言う。
「はぁ、茶化すなよ、飛龍。・・・仕方ない、行ってみるか。」
―――鎮守府・島風、雪風、天津風の部屋―――
「もぅ、提督達、おっそーい!!」
島風は到着の遅れたシン達に言うと
「すまないな、島風、私はみんなほど早くないから・・・」
「え!?いや、長門さんのせいじゃないって!!」
長門がシンの代わりに島風に謝ると、島風はあわてて長門に取り繕う。
「「・・・」」
そんな二人の様子を見て飛龍と大淀は思わず呆けてしまい、それに気付いたシンは二人に問う
「ん?どうしたんだ二人とも?鳩が豆鉄砲食らったような顔して?」
そんなシンの問いに対して二人は
「いえ、長門さんと島風がこんなに仲がいいとは知らなくて驚いてしまいました。」
「私もです。一体、二人ともいつの間に・・・」
大淀と飛龍はそれぞれの感想を言う
「んー、確かにナガモンと、島風がこんなに仲が良いとは私も知らなかったネー」
金剛も同じように感想を言う
「あー、言われてみれば確かに、那珂は何でか知ってるのか?」
シンが問うと、那珂は少々恥ずかしそうに頬を掻きながら
「え、あー、ウン、まぁ、そうですねぇ・・・今回の原因が絡んでるんですよねぇ」
シンから目を逸らしながら中が答える
「と、とりあえず、気を取り直して部屋に入りましょう!」
シンが返答する前に那珂は部屋の扉を開けて中に入る。そして、シン達も那珂に続き部屋に入るとそこにいたのは
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ヽ、,;' ・ ω ・ ミ
ミ====[==]=l===ミ
ミ ヽ) (ノ ;;
';, ミ
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「「「「・・・・・・・」」」」
「えーと、皆さん、これが今回の原因のモフちゃんです!」
固まるシンたち4人をよそに那珂はその白い謎の生物を抱き上げながらこの生物の名前を言う
「えーと、ごめんね、那珂、こういうこと聞いたら失礼かと思うんだけどさ・・・それ、何?」
意を決して飛龍が率直な質問を那珂にぶつける
「・・・・・・猫?・・・うーん・・・言われてみると、モフちゃん、君って何なんだろうね?」
とうの那珂もモフちゃん(仮称)が何かわかっていなかった。
「な、ナガモンと島風は知って・・・」
金剛が残り二人のほうに目を向けると同時に二人は金剛から視線をはずしてしまい
「oh・・・」
言い終わる前に金剛も止まってしまった。
「で、つまり盗んだ食料品はこの子の食料になっていたって事ですか?」
「ウン、この子、いっぱい食べるから私たちだけじゃ用意し切れなくて・・・」
大淀の問いに那珂がそう答えると
「でもね、この子凄いんだよ、私よりも早いんだよ!」
やや興奮気味に島風が語る。
「えー、この・・・なんというか、もふもふが?」
飛龍がやや信じられないと言いたげに那珂に抱きかかえられたモフちゃん(仮称)を見て言う。
「本当だもん!!」
島風も飛龍に反論するように声を上げる。
「しかし、一体どこでこんな謎生物拾ってきたんだ?」
首をかしげながらシンが那珂に問う
「すまない、提督・・・そいつを拾ってきたのは私なんだ・・・」
おずおずと脇から長門が恥ずかしそうに名乗り出る
「長門が!?一体何があったんだよ・・・」
これにはさすがのシンも驚き、長門に問い返す
「実は先日の休暇の日に出かけ先から帰ってくる途中でな」
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「と、いうわけでな・・・」
「把握した」
シンは長門の回答に即答すると
「まぁ、拾ってきちまった以上仕方ない。また放り出すのもかわいそうだし、ちゃんとみんなにも紹介して面倒見るんだぞ?」
新がそう言うと3人の顔が、ぱぁ、と明るくなる
「提督、本当にいいんですか!?」
「ああ、レイにも俺から行っておいてやるよ。家具職人さんに頼んでこいつの家も作ってもらわないとな。」
シンがそう言うと3人は更に喜んでいた。
この後日帰還したレイに事情を説明したシンはレイに盛大に溜息をつかれたという。
なお、今回の件で事情聴取中だった、赤城、加賀の両名については当初は無罪放免かと思われていたが、二人で資材庫からボーキサイトをちょろまかしていたことが発覚し、出張から帰ってきたレイ参謀からしこたまお叱りを受けたのであった。
しかし、このとき鎮守府の皆は知る由もなかった。
この謎の生物モフちゃん(仮称)がシン達と同じく別の世界からこの世界に迷い込んできた存在だということに。
後にこの子をめぐり事件が起きるのはまた別のお話である。
最終更新:2017年02月11日 23:39