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ローゼンメイデン単発SS 酔っ払い◆otMjeU4QDY氏

「……なんだこれ?」
部屋に戻って来ての第一声はこれだった。
訓練を終えて、体に張り付く汗を流すために自室へ戻ってきた。
先に戻った同室の親友は何処かに行っているのだろうか、姿は部屋には無い。
上着を脱いで、ふと自分のデスクにメモがあるのを発見した。あいつが残したのだろうか?
シャワー室に入る前に、読んでおこうと手に取る。そして冒頭の第一声と言う訳だ。

内容があまりに簡潔で、だからこそ意味が解らない。あの鉄面皮がこんな悪戯をするとは正直考えにくい。
まぁ常に冷静で、感情をあまり表に出さないが、あいつは結構いい奴なんだぜ?
同じく親友の整備士コンビも頭に浮かぶが、それも無いな。なんせあいつらはいまだに仕事中だ。
「それにしても……」
まったく内容の意味が解らない。書かれていたのはたった二言だけ


 巻 き ま す か? 巻 き ま せ ん か?


――ったくさぁ……疲れさせんなよ
ため息と同時に、こんな下らない冗談を考えたアホウに悪態をついた。
疲れた体と神経にはこの程度の冗談ですら、真剣に頭に来るほど苛立たしい。
自分が多少……うん、本当にちょっとだけ短気なのは認めるが。でもやっぱりカチンと誰だって来るだろう?
さっさとシャワーを浴びよう。そう思ってメモに八つ当たりと知りながら、クシャクシャにしてゴミ箱に落とす。

っとその一瞬前に、この心底下らない悪戯に乗ってやる気になった。
後で成果を回収しに来た犯人に、一言
「お前の冗談に付き合ってやったんだ、コーヒーぐらい奢れよ?缶のはダメだからな」
そう言ってやるつもりで、俺は引き出しを開けると、やぁ!僕ド○○もん!!なんて未来型の青いネコ型ロボットが顔を出した。

――なんてことは無く

残念ながら人類の科学力はMSやコロニーを建造出来ても、未来型自律ロボットを開発するには至っていないのだ。
まったく、ザフトは開発部は何をやってるんだ?あれさえ完成すれば世界は今よりかはマシになるだろう。
あのうっかりロボの愛らしさは異常だ、試作品でも出来たらテストモニターには何が何でも自分にして貰おう。
おっと、これ以上はマズイ。あの大昔のアニメについて語らせたら俺達兄妹は夜を徹する事が出来る。
もっとも今は俺一人だけか……

小さく妹の名前を呟いて、俺は出したボールペンを使い

巻 き ま す?

にでっかくマルを付けてやる。そして一緒に引き出しにメモを放り込んでシャワールームに向かった。


汗を流して、さっぱりとした気分を楽しみながらシャワールームから出る。
なんだ、あいつはまだ帰ってないのか。どこに行ったんだかな。
あいつの事だ、どっかでグダグダしているとは考えにくい。シュミレーターでも
やってんのかな。なんて呑気に考えた。
俺は親友が、一人シュミレーターのコックピット内に突如現れた何か?に
その端整な顔を驚愕で歪ませていることなど、思いもよらずにいた……

パンツ一丁で男らしく腰に手を当てて、備え付けの冷蔵庫から出した缶コーヒーを飲む。
うん、旨い。さっぱりした後はやっぱりコーヒーだ。この素晴らしい事実に異を唱える奴らは
多々いるが、俺はやっぱりコーヒーだ。コーヒー牛乳なんて物を愛飲するのは軟弱な男に決まってる。
俺がそう決めた。一度だけ同室の奴とはこれで大揉めしたが、以来俺達はこれに関して不可侵の条約を守っている。

何気なくベットに目をやり、布団が不自然に盛り上がっていることに気づいた。シャワーに
入る前は、ああはなっていなかったと思う。さっきの悪戯の続きか。布団をめくる前にメモを確認しておこうと
デスクの引き出しを開ける。
やっぱり無いな。シャワールームに居る間に、こっそりと誰かが抜き取り、あれを置いたのだろう。
汗と一緒に、苛立ちも洗い流したのだろう。入る前まで感じていた怒気はなりを潜めていた。
取り敢えず今は、あれが何なのか知りたい。このどうでもいい悪戯の終わりを知りたくて俺は布団をめくった。

……鞄?

布団の下から出て来たのは、やけに使い古したような年季を感じさせると同時に、その作りの良さを感じさせた。
俺みたいなアンティークに関してはまったくの無知にも、そう感じさせてくれる鞄。そんな物がなんでベットに?
この悪戯に奇妙な胸騒ぎを覚えると同時に、鞄を早く開けてみたい衝動に駆られた。
俺はそれを手に取ると、まったく迷い無く、開け方をまるで知っていたかのように、パチンパチンとロックを解除して、開け放つ。

中から現れたのは、人形だった。
人形の脇に手をやって持ち上げ、視線の高さまで持ち上げてみる。凄い……
人間かと思わせてくれる程の綺麗な人形。黒と白の編み上げのドレスに雪のような白い肌。バラの飾り付けが映える黒のロングブーツに
隠して折り曲げた足は鹿のようにしなやかで、雌豹のように力強い。
流れるような銀髪は、部屋の安っぽい蛍光灯の光でキラキラと艶やかに光っていた。健康な陽光を浴びればその銀髪は、まるで神々しく
、夜の闇ではまるで天の川のように星の光を受けて輝くだろう。背から生える黒翼は、まるで堕天使のように背徳感すら誘って、翼を休めている。
俺は輝く銀髪と白い肌、豪奢で暗いドレスに艶やかな黒翼を持ち、今にも起きて喋りそうな人形を、いつも間にか抱きながら凝視していた。


頭を左右に振る、なにをやってるんだ俺は!軍人ともあろう人間が、人形を抱いて見惚れているなど
どうかしているっ!!
でも……
この人形は、こんな俺が見惚れるほどに綺麗で、どこか可愛らしかった。
うん、こんな乙女チックな考えを頭から叩き出さなくてはいけない。俺は男、いや、漢なのだ!!

そう考えて、この下らない冗談に付き合ってやった自分の忍耐力を自画自賛し、
見惚れていた事実を、記憶回路から抹消しつつ 人 形 を 抱 い た ままで鞄の中を覗いて見た。
ふむ、これはゼンマイを巻くための道具だな。これがあるということは、この人形の何処かにゼンマイを
巻くための場所があるのだろう。それを捜す為に、こいつを身体調査をしなければ……(タラーリ)

ガンッ!!

頭を壁に叩きつける。よし、俺は正常だ。鼻血を拭ってもう一度頭を叩きつける、うん、いてぇ。
気を落ち着かせると、背中に視線を感じた。
ゆっくりと振り向くと、ドアが開いていて、頼りない(失敬)副艦長のアーサーさんと目が合う。
焦ったように視線を泳がせて、俺が問い掛ける前に話し出した。
「あぁ~いや、あのね……先日の出撃の報告書はまだかなぁ~って。通り道だったからついでに催促しようかなぁ~
 ってね……返事は無いけど鍵開いてるみたいだから、ちょっと覗いてみただけなんだよ、あはははははぁ~」

なにか必死な様子で、アーサーさんが話す。まるで弁解のように、見てはいけない物を見た言い訳のように……
そして考え込むように俯いた後で、男、いや漢の顔で俺を諭し始めた。

「いいかい?シン。自分は確かに重度のエロゲーマーだ、むしろエロゲマニアと呼んでくれても構わない、事実だからね。
 二次元と三次元の境界すら最近では怪しい。けれどね、自分は 人 形 を 抱 い て ニ ヤ ニ ヤ はしないよ」
自分自身の尊厳すら投げ捨てるかのようなセリフを、漢らしく吐いた後で、俺の尊厳をコナゴナしてくれた。

あぁ、そうか。俺は今の今までこの人形を抱きながら行動していたのか……
固まる俺に、アーサー副艦長はぽんぽんと肩を叩いてニッコリ笑うと、大丈夫っと言って部屋から出て行った。
ドアが閉まる直前に副長の「おぉ~い!聞いてくれよ!!あのシンg……」なんて聞こえてきた。
この話が艦内全員が知るのに1日と掛からないだろう。

やばい、明日から俺は……ド変態扱いだろうな……

事態に対処しきれない俺の頭脳は、現実逃避の為に、ゼンマイを巻く場所を探す用に命令を下したのだった。




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最終更新:2008年07月04日 04:31
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