<ある日の風景~響のトモダチ~>
響 「ハム蔵ー! どこに行ったハム蔵ー! 自分が悪かった! だから戻って来ーい!」
シン 「……あれって961プロの?」
響 「げっ!? 765プロのセクハラマネージャー!?」
シン 「その呼び方やめろって言ったろ!? 誤解が深刻なことになるから!」
響 「なんでもいいよそんなこと。とにかく、今はそっちに構ってる暇はないから話しかけないでほしいな」
シン 「そりゃこっちだって似たようなもんだけど……何か探してるのか?」
響 「……うぅっ」
シン 「え?」
響 「うぇぇぇぇぇぇぇん! ハム蔵~~~!」
シン 「なっ!? お、おい。泣くなって」
響 「ぐすっ……自分の友達なんだ。いきなりいなくなって、もう3時間も探してるのに見つからなくて」
シン 「ハム蔵って……あ、そういえば聞いたことがあるな。飼ってるハムスターだっけ?」
響 「あの変態プロデューサーから聞いたのか?」
シン 「へんた……まぁあえて否定はしないけど」
P 「ぶえっくしっ!」
小鳥 「プロデューサーさん、風邪ですか?」
P 「いえ、ちょっと鼻がムズムズしただけで……ところで小鳥さん、この新しい水着の試作品を見てくださ
い。どう思います?」
小鳥 「すごく……肌色です」
P 「ああ……次は試着だ。おーい、律子ー! ちょっと着てほしいものがあるんだけど」
シン 「それはともかく、そんなに長い間探しても見つからないんじゃどうしようも……」
響 「どうしようもなくても探すんだ! 自分のせいでこうなったんだから自業自得かもしれないけど……
こんな風にお別れなんて絶対にいやだ!」
シン 「…………」
響 「ふ、ふん! どうせ765プロには関係ない話だけどな。さっさと帰れば?……って、何してるんだ?」
シン 「そのハム蔵ってのがいなくなったのはこのあたりなのか?」
響 「う、うん」
シン 「そっか。じゃあ俺がこっちを探すから他のとこ任せた」
響 「な、なんでそんなこと……」
シン 「なんか泣き声がうるさいし、ウチの事務所も近いから迷惑になるからな。それに……そんな別れ方は
いやだよな」
響 「あ……」
シン 「どうした? また泣くのか?」
響 「そ、そんなわけないだろ! 自分はあっち探してくる!」
シン 「はぁ……帰るのは遅くなりそうだな」
シン (――これだけ探しても見つからないか。あんまり嫌な予想はしたくないけど……)
響 「……もう少し、探すとこを広くしよう」
シン 「なぁ、響」
響 「あっち側はペットショップもあるし、ひょっとしたら思ってたより遠くに行ったのかも」
シン 「なぁって」
響 「あ、もうそっちは帰ってもいいよ。元々これは自分の問題だし」
シン 「響!」
響 「な、何?」
シン 「……少し休むぞ」
響 「な、なんで!? もうすぐ日が暮れるんだぞ! 暗くなったらホントにもう見つからないかもしれないんだぞ!?」
シン 「それでも休むんだ」
響 「やだ……やだ!」
シン 「もう何時間も探してるんだろ? このままじゃ響が持たない」
響 「うう……絶対に、絶対に見つけないといけないのに、ぐすっ」
シン 「泣くなって。飲み物でも買ってくるからそこのベンチに座ってろよ。5分だけ休憩だ」
響 「………(コクン)」
シン 「――そんなに大事なんだな、そのハム蔵って」
響 「うん、今じゃ自分の友達ってハム蔵や動物のみんなくらいだから」
シン 「え? いくらなんでも友達くらいいるだろ? 美希とか貴音だって」
響 「うちの社長の方針なんだ。「トップアイドルは孤高の存在でなければならない。余計な繋がりは不要だ」
って。まぁ、美希や貴音はちょっとは付き合いあるけどさ」
シン 「そうなのか、なんか厳しいとこだな」
響 「うん。だから、ハム蔵もいぬ美もヘビ香も……友達っていうより自分の家族なんだ」
シン 「家族? 響の家族って……」
響 「ん? あぁ、みんな沖縄にいるんだ。黒井社長に言われてるから、最近は連絡取ってないけど」
シン (……それが961プロのやり方か。いくらなんでもやりすぎじゃないか?)
響 「さてと、それじゃ休憩終わり! あとは自分だけでいいよ、もう遅いし」
シン 「……ここまで付き合ったんだ。見つかるまで俺も一緒に探すよ」
響 「えっ……?」
シン 「それに、お前意外に泣き虫だからな。ここで帰ったら気になって残業もでないだろうし」
響 「む~……そうだ。なんか思い出してムカつくと思ったら、うちの兄貴に似てるんだ! いっつも自分に
イヤなこと言うとことかそっくりだぞ、お前!」
シン 「そりゃ悪かったな……さて、どこから探すか」
――ガサガサッ!
シン 「ん?」
響 「? どうしたんだ?」
シン 「いや、なんかガサガサってこのあたりから……まさか!?」
響 「あっ!は、ハム蔵!?」
シン 「こんなとこにいたのか、よかったな響……響?」
響 「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! よかった! 本当によかった! ハム蔵ーーー!!」
響 「うぅ、なんか1年分は泣いちゃった気分だぞ」
シン 「何にせよ、見つかってよかったな」
響 「うん……ごめんな、ハム蔵。もう君の餌がおいしそうだからって自分が食べたりしないから」
シン (それが理由!?)
響 「ん? なんだ? 変な顔して」
シン 「あ、いや……それにしても響の印象が変わったな、TVじゃもっとクールな感じだったのに」
響 「ふ、ふん! 当たり前だぞそんなこと。自分はクールで完璧だからな!」
シン 「……それも黒井社長の指示か?」
響 「そうだけど、それが?」
シン 「いや……」
響 「それじゃ自分は帰るね! 次会うときはまた敵同士だからな!」
シン (貴音にも同じこと言われたっけ……)
響 「それでも……き、今日のことは感謝してるぞ。ホントに、ありがとう」
シン 「え? あぁ、そのことか。気にするなって」
響 「ふ、ふん! ちょっとだけ見直したぞ、765プロ! ちょっとだけだからな! それじゃ、まったねー!」
シン 「またねーって……こっちのこと嫌ってるんだか嫌ってないんだか、よく分からないヤツだな」
シン (貴音に響、それに黒井社長か。プロデューサーや高木社長とは、全然方針が違うんだよな……)
そのことに小さなしこりを感じつつ、シンは遅くなったが事務所へと戻ることにした。
なにやら事務所の目の前で何やら轟々と燃やしていたが、近くにいた律子に話を聞くと、「気にしないで、
汚物を焼却してるだけだから」と輝く笑顔で告げられた。
火の近くでプロデューサーと小鳥ががっくりと地面に手をついてうなだれていたが、特に気にはせず残業を
片付けることにした。
――再び961プロのアイドルたちと出会うとき、自分はどう接すればいいのか? そんなことを考えながら。
最終更新:2009年03月30日 12:30