アットウィキロゴ

へいこうせかいなですてぃにー-01

「――やあ諸君! ごきげんよう!!」

 昼食をとる隊員達で賑わう機動六課の食堂に、男が一人悠々とした足取りで入ってくる。
 名前をジェイル・スカリエッティ。
 彼は一応六課から追われる立場なのだが……度重なる奇行が原因でそれを最近忘れられかけている節がある。
 なので珍しく集合していたシン+新人ズ+隊長三人も食事の手を止め、『うわまた来たよ』と眉根をひそめる程度だ。
 唯一デスティニーだけはガン無視で猛然と食事を続けているが。
「何しに来たんだよ? つうか真正面から堂々と入ってくるな」
「実は前々から制作していたものがついに完成してね」
 ああこの世界って何でこうも人の話を聞かないやつが多いのかなーとシンは思う。
 そんなシンをガン無視し、スカリエッティはどっから取り出したといわんばかりの大型モニタをデンとテーブルに置く。
 それからこれもどっから出したんだといわんばかりに各種ケーブルをそのモニタに接続していく。
「名付けて! 平行世界観測機!!」
 パンパカパーンという酷く安っぽい効果音と共に周囲に紙ふぶきが舞う。
 恐らくセイン辺りがこっそり撒いているのだろう。

「……で? 何なんだよそれは」
「よくぞ聞いてくれた!」
 シンの質問に対し、スカリエッティが吼える。
 無駄に熱くてうるさい事この上ない。
「『if』というものがあるだろう。もしあの時こうしていれば、こうなっていれば今と違う結果になったのでは?
この装置は何と設定した条件に近い『if』の世界を映し出すことを可能とした装置なのだ!!」
 拳を突き上げて朗々と語るスカリエッティ。
「……つまり平行世界って事か」
「ちょっと面白そう、かも」
 既に女性陣は興味を失ったらしく、食事と談笑に戻っている。
 だがシンとエリオは興味を引かれたのかスカリエッティの持ち込んだモニタへ向かっていた。
 スバルも微妙に興味ありそうだったが、ティアナに耳を引っ張られて止められている。
「駄目だよエリオ。馬鹿が移っちゃうから」
 保護者同然のフェイトが注意を促すが、エリオもそこは年頃の男の子なのか、好奇心が勝るようだ。
 シンとエリオは共にモニタとそれに取り付けられたボタン類をつつくも反応がない。
「どうやって使うんだ、コレ?」
「まずは条件を設定する必要がある。『if』の数はそれこそ無限だからね。
最低でも複数の『人物名』と『状況』が必要だ……まあまずはやってみせようか」
 スカリエッティがモニタ下部に取り付けられたコンソールを操作する。
 表示されたのは『シン・アスカ』と『八神はやて』。
「俺と部隊長?」
「人選は適当だよ。後は条件が要るのだが……何がいいかね?」

「あ、じゃあ『恋人』とかどうですか?」
「ぶっ――何言ってんだエリオ!?」
「いや……普段の様子からもし成立しちゃったらどうなるのかって興味が……」
「何でもいいからはよ表示し」
「「何時の間にッ!?」」
 シンがエリオに詰め寄ると同時、モニタのゼロ距離正面に居座っていたはやてが恐ろしく低い声で告げた。
「どうせ観測不能になるに決まってるの」
「ですよねー」
「まあそれが妥当かな」
「でも本当に映ったら面白いかも!」
 なのは、ティアナ、フェイト、スバルもモニタ前に集合していた。
 さっきまでの無関心ぶりが嘘のようである。
「ふむ……面白そうだからそれでいってみるとしよう。では観測開始、と」
「面白そうで争いの火種を蒔くなぁ――!!」
 慌ててシンが止めようとするも時すでに遅し。
 スカリエッティがポチッとスイッチを押した。

case1.『シン・アスカと八神はやての場合』

「――ただいま」
「あ、お帰り~。はやかったね?」
 ドアを開け、部屋へと入ってきたシンをはやてが満面の笑みで出迎えた。
 はやては即座に椅子から立ち、スリッパをパタパタと鳴らしながらシンに駆け寄る。
「ああ。思ったよりも仕事が速く片付いてさ……でもはやて。遅くなるって言ってなかったっけ?」
「私の方も予定よりずっと速く仕事が終ってん」
 シンが脱いだ制服と鞄を受け取りながら、はやてが言う。
「ひさしぶりに時間があったから今日の晩御飯はがんばってみました」
 えへへとはやてがテーブルを指す。テーブルには湯気を立てる無数の料理が並んでいる。
 数もそうだが、どれも手の込んだものばかりだ。
「凄いな……! でも大変だったんじゃないか? 待っててくれれば手伝ったのに」
「…………」
 はやては返事をせず、軽く俯いたまま服の端を指先で弄ぶ。
 シンは怪訝そうな顔で見ていると、はやてがぽつぽつと呟き出した。
「……そりゃ最近シンは料理上手くなってきて……私も普段は忙しいから……助かるけど……こういう時くらい……」
 赤くなった顔を隠すように、はやてがより一層深く俯いた。
「こう……女の子らしいと、いうか……こ、こ恋人らしい事しとかんと……シンに……愛想……つかされるかもしれんし……」
「はやて」
 肩に置かれたシンの手に、はやてがびくりと震える。
 俯いたままの真っ赤なはやての顔をシンはついと持ち上げ、そのまま――――

「「「「「アウトォォォォ――――!!!!!!!!」」」」」

 アロンダイトと金色の長剣によるX斬りでモニタを両断し、跳ね上げ、雷の長槍が下部の入力装置を粉微塵に粉砕する。
 宙に舞ったモニタには極太の桜色の閃光が突き刺さり、難を逃れた僅かな破片すらも飛び交うクロスファイヤーが蹂躙する。

 ――後に犯罪者達から恐れられる『六課デストロイコンビネーション・タイプA』誕生の瞬間であった。

「あ、危なかった……後一瞬でも遅れてたら…………ッ!!」
 青ざめた顔でぶるぶると震えながら搾り出したように呟くシン。
 他の面子も似たような感じである。
 ちなみに本来なら破壊を阻止する立場であるはやてはというと、鼻血で床を赤く染め上げてぶっ倒れていた。
 傍らには『いつか必ず』という犯行予告と思しき血文字が描かれている。
「全く何も壊さなくてもスイッチを切ればいいだけだろうに……モニタのスペアにも限りがあるのだよ?」
「あるのかよ!!」
「あるともさ。そもそも此処に持ってきたのは装置のほんの一部分。
これはラボにある本体からの情報を受け取る端末でしかないのだよ」
 そう言いつつ新たなモニタをテーブル上に設置するスカリエッティ。
 ――瞬間、入力される『シン・アスカ』の文字。
 そして、物凄い勢いで変換され続ける二人目の部分。

「駄目だよフェイトちゃん。ここは譲れない。
何故か付いて回る魔王やら冥王やらの不名誉なあだ名を挽回するチャンスなの……!!」
「私も譲れないよ。便乗的な意味でも。たまにはメインに据わりたいという意味でも……!!」
「凡人の底意地を甘く見ないで下さいね……!!」
 押し合いながらもガチガチガチとコンソールをぶっ叩く三人。
 しばらくしてラチが開かないと判断したのか、各々デバイスを構えて向き合い――撃ち合いを始めた。
 余談だが一般隊員たちはとっくの昔に食堂から退避しているので、被害は食堂の備品のみである。
「……何やってるんだ? スバル?」
 輪に加わらず黙々と何かを書いているスバルに気づいたシンが声をかける。
 スバルの手元にはあみだくじの描かれた紙が一枚。
 ノートに乱雑に引かれた線の先には六課の面子の名前がいくつか書かれている。
 そして何故かヴィータの所に丸が付いていた。
「よしでーきた!」
「……スバル?」
 スバルがばっと立ち上がり、装置へ向き直る。
 戦闘中の三人はそもそもスバルに気付いていない。
「こうしてこうして……ポチっとな」
「だから何してんだスバルゥ――――!?」
 慌ててシンが叫ぶも時既に遅し。モニタにぼうっと光が宿り――

case2.『シン・アスカとヴィータの場合』

「……似合ってるな」
「何だよ意外そうに言いやがって」
「こういう時くらい言葉使い直したらどうだ?」
「う、うるせえなー!」
「まあそこが可愛いんだけどさ」
「なッ……バッ……何言ってんだよ……!!」
「ほらほら暴れるなって、乱れるから」
 今のヴィータの服装は六課の制服ではない。無論バリアジャケットでは無いし、私服でもない。
 それは白一色。滑らかで絹やかな布が精密に折り重ねられたその衣装。
 ――名称をウェディングドレスという。

 そこは古びた教会だった。居るのは祭壇の前で向かい合って立つ二人け。
 白いタキシードを着て正装したシンと、髪を下ろして純白のドレスを着たヴィータ。
 他に誰も居ないので、二人が黙ってしまえば周囲から音は消える。
「……牧師も居ないし。カタチだけの真似事だけどさ」
 すっとシンがヴィータの小さな手を取り、その薬指に指輪を嵌めた。
 次いでヴィータがシンの手を取り、同じように指輪を嵌めた。
「これからも――」
「待て」
 ヴィータがシンの言葉を遮る。
「――私が言う」
 ごほんとわざとらしい咳払いを数回して、それからさらに深呼吸を数十回繰り返してからヴィータが言葉をつむぎ出す
「私はそもそも人間じゃないし……性格も結構捻くれてるし……おまけにいろんな部分が小さいし……」
 自覚あったのかというシンの呟きを噛み付かんばかりの形相で威嚇。
 それから咳払いをして、

「でも。お前とずっと一緒に居たい――幸せにしてくれ、私を」

「ああ。勿論だとも」
 指輪を交換して、今誓いの言葉を交わした。
 後残っているのは一つ。
 シンは眼前に立つ小柄な女の子に目線を合わせる位置まで屈み、ゆっくりと――

「何っっじゃこりゃあァァァ――――――ッ!!!!!!」

 冗談としか思えないほどのドリルハンマーが横薙ぎにフルスイングされ、装置を下のテーブルごとブチ砕いた。
 通常形態に戻ったグラーフアイゼンを構え、肩で息をするのは副隊長のヴィータ。
 たまたま通りかかったところ、先程の映像を見てしまったらしい。
「説明しろシィィンン――!!」
「頼んだスカリエッティ――!!」
「これは私が開発した――」
「ごちゃごちゃうるっせえ――!!」
「スカリエッティ――――!」
 場外ホームラン。
 バッター、ヴィータ。審判、シン・アスカ。
 バットはグラーフアイゼンで、ボールはジェイル・スカリエッティである。

 激化するなのは、フェイト、ティアナの三人の戦闘。
 血の止まらないはやて。
 爆笑するスバル。
 ヴィータに本気で狩られるシン。
 食堂内は実に混迷を極めていた。

「ど、どうしよう」
「全く人をボールか何かと勘違いしていないかね」
 食堂の隅で呟くエリオの横に、顔面血まみれになったスカリエッティが顔を出した。
「あ、生きてた」
 ここで初登場のキャロが呟く。
 彼女は最初の装置起動前にこうなる事を予期し、隅に避難していたのである。
「まあいいだろう。スペアはまだいくらかあるしね。とりあえず落ち着くのを待つとしようか」

「――さあ。次は『誰』の『どんな』ifが見たいかね?」

「六課の建物が持たないと思います」
「的確な判断だ、少年」
「エリオ君プリン食べよう。持ってきといたから」
「何か動じない君がすごく頼もしく見えるよ……キャロ」





タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年07月31日 05:52
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。