シン・アスカを視聴率の取れなかった魔法アニメとコラボしてみるSSお試し版
「まったく、駄目ね……あなたはほんとに」
「次は上手くやるさ」
「……あいつ等といってることが同じ」
「うっ、それは言うなよ。少なくともあいつ等程馬鹿じゃないさ」
―傷だらけの体。湖の上に浮かぶひょうたん型の岩がひとつ。月に照らされている舞台に役者は3人。
そのうちの一人、少年はその傷口を湖の水に浸しながらもやわらかい暗い闇が注ぎ込まれている。
「メロンパン、罰としておごってくれない?」
「自分で行けば良いだろ」
「私はあんましあのお店行きたく――」
「違うわ」
―風に揺れる中、少女は戸惑いの表情を見せている。否定するもう一人の少女。
夜の月の様に冷たい視線を向けながらも左右に触れる首が蒼い髪を靡かせている。
「貴方が出来る事をやれば良いという意味」
「何だよ。俺はパシリやってれば良いってことか」
「だって、貴方ただの人間だもの。私達とは違うわ」
「人間だからって出来ない訳じゃないさ」
―満ちた月の様にわずかに潤んで輝く瞳を隠す少女。動揺していた心も落ち着きを取り戻す。
少年の傷口はたちまちふさがってしまえば、首をこきりっと鳴らしながらも立ち上がる。
「相手は人間の14歳……しかも女の子だろ。次は絶対に負けない!」
「熱くなってるのね。馬鹿みたい」
「ああ、それで良いんだよ。熱くなって血眼になってる方が楽だから。
だから、お前達は冷静に見届けていれば良い。後は俺が勝手に何とかする。煩わせないさ」
「ほんと、勝手な人間」
「……俺はそれで良いんだ。守りたい者を守る」
―少年の言葉にお互いを見詰め合う少女達。蒼い瞳と赤い瞳がわずかに揺れており、お互いの動揺を確認する。
こくりと頷きあいながらも少年を見下す様に月を浴びながらも侮蔑の表情を向ける。
「貴方が私達を?」
「力も無い癖に」
「体も脆い癖に」
「ああ、もう決めたからな」
「勝手にすれば?」
「どうでもいいわ。そんな事」
―二人の少女は再び顔を見合わせながらも首を傾げあう。そして、お互いに呆れたといった言葉を表情を少年へと向ける。
それを見て少年は満足げな笑みを浮かべていた。
反響する水音が薄暗い闇の中で木霊し、それが徐々に伸びて消えていく。
肌にひりひりと痛いほどに突き刺さる寒さは風がないのが幸いだが凍えてしまいそうになる。
鼻先を掠める匂いはひどいものばかりだ。饐えた匂い、焼け焦げた香り、泥臭い匂いに、硫黄の匂い
金属のさびたすっぱい匂いなど鼻が捻じ曲がる程の異臭。
何かが上にのし上げられており、その隙間からかすかに声が聞こえてくる。
老人の様な、若い男のの様などちらとも取れない変な声がする。
何とか聞き取ることに成功をしたが内容は何を言っているかさっぱり解らない。
ただ、同じ言語を通じていると言う事は人間なのか? 誰なんだろう、そこにいる人間は?
「大分揃いましたね。舞台で炎上したダンサー、船と共に溺死した歌姫。
ええと、これは土砂崩れに巻き込まれた……なんでしたっけ?」
「……ここは……助け」
「木に首吊りをした俳優、金鉱を死守したまま死んだ軍人、飛行機事故で上空で爆散した双子。
そして、戦争で爆撃して吹き飛ばされた……おやぁ?」
「た…助け……て」
「おやぁ? ……これはどうしたことか?」
わずかに残された力であらん限りの声を振り絞りながら助けを乞う。手を伸ばせばそれを誰かに触れる事が出来た。
なんだかぶよぶよとした……まるで、蛙か何かに掴まれているかの様なそんな感触に思わず背筋が震える。
肉の山から引きずり出された――のは俺ではなくその上に二つ積み重なっていたふたりの少女。
まとめて引きずり出されると嗚咽の声と共に口から血が混ざった吐瀉物が零し、寒さと痛みで体が震えているのが解る。
この場所はどこかの洞窟なのだろうか。薄暗い岩肌に大きな泉、そして紫の炎がぼんやりと辺りを照らしている。
体の上は折り重なり、自分の体を押し潰す質量は死体らしき人間の肉の山だとようやくわかった。
死後硬直間もない体も含めて異臭の、重さの、死を感じさせる恐怖の原因である肉塊達。
その折重なった山の一番下に埋まっていた。
「いけませんねぇー。まだ、息があるとは」
「い……いや、お父さん」
「助け……おか」
「貴方達には立派な戦士になって頂かないと行かないのですよ。手駒が足りなくてね」
「い……いやぁ」
「では、さようなら。また御逢いしましょう」
すごい音がした。肉の裂ける音、骨が折れる音、あいた風穴を空気がすり抜ける音。
再び、肉の山へと二人の少女は戻ってくる。それの反動で山が崩れていき
手にぼたぼたと何か液体が……温かい液体が手に絡み付いて零れていく。
それにようやく体の感覚が重さからの開放と手についた触感からの刺激でなんとなく意識が落ち着いてくる。
ぐつぐつと煮え滾っていた意識はまだぐらついているがそれでも肉の山の中から這い出る事が出来た。
目の前には薄暗くてよくわからないが”誰か”が立っている。具体的に誰なのかは解らない。
ただ、直感……否、空気で解る。目の前の誰かを何とかしないと自分が死ぬと。
「まだ、居たのですか。まったく人間と言うのは度し難いほど諦めの悪い」
「う……うわぁああああーーーーーーーーーーーーーーー!」
「ほぉ?」
足元に転がっていた石を掴んで俺はそれを大きく振りかぶり、相手に叩きつけようとする。
自然とその攻撃が成功するなどとは思えなかった。本能がかなう相手ではないと告げる。
ただ、それでも体は恐怖で勝手に動いてしまう。その”誰か”は微動だにしない。
真一文字に口を結んだまま、俺の凶行をただただその真紅の瞳で見つめている。
石の砕ける音がはじけとび、手の中でぼろぼろと砕けていく感触が残っている。
粉々になった石の残骸が水音を立てながらも暗い泉の中へと沈んでいった。
その石で殴りつけた手を相手につかまれたままちゅうぶらりんに持ち上げられる。
経験があるわけじゃないが万力で締め上げられるという言葉が適切か?
じとりっと背中には嫌な汗が止まらなくてがくがくとひざは震えそうになっている。
「なんと禍々しい……これが人間の悪意だと言うのですか。
恨み、哀しみ、恐れ、生への執着、やはり素材たるべき生命であるだけのことはある」
「離せ! 人殺し! 化け物め!」
「化け物ですよ。だから人だって躊躇無く殺せます。そして、私は化け物だからそれだけでは終わりません」
「なに!?」
目に映るは緑色の肌にとても人とは思えぬ形状をした大男がひとり。尾が生えており、銀髪を靡かせながらも
真紅の瞳が興味深そうに俺の体を上から下へと舐める様に見つめながらもふむっとあごに手を置いて何かを考えている。
手にこめていた力は段々と弱まっていき、するりっと俺はその上げた手の中からすべり落ちて
大きくしりもちをついてしまう。ごつごつした岩場に尻を打ったので滅茶苦茶痛いはずなのだが相手の気圧される存在感に
痛みもどこか忘れてしまう。悠然と立つその姿はぴりぴりと緊張感と恐怖感で口の中にすっぱいものがこみ上げてきそうだ。
「君の事情は知っていますよ。戦争と言う奴ですね。生ある者はいずれ滅びると言うのに
自分の欲の為にお互いを傷つけあう。不毛で馬鹿らしい行為だ」
「……な、お前は一体ナンなんだよ! 此処はどこだ!? マユは……俺はオーブに居た筈なのに」
「君、自分が何故こんな目に合わなければいけないのか考えた事はありませんか?」
最終更新:2009年07月31日 06:02