上条(これで、中にはほとんど屍人はいない。
しかも、屍人達は明るい空間に居続けた分、まだ暗闇に目が慣れてないはずだ……!)
上条は、周囲に十分気を配りながら、ホームセンターへと突入した。
内部は完全な暗闇。一歩間違えば、屍人と正面衝突すらしかねない。
だが、上条からすれば、屍人の位置は何となくだが察知できる。
上条とは違い、屍人達は、自分の気配を隠そうとはしない。足音も、呼吸の音も、まるで隠さずに、ただ歩いている。
襲われるという危機感を、感じていないからだろうか。
上条(まあどっちにせよ、余計な手間が省けるのはありがたいけど……おっと)
近くを羽根屍人が飛んでいることに気付き、身を屈める。
息を殺しながら、ホームセンターの奥へ、奥へと歩いていく。
上条(RPGの常識的に考えれば……頭脳屍人(ボスキャラ)の居場所は、ダンジョンの一番奥、ってか?)
奥へ、奥へ、微かな視界を頼りに、上条は進む。
そして、見つけた。
一目で分かる、異常なモノを、見つけた。
上条(……こ、れは……)
異常なまでに膨れ上がった頭部。
肉団子、と言って問題無いような、丸々とした、頭。
小柄な体躯――小学生のような――と、ほぼ同じくらいの大きさだ。
蠢く肉塊のようなグロテスクな風貌。ギョロリと周囲をねめつける目が、肉団子の中央に、一つだけあった。
上条は、その不気味(グロ)さに、軽い吐き気を覚える。
だが、立ち止っている暇は無い。
幸いにも、物陰の上条に気付いている様子は無い。
すぐさま飛び出して、手に持った物干し竿で叩き伏せれば良いだけだ。
上条(……悪い、今回だけは、我慢してくれ……!)
誰とも知れない異形に、上条は謝った。
この屍人が、子供のような体型をしているからか。
しかし、不思議と、今からこの屍人を殴り倒すというのに、子供を傷付ける、という罪悪感は無かった。
恐らくは、あまりにもグロテスクな頭部の所為だろう。
上条は、覚悟を決める。
ステイルを、御坂を、救う為にも。
上条(一、二の……)
物干し竿を握り締め、飛び出した。
上条(三ッ!!)
驚愕に歪んだ(らしい)肉団子。
逃げる間も与えず、上条は物干し竿を振り下ろす。
肉が、潰れる音。
上条「っ……!」
まだ、倒れていない。
もう一度、もう一度。何度も、何度も。
物干し竿を、肉団子に叩きつける。
上条「っ、っ、っ、っ!!」
やがて、肉団子の身体が、動かなくなった。
死んではいないだろう。否、死ぬことはないのだ。屍人は死なない。いずれ、蘇る。
ひとまず胸をなでおろしながら、上条はその場にへたり込んだ。
周囲の屍人達の気配が消えている。全て、活動を停止したのだろう。
上条「……ふぅ……これで、ステイル達も……
………………?」
不意に、倒れた肉団子に、目が釘付けになった。
正確に言えば、肉団子の身体部分。肉団子の身体に着せられた衣服に。
上条「――――ちょっと、待て、よ」
どこかで、見た事のある服だ。
何度か、見た事のある服だ。
いや、と言うよりも、つい昨日、見た服ではないか?
昨日。夜遅くまで、『見ていた』服ではないか?
上条「やめ、ろ。やめろよ。やめて、くれ」
やたらと子供っぽい服。
ピンク色で、小学生が着るような、可愛らしい服。
その服の、ポケットから。
何かが、覗いていた。
アレは――――タバコの。
上条「あ、あああああああああああああ」
子供染みた体型。
子供染みた服装。
それに似合わぬ、ヘビースモーカー。
それは、誰だったか。
考えるまでも無い。思い出すまでも無い。
そんな人間は、この学園都市の中でも、たった一人しか、存在しない。
上条「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!!!!」
上条は、叫んだ。
また、同じように、喉から振り絞れるだけの音を振り絞り。
肉団子の――――月詠小萌の、変わり果てた屍体を、見つめながら。
終了条件1達成(ミッションコンプリート)
最終更新:2010年06月05日 21:51