男は答えない。
顔には笑みが浮かんでいる。
そこに先程まであれほど滲ませていた恐怖はもう見当たらない。
垣根は直感した。
この顔は死を覚悟したものではない。
「ははっ……!」
勝利を確信した顔だ。
「死ね!メルヘン野郎!」
ありったけの悪意を込めて吐き出された言葉。
メルヘン、か。
第二位という言葉じゃ無かったのはどういう訳か。
俺が第二位であったことを知らない?
……たまたまか?
そんな思考を急いで打ち切り、そいつの視線を辿る――
その先は俺の入った廃ビルの三階の窓、そこに微かに見えた鈍く光るもの。
銃口。
そんなモノで俺を殺ろうなどとは。
「垣根ーっ!!」
突然聞こえた声に不意を突かれ、思考が塗り潰される。
俺の聞き間違いでなければ先刻別れた彼女。
何故アイツがここに。
そう考えるが早いか、辺りに響き渡る、
死を告げる、音。
…………
垣根「危なっ!お前危なっ!あのタイミングで話し掛けてくるとか何考えてんだ!」
垣根「バッカじゃねーの?バーカバーカ!」
麦野「うっせーよ!てめえが気付いてねえと思ったんだよ!」
垣根(ちょっとシリアス展開っぽくなって俺KAKKEEEEってなってたのに……)
垣根(やべ、ちょっと泣きそう)
垣根「つーかよ、テメェあの銃持ってた奴殺したろ?殺したろ?」グスン
麦野「ああ?今更何言ってんの?」
麦野(つーかなんでちょっと泣いてんのコイツ?)
麦野「殺しはいけませんーなんて奴じゃねーだろ、未元物質様は」
垣根「……はっ」
垣根「俺は変わったんだっつーの、もう殺しは止めたんだよ」
麦野「……は?」
麦野「ビル破壊したくせに」ボソ
垣根「うっせえ、建物破壊したらなんか……なんかこう格好良いだろうが!」
麦野「あの中に人がいたかもしれないわよ?」
垣根「……」
垣根「あ」
麦野「あ、じゃねーわよ」
麦野「殺したくないなんて言うのは別に構わないけどね」ハァ
麦野「今まで通り能力使ってたら確実に死人が出るわよ」
麦野「アンタの能力がとんでもないことは自分が一番知ってるでしょ?」
垣根「……」
垣根「仕方ねぇな、お前がそこまで言うならこれからセーブしてやんよ」ハアーア
麦野「ちょっ、なんで私が殺すなってお願いしたみたいになってんのよ!」
垣根「俺の能力パネェからなあ、それに第よ……三位の頼みだしな」チラッチラッ
麦野「うぜぇ……」
垣根「……」
垣根「ああ、それより」
麦野「……なによ?」
垣根「これからはこっちで俺に関わるんじゃねーぞ」
麦野「……」
麦野「言われなくてもあんたみたいな奴とは関わらないわよ」
垣根「そうしろ」
麦野「……帰るわ」
麦野「それじゃあね、バーカ」コツコツ
垣根「……」
垣根(敵の正体がわからねー以上誰かと一緒にいるのは危険だしな)
垣根(……んだよ)
垣根(不殺不殺って……何がしてーんだ)
垣根(大した理由もねえくせに)
垣根(結局変われてねーんじゃねえのか、俺は)チッ
垣根(取り敢えず気持ちを入れ換えてはみたものの……)
垣根(……どうなんだろうな)
垣根「さて、俺も帰――」
01「」ピクピク
垣根(普通なら縛り上げて拷問して情報を吐かせるところだが……)
垣根(善人・垣根帝督はそんな非人道的な行いはしねえ)
垣根(多分)
垣根(こいつらがまた向かって来るってんなら)
垣根「その都度ブッ倒すまでの話だ」ファサ
垣根「そういや俺飯食ってねーよ!」
最終更新:2010年06月03日 17:33